このお話は【No:67】【No:243】と関連したおはなしです。できれば【No:67】【No:243】を先に読んでください。
乃梨子。乃梨子からも、祐巳さまに言ってやってください!」
私がビスケット扉を開けたとき、いきなり瞳子が詰め寄ってきた。
「なに? どうしたの?」
前にも似たようことあったよな……。っていうかまたかよ。いい加減巻き込んで欲しくないんだけどなあ。
そう思いながら、私は瞳子をのけて中をのぞいた。
中には、当然祐巳さまがいた。
「ごきげんよう 乃梨子ちゃん。瞳子ちゃんと同じ髪型にしてみようと思ってがんばってみたの。どう?」
「どうって……」
今回ばかりは、前みたいに瞳子を生け贄にすることが出来なかった。だって、その髪型を見るだけでは、祐巳さまの意図が全くわからなかったから。
「それは何ですか?」
「えっとね、右側が木の盾で、左側が皮の盾」
「どこでそんな物を?」
「えっとね。鎌倉。大仏様の近くの武器屋さんで売ってたの」
改めて、祐巳さまの髪型を確認する。
瞳子と同じ髪型にしたとおっしゃっていた祐巳さまは、いつものツインテールに右側に木の盾、左側に皮の盾ぶら下げていて、その二つの盾は風に煽られ、右に左にくるりくるりと回転していた。
「一体それがどうして、それが、瞳子と同じ髪型になるんですか?」
前のドリルやにんじんならまだしも。盾では雰囲気が全く違うではないか。何度眺めても、祐巳さまが盾をつけている意味がわからなかった。
「え? わからない? 瞳子ちゃんといえば、盾ロールじゃない」
祐巳さまは、いつものように、春の日差しのような、柔らかいほほえみを浮かべて私に言った。
次の瞬間、瞳子が祐巳さまの盾ロールを使い、シールドアタックでぶちかましを行ったのを、私は見なかったことにした。