にゃあ。
鳴き声がして、私はふと足を止めた。
「ランチ?」
そう呼ぶと、彼女は木の裏から顔を覗かせる。
「やっぱり。ごきげんよう、ランチ」
にゃあ。
再び彼女はそう鳴いた。
「祐巳さま」
顔を上げると、笑顔の可南子ちゃんがいた。
「ごきげんよう」
「ごきげんよう」
「祐巳さまは、猫にも好かれるんですね」
「どうやら私の体質らしいね」
「天使さま」
「可南子ちゃんがそう望んだんじゃない」
背中に伸びた翼をぱたぱたと動かして、私は可南子とランチを包み込んだ。
私たちは空を見る。
雲の向こうに見えるのは、青い青い地球。
私を天使に、と願った可南子ちゃんは向こうにいて。
天使となった私の横にも可南子ちゃんがいる。
くすり、と笑って、手を伸ばす。
「おーい、私は幸せだよー」
そっちはどう?
遠い遠い火星より。
青い青い地球の私へ。