【2206】 獣耳肉球尻尾標準装備まだノロわれてない  (キリヤ 2007-03-27 15:01:47)


【No:2181】の続きです。
今日は可南子は幸せだった。
最愛の妹の祐巳と誰にも邪魔されることなく過ごすことができるだろうからである。
大抵の場合祥子が出てくるため、気を許したら隙に祐巳をかっさらわれていることが何度かあったからだ。
「お姉ちゃん、今日どこかにいかない?」
「それもいいけど今日は家にいてゆっくりしない?」
可南子は自身のひざの上に抱えている祐巳を抱きしめながら頭をなでなで。
しかし、
「遊びにいきたいよ」
などと上目遣いで祐巳にお願いされた可南子は断れる程妹ばなれは出来ていない。
一撃で可南子は祐巳のお願いを了承した。
「あのねお姉ちゃん」
「何かしら祐巳?」
そういうと祐巳は上半身のパジャマが半脱ぎになったまま可南子の部屋を訪れてた。
「っーーー!」
可南子は鼻を押さえて地面を固く踏んだ。
確かに可南子はたまに、いやむしろ毎日祐巳といっしょにお風呂に入っている。当然マッパで。
だがしかし、時には完全に裸よりも見えそうでギリギリの方がアレなことがある。
着替えの時にじろじろ見るわけにもいかない訳で改めて直視してしまった可南子はなんだか眼が繋がっちゃいけないところにつながりそうだった。
「この前買ったこっちとこっち、どっちがいいと思う?」
首を傾げるさまが余りに可愛いくて可南子はどもりながらもなんとか答えた。
祐巳が着ているのは可愛いらしいワンピース。
可南子とて女の子、可愛い服を着たいと思うものの、自分に似合わないことを知っているためが祐巳には可愛い服をあげたりすらしている。


そしてまたある日、祐巳と可南子はいっしょに出掛けることになった。
この時も祐巳は可南子に服を選んでもらっていた。
そして可南子が選んだ服はそれはもうある意味時代の最先端だった。
何故かピコピコ動くふさふさの猫耳、ぷにぷにと柔らかい肉球、揺れる尻尾…。
完璧だった。
勘違いという意味で。
可南子と祐巳はいろんな意味でどこにいくのだろうか?
「やっぱり恥ずかしいよお姉ちゃん」
真っ赤な顔を肉球で隠す祐巳をみて、ほんの少しばかり残っていた可南子の理性は粉々に砕け散った。
「ねえ祐巳」
「な、なにお姉ちゃん?」
「祐巳はペットを飼う時は洋服は着せないわよね」
「う、うん」
可南子の様子に多少ビクビクしながら答える祐巳。
「うふふ、そうよね。だったら祐巳も洋服は要らないわね」
満面の笑みを浮かべて祐巳に飛びかかった。




数分間の格闘の末、祐巳を隠すものは何もなくなった。
パジャマはひっぺがされ、当然下着も全て可南子に脱がされた。
心なしか下着を脱がす時はやたら時間をかけていたような気がするのは祐巳の勘違いではない。
脱がす為に一度外した猫耳に肉球は既に装着されている。
「ゆ、祐巳。何も恐がることは無いわ……………ハァハァ」きっとそんなあなたが一番怖い。
親友の乃梨子がいたならばきっとそう言っただろう。




肉球でなんとかギリギリ見えないようにして可南子の魔の手から逃れようとする祐巳だが体格差と何やら可南子を尽き動かすエネルギー(えろぱわー及びもえぱわー)には勝てないようで
「痛いのは最初だけよ」
と血走った目で猫尻尾ーーーお尻に直接付けるタイプーーーを持った可南子にガッチリホールドされてしまった。
「いくわよ祐巳」
「ひゃあっ!どこにですかお姉ちゃんやめっ…!」
どたばたどたばた…ばた…どた………………。

やがて祐巳は暴れる力すら失った。
「ぐすっ、ぐすっ。私もうお嫁にいけないよぅ」
「あら、祐巳はお嫁にいく必要はないわ。一生私が可愛がってあげるもの」
いつの間にかいつものように可南子に抱きかかえられている。
祐巳は見えないようにまえから可南子に抱きついている。
可南子は幸せだった。
例え煩悩の塊と非難されようと可南子は悔いはしないだろう。
祐巳の温かくて柔らかい肌と控えめながらも存在する膨らみに可南子は天に昇る心地だった。
しかし、悲しいながらその姿は正に変態そのものだ。
「……お姉ちゃん?」
上を向いたままの可南子に多少の訝しい視線を向ける祐巳。
急に何かに気が付いたのか祐巳を抱えて立ち上がる。
「さあ、祐巳。ベッドに行きましょう!」
いつの間にか「祐巳」とかかれた首輪を付けられお姫様抱っこで可南子のベッドに連れて行かれる祐巳。
その姿にますます興奮したのか鼻から真っ赤な花を咲かせて祐巳に倒れこむ可南子はやっぱり幸せそうだった。
間違いなく、祥子や瞳子も過程は違えどこの結果を迎えていただろう。






「はぅ〜」
「どうしたの祐巳さん」
「溜め息ばっかりついてると幸せが逃げるわよ」
と机にぐったりしている祐巳に心配したように声をかける蓉子と面白そうに声をかける江利子。
「ありがとう蓉子さん、江利子さん。…あれ?聖さんは?」
いつもならば真っ先に自分に抱きついてくる聖の姿がない。
「そういえば今日はまだ聖みてないわね」
「蓉子、私は見たわよ」
「どこで?教室には来てないみたいだけど」
「聖なら白薔薇の蕾と久保栞さまといっしょに桜の下にいたわよ」
「ほえ?どうして聖さんが白薔薇の蕾と栞さまと一緒にいるの?」
百面相している祐巳に内心笑う江利子は
「妹になったからよ。白薔薇の蕾のね」
とんでもない爆弾を教室に落とした。
「えぇっ!」
ついには道路工事を披露してしまった祐巳の姿に遂に笑いを堪えきれなくなった江利子は声を出してケラケラ笑い始めた。
「ちょっと江利子!その話本当でしょうね!?」
江利子の体を揺らしてつかみかかる蓉子。
(あ〜面白いわね。聖が絡むと元紅薔薇さまも顔なしね)
「勿論よ」
「でも、まだ瓦版にだって…」
急にしゅんとしてしまった蓉子に愛しさを覚える江利子だがそれ以上にからかいたいという思いが強いためさらに一言。
「これは内緒よ蓉子」
と耳元に口をよせて
「実はね聖は白薔薇の蕾の妹で久保栞さまの恋人になったのよ。勿論、どっちもこの目でみたわ」
目を涙でいっぱいにし始めた蓉子にさらに慌てる祐巳。
多少悪いことしたかなぁと思う江利子。
そんな時、教室のドアが開いた。
幸せそうな顔をした聖がやってきたのだった。
「せ、聖の馬鹿!」
「よ、蓉子…私蓉子に何かした?」
微妙に心当たりがあるのかないのかかなり挙動不審な聖。
「聖なんか知らない!」
ぷいと顔を逸らして教室から出ていってしまう蓉子。
「蓉子さん…出ていって仕舞いました」
「私何かしたっけ江利子?」
(まあ、蓉子も1年の時は大人じゃないって訳か)
「さあね」
江利子は楽しげに、あっさりと言い放った。





「あのねお姉ちゃん」
高校1年生にしては幼く見える祐巳は姉の可南子といると精神年齢まで下がってしまうのか口調がいささか子供っぽい。
「どうしたの祐巳?」
先日、祐巳に没収された猫さん変身セットを再び某秋で葉っぱが原な場所で今度はメイド服までついてきた物を購入した可南子氏。(ちなみに前着せたのはそれで祐巳を撮影しようした蔦子から没収したもの)
膝に乗せた祐巳の頭にそーっと猫耳を乗せようとする可南子。
「お姉ちゃん?」
「な、何でも無いわ」
と後ろ手に隠す。
「……志摩子さまに妹が出来たって本当なの?」
訝しげな視線を可南子にぶつけつつも本題にとりかかる。
「志摩子?確かに妹が出来たって乃梨子にいってたわよ」
乃梨子が真っ白になっていたわね、と苦笑して付け加えた。
「そうなのよ!志摩子ったら聖ちゃんばかりにかまって」
目を血走らせながら涙を流すという器用なことをするすっかりと性格が変わってしまった乃梨子に多少の同情を覚える細川姉妹だった。



「の、乃梨子さま。志摩子さまの妹はやっぱり佐藤聖さんなのですか?」
「ええ、そうよ祐巳ちゃん」
(蓉子さんは志摩子さまの妹になりたかったのかな?)
と微妙にズレた思考を働かせていた祐巳。
「そういえば志摩子喜んでなあ。これでお姉さまを安心させられるって」
とは令の一言。
ますます、涙を流す乃梨子。
それをみてハンカチを渡す祐巳に、その後ろで鼻の下を伸ばして猫耳を装着しようとする可南子。
ーーーまだ諦めてなかったんですね。
とは令の心の中の一言。
初めから祐巳と可南子を見ていた令。
因みに今、薔薇の館にいるのは祐巳、可南子、乃梨子、令の4人だ。
乃梨子を慰めることに一生懸命な祐巳は猫耳の装着に気が付かない。
可南子は乃梨子を慰める祐巳に後ろから抱きついて頬摺り。
さすがに怒った猫耳祐巳に嬉しそうに説教される可南子の姿に令はまた苦笑した。
この日は祥子に瞳子も薔薇の館には来れないため会議などはない。なんとなく薔薇館にやってきたのが彼女たちなのだ。
そしてこの日、猫耳を外し忘れた祐巳がリリアン内で多数の生徒及び新聞部、写真部に目撃されリリアン瓦版にて「白薔薇の蕾に麗しき妹」と一緒に「細川可南子の妹祐巳、猫耳をつけて姉と散歩」という題名で写真付きでリリアン中に知れ渡ることとなる。
後日それを知った祥子と瞳子にそれぞれ犬耳と狸耳をそれぞれもっておそいかかられて、それに便乗した乃梨子が志摩子にウサ耳をもって迫ったという話はまた別の話。


一つ戻る   一つ進む