【2684】 貴女に傍にいて欲しい  (さおだけ 2008-07-03 11:59:51)


本編での祥子の見る夢のおおまかな内容です。

祐巳編  【】 弐 【】
蓉子編  【】 弐 【】
祥子編  【No:2680】 弐 【ここ】
乃梨子編 【No:2672】 弐 【】
由乃編  【】

本編 【No:2663】→【No:2664】→【No:2665】→【No:2666】→【No:2668】→【No:2669】→【No:2673】
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私が【あの子】を妹にしたのは、本当に偶然以外なにものでもなかった。
紅薔薇さま、つまりはお姉さまに挑発され、シンデレラを降板したいと叫んだ直後。
偶然にも、現れたのだ。
【妹】という降板するためには必要な存在が、そこに。
ツインテールで、本当にどこにでも居そうな子だった。

それから紆余曲折あったものの、私と【この子】はとても仲良く進展していった。
土日によく一緒に出かけたし、お互いの家で泊まったりもした。
【あの子】に妹が出来てからもちっとも変わらなかったし、3人でよく遊びにいった。
仲の良かった私達に亀裂が入ったのは、出会ってから3年後。
そう、たしか3年が経って、【あの子】が一人前に薔薇を努め終わった、その後。

私と【あの子】が喧嘩をした。
【あの子】は私に憤りを感じたのか、掴んだ手を振り解いて足を踏み出した。
私の視界の端にスピードを出したトラックが映ったのは、【あの子】の姉だからだろうか。
私は【あの子】を突き飛ばす。
遠慮なく突き飛ばし、今度は私が何かによって飛ばされた。

強すぎる衝撃は、私の身体の所々から不気味な音を響かせただけだった。
痛みはない。きっと脳が気を利かせてくれたんだと思う。
衝撃を受けた瞬間になったのは、ただ視界が白一色に染められただけ。
地面に叩きつけられた気がする。
力の入らない身体。皮膚には濡れたような感覚。
【あの子】は私の頭を抱えて、何かを必死に行っていた。
止血しているのか。それとも抱き上げただけなのか。

ごめんなさい。

悲痛な声が聞こえた。
その声は私の胸を締め付けて、私は唐突に息苦しくなる。
それでも、私の中には【この子を助けられた】という満足感しかなかった。

ごめんなさい。

どれだけ【あの子】が泣いていても、私は仕方ないわね、という思いしかない。
それは、私の命なんかよりもよっぽど【この子】の方が大切だったから。
世界で一番大切なものを守る事ができた。
私はただ、満足していた。―――その言葉を聞くまでは。

ごめんなさい、私が、貴女を殺しました。

違う。何を言っているの。
私の中では【守った】と=で【殺した】という単語が繋がっていなかった。
私の事なんて棚に上げて、全てをやっと理解した頃には、もぅ遅すぎた。
【この子】は自分の為に私が死んで、喜ぶような子じゃない。
だから私が本当に【満足】できるのは、自分と、【この子】を守れた時だけだったのに。

ごめんなさい、ごめんなさい。

ああ、何か声を掛けたいのに声が出ない。
少しだけ、少しだけでいいのに。【この子】に一言、言ってあげたい。
ぼやけた視界では、【あの子】が自分の首を絞めていた。

   止めて……

ごめんなさい、お姉さま。

   止めなさい、お願いだから―――!












それからの記憶はない。違う、意識がないのか。
私は白くなった世界を憎んだ。
こんな事をしたくて【あの子】を助けたわけじゃないのに。
【あの子】が幸せになるために助けたのに、自らを殺めるなんて……!

私は自分を呪った。

私は自分を憎んだ。

またどこかで会えたなら、私はきっと、今度こそ貴女を守ってみせるのに―――!



  ■ ■ ■



「祥子、どうしたの?」

「あ………」

私はぼんやりしていた。
後から声をかけてくれたお姉さまは、なんだか心配そうに私を見ている。
黒髪の、ショートカットのよく似合う、私のお姉さま。
私は何を考えていたのだろうか。
自分で首をかしげると、お姉さまは苦笑された。

「そうだ祥子、貴女そろそろ妹を作りなさい」

「いもうと……?」

カチリ。
ああ、何かがはまった音がした。
どこかで鳴ったそれは、私の心を深く締め付けた。

「さ、祥子!?」

「ぁ……」

瞳から流れたのは、雨。
いつまでも止まらないそれを自分で拭って、私は困惑する。
どうして、こんなに悲しいのだろうか。

そして、私は高校に、このリリアンにいる間は妹が作れなかった。
どの子を見ても【違う】と感じてしまうのだ。
どうして。
私は【誰】を探しているの?



















また、どこかで。
私はベンチで寝ている少女を見て、泣いた。

会いたかった。ずっと、【貴女】に逢いたかった―――!

また雨が止まなくなって、私の【今】が始まった。









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