【2744】 道に迷ったらそれいい思い出じゃ  (ケテル 2008-08-31 21:02:14)


63 Edicion Vuelta Ciclista a Espana!


 前回【No:2710】→【 これ 】


S−3 神代植物公園から野川公園の間…とか……たぶんその近辺…
 Un point de vue noriko

 
 5月の清々しい青空の下、気持ちのいいサイクリ…いや、ポタリングだったわね、ポタリング、スピードを緩めて古い何を商っているかわからない小さなお店を恐々観察したり(古民具を扱っているお店だった)、きれいに咲いている花壇を見てデジカメで写真を撮らせてもらったり、前を走る志摩子さんのお尻を観察したり……。

 祐巳さまからお借りした自転車は、私のでも2年前の、由乃さまのは4年前の物だそうだけど良く整備されていてピカピカ、志摩子さんも由乃さまも当然私も軽快に動かせる自転車に上機嫌、初めのうちは前傾姿勢がちょっと怖かったけどすぐ慣れた、祐巳さまが乗ってらっしゃるロードバイクよりは、まだ姿勢は楽だと思う。

 『たいした物じゃない』って祐巳さまは言ってらしたけど、そのたいした物じゃない自転車でこれだけ軽くてスピードが出るって事は、祐巳さまが今乗ってらっしゃるロードバイクだと、もっとすごいって言うことなのかな?

 〜ただ〜………


「え〜と…だから、たしか……ここを右に曲がったでしょ、で〜、この交差点も右で、ここは左だったはずだから……現在位置って…この辺じゃあない?」
「ここの交差点は左じゃあないかしら? それにこことここ、まっすぐだったように思うけれど…」

 え〜〜と〜、迷ってます。 私のせいじゃあないですよ。 もちろん志摩子さんのせいでもない。

『方向分かってるから大丈夫よ!』

 と言う由乃さまを先頭に野川公園に向かっているところ……のはず、だったんだけど。

 今現在どこかの住宅街のどこかの交差点、どこをどうすれば、このおそらくはとても狭い範囲で迷えるんだろ。 由乃さまが方向音痴という話は聞いた覚えはないんだけど。
 志摩子さんと由乃さまはタオルで汗を拭きながら地図を見て、周囲に”?”マークが3個くらい飛んでるし、祐巳さまはおばさんみたいな手付きして携帯でどこかに電話してる。
 汗を拭きながら、出掛けに祐巳さまから渡されたボトルから水を一口飲む、汗は出るけれど呼吸も心臓もすぐに平常時と変わらない感じ、祐巳さまのアドバイスで無駄な力を使ってペダルを踏み込んでいないからか、まだまだ余裕もある、けれど……もうしばらく出発する気配は無い。


  ・  …  ・  …  ・  …  ・  …  ・


 神代植物公園までは祐巳さまが先頭で順調に到着した、まあ寄り道はしたし公園の外周をぐるっと一回りしたけど。 でもそれはわざとそうしたらしい、二つに分かれている園の間に一般道が走っているんだけどそこが郊外の林間を走っているようで……ま、あんまりそんな経験無いんだけど……、桜の花は残念ながら散っていたけれど、それでも出来掛けの緑のトンネルを走り抜けるのは気持ちがよかった。
 売店でバラの匂いのするソフトクリームを買って食べながら園内を散歩して回った、ツツジや藤の花がきれいに咲いていて、もう少しゆっくり見ていたかったな〜。 ただ、”春のバラフェスティバル”が来週からなのはちょっと残念。


  ・  …  ・  …  ・  …  ・  …  ・


『20Km/h〜25Km/hの間くらいで走らせるから。 走るのは車道、進行方向左側の端1mくらいのところと自転車通行帯、あと走っていいっていう標識がでてる歩道ね』
『標識?』
『人と自転車が描かれてる青い標識ね。 ちなみにベル付いてるけど歩行者を追い立てるのはマナー違反だからね、止む終えず歩道を走る時は歩行者優先で、すぐに止まれるくらいの速度で徐行すること』
『なんで付いてるんだろ……。 それにしても25Km/hって結構早いんじゃない?』
『まあ、まあ、いいからいいから(^▽^)』
『祐巳、ここで”ウッーウッーウマウマー”ってやっても映像が無いからうけないと思うわ』

”あれはちょっと恥ずかしかったわね〜””え〜、結構いい出来だったけどなぁ〜””ニコニコだとメッセージが流れるからちょっと見にくいのよ”……何のことだろう?

 ”自転車で25Km/hもスピード出るの?”とか、”車道を走るのはちょっと怖いわね”と思ったけどそんな事は無かった、いや、最初のうちは怖かったけど、先頭の祐巳さまが自動車の流れ読んでうまく誘導してくれた、時々先頭から離れて三人にいろいろとアドバイスをしてくれた。
 並走はしていない、車道でそんなことしたら自動車の邪魔になってしまう。 歩道でも並走したら道路交通法違反で2万円以下の罰金なんだそうだ、知らなかった自転車って軽車両なのね。
 スピードに関してはすぐに25Km/h出せた、体感でも自分の持っている自転車より軽くスピードが出ているのが分かる、スピードメーターも付いているから数字でも分かる。

 でも、その速度を維持できないでいた。 前を走っている志摩子さんも、そしてその前を走っている由乃さまも、おそらくスピードが一定ではない。 ペダルを踏み込んで加速したり、ちょっとブレーキをかけたり、それに追突しそうで車間距離がつかみづらい、でも…。

『ギアを一か二つ軽くして、力でペダルを踏み込むんじゃあなくて、力を抜いて回転させるように意識してスピードを維持するようにね〜』

 ギアを軽く…ギアチェンジに手間取った、ブレーキレバーを上に捻るんだった。 最初”軽すぎる”と思った、力を入れないでペダルを回転させる…。

『本当は1分間に80〜90回は回したいところだけど、すぐには無理だしケイデンス計付いてないはずだからいいわ』
『80〜90回? ケイデンスってなんですか?』
『ペダルを1分間に80〜90回転させるの、負荷が軽いから長時間ペダル漕げるんだよ。 重いギアを踏み込むと一時的にスピードは上がるけど速度を維持するのが難しいの、膝を壊しやすいし足の筋肉が太くなっちゃうの。 ペダルの回転数の事をケイデンスって言うのよ』

 ギアとかって付いてても今一意味分からなかったけど、なるほどこう使うのね、たかが自転車と思っていたけどいろいろあるのね。 でも、なんか……猛烈に顔が熱くなってくるんですけど、上半身が火照ってくる、ブラの辺りがすごく暑い! 古着で買ったスタジャンのジッパー3/4まで下げ、ポロシャツの胸元のボタンを一つ外し袖のボタンも外した、スリップ着て来たの失敗だったかな。

『変速機は楽に漕ぐためにあるんだから、どんどん変えていいんだよ。 ちょっと車間空けて』

 そういいつつ私を追い越して、今度は私の前を走る志摩子さんの後ろに付く。

『志摩子、もう少し猫背の方がいいよ、上半身をハンドルに預けすぎてるから疲れやすいよ』

 志摩子さんにされたアドバイスを自分もやってみると、手の平に伝わってくる振動がだいぶ減った、軽く支える程度で問題ないみたいんだ。 日舞をやっていて姿勢のいい志摩子さんはちょっと苦手な姿勢かもしれない。

『もうちょっとかな……そそ、そんな感じ、今日くらいの距離だったらそれでOK………もう少し気楽に…ね。  あ! 由乃〜、スピード緩めて! 前に止まってるバスすぐに発車すると思うから』
『O〜K〜!』

 祐巳さまに声を掛けられた先頭の由乃さまがスピードを緩める、自動車が2台私たちの横を通り過ぎて止まっているバスをも追い越していく。 一台目の車は男性ドライバーのようだったけど充分な幅を取ってくれて怖くなかったんだけど、二台目の女性ドライバーかな? 反対車線に車はいなかったのにすぐ横30cm位の所を通り過ぎて行った。 吸い込まれるような感覚があり少し怖い思いをした。
 後で聞いた話だと、一部のドライバーは安全距離を充分取ってくれないことがあるらしい、”自転車が邪魔”と言う人もいるらしい。 ”安全距離の事をすっかり忘れている”という教習所で何を習ったのかという人もいる。
 停留所に止まっていた路線バスは程なく祐巳さまの言った通り右ウインカーを出して発車した。

 ”平均点の女王””脳の主成分はカスタードクリーム”っと認識していた祐巳さまだけど、こと自転車に関しては、その辺を改めなければならないらしい。。


  ・  …  ・  …  ・  …  ・  …  ・

 〜 * 〜 まあそれはともかく 〜 * 〜

「あらら〜、まだやってるんだ」

 通話を終えた祐巳さまが、由乃さまと志摩子さんの方を見て言う。

「どこに電話されてたんですか? 祐巳さま」
「うん、祐麒にね。 ちょっと迷ったから時間かかるって」
「はぁ…そうなんですか。 祐麒さん来れるんですか?」
「お昼ご飯の配送を頼んだの野川公園の方にね。 由乃にも教えなくっちゃね」
「あの、祐巳さま。 その携帯にはGPSは付いていないんですか?」
「付いてるけど?」
「だったらGPSで現在位置を特定すれば、すぐにこの状況を解消できるじゃないですか。 このままだと永遠にあのままのように思います。 飛んでいる”?”の数がふえてますし……」」
「そうね。 でも、今日これは使わないの」
「は?」
「は〜い2人とも〜」

 携帯を閉じた祐巳さまが、地図を見て悩んでいる志摩子さんと由乃さまの間に肩を組むようにわって入った。

「地図なんて現在位置が分からなければただの紙切れなのよ〜。 迷っていいのよ、それもポタリングなんだから」
「…なにそれ?」
「…迷ってもかまわない?」
「うん、そう。 で、由乃の感だと野川公園は多分どっちなの?」
「え〜?!」
「そろそろ祐麒も着くみたいだし。 まあ1時間や2時間くらい待たせても文句言わせないけど。 由乃のラブ・レーダーで探知できない?」
「ゆ、祐麒くん来るの? ってラブ・レーダーって何よ/// えぇぇ〜〜えと…」

 いやいや、そんなに待たせちゃあさすがにまずいでしょ。 どんな手を使うのかは分かりませんけど。

「ぇえ〜〜〜〜? ぁあ…え〜〜と、え〜〜と〜〜〜………」

 なんか祐麒さんの匂いでも嗅ぎ分けようとするように鼻をヒクヒクさせている由乃さま。 それは無いでしょう犬ですかあなたは。 

「…あっち……うん、あっちよ!」

 言い切ったよこの人。 ほんとにラブ・レーダーでもついてるんだろうか?

「じゃあ、その方向で。 …あ、ねえねえ、あのお店ちょっと寄っていかない?」

 祐巳さまが指差す所に、なんでこんな駅からもバス停からも、大通りからも離れている住宅街にあるのかって言うような駐車場も無い小さな雑貨屋さん、もちろん近くにコインパーキングとかの有料駐車場の類は無い。 経営成り立つんだろうかと心配になるけど、ってか趣味でやってるだけ?


 雑貨屋さんを後にしてから、また少し迷走した後、なぜだか調布飛行場にたどり着いた。 
『早く行きましょ!』と意気込んで主張している由乃さまを尻目に『まあまあ、いいからいいから。 ちょっと休んで行こう』と言って”空港施設道路につき関係者以外の立ち入りを禁止します”という看板が出ているにもかかわらずズンズン中へ入っていく祐巳さま、禁止の看板の横をビクビクしながら一本道を右に曲がるとその先には”プロペラカフェ”という看板が見えた。

「うわうわ、なにここ?! いいの? 入っちゃっていいの?!」
「一般開放されてるから平気だよ」
「すごいわね、飛行機を展示しているのね」
「展示じゃあないのよ、あそこは格納庫。 ここは格納庫に併設されてるカフェなんだって。 で、奥の窓のすぐ向こうは滑走路、その先が味の素スタジアム」

 セスナ機が一機と双発プロペラ機が一機、整備士さん達がエンジンの調整や翼の点検をしているのが手が届きそうな距離で見える。
 エンジン音が高まった方を見ると、窓の外の滑走路を双発プロペラ機が離陸していく。 
 白を基調としたお洒落な雰囲気の店内には飛行機の模型、図画なども展示されている、なにあれ、フライトシミュレーター? なんか…ねぇ〜、志摩子さんも由乃さまも、そして私も、特に飛行機が好きという訳ではないのだけど、普段見られないものが、すぐ近くで見られるとなるとやっぱり好奇心に駆られると言うのかなんと言うか……。

 しょうがないわよね〜。



 野川公園には、まだしばらく着きそうもない



                     〜〜〜〜第二話 了〜〜〜



施設とかその他

○神代植物公園
http://www.kensetsu.metro.tokyo.jp/seibuk/jindai/

○プロペラカフェ
http://malibu.jp/index.htm

○マリみてでウッーウッーウマウマ(YuoTube低解像度版)
http://jp.youtube.com/watch?v=yV1NNUU4IYM


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