【2711】 ちょっと泣いてました  (通行人A 2008-07-19 10:32:04)


マリア様のなく頃に
〜狂始め編〜


『ひぐらしのなく頃に』のクロスシリーズです。


このSSシリーズは乃梨子主役のダークSSです。
暴力的なシーンが含まれます。
苦手な人はご注意ください。


【No:2670】→【No:2698】の続編です。


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〜時始め編〜


第1部【No:2477】→【No:2479】→【No:2481】→【No:2482】→【No:2484】
  →【No:2487】→【No:2488】→【No:2490】→【No:2492】→【No:2499】
  →【No:2503】→【No:2505】→【No:2506】→【No:2507】


第2部【No:2527】→【No:2544】→【No:2578】→【No:2578】→【No:2587】
  →【No:2643】→【No:2648】


第3部【No:2656】→【No:2670】


企画SS
 【No:2598】


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第1部   抑えきれない想い


最終章   狂始め





第2話   足音





それは圭兄も無事退院して、
しばらくたったある日曜日の事だった。



私は近くの書店に、
仏像の写真集の新刊を買いに来ていた。
写真集を持って帰り道の途中向かいの通りで、
圭兄が歩いているのを見た。


私が圭兄にここから声をかけようとすると、
圭兄のそばに女の子が居るのが見えた。
私の親友にして圭兄の恋人である古手梨花


私は梨花が圭兄と付き合っていることを聞いたときは、
特に何とも思わなかったと言えば嘘になるが、
自分でもそれなりに納得していた。
もともと、諦めかけていた初恋なのだから。
だが雛見沢から帰ってきたあたりから、
2人の仲がいいことを思い知らされるたびに心が痛い。
花寺との打ち合わせで2人の話題が出たとき、
体育祭の昼休みの食事の時間、
リリアンの学園祭で見かけた学園祭デート、
あげていったらきりがないけれど、
花寺の学院祭以来特に酷くなったと思う。
理由はわかっている。
あの時、圭兄が庇ってくれたことで、
吊橋効果も手伝ってか、
昔以上に圭兄に恋焦がれてしまったのだと思う。
そして今でも覚えている、
またあってほしいとは思わないけれど、
全身に浴びた圭兄の生暖かい血の感触
叫んだときに口に入った圭兄の血の甘美なる味


はっ、私ったら何考えているのだろう
気が付くと、2人とも居なくなっていた。


そこに、

ポツ、ポツと雨が降ってきた、
私は写真集を抱え、走って家に帰った。





その夜、私は夢を見た
それは陳腐な悪夢で圭兄と梨花のデートを
私が遠くから眺めているというものだった。
私は飛び起きてそれが夢であったことを知ると、
私は胸を撫で下ろした。
そして、ポツリと言った自分でも驚く事を呟いた。

乃梨子「リカナンテイナクナッテシマエバイイノニ」

重症だ、親友のことをそんな風に言ってしまうなんて、
顔を洗って心を落ち着けよう、
そう思って、洗面所に向かった、


ぺたぺたぺたと私が歩くと、
『ペタペタペタ』と足音が響く、

ぺたぺたぺたぺたぺた
『ペタペタペタペタペタ』

私はふと、洗面所にハンドタオルが置いてないのを思い出し、
足を止めた。
すると、

『ペタ』

足音が1つ多く響いた。

私は振返ってみたが、誰も居なかった。
私は、気のせいだろうと自分に言い聞かせながら、
早足でタオル置き場に向かった。

ぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺた
『ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ』

ぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺた
『ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ』

ぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺた
『ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ』

洗面所にたどり着くと足を止めハンドタオルを手に取った。

するとやはり、

『ペタ』

と足音が1つ多く響いた。


私は、ハンドタオルを握り締めたまま、
顔を洗うのを諦めて自分の部屋に向かった。
走りながら、私は自分の持っているタオルを見た。


私がこのタオルを手にとったのは、
運命なのか、それとも無意識なのかはわからない


このタオルは、昔親戚一同の集まりのとき、
私は熱を出してしまった。
その時、圭兄が私の看病に使ったのがこのタオルだった。
以来、私が体調を崩したり、何か嫌な事があったときは、
いつもこのタオルを抱きかかえて過ごした。


私は走った。
ただただ、自分の部屋に向かって


どたどたどたどた
『ドタドタドタドタ』

どたどたどたどた
『ドタドタドタドタ』

どたどたどたどた
『ドタドタドタドタ』


私はタオルを胸に抱え、部屋に飛び込んだ
部屋に入ると頭から布団を被った。

『ペタ』

足音は私の枕元で1度して止まった。


すると今度は、
何だか聞き覚えのある女の人の声で、

『ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、
 ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、
 ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、
 ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、
 ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、
 ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、
 ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、
 ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ』

それは翌朝目覚まし時計が鳴るまで続いた。





【No:2713】へ続く


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