【2575】 令ちゃんがんばる途中で出てくる鼻歌  (ニュクス 2008-03-26 17:46:24)


某弾幕シューティングとのクロスオーバーです。


令は思う。ココは何処だろう、と。
今日は休日で、特に予定もないので、朝からお弁当を作って散歩に出たはず。
由乃も、祐巳ちゃんと志摩子と遊びに行っているから、一人のんびり歩いていたはず。
何にも考えずに、ぼんやり歩いていたら、見知らぬ場所に出てしまった。
古めかしいお屋敷が一つあるだけで、あたりには他に家も人も見当たらない。
山百合会の中での生活で、アクシデントには慣れている。こういうときは慌てずに現状を確認だ。
とりあえず、あのお屋敷でココが何処なのかを聞いてみることにしよう。
ちょうど、人影が出てきたようだ。
そう考え、令はお屋敷に向かって歩き出した。



「いやいや、珍しい。ここは地元の者でも立ち寄ることがないから」
お屋敷の客間らしい部屋で、令は硬直しきっていた。
あれから、屋敷から出てきた人に声をかけ、道を聞いた。着物の様な服を着た、金髪の美女だった。
すると、『主なら帰り道がわかる。今は出かけているから、帰ってくるまで家で茶でも飲んでいなさい』と、屋敷の中に案内された。
ここまではわかる話だ。
ただ、令が声をかけ、屋敷まで案内してくれた美しい女性に9本の狐のようなしっぽがあったことと、これも狐のような耳があったこと。
ちなみにさっきからフサフサと動いている。イミテーションではないらしい。
「それも人間が来るとは。ここ10年は魔法使いと巫女くらいしか来なかったから」
「はあ…」
来るんだ、魔法使いと巫女。
「ところで名前を聞いてなかったね」
「あ、はい。支倉令と言います」
「いい名前だね。令、と呼んで良いかい?」
「はい、どうぞ」
なんだかえらく気に入られたらしい。さっきから上機嫌だ。
「私は八雲藍という。藍と呼んでくれ」
「藍さん、ですか」
「ああ、見ての通りの九尾というやつだ」
九尾くらいはわかる。日本に古くから伝わる怪異のひとつだ。多くは男を惑わす美女として伝えられることが多い。
なるほど、確かに美女だ。どこぞの王様が魅了されるのもうなずける。スタイルも良い。
「ありがとう。そんなに褒めてもらうと照れてしまうよ。まあお茶でも飲んでくつろいでくれ」
ちなみにお茶は玉露入り玄米茶だ。うん、美味しい。
結局その後、藍さんの言う「帰り道のわかる人」が帰ってくるまで、藍さんとおしゃべりしていた。


「じゃあ、その自由奔放で何を考えているのかわからない姉と、猪突猛進で言う事を聞いてくれない妹の板挟みになっているのだね」
「そうなんですよ。お姉さまも由乃も、もうちょっと落ち着いてくれたらと思うんですよ」
「令も大変だね。でも、その姉も妹も大好きなんでしょう?」
「まあ…はい」
「じゃあ大変だけど、そのかわり幸せだね」
「そうですね……。いつまでも一緒にいたいと思っています」
「うん」
と、玄関のほうから「かえったわよ〜」と声が聞こえてきた。
「おや、帰ってきたようだね。じゃあ呼んでくるから少し待っていて」
そう言って藍さんは、廊下に消えていった。

そのあとこの屋敷の主人の紫さんに挨拶して、帰り道を教えてもらった(紫さんは「あら、このままここに居なさいな。貴女みたいな可愛い子なら大歓迎よ」と言われたが、謹んで辞退した)
藍さんも凄い美人だけど、紫さんはこの世のものとは思えないくらいの美人だった。
あと、なんだかお姉さまに似てたかな?
その後藍さんがお見送りまでしてくれた。
「お茶まで出していただいて、本当にありがとう御座いました」
「いやいや、良いんだよ。…………元々紫さまの所為だしね」
「え?」
「何でもないよ。気をつけて帰りなさい」
「はい。…………あの、もし良かったら、また来て良いですか?」
「いつでもおいで。その時はまた話し相手になって頂戴」
「はい。じゃあ、さようなら」
こうして私の不思議な一日は終わったのだった。


おまけ
「自由奔放で何を考えているかわからない姉と、猪突猛進で言う事を聞かない妹か…。なんだか覚えがあるような……」
「藍〜、晩の御飯まだ〜?あ、あと結界が弱まっているから修復お願いね」
「藍さま〜。遊んでたらころんじゃった。えへへ、泥だらけだ〜」
「……………………あれ、おかしいな。目から塩水が……」
                                     終わり


一つ戻る   一つ進む