【2274】 君達の仕事は?  (海風 2007-05-20 04:06:57)



ルルニャン女学園シリーズ 8話

 【No:2235】 → 【No:2240】 → 【No:2241】 → 【No:2243】 → 【No:2244】
 → 【No:2251】 → 【No:2265】 → これ → 終【No:2281】 → おまけ【No:2288】

一話ずつが長いので注意してください。







 自分でも不思議だった。
 あの時と比べれば、こんなにも変わってしまっただなんて。

「タイが曲がっていますよ」

 背の高い私は腰を屈めて、その人のタイを、自分でも不思議なくらいに優しく心穏やかに直す。

「ありがとう」

 その人はにっこりと笑う。

「いえ……その、いつぞやは申し訳ありませんでした……」

 この一言を言いたいがために、私はこの人の前に立っていた。私は過去に、この人に対してとても失礼な態度を取ってしまったから。
 過去の清算、というやつだろうか?
 それとも、もっと違う何かだろうか?

「……なんのことだかよくわからないけど、気にしないで」

 明らかに気付いているのに、気付いていない振りをしてくれる。
 その厚意を素直に受け止めることができるのは、成長した証……ということにしておこう。

「それより可南子ちゃん――あ、ごめんなさい。可南子さん」
「どちらでも好きなように呼んでください。それで、何か聞きたいことでも?」
「あ、うん。可南子……ちゃんは、どうして出場したの?」
「……ふふ」

 思わず笑いがこぼれる。
 まさか最近やたらと聞かれる質問と同じものが、この人の口から発せられるとは思わなかった。

「聞いちゃいけないことだった?」
「いいえ。皆に聞かれるもので。そんなに意外に思いますか?」
「んー……ちょっとだけ」

 やはりこの人は鋭い。私の心を見透かしているかのように。

「……そうですね……多少は欲しいというのもあるんですけど、どちらかと言えば嫌がらせ、でしょうか」
「いやがらせ? ……瞳子ちゃんに?」
「ええ。幸せそうに微笑む彼女を見ていると、ちょっと意地悪したくなりました」

 どうして誰にも話さなかった本音を、この人には言えるのか。
 違う生き物だからだろうか?
 それとも、なんとなくこの人のことがよくわかるからだろうか?
 やはり自分が不思議だ。

「ふうん……仲良いのね」
「どうでしょう」

 態度は誤魔化し、本音でそれを否定せず、私はその笑みに笑みを返していた。

「可南子ちゃん、出来たー?」
「あ、はい」

 扉の向こうからの声に、私は夢の中から現に引き戻された。

「大丈夫かな?」

 くるりとターンして見せるその人に、堂々と応える。

「はい――可愛いですよ」
「え、ほんと!? 似合う!? 嬉しい!」

 本当に嬉しそうなその人への最後の仕上げに、それを手にする。

「はい、これ」
「……付けてくれる?」



 以前なら鼻で笑って冷たくあしらうところだが。
 その人があまりにも可愛く見えたので――
 私はそれを広げて――
 その人の頭上に――



「きゃーーーーーーーーー!!!!!!」

 それは歓声と言うより、轟音だった。実際に薔薇の館がガタガタと揺れたような気がした。

「――はい! 出場者兼司会の島津由乃です! 前回同様、数多のスポーツ観戦で培った偏見に満ちたコメントで本戦状況をしちゃったりしますので、これから数時間よろしくね!」

 ビッとカメラに向かって親指を立てる由乃さまに合わせ、すぐそこの中庭からまた轟音が沸いた。

「それではもう一人の司会者、新聞部のガッチリ73部長こと山口真美さんを紹介します!」
「こ、こんにちはー」

 はじけまくりの三つ編みと違い、かなり恥ずかしそうな73は、遠慮がちに手を振る。それに合わせて「こんにちはー」と中庭から好意的な声が返ってくる。なんだか一種の祭りのようだ。いや実際そうなのかも知れないけど。

「さあ、ついに第二回ルルニャン女学園カードゲーム大会本戦が始まろうというわけですが、真美さん私達の頭のコレなんですか?」

 コレと頭を指差し、スポンジ部分が黄色のマイクを恥ずかしがっている真美さまに向ける由乃さま。マイク持つ手の小指立ってるよあの人。

「ね、ね、猫耳……です」
「はい。カードにちなんで今回は猫耳装着でお送りしておりまーす。漫研と写真部から強い強い要請があったので、このような運びになっちゃったわけです。――ハイ、ポーズ!!」

 はちきれんばかりの笑顔でピースサインを送って振り返る先に、撮影班の蔦子さまが絶妙のタイミングでシャッターを切った。打ち合わせ済みのアクションなのだろうけれど、そうじゃなければ相当すごいシンクロ率だ。だって真美さまはポーズどころか目線も反応すらも微妙だったから。

「真美さん、猫耳の付け心地どう?」
「い、意外と……いいです」
「はい! 実耳と猫耳が両方出てますけど、あまり気にしないでくださいねー!」

  ハハハ!

 「実耳」という言い方もかなりおかしいが、とりあえずお客様の笑いは取れたので掴みはOKだろうか。



「それでは選手紹介――の前に、ゲストの紹介をしておきまーす!」

 カメラが動き、一角を捉える。そしてまた湧き上がる歓声。

「先代紅薔薇こと小笠原祥子さま! 前回に続いて二度目の観戦となり、祥子さまを知らない一年生にファン急増中です!」

 私服の祥子さまは、「よろしく」と言う代わりに微笑を浮かべて優雅に手を振ってみせる。

「それでは本戦出場者に何か一言お願いします!」
「副賞に期待しているわ。今度もまた楽しませてね」 
「はい、ありがとうございました!」

 巻きで進行しているのか、由乃さまはあっさりと次へ向かう。

「次に――」

  きゃーーーあぁーーーーあぁぁぁーーーーーー!!!

 由乃さまのマイク入りの声にも負けないくらいの大歓声が響く。薔薇の館も揺れる。本当に。

「出資者にして王子さまこと光の君、花寺学院OBで前生徒会長の柏木優さん!」
「招待してくれてありがとう。みんな応援してるよ」
「っかーーーーさわやかっ! 嫌味なほどさわやかっ! 柏木さん、今日は熱射病になって倒れるほど楽しんで行ってください!」

 ビッと親指を立てる由乃さまに、柏木さんもビッと親指を立てて応えた。――いいのか熱射病は。

「そしてこの人! 花寺学院現生徒会長にして紅薔薇さまの実の弟、福沢祐麒さん!」
「ど、どうも……」

 雰囲気に呑まれているのか、祐麒さんは赤面してきょろきょろと落ち着きがない。上がっているのがよくわかり、それが逆に好感が持てるのは私だけではないだろう。

「花寺でもカードゲームが流行り出しているそうですね?」
「ええ、まあ、す、少しだけ……」
「もし大会が開かれることになったら招待してくださいね!」
「あ、はい、その時は」
「それでは、出場者に一言お願いします!」
「あーえっと、……が、がんばってください」
「はい、ありがとうございました! 月並みなコメントとわかりやすい顔が庶民派の姉とそっくりですね!」

 スポーツ観戦趣味で培ったノウハウなのか、天性のものなのか。由乃さまはさらりと笑いを取って、最後の一人にマイクを向けた。

「最後はこの人、リリアンの制服を違和感なく着こなす花寺の不思議な妖精アリス!!」

  きゃーーーーーーー!!

「しかもカード同様ウサ耳使用です!!」

  きゃーーーーーーーーー!!!!

 ……大した歓声だ。呆れるほどに。

「男性でありながらカードのモデルに採用された感想は?」
「すごく嬉しいですっ。カードの中とは言えリリアンの関係者になれてとても幸せですっ」

 これまたはちきれんばかりの輝く笑顔で、アリスさんは元気よく応える。若干頬が赤いのは照れでも上がりでもなく、ただただ興奮しているからだろう。

「それにしても制服似合いますね。私より似合ってない?」
「んもうっ! 由乃さん冗談ばっかりっ!」

 バシバシと由乃さまの腕を叩くアリスさんは、本当にもうものすごく嬉しそうだ。

「それでは最後に、出場者へ一言いただきましょう!」

 若干痛かったのか、殴られた腕を擦りながら由乃さまはシメに入る。

「皆さんにがんばってもらいたいですが、着付けを手伝ってくれた細川可南子さんを個人的に応援しちゃいます!」

  …………ええーーーーーーー!!!??

 な……! 言いやがった、あのオカマ!

「え、着付け!? 裸で!?」

 由乃さまは司会者の顔をかなぐり捨てて興味本位で聞く。

「違いますよぉうふふ」

 うふふじゃない! なんでそんな意味ありげに笑うの!? 
 
「よ、由乃さん由乃さんっ、進行進行っ」

 声を拾われないよう小声で、真美さまが由乃さまの腕を引っ張る。

「――あ、し、失礼しました! アリスへの制服の提供は、先々代の卒業生内藤克美さまからでした! それでは皆さん貴賓席へどうぞ!」

 ……なんてことだ。男に気を許した結果がこれか……



 ぞろぞろと出て行くゲスト四人は、薔薇の館を出たところでまた歓声攻めに合っている。

「次は選手紹介に移りますので、スタンバイお願いしまーす」

 カメラが回っていないちょっとした空白の時間に、由乃さまはここにいる十四名に呼びかける。
 ……でも。
 先程のアリスさんが残していった衝撃の一言のせいで、私に不本意な視線が集まっている。
 やっぱり会わなければよかった。
 親切にウサ耳なんて付けるんじゃなかった。
 どんなに女性の心がわかっても、奴は男として育ってきた上に生物学上も男なのだ。ああいう発言をすれば邪推されるのがわかっていない! 噂好きの女の子達がたくさんいるところであんな発言すればどうなるかくらいわかれ!

「……アリスが趣味なの?」
「違います!」

 皆を代表したような由乃さまの素朴な疑問に怒鳴り返したところで、科学部の裏方スタッフが「中継入ります」と言った。



「――はい、それでは本戦出場者の紹介です! 長くなるのでコメントはいただきませんのであしからず!
 まずはこの人、前回優勝者の紅薔薇さまこと福沢祐巳さん! 最強の呼び名で有名な彼女が今回も優勝するのか!?
 前回二位! 最強の白薔薇ブック使い、白薔薇さまこと藤堂志摩子さん! 今度こそ祐巳さんに雪辱なるか!?
 前回三位! 私こと黄薔薇さま、島津由乃! 引きの良さには自信があります!

 次に、予選を勝ち抜いてきた方々の紹介です!

 堂々の一位通過、黄薔薇のつぼみ有馬菜々! 前大会の本戦で白薔薇さまと当たって初戦敗退! 今度こそがんばってほしい!
 二位通過、田沼ちさと! 知る人ぞ知るおいしいところを持っていく達人です!
 三位通過、紅薔薇のつぼみ松平瞳子ちゃん! 出資者の一人でもあります! 今回はブック内容をガラリと変えて優勝を狙います!
 四位、江守千保さん! 前大会で予選落ちしましたが、今度は堂々の本戦出場です!
 五位、井川亜実さん! バレンタインイベントで白薔薇さまのカードを手に入れた人です!
 六位、白薔薇のつぼみ二条乃梨子ちゃん! 唯一予選で紅薔薇さまに挑戦し勝ち抜いた猛者です!
 七位、ラッキー7桂さん! もう影が薄いなんて言わせないっ、皆さん今日は彼女の名前を憶えて帰ってください!
 八位、細川可南子ちゃん! バスケ部期待の二年生は、なんと最近カードを始めたばかり! その才能は経験を超えるのか!?
 実行委員より特別枠で出場、高知日出美ちゃん! 実行委員が考えた最強ブックを引っ下げて今回のダークホースとなるのか!?

 そして皆さんお待ちかねの、この人達!

 ふらりと現れては名だたる強者を打ち破る、未だ無敗の仮面のお二人! 紅薔薇仮面と白薔薇仮面! なお彼女達は『負けたら仮面を外す』という公約をしております! 果たして彼女達の麗しき素顔に敗北の二文字を刻むことができるのか!?

 以上十四名、第二回ルルニャン女学園カードゲーム大会本戦を開催いたします!!!!」



「ふう……」

 やはり才能なのか、淀みなく駆け足で進行をこなした由乃さまは、マイクをテーブルに置いて椅子に身を投げ出す。その途端、私含む出場者十四名とスタッフから拍手が起こった。
 司会二度目の素人とは思えないほど堂々とした司会者ぶりは、拍手を送るに値する。ちなみに私は、カードには興味どころか嫌悪しかなかったので、前回のことはよく知らない。
 が、由乃さまの司会っぷりを見るだけでも、ちょっとだけ参加する意義はあったと思う。惜しいことをした。

「お疲れ様。はい、お水」
「汗」
「(ふきふき)」
「なんか甘い物」
「クッキーあるわよ」

 付き人と化している真美さまを顎で使いながら、由乃さまは体力回復を図る。ハイテンションで駆け抜けたので消耗もすごいらしい。夏だし。
 スタッフの「中継入ります」の声に合わせ、今度は真美さまがマイクを握る。

「――それでは抽選会を始めます。まずは紅薔薇さま」
「はい」

 呼ばれた祐巳さまは、真美さまの前に立つ。

「カードホルダーを返上して、カードを引いてください」

 祐巳さまはポケットからキラリと輝くシルバーのカードホルダーを出すと、それを側に控えているスタッフに渡した。
 そしてダンボールを切って作ったくじの箱に手を突っ込み、番号の書かれたカードを引く。外にはその様子を固唾を飲んで見守る多数の気配がある。まるで神聖な行為でも見守るような感じで。

「八番です」

  わーーーー!

 なんの歓声なのかはわからないが、祐巳さまが引いたカードをカメラに見せただけで観戦者達は盛り上がる。
 志摩子さま、由乃さま、と紹介順にカードを引いていき――有馬菜々さんが引いたところで、違う声が上がった。

「……二番です」

 二番――それは、今までバラバラに埋まっていた対戦表の一枠が決まった瞬間だった。

「あら、また菜々ちゃんと?」

 菜々さんは、よりによって二番を引いた。前回も初戦で戦いやぶれた白薔薇さまこと志摩子さまの隣に、自身の名前が記される。

「……はぁ」

 がっかりと肩を落とす菜々さん。キツイだろうな、と同情はするものの勝負は無情。やはり強い人とは後で戦いたい。まだ引いていない人達は私と同じ心境だろう。
 一枠は危ないところが埋まってしまったが、もう一枠もまずい。七番はダメだ。私は祐巳さまと勝負したことはないが、やったことがある人は口を揃えて「あれは勝てない」と言うのだ。やはり最強の噂は噂止まりではないのだろう。
 次々と組み合わせが決まって行き、ついに予選最終通過の私が引くことになった。
 七番は来るな、七番は来るな、七番は来るな――
 念じながら引いたそれは……

「三番です」

 ラッキー7桂、というふざけているのかいじめなのかよくわからない名前の隣に、私の名前が並んだ。



 そして、最後の最後にまた歓声が上がった。

「ふーん。祐巳ちゃんとか」

 くじを引くことなく残った最悪の七番枠に入ったのは、白薔薇仮面だった。(ちなみに私は、ついさっき声を聞いて正体に気付いた。仮面のお二人は学園祭で会ったあの方々だろう。そして私が気付くのに、私以上に付き合いの長い山百合会面々が気付かないはずがないと思う)
 最強の呼び声高い祐巳さまと、無敗記録保持者の仮面二人の片方・白薔薇仮面。
 四回戦目は注目カードだ。



 早速一回戦が始まる。
 前大会二位、祐巳さまのライバルと言われる志摩子さま。
 特殊能力系の白薔薇系譜を意のままに操る非常に高度なブックを得意とする。劣勢が一気に引っくり返る様は何度見ても華麗で、相手に一瞬の油断も許さない(かわら版知識1)。
 一年生ながら黄薔薇のつぼみである有馬菜々さん。
 粘り強い三色混合ブック使い。基本を踏まえているがゆえに、どんな相手でも並以上の戦いが可能。手札が揃った時の爆発的な攻撃型布陣は一撃必殺の威力がある(かわら版知識2)。
 この二人は因縁があるのか、初戦から前回と同じ組み合わせだった。

「……あっ!」
「白薔薇ブックで来ると思った? 残念ながら違うのよ」

 勝負は二つのブックを選ぶ段階で決していた。前回の雪辱を晴らす気だったのか白薔薇キラーを組んでいた菜々さんの裏を掻いた志摩子さまのブックは、紅と黄の基本強化型。
 志摩子さまは終始余裕の笑みを浮かべたまま軽々と菜々さんを破り、早々に一勝目を上げた。

「勝者、白薔薇さま!」

 敗れた菜々さんの姉である由乃さまは、それら一切の感情を捨てて笑顔で叫んだ。意外とプロ根性があるのかも知れない。
 上がる歓声が収まるのを待って、お約束の勝者インタビューに入る。

「なんだか呆気なく決まっちゃいましたね」
「そうですね。ブックの相性が良かったみたいで」
「察するに紅と黄の二色ですね? すると、前大会で猛威を振るった白薔薇ブックはもう片方に?」
「うふふ。いずれわかると思います」

 ……やはり志摩子さまのブックは、その辺の一般生徒とはレベルが違う、という感じはしたが……

「さすが」

 いつの間にか私の隣にいた祐巳さまがつぶやく。ああ、こうして話すのも久しぶりだ。祐巳さまはお変わりなく可愛いなぁ。
 ――なんて、私のキャラじゃないか。

「なんだか志摩子さまらしくないブックですね」

 特殊能力が得意……という評判の割には、普通と言うか、基本と言うか。なんだか誰にでも組めそうな印象があった。

「そうかな? 私はあのブックは志摩子さんの経験の集大成って気がしたんだけど」
「……そうなんですか?」
「うん。誰でも簡単に組める、って思った?」
「はい」

 躊躇なく素直にうなずくと、祐巳さまは笑った。

「だろうね。それが罠なんだよ」
「罠……ですか」
「うん。あのブックは数枚のカードを使うだけで、戦法を変えられるのよ。白薔薇系みたいに特殊能力で戦ったり、基本のまま戦ったりね。見せなかっただけでもう二つくらいありそう」
「白薔薇系が入ってないのに、特殊能力で戦うんですか?」
「それが罠なの。入ってないからって油断してたら、白以外の持つ特殊能力で攻撃される。あれはかなり手強いよ」
「…………」
「菜々ちゃんが得意の三色使ってたら、良い勝負できてただろうね。でもそれでも勝てなかったと思う。白薔薇キラーとしては完璧なブックだったのに残念だね」

 経験の浅い私にはよくわからないが。

「菜々さんの運が悪かったということはよくわかりました」
「そ、そうだね……突き詰めるとそうなっちゃうんだろうね……」

 ……でも、私もあまり運はよくないかもしれない。
 次の勝負に勝てたら、今度は私が志摩子さまと戦う番なのだから。



 そして二回戦目。
 三番を引いた私と、四番を引いたラッキー7桂さまが、大会用に用意されたテーブルに着く。

「どちらですか?」

 スタッフの一人が、私が提出していた二つのブックを入れた封筒を見せる。
 1と2。
 これを選んだ瞬間、勝敗は大きく変化してしまう。
 かつてバスケの試合で経験した、2点差残り10秒ほどの、ギリギリの緊張感に似たものを感じる。
 リバウンドを奪って、敵マークを引き付けてノーマークにしたシューターにパスをして、そして――

「こっちで」

 2の封筒からカードを出し、それを切る。
 迷い出したら切りがない。こういう時は直感を信じるのみ。
 前を見ると、ラッキー桂さまもカードを選び、それを受け取っているところだった。
 なんだかあまり特徴のない人だ。え、と……桂さま、だっけ?

「よろしくね」
「こちらこそ」

 目が合ったので挨拶を交わし、…………横を見た。

「や、やめてくださいよっ。いくらなんでもやりすぎですっ」
「えー? だって落ち込んだ女の子を見たら普通慰めるじゃない?」
「…………」
「だったら太股撫で回してる理由も教えてくださいっ。私には落ち込む女の子の心の隙間に付け込んでるようにしか見えませんからっ」
「ただのスキンシップだよ」
「自分の妹にしてくださいっ」
「…………」

 敗者席でどんより雨雲をまとっている菜々さん。その隣に陣取り肩に手を回す白薔薇仮面。全身の毛を逆立てる勢いで小声で抗議する猫の由乃さま。
 バシャバシャと決定的瞬間を無遠慮に撮りまくる蔦子さま。進行したいがこのおいしい場面を逃していいものかと迷いつつもメモを取る真美さま。
 注目する皆。カメラを抱えた子まで視線を釘付けだ。

「……いい加減にしなさいよ?」

 ひぇっ。
 誰かが叫んだような、誰もが叫んだような。
 紅薔薇仮面が静かに発した氷点下の一言に、白薔薇仮面の動きが止まった。というか、誰もが凍りついた。

「や、やだなぁ冗談よ冗談。うん。志摩子、一回戦突破おめでとう」
「菜々ちゃんを慰めてあげてください。心のままに」
「…………」

 志摩子さま、笑顔ですごく怒ってる……
 ――そんな一悶着があったものの、「中継入ります」の声に皆が我に返り、何事もなかったかのようにそれぞれの役目を果たすべく動き出した。

「二回戦! 細川可南子ちゃん対ラッキー7桂さん!」

 マイクを手に司会役に戻った由乃さまが、高らかに宣言した。沸き起こる拍手と「カツラさんって誰?」という疑問の声。

「バスケ部1の身長と涼やかな性格が一年生を中心にヒットしている可南子ちゃんは、かつて薔薇の館にお手伝いに来たこともあります。最近になってカードを始めたそうですが?」
「ええ、まあ」

 マイクとカメラを向けられて、私は当たり障りなく応えておく。

「もしかして副賞狙いですか?」
「ご想像にお任せします」
「もしやアリスの唇を…!?」
「絶対ない!」
「――はい、ありがとうございました!」

 強い拒絶をさらりとかわし、由乃さまのマイクは私の向かいにいるラッキー7さまに向けられる。

「面白いリングネームですね!」
「誰が名付けたんですか? 私の名前は――」
「はい、ありがとうございました!! 皆さん今日はラッキーさんのフルネームを覚えて帰りましょうね!!」
「え、まだ名乗ってな」
「それでは第二回戦スターーーーートぉ!!!」
「…………」

 ……公開式のいじめだろうか?
 勝負の前から負けたような顔をしているラッキーさまと私は、切っていたカードをテーブルに置いた。



 早速五枚を引いて、陣を整える。
 ……ふむ。手札は悪くない。

「おおっと、これは! 可南子ちゃんは黄薔薇中心のブックのようです!」

 場に出された「バスケ部スター」と「負傷のランナー」を出したことで、由乃さまは早々に私のブックを見抜いていた。


 ――035 通常  3年生 バスケ部スター  HP650 攻撃750 防御600 
 バスケットボール部部長。影は薄いが身体能力はもちろん高い花形スター。目指せ全国制覇。がんばれルルニャンバスケ部。

 ――057 通常  2年生 負傷のランナー  HP500 攻撃550 防御550
 不幸な陸上部部員。体育祭で足を負傷し痛い想いをしてリレーに出られなくなったばかりか、とある人物に絡んだあげく「つべこべ言わずに、さっさと救護テントへ行け」と叱られた。特殊能力「大事なところで出番なし」は、攻撃するたびに自分のHPが100ずつ減っていく。


「『負傷のランナー』は意味がないどころか不利になる特殊能力を持っていますが、特殊能力を持っているから回避できる罠や特殊能力が多々あります。黄薔薇系譜では貴重な特能持ちだと言えます」

 真美さまが冷静にカードの解説をする。

「そうなんだよね。この能力値で特殊能力持ちは、かなり使えるカードだと言えるよね」
「ただ特殊能力のせいで長くは使えませんから、中盤か終盤で使うのがセオリーでしょうか」

 司会二人がそんなことを説明して、ラッキーさまの方へとカメラ指示を送る。

「対するラッキーさんは……おぉ、紅と黄の基本強化系です!」
「黄薔薇は高能力の基本型、紅薔薇との混合は黄薔薇を活かすために更に基本を強化した型です」
「ということは、可南子ちゃんが不利?」
「はい、多少不利です」

 紅黄混合か……確かにまともにやり合えば、ちょっとキツイかも知れない。


 ――010 通常  美術部デコボコ姉妹  HP450 攻撃500 防御450
 美術部部長とその妹。姉より妹の方が背が高い逆転姉妹。逆転してても仲は良い。褒められると気分が良くなる特殊能力「賛辞要求」は、場に出ている通常・幹部生徒を一枚退学にすることで、そのカードのHPを除く全能力2分の1を吸収する。姉妹には使用不可。このカードは姉妹にすることができない。

 ――034 通常  3年生 ルルニャンの獣  HP500 攻撃600 防御400
 陸上部部長。ゴールへと躍動するその姿はまさに獲物を狙うチーター。特殊能力「誰よりも速く」は、どんなカードよりも真っ先に攻撃する。


「チーター出てますね」
「あのカードは攻撃順位が自動的に一番になってしまうので、たとえば白薔薇さまのような1枚目無効化のカードが出ているとほとんど無効化できます」
「でもこれも特殊能力なので、黄薔薇系譜では貴重な特能持ちだと言えます」
「個人的にカッコよくて好きです」
「私もです。去年卒業してしまったことが惜しまれます」
「惜しい人を無くしましたね」
「まったくです。……出番あれだけだったけどね」
「一瞬でも舞台の中央で輝いただけいいじゃないっ!」

 司会者達の個人的な好みの暴露に……えっと、ラッキーさまだっけ?が激しく突っ込みを入れたところで、ゲームスタート。



「総攻撃力が低いラッキーさんから先攻です」
「互いの伏せカードが気になりますね」

 由乃さま達がそんなことを言っている間に、泣きそうな顔でラッキーさま?がカードを一枚引いた。

「癸械掘愧戮譴討たホープ』を呼び出し、美術部の特殊能力発動! ホープを退学にして能力アップ! チーターで向こうの陸上部を攻撃してターン終了!」

 なんだか自棄になっているような雰囲気をまといながら、ラッキーさま?は早々にターンを終了させた。
 ふむ……
 スタッフがホワイトボードに現在の戦況と、増えた美術部の能力値と減らされた「負傷のランナー」のHPを書き込む。これで「負傷のランナー」は50減らされてHP450だ。

「これはイケニエ作戦ですね」
「ですね。呼び出すと同時に特殊能力のイケニエにし、美術部カードを無敵の戦士に仕上げる戦法です。類似で有名なのは『盗撮ちゃん』のコンボですね」
「美術部強化って地味ながらも結構キツイんだよね」
「そうなんですよね。でもカードを犠牲にパワーアップしてる以上、犠牲にするカード数に比例して、そのカードが倒れた時のダメージは深刻です」

 司会の説明を聞きながら、私も一枚引く。
 ……うーん……
 相手の美術部は、現在のところ攻撃750、防御675だ。潰すなら早めにやっておいた方がいいだろうか?
 …………
 予選もそうやって勝ってきたんだ。今更怯んでいたって始まらない。
 私のブックは完全な攻撃型。罠に気をつけて相手のカードを退学にするのみだ。

「カードを一枚伏せて、補助『ロザリオ』発動。『バスケ部スター』と『負傷のランナー』を姉妹にします」
「おおっ、来た来た!!」
「黄薔薇の姉妹化は、能力値がとてつもなく高くなります」

 これで黄薔薇系譜の姉妹の攻撃力は1300。防御も1150で、そう簡単には負けないカードになった。

「更に『未来の黄薔薇幹部』を出し、姉妹と未来幹部で相手の美術部を攻撃」

 これで美術部は退学、と。

「可南子ちゃん、美術部コンビを瞬殺! その様はあたかも女子高生が園児辺りにカツアゲをするかのごとく大人げない勝負の無情さを醸し出しております!!」
「立派な身長と瞬殺ですね」

 園児にカツアゲはないだろ三つ編み。今身長関係ないだろ73。

「ターン終了です」
「私の番ね」

 ラッキー……さま?は、カードを一枚引き、それをそのまま出した。

「白薔薇系譜!?」

 ……え? 三色なの?

「これは意外! ラッキーさんは三色混合ブックを組んでいました!」
「事前サーチでは何もわかりませんでしたからね、彼女のことは」
「ははあ、誰に聞いても『知らない』とか『記憶にない』とか『うっすら憶えてるけど記憶があやふや』とか言われていたそうですね」
「忘れられる、って……怖いですよね……」
「ええ……一時期志摩子さんが怪しくなってましたからね……いやいつとは言いませんが……」
「祐巳さんが初めて薔薇の館に来た頃(一巻)は、由乃さんがアレでしたね?」
「あれはあんまりな出番の少なさでしたね。いくら病気だからって……令ちゃんなんてダンスまでして目立ったのに……」
「薄幸の美少女でしたものね」

 なんか思い出話になってるけど……仕事してくださいよ。
 ……って、ダメだダメだ。
 司会者達は最初から我が道状態だからどうでもいいとして、私まで対戦相手を忘れてしまったら勝敗どころの話じゃなくなってしまう。
 誰も彼もが忘れてしまっても、少なくとも私だけは勝負が決するまで忘れるわけにはいかない。
 ――それにしても。
 最近カードを始めたばかりの私は、白薔薇系譜はあまりよく知らない。特殊能力が本当に特殊過ぎて初心者向きではない上に、ちゃんと扱えるプレイヤーも少ないのが原因だ。
 なので、白薔薇カードはまともに見たことがない。わかりやすく使えるものならだいたいわかるけど……
 対戦相手が出したカードは……癸僑粥△。玄人ぶって見栄を張らずにマニュアルを捲ってみよう。


 ――064 通常  2年生 幻の歌姫  HP300 攻撃200 防御300
 2年の三学期終了とともに、海外に留学してしまった歌姫。だが純粋すぎるその歌声には未だファンは多く、信心深い者は神の存在を感じることができるという。特殊能力「聖恋」は、相手の場にいる全てのカードの特殊能力を封じる。このカードが場に出ている限り常に有効。


 ……能力封じ? でも私のブックは黄薔薇系譜中心だから、元々特殊能力を持っているカードは少ない。あまり意味がないような……

「懐かしや『妹にしたい一年生ナンバーワン』の称号……」
「そういうのもあったね。今ではこんなだもんね。だいたい汚れかトラブルメーカーか噛ませ犬か暴走役だもんね。あはは」
「あはは。……真美さん後で校舎裏付き合ってね?」
「丁重にお断りいたします」
「――もう一枚、カードを出します」

 真美さまも場に慣れたのか饒舌に司会を務め、その司会二人がなんだかギスギスした思い出話に没頭している中、対戦相手は「忘れられるのは慣れてるわ」と諦めがついたのか気丈に振る舞い出す。
 もう一枚も……白薔薇系譜か。


 ――088 通常  聖書朗読クラブの皆さん  HP200 攻撃0 防御400
 聖書朗読クラブの皆さん。清い心と清い空。セーラーカラーを翻さないように。顔だけで振り返るなんてとんでもない。正しい精神を身につけるには身だしなみから正しましょう。特殊能力「聖書朗読」は、特殊能力を持たない通常・幹部生徒のHP含む全能力を半減させる。このカードが場に出ている限り常に有効。呼び出し条件は自陣に白薔薇系譜が一枚出ていること。このカードは姉妹にすることができない。


 ……なんてことだ。これはまずい。
 特殊能力のない生徒は全能力半減。注書きに書かれていないので姉妹も有効だから、私の二枚のカードは半減されてしまった。代わりに、これも注書きされていないから、自陣も有効範囲に入るものの……攻撃型の陸上部部長も特殊能力持ちなので、対戦相手の手札は全て半減から除外されている。
 それに歌姫もいる。特殊能力を持っていれば聖書朗読クラブの影響は受けないが、しかし特殊能力は封じられる。
 特殊能力を持っているカードは、大概が各系譜の平均より能力値が低めに設定されている。そりゃ、半減されたカードよりは強いかも知れないが……

「――だいたい黄薔薇革命起こしたのって、私じゃなくて真美さんのお姉さまじゃない! どうして私が元凶みたいに言われなきゃいけないの!? どうして他人様の事情を無遠慮かつ無責任に記事にするのよ!? なんでリリアンの生徒がそこまで大っぴらにモラルが欠落したことができるわけ!?」
「お姉さまは今関係ないでしょ!? 元を正せば、妹が姉にロザリオ突き返すって行為そのものが異常なのよ! 仮に由乃さんが山百合会のメンバーじゃなくてもあんな前人未踏なことをされたら新聞部は記事にするわよ! その先の黄薔薇革命は由乃さんやお姉さま云々の前に、後追いをした本人達の問題よ!」
「そうよ! バカじゃないの!? 芸能人の結婚に触発されて自分も結婚しようとか離婚しようとか、って考えるのと何がどう違うの!?」
「そうでしょ!? そうなのよ! 不都合は何もかもマスメディアが悪いわけじゃないわよ! むしろその情報をどう受け取るか、読者側がどう捉えるかが問われるべきなのよ! この情報化社会で一々情報に振り回されててどうするのよ! 自分を持ちなさいよ!」

 ……というか、なんかケンカ……意気投合?してる人達がいるし。なんの話をしてるんだ司会者達は。仕事してくださいよ。

「…………」
「……あ」

 突然、すっと対戦相手が立ち上がり、由乃さま達に近づいていく。
 何をするかと見ていれば――

 スポッ キュッ

 なんと、その人は真美さまの猫耳付きヘアバンドをスポッと奪い、自分の頭にキュッと装着して席に戻ってきた。

「…!!」
「……!!」

 司会者二人は気付いていない。普通気付くだろうに。……やっぱり公開式のいじめなんじゃなかろうか。

「……似合ってますよ」
「……ありがとう……!」

 そのアクションにどう反応していいのかわからなかったので場繋ぎ程度の適当なことを言うと、まるで泣き笑いのような顔で微笑まれてしまった……
 というか、本当にこの人は何がしたかったんだろう?
 猫耳付けたかったの?
 いや、まさかね。

「もう向こうは放っておいて、さっさと勝負つけちゃいましょうよ」
「うん、うん……そうだね……そうだね……!」

 なんだか嫌に嬉しそうだ。涙ぐんじゃって。
 ……まあ、なんか、なんとなく、気持ちはわかるけど。私も最近は出番が……いやいや、今はそんなことはどうでもいい。
 たとえこの先なにがどうなろうと、今だけは私達が主役なのだから。



「陸上部部長と歌姫で未来幹部を攻撃、撃破。カードを伏せてターン終了」

 対戦相手の猫耳の人は、能力半減になっている未来幹部をあっさり退学にした。

「やったぜラッキー! クリスタル製の高級灰皿で愛人を殴った上にまだ生きてる間にどこかへ埋めるかのような情け容赦のない二連撃!」
「痴情のもつれとは怖いものです」

 あ、司会が戻ってきた。……三つ編みが物騒なこと言ってるけど。
 しかし、なんだか難しくなってきたな。
 白薔薇系譜は、能力値は大したことがない。黄薔薇ならだいたい一回か二回の攻撃で退学にできる。
 だが、怖いのはとんでもない特殊能力を持つカードがあること。場に出ていないからと安心できるものではないのだ。手札にある状態ですら効果を発揮するものもある。
 それが、特殊すぎて使いこなせる者が少ないという理由だ。このカードゲームの基本から逸脱する使い方を要求され、それ以上にある程度の先読みができないと本当に意味がなくなってしまう。
 つまり、この状況。
 私の場には黄薔薇姉妹の一枚(というか一組)のカードが出ているわけだが、たとえ能力が半減されても、向こうの白薔薇系譜を攻撃し、退学にすることは可能だ。
 だが、攻撃されて、退学にさせられてから始まる攻撃もある。白薔薇系譜はそういうカードだ。
 このまま進んでいいのだろうか? 白薔薇のカードはよくわからないし……
 とりあえず一枚引いて、……やはり攻撃しよう。私が使っているのは手を緩めて様子見ができるブックではない。一気に畳み掛ける攻撃型だから。

「『猫マリア様の微笑み』で、カードを二枚引きます」
「あ、罠発動」

 お?
 対戦相手は、一番最初に伏せられていたカードを表にした。


 ――071 特殊  漫画研究会の皆さん  HP200 攻撃200 防御300
 漫画研究会の皆さん。日夜「萌え」と「カップリング」を模索し、飽くなき探究心を己の欲望のまま燃やし続ける集団。同人誌もよろしくね。
 特殊能力「高速模写」は罠として伏せておくことで発動し、相手の出した補助カードをそっくりそのままこのカードに宿すことができる。ただし効果を発動できるのは次の自ターンからで、宿した時から補助として使用するまで、このカードは表のまま罠の場所に設置され続ける。
 このカードは特殊で、通常としても罠としても使用できる。姉妹にすることはできない。
 

 ……へえ、そんなカードもあるのか。おっと、感心してないでとりあえず二枚引いておこう。

「出ましたね、漫研の皆さん」
「いわゆるコピーですね」
「実はあのカードって、組み合わせ次第でコピー以上の使い方もできるんですよ。知ってた真美さん?」
「え、どんな?」
「あのカード、というより、白薔薇の怖いところは……」
「ところは?」
「これ以上は可南子ちゃんにヒントあげちゃうことになるかも知れないんで、ナ・イ・ショ☆」
「わあ思わせぶり。由乃さんのいじわる」
「うふふ。真美さんったら」
「あん」

 真美さまの頬を指でつつく由乃さま。どちらも「なぜ?」と追求したくなるくらい嬉しそうだ。
 で、その棒読みのやり取りはなんのコントですか。
 ……いや、まあ、どうでもいいけど。

「『テニス女王』を呼び出し、テニス部部長と姉妹で聖書朗読クラブを攻撃、退学にします」

 まずは、能力半減の邪魔なあのカードを沈めるべきだろう。あのカードがあったらこっちの基本能力が活かしきれない。

「テニスボールで顔面強襲っ、更に二人組みによる卑劣な袋叩きで哀れ心優しき乙女達はマリアさまの御許へ!」
「あの世では幸せになってもらいたいものです」

 ……なんであの三つ編み猫は物騒なことしか言わないのだろう。病んでるのか? どうでもいいけど朗読クラブは集団で、こっちは姉妹で二人。文章的に袋叩きはちょっとおかしい。……本当にどうでもいいことか。

「これでターン終了です」

 能力半減さえなければ、このまま押していけるだろう。……白薔薇はそんなに甘くないかも知れないけど。

「カードを一枚引き――『ゴロンタもしくはランチあるいはメリーさん』を出します」

 猫耳の人が出したのは、癸坑阿稜鱸薇系譜カード。


 ――090 通常  ゴロンタもしくはランチあるいはメリーさん  HP100 攻撃100 防御100
 猫マリア様の御庭に住まう、様々な名で愛される猫。姉妹同士のケンカもしくはラブラブあるいはロザリオの授受など、振り返るとこの猫がそれを見ている……かもしれない。特殊能力「昼食おねだり」は、自ターンで直前に使用した補助カードを退学の山から手札に戻すことができる。


 ……あ。この特殊能力って……
 
「コピーした『猫マリア様の微笑み』を発動し、カードを二枚引いて猫の特殊能力で漫研を手札に戻し」

 やっぱりそういうことなのか。しかも注書きがないから『お騒がせポニー』のように特殊能力を使ったら退学になるわけでもなく、猫は場に残ったまま。白薔薇は本当に特殊だ。
 うーん……攻められているわけでもないのに、なんだか相手の煙のような攻撃が私の領内を浸食してきているような気がする。

「更に補助として『藤娘』を出します」

 藤娘? 確か……

「あ、出ました白薔薇の特殊コンボ!」
「これって……」
「そう、さっき私が言いかけたやつ!」


 ――073 特殊  藤娘  HP200 攻撃300 防御300
 学園祭にて、各色応援合戦でルルニャン生徒が藤娘に扮装した。艶やかな舞いに会場うっとり。特殊能力「藤の枝」は、場に出ているカードの一枚を手札に戻すと同時に、補助として使われた場合はこのカードをまた手札に戻すことができる。使用は1ターン1回のみ。下げられたカードが通常・幹部なら、そのターンで出すことはできない。このカードは特殊で、通常としても補助としても使用できる。姉妹にすることはできない。


「これで猫を手札に戻します」

 おお……

「コピー、猫、藤娘! この三枚が織り成す永久機関こそ白薔薇の無限量産コピーコンボです!」
「へえ……こんなのもあるのね」
「補助の多いブックが相手だとかなり嫌なものになります。果たして可南子ちゃんのブックはどうなっているんでしょう」
「一色の場合は、補助は多くなりますよね?」
「ええ。ないものを補助で補うのが基本ですから。これは可南子ちゃん不利か? これが三色混合ブックの怖いところです。はっきり言えばそれぞれのいいとこ取りができますから」
「代わりにどっち付かずの中途半端さが目立ちますが?」
「そうです。だからこそ、攻撃用のカードが潰されると途端に弱くなるリスクを秘めています。そして三色のいいとこ取りをした結果、必然的に攻撃用に入れられるカードは少なくなりますし」
「一勝負に使えるのは30枚ですからね」
「白薔薇系譜の欠点は、能力が低いところから来るカード消費量が多いことです。まともに使っていれば目に見えて差が出てきます」
「白薔薇専門のブックがどれほど異色なのかがうかがえます」

 ふむ……確かにそうなるか。

「カードを一枚伏せて、陸上部部長と歌姫で姉妹を攻撃。ターン終了です」

 ……うーん。

「一枚引いて、テニス部部長と姉妹で陸上部部長を攻撃、退学にします。これでターン終了です」

 あっさりとターンを終わらせ、私は相手のカードを睨む。
 これで向こうは、歌姫のみが残っている。
 うまく行けば、次からプレイヤー攻撃に行けそうだけど……

「それにしても、可南子ちゃんが伏せたカードが気になりますね」
「そう言えば、二枚も罠を伏せているのに、まだ一枚も捲っていませんね」
「セオリー通りの幹部殺し『六月の雨』か、もしくは基本型のセオリーのアレかも知れませんね」
「基本型のセオリーと言うと、私にとっては不名誉なアレですか?」
「ええ、アレです」

 …………
 ふざけているようで、やはりさすがは司会者か。由乃さまの読みはどちらの予想も当たっている。
 私が伏せているのは、どちらもセオリー通りの二枚だ。
 ちなみに「アレ」とは、新聞である。


 ――112 罠  ポニー新聞
 ゴシップ、捻じ曲げられた真実、根拠のない推測が満載の新聞。この新聞が巻き起こす事件は、ただ「厄介」の一言。相手陣の特殊効果を持たない通常・幹部生徒を退学にした瞬間に発動可能となり、退学になったカードを自分の手札に加えることができる。唯一、自ターンで使える罠カード。


 簡単に通常カード、それも黄薔薇系譜なら強力なものが手に入るので、結構重宝するのだ。これを加えるのは基本のセオリーでもある。
 バスケだって基礎が大事。捻ったブックも強いけど、基本に乗っ取ったブックが私の性には合っている。基本ゆえに応用も結構利くし。
 ……でも基本はあくまでも基本だし、相手も私の伏せカードは読んでいるかもしれない。

「一枚引いて、『硝子の少女』を呼び出します」

 猫耳の人が出したのは、これも白薔薇だ。


 ――065 通常  2年生 硝子の少女  HP300 攻撃--- 防御400
 演劇部部長。三年生を送る会で011「ドリルっこ」と二人芝居を演じ、派手さはないが繊細な芝居で観客を魅了した。特殊能力「才能を見抜く瞳」は、このカードが相手カードに攻撃を成立させると、防御力を無視してHPのみを半分減らすことができる。ただし攻撃力自体が存在しないので098「竹刀」などの攻撃力アップもできず、このカードでは絶対に退学させることはできない。
 011「ドリルっこ」と姉妹になると攻撃力以外がプラスされ、特殊能力が「才能を見出した瞳」にチェンジする。この特殊能力は相手カードのHPを半分減らす上に、その後攻撃力50の攻撃が追加され、退学させることも可能になる。どちらの特殊能力もプレイヤー攻撃には効果なし。


 ……HP半減、か。本当に特殊なものが多いな。

「硝子少女で姉妹を攻撃、成立すると同時にHP半減。これでターン終了」

 う、うーん……やっぱり攻撃するしかないか。

「一枚引いて、姉妹で硝子の少女を攻撃」
「罠発動」

 同じことの繰り返しになっていた私の行動に、猫の人の声が割って入った。


 ――117 罠  フロム・イタリー
 ルルニャンの修学旅行はイタリア。高校生活最大のイベントだが、旅先で体調を崩しちゃったり、料理のボリュームがありすぎて残しちゃったり、迷子になっちゃったり、後先考えず斜塔に登って怖くなっちゃったり、美術館の絵をじっくり見られなかったり、ゴンドラ代でぼったくられちゃったり、旅先で出した葉書を追い抜いて帰国しちゃったり。きっと半数以上の生徒がなんらかの後悔を残すものなのだろう。
 特殊能力のない通常・幹部生徒の攻撃を仕掛けてきたカード一枚を無効化した上に、攻撃半分をそのカードのHPに返す。姉妹の場合は、特殊能力があっても返すことができる。


 攻撃を半分返す!?

「お、意外……でもない伏せカード、『フロム・イタリー』出ました!」
「比較的よく使われるカードですね。硝子少女でHPを半減されてるので、可南子さんの姉妹はこれで退学になります。……ところで由乃さん、私の猫耳どこ行ったか知らない?」
「え? 知らないけど……山百合会の備品なんだから、紛失したら自費で弁償してよね」
「え、そうなるの? ……いくら?」

 あれってわざわざ買って用意したのか……というか、目の前の人が付けてるじゃない。紛失してないですよ。というか、気付け。
 まあ、とにかく。
 私は姉妹カードの一組を退学にし、テニス部部長で『硝子の少女』を退学にしてターンを終了した。こういうこともある。

「しかしなかなかの好勝負ですね」
「まさに一進一退」
「でも可南子ちゃんの方はほとんど基本で攻めてますから、カード消費量を見てもラッキーさんが不利でしょうか」
「白薔薇系譜がことごとく退学になってますからね。ブック内容の相性が悪いみたいです」

 ――その後、じりじりと強引に押して行く私の攻めに、猫の人はカードもHPも削られ、ついに勝負は決した。



「勝者、細川可南子ちゃん!!」

 由乃さまは私の腕を掲げて、勝利宣言した。
 ……しかし、なんとも地味な決着だった。というか勝負そのものも地味だった。それなりに色々知的な戦法も出たと思うんだけど……
 猫の人は、いつの間にか薔薇の館から姿を消していた。――いつの間にか私の頭に猫耳を付けて。
 だが誰も気に止める者もなく、そのまますぐに三回戦へ。
 勝利の感慨も感動もあったものじゃない。



 三回戦目は、田沼ちさとさま対井川亜実さん。
 私以上に強力な黄薔薇ブックを用いたちさとさまに、亜実さんは完全な白薔薇ブックで対応。
 特殊能力でちさとさまはプレイヤーHPを減らされるものの、最後の最後、残りHP100以下のところでちさとさまは亜実さんを捕まえることに成功。黄薔薇の高能力を爆発させて1ターンで1000のHPを削り取り勝負あり。
 やはり本戦出場者ともなると、ブックの内容に大きな差がなければ実力はほぼ僅差。あとはカードの引きという運の要素で勝敗が左右してしまう。
 ちさとさまの猛攻と、白薔薇系譜で巧みな攻防で魅せてくれた亜実さんに、健闘を称えた割れんばかりの拍手が送られた。
 私の時にはなかった。そう……誰も見ていないがごとく……勝者インタビューもなかったし……
 果たして私が原因なのか、対戦相手が原因なのか。
 強いて文句を言う気もないけど、あんまりな待遇だな、と思った。



 四回戦目。それは一言「波乱」だった。
 10分の休憩時間ももどかしい、前回優勝者の祐巳さまと負け知らずの白薔薇仮面の対戦カード。
 急ぎトイレを済ませる者、どちらが勝つと予想する者、二人のブックを予想する者。
 様々な声が上がる中、由乃さまは四回戦目をスタートさせた。

「「えっ!?」」

 誰もが息を飲んだ。それも何度も。
 祐巳さまと白薔薇仮面のブックは、どちらも三色混合ブック。しかも内容までほぼそっくりだった。
 セオリーを無視した読み合いに、二人の場には何度もカードが存在しないという異常な陣形を見せる。
 二回も引き分け(カードの山が双方共に尽きる)をこなし、周囲に安堵なのか落胆なのかの溜息を吐かせ、ついに雌雄が決した。

「勝者、白薔薇仮面!」

 手に汗を握る攻防の末、白薔薇仮面が辛勝を納めた。
 前回優勝者、まさかの初戦敗退……と言う者は、いなかった。
 それだけ二人の実力は均衡し、本当にどちらが勝ってもおかしくなかったし、また前大会を含めても高レベルな勝負だった(らしい)。

「――二度も引き分けした末に勝利を勝ち取った感想は?」
「――いやぁ……紅薔薇さまとは二度とやりたくないね。さすがは最強だわ。何度も負けると思ったよ。え、勝利の感想? ……特にないかな。とにかく疲れちゃった」

 そう語る白薔薇仮面は、菜々さんに手を出したり試合前の余裕も何もあったものではなく、冷や汗だらだらだった。由乃さまもテンション上げっぱなしで司会をしていたので汗だらだらだった。

「――前回優勝者、予想外の一回戦負けですが?」
「――あはは。負けちゃった」

 そう語る祐巳さまは特に悔しがることもなく、汗一滴もなく笑顔すら浮かべていた。どっちが勝ったんだかよくわからない対照的な表情だった。



 五回戦目は瞳子さん対由乃さま。一回戦に続く山百合会メンバー同士の勝負だ。
 意外や意外、瞳子さんが使用したのは祐巳さまが前大会で組んだような紅薔薇一色の異色ブック。確か前は負けないための紅薔薇ブックを組んでいたらしいけど、今回はまた違うようだ。
 由乃さまは、黄の比重が少ない三色。どちらかと言うと紅と白の二色のような感じだ。対基本用の基礎のようなブックだった。
 まるで隙間を縫うような鮮やかなカードさばきで、力押しではない意外な形の勝利を手にしたのは由乃さま。
 でも勝利を納めても、由乃さまは司会の仕事で早くも疲れているらしく、あまり元気はなかった。



 六回戦目は、江守千保さん対乃梨子さん。
 両方とも得意の白薔薇ブックを使い、複雑で高度な特殊能力戦を展開した。
 学年トップレベルの成績を誇る乃梨子さんらしい知的な攻め方に、千保さんは次第についていけなくなり、気がついたら勝負が決まっていた。



 七回戦目、シード枠。第一試合最後の勝負は、紅薔薇仮面対高地日出美さん。
 紅薔薇の名が示す通りの紅薔薇中心の三色混合ブックに対し、実行委員代表の日出美さんが選択したのは黄薔薇中心の三色。
 これは本当に、日出美さんの運が悪かった。いや、紅薔薇仮面の運が良かったと言った方がいいかもしれない。
 2ターン目で紅薔薇仮面が早々に出した祐巳さまのカードのせいで、日出美さんはあっと言う間にプレイヤーHPを削られて、何かをする間もなくスピード勝負になってしまった。



「第一試合終了!! ここで10分の休憩とともに、勝ち抜いた七名の選手を紹介します!」

 一通りの七試合が終了したところで、由乃さまの声に合わせてカメラは勝者席(対戦前に用意されていた控え席を作り変えた)に座る私達へと向けられる。

「初戦を勝ち抜いた白薔薇さま、藤堂志摩子さん! 黄薔薇のつぼみ有馬菜々と勝負し、ブックの相性で楽々勝利を得ました!
 二回戦目、細川可南子さん! えっと……まあなんか誰かに勝ちました! あといつの間にやら猫耳付けてます!」

 おい。なにその適当な説明。あと対戦相手を忘れてる……いや、私の記憶ももう微妙だけれど。猫の人だっけ?

「三回戦目、田沼ちさとさん! 井川亜実さんとの勝負模様は観客を沸かせました!
 四回戦目、白薔薇仮面! 二度に渡る引き分けを経て、辛くも前回優勝者の福沢祐巳さんを撃破! どちらが勝ってもおかしくない好勝負でした!
 五回戦目、わたくし島津由乃! 紅薔薇のつぼみ瞳子ちゃんを華麗にやぶりました!
 六回戦目、白薔薇のつぼみ二条乃梨子ちゃん! 江守千保さんとの白薔薇ブック対決は、はっきり言って複雑すぎて実況しきれませんでした! でも白薔薇ファンはきっとわくわくしたことでしょう!
 七回戦目、紅薔薇仮面! 実行委員会から出場した高地日出美さんは、はっきり言って運が悪かった! いえ、これも紅薔薇仮面の引きの良さの結果なのかも知れません!

 以上七名! 血で血を洗う激戦の末に、果たして頂上へ立つのはいったい誰なのか!!」

 と、由乃さまはダダッと開け放たれた窓から身を乗り出す。

「猫耳イェーーーー!!」

  猫耳イェーーーー!!

 ……え? そのいきなりな猫耳コールってなんですか?
 どうやら由乃さま、状況説明をしている間に異様にテンションが上がったらしい。……だから疲れるんだと思いますよ。



「それでは、一段落着いたところで貴賓席の皆さんにコメントをいただきましょう。中継繋いでください」

 ライブ中のロックシンガー張りにはじけまくる由乃さまの背中を撮っていたカメラマンは、「ふー」と息を吐いてカメラを降ろした。やはり女の子が担ぐには重いのだろう。
 ところで。
 実は観客席の方にも何人かカメラマンがおり、この薔薇の館にも小型のテレビが設置されていて、外の様子が常にモニターされているのだ。観戦会場の状況がここからでもわかるように、の配慮である。一々窓から顔を出して確認するのも、ちょっと邪魔だろうから。
 真美さまの指示から遅れて五秒ほど、観客を撮っていた画面には最初に紹介があった四人の招待客が映った。

「はい、現場の敦子です」
「同じく美幸です」

 去年同じクラスだった同級生二人が映し出される。……なぜこの二人がマイクを握っているのだろう。いや、別に不満はないけど。

「妹が負けたのは残念だけれど、どちらが勝ってもおかしくない良い勝負だったわ。勝ち抜いた皆さん、今後もがんばって」

 祐巳さまが負けて多少は怒っているかと思えば、祥子さまは「とても楽しんでいます」という偽りの無い笑顔でそう言う。

「僕は出資はしたけどゲームには興味なくて、今までやってなかったんだ。でも観ていると結構面白そうだね。今度チャレンジしてみるよ」

 柏木という背の高い男が、なんだか鼻につくさわやかな笑顔でそう言う。皆はきゃーきゃー言っているが、私はあまり好きになれそうにない。

「かなりレベル高いんですね……あ、僕はちょっとだけゲームやってます。特に六回戦の江守千保さんと二条乃梨子さんの勝負は見ごたえがありました」

 祐麒さんはやや興奮気味に早口でまくし立てた。あの人の場合、本当に本気でゲーム観戦に没頭していたのだろう。それに勝敗にこだわりがないのか、姉の敗北には特に触れなかった。



 そして、最後に。
 向けられたマイクの先に、リリアンの制服を着たウサ耳の男が映る。

「私も興味深く観戦してます! 可南子ちゃん、一回戦突破おめでとう! 次もがんばってね!」

 ……またやりやがった。
 もし私が勝者じゃなければ、会場を離れることができれば、即座に走って行って奴のアレを、こう、キュッとやってやったかも知れない。キュッと。
 好奇の目を集める本戦会場の私は、頭を抱えることしかできなかった。



 猫耳のふさふさした感触が気持ちよくて、ちょっとだけ昂ぶる心が慰められた。





本日の使用カード

010 通常  美術部デコボコ姉妹  HP450 攻撃500 防御450
 美術部部長とその妹。姉より妹の方が背が高い逆転姉妹。逆転してても仲は良い。褒められると気分が良くなる特殊能力「賛辞要求」は、場に出ている通常・幹部生徒を一枚退学にすることで、そのカードのHPを除く全能力2分の1を吸収する。姉妹には使用不可。このカードは姉妹にすることができない。


034 通常  3年生 ルルニャンの獣  HP500 攻撃600 防御400
 陸上部部長。ゴールへと躍動するその姿はまさに獲物を狙うチーター。特殊能力「誰よりも速く」は、どんなカードよりも真っ先に攻撃する。


035 通常  3年生 バスケ部スター  HP650 攻撃750 防御600 
 バスケットボール部部長。影は薄いが身体能力はもちろん高い花形スター。目指せ全国制覇。がんばれルルニャンバスケ部。


057 通常  2年生 負傷のランナー  HP500 攻撃550 防御550
 不幸な陸上部部員。体育祭で足を負傷し痛い想いをしてリレーに出られなくなったばかりか、とある人物に絡んだあげく「つべこべ言わずに、さっさと救護テントへ行け」と叱られた。特殊能力「大事なところで出番なし」は、攻撃するたびに自分のHPが100ずつ減っていく。


064 通常  2年生 幻の歌姫  HP300 攻撃200 防御300
 2年の三学期終了とともに、海外に留学してしまった歌姫。だが純粋すぎるその歌声には未だファンは多く、信心深い者は神の存在を感じることができるという。特殊能力「聖恋」は、相手の場にいる全てのカードの特殊能力を封じる。このカードが場に出ている限り常に有効。


065 通常  2年生 硝子の少女  HP300 攻撃--- 防御400
 演劇部部長。三年生を送る会で011「ドリルっこ」と二人芝居を演じ、派手さはないが繊細な芝居で観客を魅了した。特殊能力「才能を見抜く瞳」は、このカードが相手カードに攻撃を成立させると、防御力を無視してHPのみを半分減らすことができる。ただし攻撃力自体が存在しないので098「竹刀」などの攻撃力アップもできず、このカードでは絶対に退学させることはできない。
 011「ドリルっこ」と姉妹になると攻撃力以外がプラスされ、特殊能力が「才能を見出した瞳」にチェンジする。この特殊能力は相手カードのHPを半分減らす上に、その後攻撃力50の攻撃が追加され、退学させることも可能になる。どちらの特殊能力もプレイヤー攻撃には効果なし。


071 特殊  漫画研究会の皆さん  HP200 攻撃200 防御300
 漫画研究会の皆さん。日夜「萌え」と「カップリング」を模索し、飽くなき探究心を己の欲望のまま燃やし続ける集団。同人誌もよろしくね。
 特殊能力「高速模写」は罠として伏せておくことで発動し、相手の出した補助カードをそっくりそのままこのカードに宿すことができる。ただし効果を発動できるのは次の自ターンからで、宿した時から補助として使用するまで、このカードは表のまま罠の場所に設置され続ける。
 このカードは特殊で、通常としても罠としても使用できる。姉妹にすることはできない。


073 特殊  藤娘  HP200 攻撃300 防御300
 学園祭にて、各色応援合戦でルルニャン生徒が藤娘に扮装した。艶やかな舞いに会場うっとり。特殊能力「藤の枝」は、場に出ているカードの一枚を手札に戻すと同時に、補助として使われた場合はこのカードをまた手札に戻すことができる。使用は1ターン1回のみ。下げられたカードが通常・幹部なら、そのターンで出すことはできない。このカードは特殊で、通常としても補助としても使用できる。姉妹にすることはできない。


088 通常  聖書朗読クラブの皆さん  HP200 攻撃0 防御400
 聖書朗読クラブの皆さん。清い心と清い空。セーラーカラーを翻さないように。顔だけで振り返るなんてとんでもない。正しい精神を身につけるには身だしなみから正しましょう。特殊能力「聖書朗読」は、特殊能力を持たない通常・幹部生徒のHP含む全能力を半減させる。このカードが場に出ている限り常に有効。呼び出し条件は自陣に白薔薇系譜が一枚出ていること。このカードは姉妹にすることができない。


090 通常  ゴロンタもしくはランチあるいはメリーさん  HP100 攻撃100 防御100
 猫マリア様の御庭に住まう、様々な名で愛される猫。姉妹同士のケンカもしくはラブラブあるいはロザリオの授受など、振り返るとこの猫がそれを見ている……かもしれない。特殊能力「昼食おねだり」は、自ターンで直前に使用した補助カードを退学の山から手札に戻すことができる。


112 罠  ポニー新聞
 ゴシップ、捻じ曲げられた真実、根拠のない推測が満載の新聞。この新聞が巻き起こす事件は、ただ「厄介」の一言。相手陣の特殊効果を持たない通常・幹部生徒を退学にした瞬間に発動可能となり、退学になったカードを自分の手札に加えることができる。唯一、自ターンで使える罠カード。


117 罠  フロム・イタリー
 ルルニャンの修学旅行はイタリア。高校生活最大のイベントだが、旅先で体調を崩しちゃったり、料理のボリュームがありすぎて残しちゃったり、迷子になっちゃったり、後先考えず斜塔に登って怖くなっちゃったり、美術館の絵をじっくり見られなかったり、ゴンドラ代でぼったくられちゃったり、旅先で出した葉書を追い抜いて帰国しちゃったり。きっと半数以上の生徒がなんらかの後悔を残すものなのだろう。
 特殊能力のない通常・幹部生徒の攻撃を仕掛けてきたカード一枚を無効化した上に、攻撃半分をそのカードのHPに返す。姉妹の場合は、特殊能力があっても返すことができる。





【No:2281】へ続く






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