某月某日、チベットはラサ、マルポリの丘に立つポタラ宮にて、一人の高僧が、空を見上げながら呟いた。
「むぅ、終に……!!」
時を同じくして、イギリスはスコットランド、昼尚暗い深い森の奥にて、一人のドルイドが、ヤドリギの葉を見て驚きの声を上げた。
「ま、まさか……!?」
時を同じくして、南米はペルー、クスコの小さな村の片隅にて、失われたインカの神官の末裔が、ビラコチャの像を見て呟いた。
「時は来た……!!」
時を同じくして、インドはガンジス川沿い、聖地ワーラーナシーにて、ヒンドゥーの司祭が、流れる川の水面を見つめて囁いた。
「ああ、やっと……」
時を同じくして、イタリアはローマ、バチカン市国のサン・ピエトロ大聖堂にて、ローマ教皇が『ピエタ』を前に祈りながら、涙を流して呟いた。
「神よ……」
そして日本は武蔵野、リリアン女学園高等部のマリア像の前にて、二人の少女が見つめ合っていた。
「お受けします」
「ありがとう」
静かに交わされた、神聖な儀式。
ワルツのステップを踏む二人を、月とマリア様だけが見ていた。