※いや、思いっきり裏だろう、なおふざけネタです。
※【No:2226】朝生行幸さまの「どうすりゃいい?駆け引きされるのはいやだ」のパロディです。
※微妙に暴走してアダルティかもしれません。ごめんなさい。
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交差点を大きく回った時、カチャリと言ったのは何だったのだろう。
封筒の中に残された、デート資金の小銭?
それとも、祐巳のコートのポケットのロザリオ?
いや、それ以上に、聞き覚えのある音。
教室などで、頻繁に登場する、ある道具が発する音。
登校時、昼食時、着替え時、必ずと言ってよいほど友人が手にしているある道具。
それは”カメラ”。
その、フィルムを巻き取るなんかよくわかんない部品を動かす時の音(アナログ式)。
まるで、写真を撮った直後に、親指で回した巻き取り部分が立てる音。
そんな音が聞こえると言うことは、“カメラ”は間近にあるということ。
車内には、幸か不幸か乗客は祐巳と瞳子の二人きり。
いったい誰が、被写体になるというのだろうか。
運転手じゃなければ、標的は二人のどちらか。
レンズは、祐巳か瞳子に狙いを定めているのか。くそう、瞳子か! 可愛い瞳子の寝顔だな!!
そもそも、どうやって狙っているのかという疑問は、蔦子さんのすることなので浮かばないようだ。何でもアリっぽいし。
その“カメラ”が趣味用ならば、ちょっと恥ずかしい思いをするだけで済む。
でも、取材用ならば。
可愛い瞳子、その寝顔をかわら版に晒すことになる。
そんなのは嫌だ。
せっかく姉妹になれるというのに。
姉妹になる前に、んでもってその寝顔を堪能する前に、大衆に晒されるなんて嫌だ。
だから。
だから祐巳は、明日なんて暢気なことを言っていられなかった。
隣で寝息を立てている、瞳子を揺すり起こした。
「起きろ! 瞳子!」
「は、はい!? 何ですかお姉さま!?」
混乱しているのか、祐巳は瞳子を呼び捨て。
瞳子は瞳子で祐巳をお姉さま呼ばわり。
ロザリオ授受の儀式はまだだけど、既に二人の関係は、姉妹で完結しているようだ。
M駅に到着したとたん、瞳子の手を取って、大慌てでバスから飛び降りた。
ネオンの明かりの下、目を白黒させている瞳子を尻目に、エレベーターに瞳子を突っ込む。
そこは、確かにいやんなホテルの入り口。
「はい、デートはこれで終了。デートが終わったから、今から就寝、OK?」
「は、はぁ……?」
寝起きのせいなのか、瞳子の意識はハッキリしておらず。
畳み掛ける祐巳に、呆然の面持ち。
勢いだけで祐巳は、後ろ手に鍵をロックすると。
「とゆーわけで、瞳子ちゃんを妹にします。これが返事です。まぁそれはそれでおいといて、寝顔は私専用にしときなさい。もうこうなったら親戚も無し。柏木さんもダメ。お姉さまもダメ。だからハイと言えやコラァ!?」
「ちょ、ちょっと祐巳さま!?」
瞳子の頭をガッシと掴んだ祐巳は、そのまま縦に何度も振り、足元が覚束なくなった相手の首に無理矢理ヘッドロックを架け、腰を軸に両手で投げ落とした。
「オーケイ?」
「……ホーヘーへふ」
どうやら祐巳も、バスの中では半分寝ていたようで、何でもない小さな音がキッカケで、とんでもない妄想に飛びついてしまったようだ。
常識で考えれば、ただの女子高生が、カメラで狙われるワケがない……ことも、ないけど。
昨日、デートということで顔が緩みまくり、遅くまで蔦子さんに激写されてたのが原因のようだ。
こうして、ロザリオ授受の儀式を、一足飛びに飛び越しまくり、祐巳は瞳子の寝顔を堪能することにしたのだった……。