【2185】 決闘広場えりりん萌え萌え夢じゃない  (C.TOE 2007-03-10 01:09:05)


一部歌詞が欠けていますが仕様です。



♪Y○UはSH○CK

蓉子の真紅の携帯電話が着歌を鳴らし始めた。

♪愛で空が落ちてくる

この曲は・・・確認するまでもない。クリスタルキングの愛をとりもどせ。
この曲は、先日とある事情により着歌を登録しなおした人物専用の曲だ。
この曲が鳴った時、蓉子は本当は携帯電話を受けたくなかった。
しかし、蓉子は元紅薔薇さまにして中等部および高等部の入学式及び卒業式の挨拶をした首席、超々優等生である。着信拒否などという不義理な事はしたくなかった。
だが。

♪誰も二人の安らぎ壊すこと出来はしないさ

いかに超々優等生の蓉子といえど、全く対処できない事もある。例え銃を持っていても、一子相伝の暗殺拳の前には何の役にも立たないのと同じ。戦っても必ず負ける相手である。せいぜい必殺技で一矢報いるのがやっとである。

しかし。





元紅薔薇さま水野蓉子には負けるとわかっていても闘わなければならない時がある。





蓉子は全力を以って電話を受けた。

「はい、水野です」
『あ、蓉子!私よ私。わかる?』

わかってる。しかし現在の相手はそれでは満足してくれない。

「何の用、江利子」
『蓉子ってば。違うでしょ?』

相手はとても楽しそうだ。しかし蓉子はなぜか全く楽しくとも何とも無い。

「江利子は江利子でしょ」
『残念!山辺江利子でーす☆』

そう。
鳥居江利子は山辺江利子になった。
昨年11月の剣道大会では「正真正銘ただのお友達」で全く進展しない関係を悩んでいたのに、あれから半年、何があったのか全くわからないが先日電撃結婚。それ以来毎日昼夜を問わず電話をしてくる。

『ね、聞いて蓉子。今日ね、初めて“江利子”って呼んでくれたの』
「そう」

内容は、150%ののろけ話と120%の愚痴。

『結婚したのに未だに“江利子さん”って呼ぶから、『イヤ、江利子って名前で呼んで』って言い続けてたんだけど♭』
「ふーん」

昨日は初めて娘さんとお風呂に入ったと言って喜んでいた。

『今朝ようやく呼んでくれたのよ♪』
「よかったわね」

一昨日は・・・なんだっただろう。江利子から電話がかかってきた事は覚えているが、内容は既に覚えていない。

『だけど結婚前に約束した『おはようのCHU』、守られてないのよ。弁護士の卵としてどう思う?』
「履行すべきね」

皆嘘吐きだ。蓉子は弁護士ではなく警察官(もちろんキャリア)になろうと思った。

『そうだ蓉子、聖、どうしたか知らない?』
「聖?」

聖・・・最後に会ったのはこの凸の結婚式だった。

『さっき電話かけたらさー、『お客様のおかけになった電話番号は現在使われておりません』っていうメッセージが流れてきたのよ?』
「チッ」

その手があったか。聖も考えたわね。

『それで、話は戻るんだけど(^^ゞ』

電話で話しているのに蓉子には顔文字が見え始めた。どうも疲れているようだ。

『ダーリン♥、意外と好き嫌いが多いのよ(゚レ゚)』

今日ほどWindowsにハートマークが無い事を感謝した日は無い。

『sunny side upにはsauceしか認めないとか言い出すのよ(T_T)』

線形文字Aまで混ざり始めた。このままではまた負けてしまう。せめて一矢報いねば。

『でも、納豆は大好きなのよ\(^o^)/』

薄型軽量の携帯電話が重く感じ始めた。蓉子は携帯を机の上に置いた。

『やっぱり目玉焼きにはsoy sauceでしょ(^_-)』

武器は必要か・・・否、自分も素手であるべきだ。頼るは己の力のみ。

『そういえば令に聞いたんだけど、祐巳ちゃんの妹になったのって、剣道大会で見た電動ドリルちゃん§^0_0^§だったのね』

昔、祐巳ちゃんが何かの拍子に漫画を持ってきた事があった。その漫画はずばり“北斗の拳”。

『あの人、小さな子供と2人暮らししてきたわりに、料理駄目なのよ(゚_゚>)』

祥子は知らなかったが、皆おおよその内容は知っていた。

『塩と砂糖間違えるし(?_?)』

話の流れで、山百合会のメンバーを登場キャラに例えるとどうなるか、という話になった。

『包丁を持たせたら指切っちゃって(>_<)』

聖は雲のジュウザ。妹分との悲恋の後、自由奔放に生きているから。

『あの人の指から血が出てくるのを見たら∩;』

令はレイ。律儀で、妹に弱いから。

『思わず指を銜えちゃった<^!^>』

そして蓉子はトキ。理由は言うまでもない。

『あの人、顔真っ赤にして(*~_~*)』

しかし。今の蓉子は絶対トキではない。気分的にはUD。

『私達もう他人じゃないんだから、って言ったらあの人、さらに顔真っ赤にして(*~。~*)』

今の蓉子の気分は、水攻めをして江利子の自由を奪いたい気分である。

『もう、可愛いんだから〜(^。^)/~~~~』

プチン。蓉子の中で何かが切れた。

『それでね―』

「南斗紅鶴拳 奥義 血粧嘴!!!」

砕ける蓉子の携帯電話。
無惨に飛び散る破片。



「ハッ!?」

そこで蓉子は目が覚めた。
いつのまにか机に伏して寝ていた。
あわてて周囲を見渡す。
とりあえず、携帯の破片は落ちていない。確かめると、蓉子の真紅の携帯は無事であった。

(夢、か)

机に向かって勉強していたはずの蓉子がいつのまにか眠っていたなんて、何年ぶりだろう。
それにしても随分リアルな夢だった。

(あんな夢を見るなんて)

蓉子は軽く嫌悪感に襲われた。
蓉子は最近少々寝不足気味だ。いろいろと心労も溜まっている。それゆえ江利子の電話に対してあんな行動に出る夢を見てしまったのだろう。

(親友失格ね)

親友の幸せを素直に祝ってやれないような夢を見てしまうのでは。
蓉子は頭を振り、眠気と共に追い払った。

その時。

♪Y○UはSH○CK

蓉子の真紅の携帯電話が着歌を鳴らし始めた。

♪愛で空が落ちてくる

この曲は・・・確認するまでもない。クリスタルキングの愛を・・・


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