スーパー祐巳ちゃん 科学者編
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プロローグ。 胸騒ぎの月曜日
「どうしよう」
はぁ。
ため息をつきながら祐巳はテーブルに伏せた。
「何だよ、祐巳。落ち込むなら部屋でやれよ」
「冷たいな〜祐麒。そんな子に育てた覚え、お姉ちゃんないよ?」
「育ててもらってなんかないだろ!で、どうしたんだよ?」
何だかんだ言っても、祐巳のことが気になる祐麒。
そんな彼は生粋のシスコンである。
「んー、それがね・・・」
祐巳は今日学校で起こった出来事を祐麒に話した。
要約すればこうだ。
偶然朝、紅薔薇の蕾と呼ばれる小笠原祥子さまにタイを直してもらった。
その時、クラスメイトの蔦子さんに写真を撮られてしまった。
あれよあれよと言う間に話は進み、気付けば薔薇の館の前まで行っていて、
どういうわけかそこで祥子さまに妹になりなさいと言われた。
当然断った。しかし断ったら断ったで、白薔薇さまに賭けの対象とされていた。
「どうしてこんなことに・・・」
落ち込む祐巳。
「そりゃあ、祐巳がめんどくさがって学校に行かないからだろ」
「だって本当にめんどくさいし・・・
それに、せっかく作ったんだよ?使わなきゃ勿体無いじゃない」
ねえ、YU-MIxx2TYPE。そう言って祐巳は、祐巳そっくりの少女に話しかけた。
「大体、祐麒だってYU-KIzz1TYPEに行かせていたじゃない。
何故か最近は学校に行っているみたいだけれど。
ねえ、そういえばどうして急に学校に行くようになったの?」
「そ、そんなこと!どうだっていいだろう?!」
「怪しい・・・YU-MIxx2TYPE!祐麒を捕まえなさい!」
「ちょ、ちょっと待て!祐巳!話す!話すから」
祐麒が学校に行くようになったわけ。それは、
どういうわけか花寺の生徒会長である柏木優氏にYU-KIzz1TYPEの正体を見やぶられてしまい、
そのことをバラさないかわりに、生徒会を手伝うよう脅されたからであった。
「二人とも生徒会の人に気に入られるなんて、さすがね」
いつからいたのか、二人の母であるみきが楽しそうに言った。
どうやら二人の話を聞いていたらしい。しかし、勘違いにも程がある。
気に入られたわけじゃない。脅されているのだ。
まあ、気に入られていることも確かなのだが・・・
「でも、よかったわ。二人ともやっと学校に行く気になってくれたのね」
「何言ってるの?お母さん。私は行かないよ。
そりゃあ、へんなことにはなったけど、私の作ったYU-MIxx2TYPEに不備はないの。
誰が見ても不審な点はないはずよ。祐麒のYU-KIzz1TYPEとはわけがちがうんだから。
だから私は学校に行かなくてもいいの」
「祐巳・・・それは言わないでくれ・・・・・・」
「こら、祐巳ちゃん。あなたも学生なんだからせめて週1回くらいは学校に行きなさい。
もう随分行ってないでしょう?ちゃんと行かなきゃだめよ。
それに、薔薇の館に出入りするとなるとかなりの注目の的となるわよ?
YU-MIxx2TYPEに任せっぱなしで本当に大丈夫なの?」
YU-MIxx2TYPEに抜かりはない。それは大丈夫だろう。
でも、そうだな・・・
祐巳は考えていた。
この前学校に行ったのは一体いつだっただろう。
確か身体測定を受けた時だから、あ、もう半年も経ってる・・・
お母さんに言われたからじゃないけど、明日あたり行ってみようかな。
「わかった。明日は学校に行くことにする。
祐麒もそんなに落ち込まないで。後でYU-KIzz1TYPE、診てあげるから」
さて、ここでようやく福沢家の話をするとしよう。
福沢家の両親、祐一郎とみきは超一流の科学者である。
二人の子供である祐巳と祐麒は、両親の才能をしっかりと受け継いでいた。
祐巳に至っては両親以上。いや、それどころではない。天才だ。
祐巳を天才と言わず、誰を天才と言うのか。
それはそれはずば抜けた才能を持っていた。
現代ではまだ無理だとされている人型ロボット。
それを祐巳は初等部の頃に作り上げてしまった。
それも、学校に行くのがめんどくさいからなどという理由で。
それ以来祐巳は、学校へはYU-MIxx2TYPEと名付けた、祐巳そっくりの人型ロボットに行かせていた。
もちろん、祐巳自身が学校に行く日もある。
そのためにYU-MIxx2TYPEには記録装置がついている。
それを見ているので、祐巳は学校であった出来事は全て知っているのだ。
祐巳が作ったロボットは、誰が見ても人間としか思えないものであった。
これは一世一代の発明だと誰もが口を揃えて言うだろう。
なのに何故か世間に公表されていない。
それは単に、福沢家の面々は騒がれることが嫌だから。
ほんと、実に勿体無い話である。