【2765】 想いは募る  (通行人A 2008-10-08 23:25:27)


宇宙人もみてる


ケロロのクロスです。
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企画SS
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スール誕生3部作 第2部祐巳・乃梨子です。


この作品は途中で視点が祐巳→乃梨子→祐巳に切り替わります。





祐巳と乃梨子のスールになるまで





今日は、薔薇様方は入試、
志摩子さんは家の用事で休み
私たちは、山百合会の仕事を午前中で切り上げる事にした。



M駅に出るとおかっぱ頭の少女が男たちに絡まれて困っていた。


男1「いいじゃん、行こうよ」


乃梨子「ですから、行きません。
    いいから離してください。
    私、用事があるんです。」


その子のバッグから、
リリアンの書類がはみ出していた。
今日は確か外部受験の日だったけ、
この子は受験生なのだろう。
まったく、あの子も災難だねぇ
私は、その子と男たちの間に入って、


祐巳「いい加減にしてもらえませんか?
   1人の女の子を3人で囲んで、まったく」


男2「あれ?この子、確か白薔薇のつぼみじゃねぇ?」


男3「へぇ〜〜、白薔薇のつぼみも一緒に遊ぼうよ」


そう言って私の手を掴んできた。
私は、その手をこっちも掴み、
引っ張って、
男の体がこっちに来たところに肘打ちを男の鳩尾に叩き込んだ。


男2「がっ!?!」


思いのほかダメージが強かったらしく男が蹲った。
それを見て他の2人は呆気に取られた。
その隙に、私は少女の手を引いて走った。


祐巳「こっち」


乃梨子「え?え?」


私たちはそのまま逃げきった。


乃梨子「はぁ、はぁ、あり、はぁ、とう、はぁ、ござます」


祐巳「いいから、とりあえず息整えて」


数分後、


祐巳「落ち着いた?」


乃梨子「はい。
    二条乃梨子と申します。
    助けていただいてありがとうございます。」


祐巳「私が勝手に助けただけだから気にしなくてもいいよ。
   あ、私は福沢祐巳ね。
   よろしくね、未来の後輩さん」


乃梨子「え?」


祐巳「ほら、リリアンの書類がはみ出てるよ。
   今日は外部受験の日だから
   あなたも受験生の1人でしょう。」


乃梨子「よく見てますね。
    でもリリアンに行くかはわかりません。
    滑り止めなので。」


祐巳「あ、そうなんだ。
   第一志望に受かるといいね。」


乃梨子「ありがとうございます。」


祐巳「そういえば、予定があるって言ってたけれど、
   どこ行くつもりだったの?」


乃梨子「あ、はい、小寓寺に行こうと思ったのですが、
    道に迷ってしまって、
    そしたら、さっきの人たちに絡まれまして」


祐巳「それなら、私が送ってあげようか?」


乃梨子「いいんですか?」


祐巳「特に予定ないし、別にいいよ。」



そして、私たちは小寓寺にたどり着いた。
乃梨子ちゃんが仏像を見に行っいてる間、
境内を見て回った。
すると、着物を着た女性が、


志摩子「ただいま戻りました」


と言って住職の家に入っていった。
私はその人物をよく知っていた。
同じクラスで、紅薔薇のつぼみの妹である。
藤堂志摩子さんだった。


祐巳「そういう事」


彼女はいつも、自分はここには居場所がない。
みたいな雰囲気を纏っていたけれどその理由がわかった。






私が戻ってくると、祐巳は売店に居て何かを買っていた。


乃梨子「お待たせ」


祐巳「そんなことないよ」


乃梨子「何買ったの?」


祐巳「お守り」


そう言って見せてくれたのは『家内安全』のお守りだった。


乃梨子「家内安全ってなんか学生っぽくないね」


祐巳「乃梨子ちゃんの仏像鑑賞が趣味も学生っぽくないよ
   きっかけは何だったの?」


乃梨子「きっかけ?
    きっかけは従兄弟なの。
    昔、従兄弟と仏像を見たんだよ。
    その時従兄弟がしてくれた仏像の解説を聞いてて
    面白っかったんだよね
    もっとも、6年前にもう・・・」


あの人の事を思い出したせいなのか、
気落ちしていると、
祐巳が私の頭を撫でて、


祐巳「悪いこと聞いちゃったね、ゴメンね。」


そう謝った。
その撫でる手は、
あの人のように乱暴でなく・・・包み込むような優しいものだった。
私はこの時、恋をしてしまったようだ。
頭を撫でられて恋に落ちるとは、
何とも変な話だがしてしまったのだからしょうがない。
私はそっと祐巳さんの顔を覗き見ると、
見ているこっちが悪く思えるくらい失言を反省していた。
祐巳さんにこんな表情してほしくない私は、
このまま撫でてもらいたい気持ちを抑えて、


乃梨子「気にしなくていいよ」


そう言って笑った。
それからたわいもない話をしながらM駅まで送ってもらった。
別れ際、メアドを交換できたときは舞い上がる気持ちを抑えるのに必死だった。



数日後、私は第1志望の入試をわざと受けなかった。
万が一受かってしまったら祐巳と違う学校になってしまう。
(リリアンは自己採点で合格することはかたいだろう)
この時白紙で出すという考えは浮かばなかった。
ちょうどいい具合に、京都で玉虫観音の展示をやっている。
そこに行って、帰りの切符をなくしたといって
向こうでもたもたして試験に間に合わなくて落ちるという筋書きだ。
半ば諦めていた玉虫観音も見れるしいいこと尽くめだ。
もっとも帰りの大雪でほんとに帰れなくなるとは思いもしなかったが・・・
祐巳には第一志望の入試は京都にいって
帰りの大雪で受けられなかったと伝えた。
祐巳に笑われたが今はそんな事気にならない。
それよりもいかにして話に聞くスールとやらを祐巳さんと結ぶかだ。
山百合会とやらには興味ないが、
それで祐巳といっしょにいられるならやってみてもいいと思う。
実ることのないこの思いを妹という形でぶつけることが出来るのならば






私は乃梨子ちゃんに恋心をいだいた。
それはたぶん一目ぼれなのだと思う。
乃梨子ちゃんが受けられなかったと聞いて私は笑ったが、
不謹慎かもしれないが内心良かったと思った。
だって私は女で乃梨子ちゃんも女
実ることがないのなら少しでも一緒に居たいから
せめて乃梨子ちゃんに恋人が出来るまで・・・


乃梨子ちゃんのリリアンの合格は確実だ。
前に一緒に自己採点をしたのだから間違いない。
それどころか主席入学も可能なんじゃないかと思う。
乃梨子ちゃんのもとにリリアンの合格通知が届いたら
ロザリオを渡そうと思う
新学期が始まる前に・・・誰も手が出せないうちに・・・




それから1週間後、私たちは姉妹になった。






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