【2878】 ツンデレ節が炸裂お腹が空いちゃったサバイバル乃梨子  (bqex 2009-03-10 01:36:05)


パラレル西遊記シリーズ

【No:2860】発端編
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【No:2864】三蔵パシリ編
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【これ】
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【No:2894】聖の嫁変化編
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【No:2910】志摩子と父編
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【No:2915】火焔山編
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【No:2926】大掃除編
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【No:2931】ウサギガンティア編
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【No:2940】カメラ編
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【No:2945】二条一族編
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【No:2949】黄色編
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【No:2952】最終回



 私、二条乃梨子は三蔵法師として、佐藤聖さまの孫悟空、水野蓉子さまの猪八戒、鳥居江利子さまの沙悟浄と共に天竺に向かっている。

「はあ〜」

「どうしたの?」

 蓉子さまが私のため息を聞いていたらしく話しかけてきた。

「この前遭遇した魔物が『三蔵法師を食べたら不老不死になる』って言ってたんですよね。もし、そんな与太話が広く流れてるなら、これからの旅は危険だな〜って……」

「あら、西遊記の世界なんだからそれでいいんじゃない? 三蔵法師は何もしなくていい、そこにいるだけでいいのよ。だから、難しく考える事はないわ」

「そうなんですか?」

「……万が一の時はごめんなさいだけど」

「万が一は嫌です! 断じて!」

 冗談なのか本気なのか。

「あら、『三蔵法師が』って噂が流れてるなら、これから三蔵法師って名乗らなければいいのよ」

 江利子さまが会話に加わった。

「次の村では玄奘とでも名乗ってみたら?」

「確かにそうですね。わかりやすいから『三蔵法師』って名乗ってましたが、よくよく考えると、リリアンで『薔薇さま』って名乗るみたいなものですよね。じゃあ、次からは玄奘と名乗る事にします」

 と、いう事で私、二条乃梨子は玄奘として旅を続ける事にした。

 次の村に着いた。

「すみません、旅の僧侶の玄奘と申します。この村に泊まるところはあるでしょうか?」

「おお、我が家に立ち寄ったのも何かの縁。ぜひ、もてなしをさせてください」

 たまたま話しかけた親切な村人の提案で私達は1泊出来る事になった。
 家の主人は御馳走で私たちをもてなしてくれた。

 夜。

 寝ていると家の主人が入ってきた。

「グフフ……玄奘を食べると願いが叶うらしいなあ」

「え!?」

 家の主人は魔物だった。みるみるうちにナメクジに姿を変えていく。
 逃げようとするが、一服盛られていたのか体が動かない。

「いただきます!」

「おっと、そうはいかないわ!」

 蓉子さまがナメクジに塩をかけた。ナメクジはあっという間に縮こまって動かなくなった。

「さあ、とりあえず逃げましょう」

 聖さま、蓉子さま、江利子さまは異変に気づいて御馳走を食べるふりをしていたらしい。
 私達はナメクジの家から脱出した。



「はあ〜」

「まあ、無事だったからいいじゃないの」

 蓉子さまが慰めの言葉をかけてくれた。

「でも、さっきの魔物『玄奘を食べたら願いが叶う』って言ってたんですよね。玄奘って名乗ってもあんまり変わらないんじゃ……」

「じゃあ、坊主にする?」

 聖さまが会話に加わる。

「それは嫌です」

「じゃあ、志摩子の父」

「それは違います」

「ハゲ」

「名前じゃありません」

「玄奘でいいじゃない」

「いえ、よく考えたら『玄奘』はリリアンで『白薔薇のつぼみ』って名乗るようなものですよね。こうなったら本名の陳江流って名乗ってみる事にします」

「……詳しいのね」

「西遊記は仏教関係の話が多いのでチェック済みです」

 と、いう事で私、二条乃梨子は陳江流として旅を続ける事にした。

 次の村に着いた。

「すみません、旅の者で陳江流と申します。この村に泊まるところはあるでしょうか?」

「おお、我が家に立ち寄ったのも何かの縁。ぜひ、もてなしをさせてください」

 たまたま話しかけた親切な村人の提案で私達は1泊出来る事になった。
 家の主人は御馳走で私たちをもてなしてくれた。

 夜。

 寝ていると家の主人が入ってきた。

「グファグファ……陳江流を食べると恋が叶うらしいなあ」

「え!?」

 家の主人は魔物だった。みるみるうちにカタツムリに姿を変えていく。

「おっと、そうはいかないわよ」

 駆け付けた江利子さまがカタツムリの天敵マイマイカブリを投げつけた。

「ぐぎゃ〜!!」

「さあ、逃げましょう」

 私たちはカタツムリの家から脱出した。



「はあ〜」

「だから、坊主にしちゃいなよ。坊主でいいじゃん」

 聖さまがからかってくる。

「名前じゃありませんし」

「じゃあ、仏像オタク」

「その言い方はやめてください!」

 その言い方だけは絶対に許せない。仏像マニアと言ってほしい。

「で、その馴染みのない名前で通すの?」

 蓉子さまが聞く。

「いいえ、私は基本を忘れていました。これからはロサ・ギガンティア・アン・ブゥトンの二条乃梨子でいきます」

「そのまんまじゃない」

 3人はひどくつまらなさそうな顔をした。

「お待ちください」

 何者かが私達を呼び止めた。
 振り返るとそこには特徴的なドリルのような髪形の少女と、ツインテールの少女が立っていた。

「なんだ、瞳子と祐巳さまか」

「失礼な! 私は銀角。こちらはお姉さまの金角です」

「おお〜」

 我々は思わず声をあげた。
 あの有名な金角、銀角がいきなり登場である。

「で、その金角、銀角が何のご用?」

 江利子さまが食いつき気味に聞いた。

「ふふ。こちらにあるヒョウタンをご存知ですか?」

 金角がヒョウタンをとりだした。

「あ〜、それは返事をしたら吸い込まれるから、黙ってれば全然平気なやつだっけ?」

「ふん、そんな役に立たないヒョウタンをお姉さまが持っているわけないじゃないですか。役立たずは持主だけで充分です」

「しくしく。ひどいよ、銀角」

 金角涙目。

「このヒョウタンは、お返事がちゃんとできない悪い子ちゃんを閉じ込めるお仕置きヒョウタンなのです。つまり、私達が名前を呼んでうまく返事が出来なければ……皆様はヒョウタンに閉じ込められて、半永久的に出られない仕組みなのです」

「え?」

「更に、お姉さまは死神と取引をなさって、なんという名前で呼べばいいかを判断できる能力の持ち主なのです」

「いや、それさ、ヒョウタンじゃなくって、ノートを貰えばよかったんじゃない?」

「……」

 一同を沈黙が支配した。

「わ、悪い子ちゃんはお仕置きですわ! お姉さま、いつものようにちゃっちゃとお願いします!!」

「うう、姉なのにこき使われている気がする……」

 金角はヒョウタンの蓋を外した。

「沙悟浄!」

「はい!」

「孫悟空!」

「はい!」

「猪八戒!」

「はい!」

 お三方の名前を一通り呼び、ニヤリと金角は笑うと銀角に何やら合図した。
 銀角はうなずくとテープレコーダーのスイッチを入れた。

♪あらえっさっさ〜

 どこかで聞いたようなメロディ、それはドジョウすくいでお馴染みの安来節だった。

「!?」

 金角は手拭いをかぶり、5円玉を鼻にセットしてざるを持つとドジョウすくいを踊り始めた。

♪安来千軒 名の出たところ

 しかも、メロディに乗せて歌い始めた。
 なんてカオスな金角。

♪社日桜に 猪八戒

「……え?」

 あまりの事に油断していた蓉子さまは反応できなかった。
 金角は歌詞に名前を乗せて歌ってきたのだ。
 蓉子さまがヒョウタンに吸い込まれる。

「蓉子!」

「気をつけて!」

♪松江名所は 数々あれど 孫悟空に 沙悟浄

「はい!」

「はい!」

 なんて厄介な……だが、ヒョウタンを奪い返して、二人の名前を呼べば形勢逆転になる。
 私はタタタッとヒョウタンに向かってダッシュした。

「甘いですわ! 私が控えているのをお忘れですの!?」

 瞳子が髪の毛のドリルで私に攻撃を仕掛ける。

「危ない!」

♪出雲名物 荷物にならぬ 沙悟浄

 江利子さまは私を助けようとして名前に反応できなかった。
 江利子さまもヒョウタンに吸い込まれてしまう。

♪安来節

「あのドリルは私が相手をするから、あなたはヒョウタンを奪うのよ」

「でも、聖さま……」

「グッドラック」

♪上げた白帆が 染まりはせぬか 孫悟空は 花吹雪

「はい!」

 ドリルと戦いながら返事をする聖さま。早くヒョウタンを奪わなくてはならない。
 ヒョウタンに手を伸ばした時に金角と目があった。

 祐巳さまはざるを投げつけてきた。

♪三蔵法師と 駅呼ぶ声に

 不意を食らった。ざるに気を取られて反応できなかった。
 ああ、ヒョウタンの中へ……

「……まさか、名前を変えていたなんて」

 悔しそうに金角はつぶやいた。
 そう、私の名前は現在三蔵法師ではなかった。

「本気でいくよ! ロサ・ギガンティア・アン・ブトンの二条乃梨子」

「違います」

「へっ!?」

 本物の祐巳さまはちゃきちゃきのリリアン娘だから大丈夫だが、初めて会った金角なんかが簡単にロサ・ギガンティア・アン・ブゥトンの二条乃梨子だなんて呼べないのだ。

「ど、ど、ど、ど……」

「お姉さま! どこが間違ってるかなんて反省はいいから早く名前を──」

「ロサ・ギガンティア・アン・ブートンの二条乃梨子」

「ブブー!! 外れです」

「しまったあああ!!」

 金角は蒼白になって絶叫した。
 そして、金角はヒョウタンの中に引きずり込まれていく。

「名前を呼び間違えると呼んだ人が吸い込まれるのね」

 私はヒョウタンを拾うと銀角に呼びかけた。

「銀角大王」

「はい!」

「ドリル大王」

「誰がドリルですって?」

 銀角は反論したが、あっという間にヒョウタンに吸い込まれてしまった。

「よしよし。では、蓉子と江利子を助けましょう」

 聖さまがヒョウタンを逆さにして振ると、中から蓉子さま、江利子さま、金角、銀角が出てきた。

「なんだ、簡単に出られるんだ」

「じょ、冗談じゃありませんわ! 簡単に出られるからと言って何度も入りたくはありません!」

「うう、折角私達の野望が叶うと思ったのに……」

 がっくりと金角は肩を落とした。

「野望? 願いが叶うってやつ? そんなのは噂にすぎないわ」

「そんな! 『ロサ・ギガなんとかの二条乃梨子を食べると百合カップルになれる』って聞いたのに!!」

「待て! なんだその噂は!! 取り消せーっ!」



 絶対にこの世界から脱出してやる!!

続く【No:2894】


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