【2378】 みんなと居る時膝の上に載せて苺のタルト  (学生Y・I 2007-09-27 23:07:29)


前書き
祐巳と乃梨子の組み合わせなのですが、瞳子と志摩子の扱いがあまりよくありませんので、ご注意下さい。


リリアン女学園には、薔薇の館という建物があり、そこはリリアンの全生徒の憧れの場所である。
そんな薔薇の館なのだが、現在目に見えないピンクと黒のオーラが渦巻いていたりする。

「おいしい、乃梨子ちゃん?」
「は、はい。おいしいです、祐巳様…」
「えへへ、良かった♪」

原因は、福沢祐巳と二条乃梨子の二人が、何とも言えない空間を作り上げているから。
現状で二人がどんなことになっているかというと、満面の笑顔の祐巳の膝の上に、頬を赤く染めながらも、引きつった笑顔をした乃梨子が乗っている。さらに、二人の前には苺のタルトがあり、祐巳の手にはフォークがある。
そして、二人の周りにはとても悔しそうな顔を浮かべる乙女達。
何故こんなことになったかというと、それは今から10分前のこと。

〜10分前〜

薔薇の館に乃梨子が入ると、そこでは椅子に座って祐巳が一人で何かを考えこんでいるような顔をしていた。

「ごきげんよう、祐巳様」
「ごきげんよう、乃梨子ちゃん」

沈黙。
乃梨子も椅子に座ると、まだ何かを考えてこんでいる祐巳に話しかけた。

「…あの、祐巳様」
「ん、何?」
「悩み事ですか?」
「え?…もしかして顔に出てた?」
「はい。それはもう」

再び沈黙が訪れたが、決心したのか祐巳が口を開いた。

「乃梨子ちゃん」
「何ですか?」
「お願いがあるんだけど」
「はい」
「抱かせて」

時が止まった。少なくとも、乃梨子はそう感じた。
何か重いものを落としたような音が扉の向こう側から聞こえたようだがきっと幻聴だろう。

「………」
「………」

見つめあう二人。
祐巳の乃梨子を見る目は真剣そのもので、不覚にも乃梨子は見とれてしまった。
だが、いつまでも見とれているわけにはいかない乃梨子は、何とか我に返ると慌てて祐巳に反論した。

「ゆゆゆゆゆゆ、祐巳様?そ、そういうことはどうか瞳子に…」
「え〜とね、それなんだけどね」

そこで、何か言いよどんでしまった祐巳だが、意を決したのか真剣な表情で乃梨子を見つめた。

「飽きちゃった♪」

再び時が止まり、真剣だった祐巳の表情は、いつの間にか笑顔になっていた。
紙の束を落としたような音が扉の向こうが聞こえてきたような気がするが、幻聴だと思いたい。
乃梨子が再起動する前に、祐巳はいつの間にか用意しておいた苺のタルトをその手に持って立ち上がり、乃梨子の元へと向かった。
そして、乃梨子を立たせると自分が椅子に座って、その上に乃梨子を座らせると、すごくいい笑顔で乃梨子に抱きついた。

「乃梨子ちゃんって、良い匂いするね♪」

そんな爆弾発言を祐巳がした瞬間、リリアンの生徒としてはどうなのかと問いたくなる勢いで扉が蹴破られて、二人の少女が現れた。

「祐巳さん!!」
「祐巳様!!」

『私、怒っています』といった感じの藤堂志摩子と松平瞳子だが、祐巳は顔だけは二人に向けたが、大して気にせず乃梨子に抱きしめている。
乃梨子も二人に気づいた様子は見せず、全身赤くなってぽ〜っとしている。

「あれ。どうしたの、二人とも?そんなに慌てて」
「な、何で乃梨子を抱きしめているの?」
「乃梨子ちゃんがかわいいから?」
「祐巳様!!乃梨子さんが嫌がっているではないですか!!」
「え?乃梨子ちゃん、迷惑だった」
「そ、そんなことは…ない…です」
「迷惑じゃないって言ってるよ、瞳子ちゃん」
「う…」

その後も二人を引き離すことは出来ず、後から来たメンバーでもそれは変わらなかった。
そして、冒頭に至るのだが、これ以上書くことは無意味だろう。
何故なら、周りにいる乙女達はその余りにも自分達にお構い無しの空間を作り出している二人に対して何かをしたところで、効果無しと悟っているから。
なお、『赤と白、互いのスールを交換か!?』という出所不明のニュースが後日リリアン女学園を駆け抜けたのだが、真実は誰にも分からない…。


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