【No:2571】のつづき
「あれは神の使いか何かだと思うの」
後日談になるが、薔薇の館での志摩子さんの話だ。
「今思うとおかしすぎるわ。だって、全くもって人間に似ていない生物が、あたかも人間のように生活していたのよ?それを誰も不思議に思わないなんて、それこそ不思議だわ……」
志摩子さんの言うことはもっともである。私なんて不思議に思わないどころか、妹にしていたんだし。
「多少なりとも違和感は抱いていたけれど……。それでも確信に到らなかったのは神の力が働いていたからよ!!」
「志摩子さん、何かズレ始めてる」
「失礼、由乃さん。でも、そういうことではないかしら?麻衣子ちゃん……今ではそう呼ぶだけでおかしいわね、ふふ。麻衣子ちゃんは私たちがあの日、事故に遭うことを知っていたのよ」
「それで助けるために、ってこと?」
「そうよ、祐巳さん。麻衣子ちゃんはどうにかして助けたかったから、人間の振りをして私たちに近付いた。そしてあの日を迎える」
志摩子さんの言うことは理解できるけれど、何か無理がある気がするし、今では全て幻だったのではないかとすら思える…。麻衣子のいない今となっては全て闇の中だが。
それでも私は、麻衣子と過ごした日々は幻なんかじゃない、と信じたい。
「って話を今年の学園祭の劇にしたいんだけど、どうかな?」
「いい、すごくいいわ!乃梨子!」
「……完全に姉バカ丸出しね、志摩子さん」
「黄薔薇さま、バカは言いすぎじゃないですか?バカは」
「あら?そんなにいい話かしら?大してまとまってもいないし、これくらいなら誰だって書けるわよ。既存の童話でもやったほうが大分マシね」
「……ッ!なら黄薔薇さまが書いてみればいいじゃないですか!?」
「私にはロザリオ由乃捕物帳があるからいいのよ」
「うー!☆%#!!?」
「¥%%○○!」
「☆@ッ!」
「……ところで乃梨子。最近、薔薇の館に顔を見せるのが遅いと思ったらこんなことをしていたのね?」
「えっ?違うよ、瞳子。」
「それじゃあどうして?」
「親しい1年生ができたからだよ」
「え?」
「そう言えば紹介してなかったね。今日は呼んであるんだ。入っておいで、麻衣子」
「……!!?」
〜fin〜