※山百合会孤島殺人、2日目です。死にネタが駄目は人は読み飛ばして下さい。
江利子と瞳子が犯人だという意見がありますね。他にどんな予想が出るのか楽しみです。
●1日目/桟橋到着〜館へ【No:2271】→雨〜聖と江利子【No:2278】→夕食〜最初の事件【No:2280】→可南子と聖〜蓉子の死【No:2283】→可南子、疑心暗鬼【No:2291】→燃える死体〜由乃の最期【No:2297】
●2日目/令の激昂、聖の決断【No:2302】→ここ
<2日目/二条乃梨子/3階廊下>
蓉子さまのお部屋と、聖さまのお部屋から、動かせそうな家具は全て廊下に移動させた。それを使って、聖さまのお部屋のドアを塞ごうというのだ。
提案者は聖さま自身。あの時、疑わなかったといえば嘘になる。でも……。
信じたくなんかない。江利子さまや蓉子さま、それに由乃さまが殺されたなんて。令さまがあんなに取り乱すのも見たくなかった。姿を消した瞳子だって。それに、聖さまが犯人かも知れないなんて。
「乃梨子ちゃん」
聖さまの声。私は部屋の中を覗いた。
困ったような表情を浮かべる聖さまと、可南子さん。聖さまは犯人じゃない、と言い、可南子さんも一緒に残ると言ったのだ。
「志摩子や、祐巳ちゃんのことをお願いね」
「……はい」
「じゃあ、バリケードお願いね。──ごきげんよう」
ゆっくりとドアが閉まる。閉まったと同時に、少し離れた場所にいた祥子さまと祐巳さまがため息をついた。志摩子さんは、ずっと廊下にしゃがんだままだ。
「──祐巳さま。バリケードを……作りましょう」
「うん……」
<2日目/支倉令/資料室>
冷たい。
冷たい。
頬をそっと撫でる。
瞳は濁ったまま。
心臓は動いていない。
両手はだらりと下がったまま。
口は少しだけ開かれて、端から血の筋が一本。
それを舌先で舐めとる。
由乃の味。
由乃の血の味。
ざっくりと裂けた背中。
溢れ出た血液。
凶器は目の前にある。
この大きな日本刀が、由乃の命を奪った。
「由乃」
名前を呼ぶ。
「お姉さま」
あの笑顔はもう見れない。
「蓉子さま」
あの声はもう聞けない。
「……由乃……お姉さま……」
涙は出ない。
枯れたかも知れない。
壊れたかも知れない。
「私は、どうしたら……」
そう呟いた時、気づいた。
強く握られた由乃の右手。
何かを、握り締めている。
「……」
私は、そっと開かせた。
血で汚れた紙。
そこにあったのは──。
「……蓉子も、聖も、仲間よ……」
誰だ。
この文面を書いたのは誰なんだ。
蓉子さまたちを呼び捨てにできるのは、ここに来たメンバーではただ一人。
「お姉さまが……、お姉さまと、蓉子さまたちが、仲間?」
何のことだ。
ただ一つだけ言えるのは、これを書いたのがお姉さまだとして、三人の中で生き残っているのは聖さまだけだということ。
何かの計画があり、三人の中で仲間割れがあったとか?
──聖さまに訊かなくては。
場合によっては、聖さまを殺さなくてはいけない。
犯人である可能性が俄然高いのは、あのお方なのだから。
私は由乃をそっと床に寝かせて、廊下に出た。
「──バリケード……?」
一番奥の部屋は聖さまの部屋だが、そのドアの前には棚や椅子が積み重ねられている。
あれはバリケードなのだろうか。
聖さまは、あの部屋の中にいるのか。
私はゆっくりと廊下を歩く。
右手には、ああ、愛する妹の、私の唯一の女神の血を吸った、日本刀を持って。
<2日目/???/3階のとある部屋>
──処理は終わった。
最初に私の姿を見たとき、この目の前に倒れている長身の少女はとても驚いたっけ。
悲鳴をあげる間もなく、スタンガンで気を失わせた。
異変に気づいたときにはもう遅く、白薔薇さまも今は深い夢の中。
二人で生まれたままの姿になって、まるで獣のように身体を重ねていたわよね。
リリアンの乙女が、はしたない。
そんな二人には、罰を与えなくてはね。
だから眠らせてあげた。
そして、二人の手足を縛ってあげたのは私。
小さく開かれた口に猿轡を噛ませたのも私。
このまま殺すのは簡単。
でも、このまま殺すのは面白くない。
今は、別のメンバーがどう動くかを観察しようじゃないか。
ああ、資料室のドアが開いた。
ミスターリリアンがどう動くか楽しみにしながら、私は自慢の髪型を少し整え、にこりと微笑んだ。
<【No:2392】へつづく>