「なにやってるの、佐藤さん」
「おとめの秘密はごみ箱に〜、てね」
「いいけどそのまま食事作ったら追い出すからね」
「…はい。あれ、ねえ、加東さん。このハガキ…捨ててあるけど」
「どれのこと?ああ、よくあるやつね」
「そうなの?」
「あら、知らないの。こういう詐欺って多いのよ。あなたなら引っかかりそうにないけど」
「いやー、この彼女は本気な気がするんだけどなあ…」
「ちょっと。大丈夫?本当に心配になってきたわよ」
「いや、だって」
「『このたびは妹がひとかたならぬお世話になったとお聞きしました。
お礼といっては失礼ですが、せめてもの気持ちとしてお受け取りください。
つきましては手続きもございますため下記の連絡先まで…、』」
「まあ、あやしいかなー」
「おまけに、物件がドイツ…かしら、のお城だなんて。
詐欺というよりもただの悪戯かしら」
「うん。でもこの差出人がね」
「ねえ、蓉子さんも苦労している気がするわ」
「あー、それはそうかも」
「もう。
分かったわ。万が一本当かもしれないけど。
わたしは当分ここを動くつもりはないのよ。この部屋も、大家さんも気に、入っているし。
そういうことだから」
「そうだねー。あんまりでかいとこんなふうにいっしょの部屋でいられないしね」
「暑いわ。サトーさん」