【247】 白薔薇革命嘘  (篠原 2005-07-21 21:49:35)


 ※ 『薔薇のミルフィーユ』の「白薔薇の物思い」とあわせてお読みいただくと、より理解し易い仕様となっております。


「このところ、気がつくと考えていることがあるのよ」
 いつもの帰り道、突然の志摩子さんの言葉に乃梨子は尋ねた。
「何を?」
「私たちって、平和よね」
「え?」
「こんなに平和でいいのかしら?」
 要は祐巳さまや由乃さまが妹問題やなんやかやで大変なのに自分達だけこんなに穏やかでいいのだろうかということらしい。
「いいんじゃないの」
 問題なんて無いにこしたことはないのだから。乃梨子はそう思っている。
「でもね、乃梨子を妹にしてからすっかり安定してしまって、穏やかすぎて問題が起きないからどんどん出番が減っているような気がするのよ」
「は?」
「このまま登場回数が減っていって、気が付いたらレギュラー落ちなんてことになってしまうともかぎらないじゃない?」
「まさか、考えすぎだよ志摩子さん。私達メインキャラなんだから」
「わからないわよ。既にメインとは言い難い登場頻度になっているし、ほら、全く出番が無いまま存在すら忘れられていた人がいたじゃない。ええと、なんといったかしら?」
「もしかして、桂さまのこと?」
「そうそう、その桂さんとやらみたいに、いつのまにか誰からも忘れられた存在になってしまうなんていうこともありえないことじゃないと思うのよ」
「桂さんとやらって……確かクラスメイト……いや、でも、だからって志摩子さんは、何か事件があればいい、なんて思ってないでしょ?」
 二人は笑った。そしてひとつぽんと手を打った志摩子さんは、笑顔のまま手を差し出した。
「そうね。ロザリオを返してちょうだい」
「…………………………え?」
「確か、貸しただけだったわよね?」
 ずいっと一歩前にでる志摩子さん。

「うわー、志摩子さん、志摩子さんっ、志摩子さーん!!」

 ………………
 …………

 翌日。
「志摩子さんが変?」
 写真部の蔦子さんの言葉に、祐巳は目を丸くした。
「なんでも昨日の帰り、白薔薇のつぼみのロザリオを強引に奪って、通りがかった謎の男の車に乗って家とは反対方向に逃走。取り残された乃梨子ちゃんは謎の女子大生に連れ去られたという目撃証言が…」
「う、嘘だあ………」
 その後、さりげなくと言われたにもかかわらずおもいっきりストレートに事情を聞いてしまった祐巳に対して、志摩子さんは曖昧な笑顔で一言。
「私と乃梨子の問題だから……」
 そう答えただけだったという。
 学園を震撼させた白薔薇革命は、もうちょっとだけ(志摩子さんの気が済むまで)続くようだ。


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