【250】 満を持して二条乃梨子はハリウッドスター  (西武 2005-07-22 20:48:29)


「これはどういうことですの、乃梨子さん」
すごい勢いで瞳子がつきつけたのは今週のリリアン瓦版。記事のタイトルは「山百合の友人たち」。
山百合会のメンバーが順番に一般生徒の友人を紹介するという企画物で、黄薔薇さま以外はみんな苦労していたようだ。トップを切った紅薔薇さまが、悩んだ末に人もあろうに新聞部の前部長を選んだり、それを受けて蔦子さまと真美さまが暗闘を繰り広げたり、中等部を対象にするよう最後までくいさがった人がいたり。
それはともかく。

「瞳子、あんたを選んだのが不満なの?ああ、心はもう山百合会ってことかな」
「そ、そんなことあるわけがありませんでしょう。私が言いたいのはここ。ここですわ」
「どれどれ」

『演技の才能はあると思います。ふだんの振る舞いからしてそんな感じですしね。将来、彼女のオーディションに付き添うのが楽しみです』

「これがどうしたのさ」
「友人のオーディションでデビューというのは基本中の基本。女優に野心をお持ちなのですわね。なぜ瞳子に教えていただけなかったのでしょう。
でも、見るからに日本人形の乃梨子さんなら、きっと向こうで受け入れられますこと間違いありませんですわ。あ、大丈夫です。瞳子もご一緒いたしますから」
いや、あのな。
「実のところ、瞳子も1人では少しだけ不安でしたの。2人で頂点を目指すといたしましょう」
待ってくれ、たのむから。

ようやく誤解を解いて(曲解だと思うが)、瞳子のでびゅうの際に写真を「勝手に」オーディションへと送ることを約束させられて、
「何の意味があるんだよ」
「基本中の基本ですわ」
やっと、乃梨子は開放されたのであった。


「可南子さんは向こうではかすんでしまいますから、こちらでデビューなさるべきですわね」
「何ですか、いきなり」


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