【No:2573】の小話です。
「ねえデコポン」
「何よ、メリケン」
「ついに娘も付かなくなったか」
「長いし、面倒くさいもの。で、何よ」
「いやね、前に蓉子がさ、マジギレしたことあったじゃん?」
「ああ、あんたの20股が発覚したのと、私が山百合の仕事を放棄して逃げた時のこと?」
「あんときの蓉子の形相は忘れられ無いよ」
「そうね。私、トゲの付いた鉄球見たのあの時が初めてよ」
「でさ、考えてみたら、逃げなくても良いんじゃないかと思ってさ。結果的には妹と孫の仲を取り持ったことになるんだし」
「うん」
「かわら板の事については、泣きながら謝れば、許してくれるんじゃないか?」
「うん」
「どうかな?」
「うん、それ無理」
「なんで?」
「大学で100斬り達成したんだって?おめでと」
「!?何でばれたの!?」
「カトーさんって人が蓉子に『あの色ボケ何とかして』と言いに行ったらしいわ」
「なんですと〜!加藤さんったら、毎晩布団に潜り込んだり講義中にお尻触ったりした位で、そんなに怒らなくても良いじゃないか!」
「見事に自業自得ね」
「そういうデコポンは何で逃げてるのさ?」
「………蓉子のゴスロリ趣味、写真付きでリリアンの掲示板に貼り出しちゃった」
「……それこそ自業自得じゃん」
「不思議よね、楽しいことしてる時って、その後の事なんて考えもしないものなのよ」
「OK、取り敢えず捕まったら、苦痛に満ちた死が待っているのは確実だな」
「かなり遠くまで来たし、大丈夫だと思うけど」
「いや、相手は蓉子だよ?警戒するに越したことはない」
「そうね。じゃあ、もうちょっと移動しましょうか」
「うまい具合にタクシーがつかまったわね」
「そだね。おじさん、一番近い駅までお願いね」
「………」
「?無口なおじさんだなぁ」
「そんなことよりメリケン。次は何処に行くのよ」
「どうしようかねデコポン」
彼女達は気付いていなかった。タクシーの運転手が、今まさに自分達を追っている相手だということに。
その顔には、背筋が凍るほど美しい笑顔が浮かんでいた。
二人のバカチンに、一片の慈悲があらんことを…………………………………BAD END