【2780】 困ったときの桂さん  (篠原 2008-10-30 01:31:18)


『卒業前小景』より?


「どうしろとっ!?」
「祐巳さん?」
「いきなりどうしたのよ?」
 突然の祐巳の奇声に、同じく薔薇の館にいた志摩子と由乃はそれぞれに驚いた様子の反応を返した。
「だって桂さんのエピソードがあるってどーゆーこと? しかも結構いい話だ! ありえないよ。この世の終わり?」
「まあ、それは大変ね」
「……私が言うのもなんだけど、あいかわらず酷いわね。2人とも」
 いつものように平然と頷く志摩子に、一人自分だけは酷くないとでも言いたげな由乃である。
「……っていう、いつもの桂さんネタをやろうと思ったんだけどね」
「あら?」
「やったよね、今。おもいっきりやったよね」
 何故か不思議そうな表情をする志摩子と、思わずという様子で口を挟む由乃だった。

「いや、桂さん出てきたらネタにしないといけないじゃない」
「ああ、なるほど」
「いけないんだ? ルールなの? っていうか志摩子さん、納得するところ?」
 普通に納得する志摩子と、普通につっこむ由乃だ。
「でもほら、最近なんか妙に普通にでてくるから、今更ネタにするのもむしろ不自然?」
「ええ、そうね」
「まあ、私も飽きたしね」
 興味無さげに頷く志摩子、ぽろりとホンネが出た由乃。
「そういえば、」
 食い付きが悪いと見てか、祐巳は無理矢理話題を変えた。
「志摩子さん、桂さんのことちゃんと認識してたんだね。ちょっと意外だったかな」
 変わっていなかった。
「桂さん? クラスメイトの名前くらい、覚えていて当然でしょう」
 何を言うの祐巳さんたら。と言わんばかりの様子で笑顔を浮かべる志摩子。
「いや、ホントに失礼だよ祐巳さん。クラスメイトなんだから」
 でも目は笑ってないよねぇとばかりにフォロー? を入れる由乃。
「そ、そうだよね」
「ええ、あの席は桂さんの席だったわ」
「……えーと」
 一瞬、つっこみに躊躇する由乃。
「それ、座席表を暗記しているだけとかじゃ」
 そして言っちゃった祐巳。
「そんなことより祐巳さん」
「そんなことって……まあ、志摩子さんにとってはそうか」
「な、何かな? 志摩子さん」
 もはや会話の流れはぐだぐだである。
「終盤はなんだか懐かしくて、とても良い雰囲気だったわね」
「ああ、そうね。私も昔のことをいろいろ思い出したわ」
「うんうん」
 2人の言葉に祐巳は嬉しそうに頷いた。
「走馬灯のような、というのかしら?」
「いや、それは! なんか縁起悪いから!」
 どうやら、由乃は今回つっこみ役にまわることにしたらしい。
「でもあの盛り上がりとか、まるで完結直前! みたいな雰囲気だよね。………ええっ!」
「やっぱり桂さん? が活躍したせいなのかしら」
「結局そのオチか」


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