「ねえ祐樹。ゲーム貸して?」
「いいけど、珍しいな祐巳がゲームなんて」
「えへへ。ちょっとね」
祐樹は腑に落ちないという顔をしたが、黙って祐巳の言ったゲーム機を渡してくれた。
それにしても、いつ見ても凄い。祐樹の部屋のテレビの前には黒とかカラフルなコードがあれこれ絡まっていて、もう何がなんだか分からないのだが祐樹はその複雑に入り組んだコードの中から祐巳の言ったゲーム機のコードだけを的確に選んで外してくれたのだ。
「どうしてあんなにコードがあるのに、すぐ外せたわけ?」
「ん?あぁ、形が微妙に違うんだよ。で?ソフトはどれがいいわけ?」
「あの、マリオのレースのやつ!」
「ほらよ」
またしても祐樹は沢山あるゲームの中から間違わずにお目当てのゲームだけを取り出してよこしてくれた。エスパーなんじゃないだろうか。
「ありがとね」
そう告げて部屋を出て行こうとしたが、両手が塞がっていて上手く歩けない。
「ドアはあけっぱなしでいいよ」
それを悟ってか、祐樹がフォローしてくれたのでありがたく甘える事にした。
「ちょっといい、祐樹?」
「今度は何?」
またしても祐巳が部屋に入ってきた。さっきから10分ぐらいしかたってない。
「うん、あのさ。ゲームのやり方が分かんなくて」
申し訳無さそうに祐巳が言った。
「分かった」
大体予想はついていたため、祐樹は一緒に祐巳の部屋へと向かった。
「このコードはどこにつないだらいいの?」
祐巳はコードをつかみながら困った顔をして聞いてきた。
「いや、その前にさ。なんで?」
「なんで?って?」
「いや、だからどうして祐巳の部屋に由乃さんと志摩子さんがいるわけよ」
「あぁ」
祐樹は完全に戸惑っている。
「遊びに来てるんだよ。言わなかったっけ?」
「聞いてないよ」
祐樹の顔が真っ赤になった。恥ずかしがってるのだろう。
「まぁいいじゃない。で?これはどこに差し込めばいいの?」
そう言うと、祐樹はしぶしぶ祐巳の手からちょっと乱暴にコードを奪うと、あっと言う間にセットしてくれた。照れちゃって、かわいい。
「ありがとう祐樹」
「ありがとう祐樹さん」
「これって四人まで一緒に出来るのよね?祐樹君も一緒に、どう?」
「いや、俺はいいです。やらないといけない事あるし」
祐樹はそう言うとそそくさと部屋を出て行ってしまった。
「あらまぁ。祐樹君意外とシャイなんだ」
由乃さんが楽しそうに笑った。
ところで、なぜ祐巳の部屋に由乃さんと志摩子さんがいるのかというと。
ある日のお昼休み、同じクラスの祐巳と由乃は連れ立って薔薇の館へと向かっていた。一年生の視線が痛い。
「あら祐巳さん。愛想の一個や二個振り撒いてあげたら?」
そういうと、由乃さんは教室からこっそり覗いている一年生に「ごきげんよう」と言いながら軽く手を振った。すると、一年生から小さい歓声が起こった。凄い、由乃さん。
「ほら、祐巳さんも」
「えぇ、私は無理だよ」
そうだ、学年、いや学校全体でもトップクラスの可愛さを誇る由乃さんと、平均点の祐巳とではわけが違うのだ。やったって、愛想笑いで返されるのが落ちだろう。
「大丈夫よ。祐巳さんももうつぼみで、立派な全校生徒の憧れよ?」
そうは言っても、未だにつぼみになった実感なんてわかないのであった。
「ごきげんよう」
薔薇の館へ入ると、中には志摩子さんがいた。
「ごきげんよう志摩子さん。今日は薔薇の館でお昼なんだ」
「えぇ、なんだか紅茶が飲みたくなったものだから」
そういって志摩子さんは、カップを軽く掲げ微笑んだ。
「そっか。じゃあ一緒に食べよ」
そう言って、テーブルの端の三つの席にそれぞれ座った。
「ねぇ、今度祐巳さん家行こうよ」
三人で談笑しながらお昼を食べていると、思いついたように由乃さんが言った。
「え?私の家?」
「そう、祐巳さん家にはまだ行った事ないんだもの。志摩子さんのお家はなんか敷居高そうだし」
「あら?そんな事ないわよ?父も今度お友達を連れてきなさいってよく言ってくれるし。あ、でも、たしかに祐巳さんのお家には興味があるわね」
そういって、志摩子さんはコロコロ笑った。
「う〜ん、別に断る理由もないしいいんだけど」
「はい。じゃあ決まり!今度の日曜なんてどう?」
由乃さんがいきいきしている。これはもう逃れようがないだろう。
「別にいいけど」
「えぇ、私も予定がないわ」
「じゃあK駅に11時ね!よっしゃ!」
って由乃さん。立ち上がってガッツポーズまでしちゃって。
「そんなに私の家に来たかったわけ?」
「うん!祐巳さんってだけで興味あるし。それに、私達来年は山百合会を共に引っ張ってくのよ。ここいらで一層結束を固めておこうじゃない」
「素敵な案だわ」
志摩子さんも由乃さんの意見に頷いて賛成した。まぁ、そういう理由じゃしょうがない。
「じゃ、部屋掃除しとかなくちゃ」
「あら?普段そんな散らかっているの?」
「まさか。いつもピカピカよ」
「じゃあ掃除する必要無いんじゃなくて?」
「あ、そっか」
三人同時に噴出して笑いあった。
祐巳の部屋を飛び出して祐樹はすぐ自分の部屋へと引き返した。
「なんで由乃さんと志摩子さんがうちにいるんだよ。全然気付かなかった」
今でも胸がドキドキしている。そりゃそうだ、リリアンでもトップクラスの美人二人が私服で何故か我が家にいたんだから。その姿うを祐樹は鮮明に記憶した。
そりゃ、祐巳も山百合会の一人だからいつかは連れてくるだろうとは思ってたけど、いざ現れるともう困惑してしまってわけが分からなくなった。
でも、この機会にあの人達と仲良くなれないだろうか。テレビに出ていても可笑しくないぐらいの美人を一度に二人も着ているのだから、この機会を逃す手はないだろう。
とは言っても、悲しいかな、生まれついてのタヌキ顔。身長もあまり高くないこんなルックスじゃ、あの二人には見向きもされないのがオチだろう。
「でも、まてよ・・・」
同じタヌキ顔の祐巳は、兄弟だから贔屓目に見てとかいうのは全然抜きに、普通に花寺で人気があるのだ。それこそ由乃さんや志摩子さんと並ぶほどに。
理由はよく分からないが、生徒会でも可愛い可愛い言ってるやつだっている。
果てには、「祐樹にソックリな祐巳ちゃんなら、ありかもしれないな」なんて柏木が冗談塗れに言っていたぐらいだ。
じゃあ、同じタヌキ顔の祐樹にも希望があるんじゃ!…そこまで考えて、あほらしくなったのでやめた。
さっき、一緒にゲームやっとけば良かったかななんて思ったけど後の祭り。仕方ないから宿題をする事にした。
由乃と祐巳はお腹を抱えて笑っていた。
「もう、そんなに笑わなくても」
そう言う志摩子さんも、照れ笑いをしている。
「だって、志摩子さん「よっ」とか「ほっ」ってずっと言ってるんだもの。しかも志摩子さんってもう薔薇さまじゃない。それがゲームに一生懸命になってるのがまたツボに入っちゃって」
そう言って由乃さんはまた笑い出した。
「私ゲームとか持ってないから今日やるの初めてで、なんかどうしても声が出ちゃうのよ」
「志摩子さんの意外な一面も見れたね」
それからも志摩子さんのおかげで、ゲーム大会は凄く盛り上がった。
「そろそろお腹すかない?」
時計を見たらもう午後1時を回っていた。
「あら、ゲームに夢中になってたから」
お腹空いたわね、って志摩子さん。
「どうしよっか?どこか食べに行く?」
「祐巳さんの家のキッチンは使えないのかしら?」
「今日はお父さんはお仕事で、お母さんは近所のおばさんと買い物行ってるから使えるけど・・・」
「じゃあ、借りていいわよね?」
「いいけど、作るの?」
「だって、そっちの方が楽しそうじゃない」
って由乃さん。それに祐巳と志摩子さんも賛成して、近所のスーパーへと買い物へ行く事となった。
「キャベツは4分の1サイズでいいんじゃない?」
「あとは、お肉は豚肉よね?」
「せっかくだからジュースとかも買っておきましょ」
そんなこんなで、三人で次から次へとカゴへ品を入れていき、あっと言う間にお会計となった。
「いいわね祐巳さん。歩いて5分のとこにスーパーがあるなんて」
「え?志摩子さんのとこはないの?」
「えぇ。うちはお寺だから周りは田舎だから、スーパーなんてなくて買い物するにもバスに乗って商店街まで行かないといけないの」
「それはまた大変ね。私の家は10分ぐらいのとこにあるわよ」
なんて話してるうちに会計の順番が回ってきたから、三人お金を出し合ってお会計をすませた。
祐巳の家へつくと、すぐさま料理へと取り掛かった。
といっても、簡単に出来るって理由で焼きそばを作る事となったからするのは野菜を切る事ぐらいだった。
そうこうしてるうちに簡単に出来上がってしまった。中々美味しそうに仕上がった。
「にしても、ちょっと作りすぎちゃったかしらね?」
「仕方ないよ」
3人だと割りが合わず、4人前の麺とかキャベツ4分の1全部使ったりしたから結構な量になってしまったのだ。
「そうだ名案!」
「なーに由乃さん?」
「祐樹君よ!」
「あぁ!その手があった!じゃ、呼んでくるね!」
コンコン。またしても祐樹の部屋がノックされた。
「祐樹!お昼にしよ!」
そう言って祐巳がズンズン部屋に入ってきた。
そういえばまだ昼ごはん食べてなかったっけ。
「友達は帰ったのか?」
「まさか!さぁ早く早く!」
そう言って祐巳は祐樹の手を取って一階へと引っ張っていった。
居間へ入ると、テーブルにはお皿に乗った焼きそばが四つ。
うち二つはテーブルに座る由乃さんと志摩子さんの前へ。
なるほど。これを一緒に食べましょうということか。やけに一つだけ量が多いのだが。
「じゃあ祐樹はこっち座って」
そう言って祐巳に背中を押され、大量の焼きそばの前へと座らされた。
「作りすぎてしまったの。祐樹さんは男の子だからいっぱい食べられるだろうから」
そう言って、志摩子さんがごめんなさいねって感じで優しく微笑んだ。
「いえ!このぐらい全然食べられますよ!」
祐樹はあわててフォローした。志摩子さんにそんな顔されたら、いやでも食べないわけにはいかないだろう。というか、祐樹自身お腹が空いていたから、これは願ったり適ったりだったのだ。
「じゃ、食べましょ。いただきま〜す」
そう由乃さんが言って一口食べた。
「うん。美味しい美味しい」
「本当?・・・あ、ほんとだ。ソースがまた絶妙だね」
「えぇ。美味しいわ。さぁ、祐樹さんもどうぞ」
「あ、あぁ。じゃあ、いただきます」
パクり。
「あ、ほんとだ美味い」
お腹が空いているからだろうか、その焼きそばは凄く美味しかった。
「目玉焼きとかも添えたかったわね。ぬかったわ」
なんて女の子三人は楽しそうに談笑している。ときたま由乃さんが祐樹にも話を振ってくれて、部外者感なく美味しくお昼をいただけた。
それにしても、まさかこんな美少女とテーブル一つ囲んでお昼を食べることになるとは夢にも思わなかった。
「ごちそうさま。あと片付けは俺がやるよ。焼きそばのお礼とでも思って下さい」
「あら?いいの?」
「ありがとね祐樹」
「ありがとう祐樹さん」
「いえいえ」
そう言って祐樹はお皿を束ねて流しへと向かった。
「じゃ、私達は祐樹のお言葉に甘えて部屋いこっか」
ここは身内の祐巳が祐樹の好意を生かすためにも引っ張っていくべきだろうと、二人を連れて祐巳の部屋へと引き返した。
時計は午後3時を指そうかという頃合だった。
「さて。じゃあお次は何しますか」
って事で三人で何をするか考えようって事で一時休憩。
由乃さんと志摩子さんは雑誌を広げてなにやら笑っている。祐巳はというと、パソコンでネットサーフィンをしていた。
こういうまったりした時間も結構いいものだなぁって思う。
そうこうしてたらあっという間に4時になってしまった。
「ねぇ、じゃあ駅の方へ行かない?」
祐巳は思いつきで提案した。
「いいけど、どうして?」
「志摩子さんも由乃さんもどうせ帰りに駅行くじゃない?それに私の家よりかショッピングでもしてた方が面白いものもあると思ってさ」
「そうね、その方が帰りも楽か」
「そうしましょうか」
って事で、三人仲良く駅へと向かった。
駅ビルへ入ると、日曜の良い時間帯なだけあって人がごった返していた。
「どこいこっか?」
「あ、私本屋さん行きたいな。ほしい本があるんだ」
って事で由乃さんの買い物を済ますべく本屋へと向かった。
「あったあった。このシリーズもの面白いのよ」
と振り返って由乃さんは文庫を嬉しそうに見せてきた。
「百人斬りの・・・武蔵?」
志摩子さんが不思議そうに首をかしげた。きっと志摩子さんは由乃さんの変わった趣味とかは知らないんだろう。
祐巳には分かる。いかにも由乃さんが好きそうな本のタイトルだ。
という事で本のお会計を済ませ、とりあえずビルの中をうろついた。
「で、どうしよっかね、あれ」
と言ってちらっと後ろを見る由乃さん。
祐巳と志摩子もつられて後ろを見る。でも何のことを言っているのか分からない。
「どういう意味かしら?」
それは志摩子さんも同じらしく、由乃さんに尋ねた。
「気付かなかったの?私達、背後霊しょってるわよ・・・」
え?ともう一回後ろを振り返る。そうすると段々見えてきた。
同じ年ぐらいの女の子が数人。きっとリリアンの生徒だろう。それに、数人の男の人。
「背後霊・・・ね」
「とりあえず撒こうか」
って事で曲がり角を曲がったらダッシュした。
すると後ろからも数人、いや、なんだかんだ十人ぐらいいるだろうか。駆け足で追いかけてきた。
「ひぇぇ。まだついてくる」
きっと、休みって事で友達と連れ立ってショッピングに来たら、なぜかつぼみと白薔薇さまが三人仲良く歩いてるものだから、ショッピングという本来の目的を捨て去って追いかけるのに夢中になってしまった人達と、単にテレビでも見ないような可愛い子が三人歩いていたものだから、思わずついてきて話しかけるキッカケを探っている男の人達だろう。
なぜ分かるかって?それは昔の自分に置き換えてみればわかることだ。
もし祥子さまが道を歩いていたら、きっとこっそり付いて行ったりしちゃうだろうし、祐巳がもし男なら、やはり祥子さまが歩いていたら気になってあとをつけたりしちゃいそうだから。
三人は滑り込みでエレベーターへと飛び乗って、なんとか背後霊達を撒いた。
「な、なんなのよ、あれ」
息を切らしながら由乃さんが毒づいた。
「はぁ、はぁ、どうなるかと思ったわ」
「右に、同じ」
でもなんだか可笑しくなって、三人で大笑いした。さながら、ファンから逃げる有名人になった気分になって。
三人はそのまま屋上へと行った。
「あ、アイスクリーム」
「ほんとだ。ね、食べてこうよ」
甘い物大好きな祐巳や、クリーミー大好きな由乃にとってそれは共に大好物の一つだった。
ってことで三人並んでベンチに座りアイスクリームを食べる事となった。
由乃さんはブルーベリー、志摩子さんは抹茶、祐巳は苺だ。
「あっれー、祐巳ちゃんじゃない。それに志摩子に由乃ちゃんまで」
「ロ、ロサキネンシス!」
なぜか、目の前には紅薔薇さまが一人たっていた。
「今はただの水野蓉子よ」
蓉子さまは上品にコロコロ笑った。
「ど、どうしたんですかこんなところで?」
「どうしたって、別に私だって買い物ぐらいするわよ」
そう言って、袋を掲げて見せてくれた。何かの参考書のようだ。
「あと、ついでだからここのクレープでも買って帰ろうと思ったら祐巳ちゃん達を発見したってわけ。久しぶりね」
「お久しぶりです」
三人同時に返事をした。まさかこんなとこで蓉子さまに会えるなんて思ってなかったから、なんだか三人とも嬉しくなってしまった。
「大学の方は、どうですか?」
由乃さんが尋ねた。
「ボチボチよ。そろそろボーイフレンドの一人でもほしいところなんだけどね」
「いらっしゃらないんですか?」
言ってからすぐしまったと思った。見えないように横から由乃さんが肘でこついてきた。
「いらっしゃらないわね。私って魅力ないのかしら」
「そんな事はないです!」
あわてて否定した。蓉子さまで魅力無いとか言われては、祐巳なんて一生結婚できないだろう。頭が良くて、顔も整ってて、身長も結構あってとにかく優しい。ってむしろ完璧じゃなかろうか。
「そう?じゃ、もうちょっと頑張ってみようかな。それじゃ、祥子や令にも宜しくね」
そう言って、三人の頭をなでなですると蓉子さまは帰っていった。
「まさかこんなとこで蓉子さまに会うなんてね」
「ビックリしたわ」
「でも、やっぱり雰囲気あるよね蓉子さま。私も来年あの蓉子さまと同じ紅薔薇さまになるのか。自身ないなぁ」
「あら嫌だ。そしたら志摩子さんなんてもうすでに薔薇さまなのよ?」
「蓉子さまみたいに、上手く薔薇さまを勤められているかしら」
「何言ってるの。志摩子さんはもう十分薔薇さまよ。それに志摩子さんの場合聖さまでしょ?心配無用よ」
「じゃ、私は江利子さまだから、いつもつまんなさそうにしてたらいいのかしら?」
「時々凄い興味を示したりね」
二人で大笑いしてしまった。
「由乃さんも祐巳さんも、失礼よ」
そう言っても志摩子さんも笑っている。
時計を見たら、もう6時になろうかという頃合だった。日も落ちかけている。
「そろそろ帰ろっか」
由乃さんの一言で、今日はお開きとなった。
「それじゃ、また明日学校で」
「えぇ、また明日」
「うん。気をつけてね」
駅で別れ、それぞれの家路へとついた。
帰りのバスの中で、祐巳は一人考えた。
今日は相変わらず由乃さんはイケイケ青信号で、志摩子さんはよく笑っていた。
そんな祐巳達三人も、来年はそろって薔薇さまという立場になる。
当然、今の祐巳には蓉子さまや祥子さまのような薔薇さまにはとてもじゃないが成れそうにない。
けど、逃れることは出来ないし、そんなことしたくない。
大丈夫、この三人ならきっと出来る。
確実に皆変わってきてるし、お姉さまがいなくなったリリアンでも、お姉さまと同じぐらい大事な心から笑い合える心強い友ができた今ならきっと大丈夫。
赤、白、黄色。きっと花咲く山百合会。
今はまだつぼみだけど、綺麗に咲いてみせましょう。