(マリア様、これは一体どういうことなのでしょうか。)
祐巳はマリア像の前で一心不乱にお祈りをした。
それもそのはず。
昨日祐巳は高等部を卒業した。
しかし朝目が覚めると、高等部入学の日になっていたのだった。
それも何故か、最愛の妹・瞳子たちと同じ年代で。
(確かに瞳子のことが心配で、瞳子が卒業するまで側にいてやりたいと思ったこともあります。
ですがマリア様、それはほんの少し思っただけであって・・・・・・)
祐巳は必死だった。是非とも元に戻りたかった。
もちろん戻り方など知る由もない祐巳は、ただただマリア様に縋るしかなかったのだ。
ただ、祐巳は能天気だった。
一週間もすると、今の環境も悪くないなどと思うようになっていた。
幸いなことに、最愛の姉である祥子には妹がいなかった。
ここで祥子に妹ができていたなら、間違いなく祐巳は立ち直れなかっただろう。
瞳子の扱いに祐巳は慣れていた。何と言ってもお姉さまですから。
だからすぐに仲良くなった。といっても、瞳子はやはりツンデレだったが。
親戚である祥子に会いに薔薇の館に行く、という瞳子に祐巳は無理やり付いて行った。
薔薇の館は少し雰囲気が違った。
一つ、祥子に妹がいない。
一つ、由乃が手術を受けていなかった。更に言うなら猫を被ったままだった。
一つ、そんな由乃を令は過剰なほどに庇っていた。
一つ、静が白薔薇さまになっていた。人手が足りないため志摩子も手伝ってはいるが。
何となくではあるが、少しぎすぎすしているように感じた。
だけど祐巳は構わなかった。違和感よりも嬉しさの方が大きかったのだ。
今は立場が違って中々話すことができない、でも大切な人たちを見れて祐巳は嬉しかった。
嬉しそうに自分たちを眺める祐巳の笑顔に、山百合会のメンバーの心は満たされていた。
気が付けば祐巳はまた山百合会のメンバーになっていた。
祥子の妹として。
一時、瞳子と不仲になってしまったが、祐巳は焦らず接し続けた。
そのおかげか、瞳子も祥子の妹であることを認めてくれた。
その後も祐巳は楽しく学園生活を送った。
大好きなお姉さまである祥子と、一年しか一緒に過ごせないことが少し不服ではあったが。
新しく、妹も出来た。
妹は瞳子だけだと祐巳は思っていた。
けれど出会ってしまったのだ。そして妹にと望んでしまった。
瞳子や周りの皆の手伝いもあって、姉妹の関係を結んだ。
あっという間に時は過ぎていった。
やがて祐巳は卒業式を迎えた。
(マリア様・・・・・・私、あなたに何かしましたか?)
祐巳はマリア像の前で一心不乱にお祈りをした。
それもそのはず。
昨日祐巳は二度目の高等部を卒業した。
しかし朝目が覚めると、高等部入学の日になっていたのだった。
それも何故か、最愛の姉・祥子たちと同じ年代で。