◆サブタイトルは「さよなら、絶望姉妹」(こら
あと、真剣に読まないで下さい。ぶれぶれぶれぶれ。
* * *
「ごき
(略)
ある。
このご時勢、何かと物騒な事件が多い。
ほぼ毎週のペースで高校生による犯罪や自殺などが相次ぎ、ニュースも暗いものばかり。それでもリリアンに通う乙女達は明るく過ごしている──はずだった。
たぬ・きねんしす・あん・ぶとぉーん、福沢祐巳。
彼女もまた、まったりほのぼのなマイナスイオンを周囲に撒き散らしながら日々を過ごす天然少女の一人だった。
並木道を歩きながらマリア像を目指す彼女の前に、見慣れない物が銀杏の木からぶら下がっているのを見つけ、それが何なのか理解した途端、「ひょえっ」とおかしな悲鳴をあげてそれに駆け寄った。
「せ、せせせせせ、聖さまっ!?」
銀杏の木の太い枝に結ばれるのは丈夫で使いこなれた縄。片方だけ落ちた靴と、踏み台らしき丸い椅子。白いセーラーカラーは翻さないように、スカートのプリーツは乱さないように、ゆっくりとぶら下がるのがここでのたしなみ。
佐藤聖はだらんと両手足を垂らし、風に吹かれるままにそこでくるくると回っていた。
祐巳は驚きのあまり、その場から動けずにいた。聖はゆっくりと祐巳の方に青白い顔を向け、そこで静止し、そして──。
「死んだらどうする!!」
両目をぐわばと開き、祐巳に向かってそんな言葉を発したのである。
「どうして助けたのよ、祐巳ちゃん」
必死こいて縄を切り落としたってのにその言葉はなんですか、とのセリフを飲み込み、祐巳は聖の顔を見た。
「でも『死んだらどうする』って……」
「し、死ぬ気だったわよ」
「でも」
「いいわよ、私別の木で首つるから」
立ち上がって隣の木に縄を巻き付け出す聖。
その背中を見ながら祐巳も立ち上がると、少し離れて「ふぅ〜」と息をはき、首を左右にコキコキと動かしてからクラウチングスタートの体勢をとった。
「……っ」
ぐん、と加速する祐巳。そして。
「死んだらだめですぅ〜っ!!!!」
「ほぐうぅぇえええぇぇぇ!!!!」
綺麗なフォームでのタックルが聖の背中に入り、丁度輪になっていた縄の真ん中に、聖の首が入ってしまった。
「聖さま、辛いことがあったなら私でよかったらお話を聞きますから、だから!!」
「ぐ、ぐるじい! ゆみひゃん、やめれぇ……っ」
首にくっきりとした痕をつけた聖が、祐巳に向かって怒鳴った。
「死んだらどうする!!!!」
「……死ぬ気、ないんでしょ」
「あ、あるに決まってるじゃない!」
「じゃあ、さっきあのままでも良かったじゃないですか」
「いやいや、あれだと祐巳ちゃんが殺人犯になっちゃうじゃない。私はあくまでも自殺でね?」
「でも、目の前で死なれると夢見が悪いです」
「ていうか殺そうとしたでしょ」
「『高瀬舟』ですよ、聖さま」
「あはは、面白いこと言うねこの狸娘。食べちゃうぞ」
「いざという時は何も出来ない、令さま以上のヘタレのくせに」
「蓉子だな、蓉子から聞いたんだな!?」
「カマをかけてみたんですよっ!」
「こ、こんな駆け引き上手な祐巳ちゃんなんて……。絶望した! 黒狸な祐巳ちゃんの心理作戦に絶望した!!」
地面に額をぐりぐりと押し付ける聖。それを見てニヤリと笑う祐巳。前半と後半の祐巳の性格が違うなんて気にしない。
「聖さま、最近アニメ見てるんですね?」
「だってあのOPエロいんだもん」
「縛ってたりしてますからね」
「ねー」
「死ねばいいのに」
「絶望した!! さらりと笑顔でそゆこと言っちゃう祐巳ちゃんに絶望した!!!!」
白黒反転した空間でわめき散らす聖。
「そうよ。この世の中には絶望することが沢山あるのよ!!」
●祐巳ちゃんに手を出しすぎて、祥子からの視線が冷たい
●たまに出す志摩子の目だけ笑っていない笑顔
●乃梨子ちゃんのせいで薄まる元祖ガチレズの威厳
●静がイタリアから毎日無言電話をかけてくる
●未だに進展しない祐巳ちゃんの妹問題
●ちょっとセクハラしたら加東さんが口を聞いてくれない
●髪を切ったらデコに「誰?」って言われた
●「不感症か」って言ったらマジで殴られた
●予想以上にツンデレだった瞳子ちゃんの性格
「そう、だから私はこの醜くも美しい世界から脱出するのよ!!」
「美しいならいいじゃないですか」
祐巳は微笑んで答える。
「……そ、それはそうだけど、でもこんな世界嫌でしょ? 銀杏じゃない王子が法廷で読みふけっているこんな作品は嫌でしょ?」
「嫌じゃないですよ。それを認めてくれた裁判長だっているんです。いい世界じゃないですか」
「うん、だんだんネタが危なくなってきたからこの辺りでしめようか」
「えー、いいじゃないですか。なんだか元ネタみたいで」
「いや、もういいもういい。──うん、まぁ、美しいからいいのかな」
「そうですよ、エロ薔薇さま」
「エロ薔薇っていうなああああああ!!!!!!」
マリア(太郎)「オチテナイヨ」