【2227】 裏とか言うな福沢プロデュース  (柊雅史 2007-04-10 00:42:51)


※いや、思いっきり裏だろう、なおふざけネタです。
※【No:2226】朝生行幸さまの「どうすりゃいい?駆け引きされるのはいやだ」のパロディです。
※微妙に暴走してアダルティかもしれません。ごめんなさい。

-------------------------------------------------------------------------------

 交差点を大きく回った時、カチャリと言ったのは何だったのだろう。
 封筒の中に残された、デート資金の小銭?
 それとも、祐巳のコートのポケットのロザリオ?

 いや、それ以上に、聞き覚えのある音。
 教室などで、頻繁に登場する、ある道具が発する音。
 登校時、昼食時、着替え時、必ずと言ってよいほど友人が手にしているある道具。

 それは”カメラ”。
 その、フィルムを巻き取るなんかよくわかんない部品を動かす時の音(アナログ式)。
 まるで、写真を撮った直後に、親指で回した巻き取り部分が立てる音。

 そんな音が聞こえると言うことは、“カメラ”は間近にあるということ。
 車内には、幸か不幸か乗客は祐巳と瞳子の二人きり。
 いったい誰が、被写体になるというのだろうか。

 運転手じゃなければ、標的は二人のどちらか。
 レンズは、祐巳か瞳子に狙いを定めているのか。くそう、瞳子か! 可愛い瞳子の寝顔だな!!
 そもそも、どうやって狙っているのかという疑問は、蔦子さんのすることなので浮かばないようだ。何でもアリっぽいし。

 その“カメラ”が趣味用ならば、ちょっと恥ずかしい思いをするだけで済む。
 でも、取材用ならば。
 可愛い瞳子、その寝顔をかわら版に晒すことになる。

 そんなのは嫌だ。
 せっかく姉妹になれるというのに。
 姉妹になる前に、んでもってその寝顔を堪能する前に、大衆に晒されるなんて嫌だ。

 だから。
 だから祐巳は、明日なんて暢気なことを言っていられなかった。
 隣で寝息を立てている、瞳子を揺すり起こした。

「起きろ! 瞳子!」
「は、はい!? 何ですかお姉さま!?」

 混乱しているのか、祐巳は瞳子を呼び捨て。
 瞳子は瞳子で祐巳をお姉さま呼ばわり。
 ロザリオ授受の儀式はまだだけど、既に二人の関係は、姉妹で完結しているようだ。

 M駅に到着したとたん、瞳子の手を取って、大慌てでバスから飛び降りた。
 ネオンの明かりの下、目を白黒させている瞳子を尻目に、エレベーターに瞳子を突っ込む。
 そこは、確かにいやんなホテルの入り口。

「はい、デートはこれで終了。デートが終わったから、今から就寝、OK?」
「は、はぁ……?」

 寝起きのせいなのか、瞳子の意識はハッキリしておらず。
 畳み掛ける祐巳に、呆然の面持ち。
 勢いだけで祐巳は、後ろ手に鍵をロックすると。

「とゆーわけで、瞳子ちゃんを妹にします。これが返事です。まぁそれはそれでおいといて、寝顔は私専用にしときなさい。もうこうなったら親戚も無し。柏木さんもダメ。お姉さまもダメ。だからハイと言えやコラァ!?」
「ちょ、ちょっと祐巳さま!?」

 瞳子の頭をガッシと掴んだ祐巳は、そのまま縦に何度も振り、足元が覚束なくなった相手の首に無理矢理ヘッドロックを架け、腰を軸に両手で投げ落とした。

「オーケイ?」
「……ホーヘーへふ」

 どうやら祐巳も、バスの中では半分寝ていたようで、何でもない小さな音がキッカケで、とんでもない妄想に飛びついてしまったようだ。
 常識で考えれば、ただの女子高生が、カメラで狙われるワケがない……ことも、ないけど。
 昨日、デートということで顔が緩みまくり、遅くまで蔦子さんに激写されてたのが原因のようだ。

 こうして、ロザリオ授受の儀式を、一足飛びに飛び越しまくり、祐巳は瞳子の寝顔を堪能することにしたのだった……。


一つ戻る   一つ進む