宇宙人もみてる(過去特別編)
ケロロのクロスです。
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企画SS
【No:2598】
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スール誕生3部作 第1部祐巳・聖です。
この作品は途中で視点が祐巳→聖→祐巳に切り替わります。
祐巳と聖のスール秘話
放課後、
姉さん・・・祥子さまからのスールの誘いを断って、
フラフラと校内の銀杏並木を歩いていたら、
桜の木の所でカラスが騒いでいた。
よく見ると子猫が襲われていた。
祐巳「このっ!!」
そう言って鞄を桜の木に叩きつけるように投げつけた。
カラスたちは蜘蛛の子を散らすように去っていった。
私は子猫を抱えると保健室に向かって走った。
スカートのプリーツを乱そうが
セーラーカラーを翻らせようがかまわずに
保健室にたどり着くと、
誰も居なかったので悪いけれど勝手に使わせてもらうことにした。
だいぶ弱っているらしく、消毒しても多少反応するものの全然暴れない。
一応、応急処置は終わったけれどやはり獣医さんに見せるべきだ。
でも、治療費が私の手持ちで足りるかわからないし、
見せる以上信頼できる実力を持っている人にするべきだが、
私にはそんな伝手はない。
無神経だと思うけれど、姉さんに相談してみよう。
まだ温室にいるかな?
私が立ち上がると、いきなりドアが開いて、
1人の女子が入ってきた。
確か、白薔薇様こと佐藤聖さまだったはず。
聖「ごきげんよう、先生いる?」
そう尋ねられたので、
祐巳「ごきげんよう、白薔薇様。
先生はいらっしゃいません、
私は緊急だったので勝手に使わせていただきました。」
聖「緊急?
・・・!!
その猫怪我してるの?」
祐巳「はい、一応、応急処置はしましたが怪我が酷いので
獣医さんに見せるべきかと思いまして。」
聖「そう、獣医に当てはあるの?
無いなら私に当てがあるんだけれど」
祐巳「よろしくお願いします。」
私たちは子猫と荷物を持って急いで学校を後にした。
祐巳「ありがとうございました。
でも本当にいいのですか?タダにしてもらって」
獣医「ああ、構わないよ。聖ちゃんの頼みだしね。」
祐巳「白薔薇様もありがとうございました。」
聖「別にいいよ。じゃあ。」
そう言って聖さまは帰っていった。
次の日
私は昼休みに昨日の子猫に中庭で餌を与えていた。
聖「あれ?その子に餌をあげてるんだ?」
祐巳「はい、この体じゃ狩りも出来ないでしょうし、心配で
そういう聖さまはどうしてここに?」
聖「私はたまたま通りかかっただけ、
ところでこの子の名前って決まったの?」
祐巳「いいえ、まだです。」
聖「ん〜、じゃあタマ」
祐巳「面白みが無いですね、ポチなんてどうでしょう」
聖「面白みってどこぞの凸みたいなことを・・・、
それにポチって犬につける名前じゃ・・」
祐巳「じゃあ、トラ」
聖「いや、トラ柄じゃないし」
祐巳「じゃあ、ライオン?」
聖「なんで疑問系
それに、同じネコ科だけど種族が違う!!
君、わざとやってるでしょう。」
祐巳「あ、さすがにわかります?」
聖「まったく、じゃあゴロンタなんてどう?」
祐巳「いいですね、じゃあそれにしましょう。」
聖「駄目もとで言ったんだけどずいぶんあっさり認めたね。」
祐巳「だってこの子メスですよ。
メスなのにゴロンタって面白いじゃないですか。」
聖「嘘・・・、じゃあさっきの無し」
祐巳「駄目ですよ、自分で言ったことじゃないですか。
お前もゴロンタでいいよな〜?」
そういうとゴロンタが
ゴロンタ「ニャ〜」
と鳴いた。
祐巳「この子もそれでいいみたいですよ。」
聖「んん〜〜」
白薔薇様は困っているようだった。
そこへ後ろから声を掛けられた。
女子「あなたたち、何をしているの?」
その声に振り返ると紅薔薇様こと水野蓉子さまが立っていた。
祐巳「ごきげんよう、紅薔薇様、
見ての通りこの子に餌をあげているんです。」
蓉子「そう、
それで、あなたは何してるの?
昨日も薔薇の館に来ないで、まったく。」
祐巳「あの、白薔薇様を責めないで下さい。」
蓉子「え?」
祐巳「白薔薇様は昨日この子の治療を手伝ってくれたのが原因で行けなかったんです。」
紅薔薇様は少しキョトンとして、
蓉子「あなた何年生?
クラスと名前は?」
祐巳「?・・・1年桃組福沢祐巳です。」
蓉子「外部からかしら?」
祐巳「いえ、中等部からの内部進学ですが
それがどうかしたのですか?」
蓉子「いえ、私たち薔薇様相手に堂々としていたものだから気になったのよ。」
祐巳「そうですか、お昼休みももう終わるので、
では失礼します。」
あれから約1ヵ月私と聖さまはゴロンタの事で時々会うようになった、
マリア祭も過ぎて1週間ほど経ったある日の放課後、
黄薔薇のつぼみの妹こと島津由乃さんが私を訪ねてきた。
由乃「祐巳さん、
薔薇様方が是非薔薇の館に来て欲しいとの事です。
一緒に来ていただけませんか?」
由乃さんはそう言って先を歩いていった、
彼女とは中等部の2・3年の時同じクラスにだった。
心臓に持病を持っていて、よく欠席や早退をしていた。
何度か話したことがあるが、彼女は仮面を被っている。
おそらくこの事に気付いてる1年生は居ないだろう。
なんだかんだいってここはお嬢様学校だ。
私や彼女のように仮面を被る必要が無いのだから。
私たちは、薔薇の館についた。
いったい何の話だろう。
姉さんとのスールについての事だろうか。
由乃「福沢祐巳さんをお連れしました。」
蓉子「ご苦労様、入っていただいて。」
部屋の中から紅薔薇様の声がした。
私は部屋の中に足を踏み入れた。
祐巳「福沢祐巳です。」
江利子「お呼びだてして、ごめんなさいね」
蓉子「ちょっとお話を伺いたくて」
座って頂戴と言われたので椅子に座った。
部屋にいるのは、
黄薔薇様こと鳥居江利子さま、紅薔薇様、
私が来たことに驚いてる姉さん、明らかに不機嫌な白薔薇様。
姉さんとの事じゃないのかな?
由乃「では、私はこれで失礼いたします。」
そう言って由乃さんは帰った。
蓉子「それで、あなたはお姉さまはいるの?」
祐巳「は?」
この人いきなり何言ってるんだろう。
姉さんのことをお姉さまと言っていいのだろうか、
もう家族でもないのに、
それとも、この人は私と姉さんとの関係を知ってて聞いてきているのだろうか、
どう答えればいいかわからずに考えていると、
蓉子「念のために言っておくけれど。
私たちは、血の繋がったご姉妹の事を聞いているのではないのよ」
祐巳「それならいません」
蓉子「そう、それを聞いて安心したわ。
それじゃ、本題に入らせてもらうわ」
祐巳「はい」
蓉子「山百合会の手伝いを引き受けてくれないかしら」
祐巳「は?」
蓉子「今の人数では手が足りないの、
由乃ちゃんも入ってくれているけれど、
彼女体が弱いし、あまり無理させられないから」
祐巳「なるほど、
先ほどの質問はそういう事ですか。
それであわよくば私を祥子さまの妹にという事ですか。」
蓉子「どうしてそこで祥子の名前が出てくるのかしら?」
祐巳「あれ、祥子さまのスールの申し出を断ったから呼ばれたのではないのですか?」
蓉子「この子に申し込んだって、本当なの?」
祥子「はい」
祐巳「あの・・・、
断ったところで無駄のようですので手伝いの件お受けしますから、
今日は用事があるので帰ってもいいですか?」
蓉子「いきなり呼び出したのだもの、
用事があるならしかたがないわね。
週明けの月曜日の放課後にまた来て頂戴」
祐巳「わかりました。
お先に失礼します。
ごきげんよう」
そう言って私は下校した。
彼女が出て行くと、
蓉子「それで、祥子、どういうことなの?
スールを申し込んだなんて知らないわよ?
おまけに断られたなんて。」
江利子「それにしても、あの子内部でしょ?
それで山百合会の人間にスールを申し込まれて断るだなんて面白いわ。」
祥子「江利子さま、祐巳みたいなこと言わないで下さい。」
蓉子「祐巳ちゃんの事よく知ってるみたいだけれどどういう子なの?」
祥子「そうですね、
腹黒くて
無類の悪戯好き、
トラブル・ハプニング・面白いことが好きで、
大抵の事は簡単にこなしてしまうものの、
負けず嫌いなので本人が納得する結果を出すまで続けるところがありますね。
それで、なんだかんだいって、やさしい子ですよ。
敵に回さない限り。」
蓉子「最後のが気になるけれど、大まかに江利子と似てるのね。
でも何だか印象が違うわね」
祥子「あの子は相手を信頼しないと素を出さないですから。」
私はゴロンタに名前を付けた日の事を思い出した。
つまり、少なくとも私は信頼されてるのかな?
って私は何を考えてるんだ。
蓉子「あの子の事詳しいけど、いつぐらいから知ってるの?
あの子中等部からリリアンらしいからその頃からかしら?」
祥子「あの子の事は赤ちゃんの頃から知っています。」
江利子「親戚か何か?」
祥子「妹です・・・血の繋がった実の」
聖「はぁ!!」
私は立ち上がって大声を出してしまった。
蓉子「落ち着きなさい、聖」
江利子「不機嫌そうにしてるわりに随分気になってるじゃない」
聖「うっさい!黙れ、でこちん!!」
江利子「本当のことでしょうが、アメリカ人!!」
蓉子「2人ともやめなさい。
それで、あの子の苗字は福沢なのは何でなの?」
祥子「祐巳は小笠原家の人柱になったんです。」
聖「人柱って、村や家を栄えさせる為に人を生け贄にするあれ?」
祥子「はい、その人柱です。
分家や多くの小笠原に名を連ねる名家(以下分家等の人たち)を抑えていた
ひいお爺様が亡くなって、
父の愛人の子であるあの子を家から追い出せって、
分家等の人たちが言っていて、
小笠原も本家のみで動いてるわけじゃなくて、
分家等の人たちに見限られると家が潰れるので、
あの子を追い出して、
その事を盾に分家等の人たちに逆らえないようにするって事になって、
あの子に人柱になってもらったんです。」
聖「なにそれ、あの子の意思はどうなるの?」
祥子「いえ、これはあの子が言い出したんです。
『小笠原は大きいのだから内部で揉め事を起こしてると、
関係のない下の人たちに迷惑がかかる。
それこそ、その所為で会社の仕事が停滞して
人件費を削らざるを得なくなって一家心中なんて人が出たら嫌だもの。
少なくとも日本の経済情勢が傾くのは確実だし。
家のことに私情を挟むべきじゃない。』って、
それで小学校卒業と同時に家を出て行ったんです。」
蓉子「そんな事を小学生が考えたの?」
祥子「はい、預けられた家はお母様のリリアン時代の後輩の家で、
中等部からリリアンに入れてもらって、
高等部で私のスールにして、
間接的に小笠原家に戻そうと思ったのですが」
蓉子「振られたと」
祥子「はい、それで今の話は内密にお願いできますか?」
蓉子「いいわよ、それで祥子、祐巳ちゃんの事あきらめるの?」
祥子「そんなわけありません、
白薔薇様には悪いですが、祐巳は私の妹にします。」
聖「へぇ、言ってくれるね。
人に強制されるのは嫌だけれど、
そうやすやすと渡すつもりはないからね。」
蓉子「2人とも盛り上がってるところ悪いけれど、
敵はお互いだけじゃないんだからね。」
聖・祥子「え?」
蓉子「山百合会に手伝いに来る事になった以上、
私たちに近づくために祐巳ちゃんのスールを狙う子も現れるわよ、
それと噂だけれど、
祐巳ちゃんアリアの歌姫からスールと入部の誘いを受けているらしいわよ。
祐巳ちゃん音楽室の掃除の時歌ってたのを聞いて見初められたって、
1部の1年生の間ではかなり有名な話よ。
のんびりしてると取られるわよ。」
私は、帰るとベッドに横になると今日を振り返る。
スールかぁ、姉さんに静さまどっちも姉妹になるといわれてもピンとこない。
今日のあれ、姉さんの事じゃないなら、
白薔薇様とのスールの事だったのだろうか
そうだと少し嬉しい、想像は出来ないが
楽しい気分になる、
ははは、さすがに人生そんなに都合よく出来ていないか。
次の日、朝のホームルームが終わって、
1時間目の授業開始のチャイムが鳴る中、
白薔薇様に教室を連れ出された。
祐巳「あの・・・・!?」
聖「来て」
私の戸惑いなどお構いなしに白薔薇様に手を引かれていく。
ただ分かるのは、これから何かいい事が起こる。
私の本能がそう告げる。
祐巳「どこに行くんですか?
私、逃げませんから」
聖「ああ、ごめん」
白薔薇様は思い出したように手を離した。
白薔薇様に連れられてたどり着いたのは、
1本だけ立っている桜の木の下。
聖「期限付きだけど」
白薔薇様は真っ直ぐ私を見て、
聖「私の妹になりなさい」
私の言ってほしい言葉を言ってくれた。
聖「私はいいお姉さまにはなれないけれど、
あなたにぴったりだと思う。
束縛はしないわ、あなたの好きにすればいい。」
祐巳「なりなさいって言ってる時点で束縛してますが」
聖「うっさいわね、嫌なの?」
祐巳「まさか!」
私は首を激しく横に振った。
祐巳「でも」
聖「でも、は無し。聞きたいのはYESかNOか、それだけ」
そう言って白薔薇様は手を差し伸べた。
私の答えは決まってる。
祐巳「あなたの妹にしてください。」
私は、差し伸べられた手をとった。
聖「そう」
祐巳「よろしくお願いします」
聖「ああ、そうだ。ロザリオがいるんだっけ」
白薔薇様はブレスレットのように巻いたロザリオをはずして、
私の右手首に巻いた。
聖「こっちの方がお手軽だ」
祐巳「授業間に合いませんね。」
聖「サボろうか」
祐巳「薔薇様ともあろう者が不真面目ですね〜、
お供します。」
聖「そうこなくっちゃ」
その後私たちは中庭のベンチで眠っているところを先生にバレて怒られ、
それが、紅薔薇様の耳に入り大目玉をくらった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜あとがき〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お読みいただきありがとうございます。
スール誕生3部作第1作目『祐巳・聖』完結です。
残りの2つは『乃梨子・祐巳』と『志摩子・祥子』を考えています。
どちらを先にやるかは未定です。
3部作とは別に過去特別編をやると思います。
祐巳1年時花寺学園祭・薔薇様選挙等を考えています。