相変わらず、いつものようにヒマを持て余した花寺生徒会の面々は、退屈をしのぐ為、ガラクタ小屋と呼ばれる生徒会室にて、ツマンナイ雑談に花を咲かせていた。
「やっぱり、『遅刻しちゃう〜!?』と叫びながら、食パンを銜えて走る女子生徒と、曲がり角で正面衝突して、『痛〜い、何すんのよ!?』って言われるシチュエーションが最高だな。しかも相手は転校生でさ」
「おぅおぅ、アリアリ! 漫画でしか有り得ない状態だけど、現実だったら確かに最高だよな」
小林正念の案に、高田鉄が同意と言わんばかりに頷いた。
「他には、タイトミニのスーツを着たナイスバデーの美人英語教師、けど実はドジっ娘が、持ちきれない大量のプリントを廊下にブチまけて、しゃがみこんで必死に拾っているところに出くわし、手伝っていると胸の谷間や下着が見えてラッキー! と言うのも捨てがたい」
「それもイイな。でも、生徒の反応を見るためにワザとやってる数学教師か養護教諭ってパターンもお勧めだな」
今度は高田が挙げた例に、小林も興奮が収まらず、バリエーションを増やす始末。
「眼鏡を外して体育の授業に出ようとしている可愛い女子生徒が、階段で足を滑らした時に、たまたまその場に出くわして、胸に飛び込んで来られたら別の意味で困るよな。体操服だぜ体操服、しかもブルマだったらもうダメだ」
「それだ! 一緒に踊り場まで落ちるんだけど、どちらも幸い怪我がなくて、イイ雰囲気になだれ込むってヤツだな」
通常では決して“ありえねー”状況を想像しては、ひたすら興奮する二人に、同室していた生徒会長福沢祐麒は、苦笑いするばかり。
有栖川金太郎も、同じような表情だった。
「ユキチはどうよ? 何かいいネタはないのか?」
突然話を振られて、目をパチクリさせる祐麒。
「…い、いや、そりゃ無いことも無いけど」
「じゃぁ言えよ。遠慮なんて要らないぜ。ホラ、さぁ」
小林と高田が、左右から祐麒を肘で突っつきまくる。
「分かった、分かったよ。ええとな、風呂に入ろうとして、当然ながら裸になってガラガラと入り口を開けると、そこには既に入っていた姉がいてだな。お互い素っ裸で、固まったまま数分間見詰め合うことしか出来なかった、ってのはどうだ?」
『うるせぇこのシスコン野郎!!』
同時に声を上げた小林と高田は、羨ましいぞこん畜生、とか、お前には実際に姉がいるもんな、などと叫びながら、祐麒をガシガシと小突きまくる。
「そんな場合は逆だろ!? 先に入っているのは自分のハズだろうがよ」
「そうだ、後で姉が入ってきてだな、『ゴメンナサイ、入ってるなんて気付かなかったの』と慌てて照れつつも弁解するのがイイんじゃねぇか!?」
「痛ぇ! 本気で殴るなよ!?」
三人で、手加減はしているだろうがボコスカ殴りあう祐麒たち。
「何をほたえてるんだか……」
と思いながらも、アリスは黙って見守ることしか出来なかった。