【2879】 ご報告  (笑いの神に 2009-03-10 01:39:25)


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『インタビュー』



「はぁ〜い。お疲れさまでした。じゃあ、みなさんから今回のドッキリの感想を一言ずつ頂くので、お座りください。」
真美さんが、元気ハツラツ、そう言った。

「祐巳さん、さっきはほんとうにごめんなさいね。」
隣に座った志摩子さんが、申し訳なさそうに言う。
「いいえ。全然気にしていないよ。むしろ嬉しかったわ。志摩子さんの気持ちがわかって。」
「祐巳さんったら・・・いじわる・・・」
志摩子さんをからかえる日が来るなんて、泣きそうなほど嬉しい。
志摩子さんはまた、頬をピンクに染めて、下を向いてしまった。
「フフッ・・・冗談よ。」
私はそう言って、テーブルの下で志摩子さんの手を握る。


「さぁ、始めましょうか。」

         真
       祥   令
       由   志
       乃   祐
        菜  瞳
         日

私は瞳子の隣をゲットした。瞳子は少し不機嫌そう。
志摩子さんたちとのラブラブっぷりが原因だね。

「じゃあ、祥子さまからお願いします。」
「そうね。私と令はもう卒業だから、最後にこういう形でみんなと楽しめて良かったわ。それに、祐巳は私がいないと生きていけないということがわかったし。これは必ず記事に載せなさい。この事実は全校生徒に、しっかりと把握しておいてもらいたいから。わかったわね、真美さん。」
言葉は真美さんに、でも視線は瞳子に向いていた。
お姉さまは、本当に楽しそう。
瞳子は、ガルゥーと聞こえてきそうな表情で、祥子さまを睨んでいる。



「は、はい!必ず書きます。・・・では次に令さま、お願いします。」
「私も祥子と同じ意見。すごく楽しかった。それと、やっぱり、由乃のことは心配だったけど、今回菜々ちゃんと一緒にいて、安心したわ。菜々ちゃんがいれば、由乃は大丈夫。」
「令ちゃん!!」
由乃さんが、思わず立ち上がる。それはそうだ、まだ姉妹でもないのに、今のセリフはおかしい。令さまはクスクス笑っている。からかわれたのだろう。
「由乃ちゃん。何回言えばわかるの?あなたは、もう黄薔薇さまなのよ。しっかりケジメをつけなさい。」
菜々ちゃんの前で、お姉さまに怒られて、由乃さんは恥ずかしそうにして座った。
「すみません。祥子さま。学校では令ちゃんじゃなくて、お姉さまです。」



「令さま、ありがとうございました。由乃さんと菜々ちゃんのことは、4月に必ず書くので、またお送りします。」
「真美さん!!」
「では、そのまま由乃さんお願いします。」
「あっ、あぁ、感想ね。まぁ、主催者ということで、今回はご協力本当にありがとうございました。特に、お姉さまと祥子さまは忙しい時期なのに、こんなお遊びにお付き合い頂いて・・・」
さすが、由乃さん。ちゃんとした挨拶もできるんだぞ。
「お稽古も本番の今日も本当に楽しめました。親友の意外な一面も知ることができたし。」
由乃さんは、志摩子さんの方を見て笑う。
志摩子さんは、教科書通りのリアクション。
「そ、それと・・・」
由乃さんは、言葉に詰まっている。
菜々ちゃんのことだろう。
「そもそも、なぜ由乃ちゃんはこんなことをしようと思ったの?」
祥子さまが助け舟を出す。
なぜしようと思ったのか、それは菜々ちゃんのポイントを稼ぐため、そして将来の妹と薔薇の館のメンバーが仲良くなるため。
「そ、それはぁー、久しぶりに薔薇の館のメンバーと楽しみたいなぁーと思って。」
・・・ほんと素直じゃないなぁ。笑
「まぁ、菜々とも楽しめて良かったわ。」
最後に乱暴にそう言って、由乃さんの感想は終わり。



「次、志摩子さん。」
「私も新鮮な経験ができて、とても楽しかったです。でも、少しお恥ずかしいところをお見せしてしまって・・・真美さん、このことは記事に・・・」
「もちろん、するわ!次期薔薇さま方の美しすぎる友情、なんてどう?」
「そうよね。もういいです・・・」
そう言って、座った志摩子さんの顔は、またもや赤く染まっていた。



「次は、乃梨子さんお願いします。」
質問者が、日出実ちゃんに変わった。日出実ちゃんにも仕事を与えてあげてるんだ。
真美さまもお姉さましてるのね。
「お言葉ですが、真美さま!志摩子さんの件は書く必要はないと思います!」
乃梨子ちゃんが時間差で怒っている。
「乃梨子ちゃん。」
「すみません。祥子さま。学校では志摩子さんではなく、お姉さまでした。」
「いや、こういうハプニングが一番おもしろいのよ。だから却下!乃梨子ちゃん、感想をどうぞ。」
真美さんが先を続ける。
乃梨子ちゃんはあきらめたようだ。
「わかりました。ドッキリ自体は本当に楽しかったです。今回は涙を流す役で、最初は心配だったんですが、なんとかそれもできましたし。・・・それに、瞳子の稽古の時のあれは最高だったしね。」
最後は、瞳子の方を見ながらそう言った。
私と、新聞部は訳がわからなかったが、みんなはニヤニヤ笑っている。
「わっ、私がお姉さまのこと・・・・」
乃梨子ちゃんが瞳子の声を真似して何か言おうとしたが、
「ワーーーーーー!!乃梨子やめて!!」
瞳子が、急に大声を出した。
顔は真っ赤になっている。
「何があったの?」
私は、みんなを見まわしながら聞く。
「何でもありませんわ!お姉さまには関係ないことです。」
「でも、乃梨子ちゃんは“お姉さま”って言ってたよ。」
「乃梨子は何か勘違いしてるんじゃないかしら。真美さま、次へどうぞ。」



「うーん。お稽古の話は、また後で教えてもらうわ。じゃあそのまま、祐巳さん。」
「はい。今回はターゲットってことで、怒ったりした方がいいのかもしれないけど、何か嬉しいことがいっぱいあったから、けっこう楽しめました。ばらされた時は本当にびっくりしたけど。今回は第一弾っていうことみたいだし、次は仕掛け人として楽しみたいと思います。」
「祐巳さん、教科書通りの感想よ。ありがとう。」
真美さんにほめられた。



「次は、菜々ちゃん、お願いします。」
日出実ちゃんが、話を続ける。
「今回は、中等部の私が、このような機会を与えてもらって、本当に感謝しています。皆様とても私に親切にしてくれて・・・正直こんなに楽しかったのは、久しぶりです。4月からは、高等部なので、もしお会いした時はお声をかけていただきたいです。」
「お声をかけるなんて、他人行儀ではありませんか?菜々ちゃんは由乃さまの妹になる気はないんですか?」
日出実ちゃん・・・さすが真美さんの妹というべきか、三奈子さまの孫というべきか、
「私からはなんとも言えません。由乃さまのお考えがありますから。」
菜々ちゃんは冷静すぎるなー。由乃さんなんて、
「ひ、ひ、日出実ちゃん、そ、それはすごく繊細な問題だから、今はそっとしておいてくれにゃいかしら?」
猫になっているよ。
「日出実、今回は勘弁してあげなさい。どうせ4月になればわかることだわ。」
日出実ちゃんは、真美さんにそう言われて、引き下がった。
最後に、菜々ちゃんが、とんでもないことを、
「今回は本当に上手くいってよかったです。今回でわかった通り、ドッキリは不意ですから、みなさん気をつけてくださいね。それとこれはフリとかじゃなくて、本当に祐巳さまは、もうありませんから安心してください。志摩子さま、由乃さま、瞳子さま、乃梨子さま、覚悟はよろしいですか。ふふっ・・・」
可愛い・・・・けど・・・怖い・・・
名指しされた4人は、疑心暗鬼に陥るだろう。
でもこの顔・・・・
「それにしても、菜々ちゃんは、本当に江利子さまにそっくりね。令も思わない?」
「ええ。お姉さまを見ているみたい。」



「最後に、瞳子さん、よろしくお願いします。」
日出実ちゃんが言った。
「はい、演技指導をした立場からすれば、みなさん本番はよくできていたと思います。細かいところをいえば、問題がなかったわけではありませんが、まぁ許容範囲内ですわ。私個人としては、お姉さまがターゲットということだったので、素直に楽しむことができませんでしたが、ある程度、有意義な時間ではあったと言っておきましょう。」
「瞳子さん、それではあまりにも感情がこもっていないわ。仮面を脱ぎなさい。」
日出実ちゃんは、なぜか芝居口調・・・笑
「そうよ、瞳子、もっと率直な感想をいってあげなさい」
「お姉さま・・・率直にいうと・・・お姉さまが、あまりにも頼りなくて少しがっかりしましたわ。紅薔薇さまと白薔薇さまに詰め寄られて、泣きそうになって・・・今後は、このようなみっともないところは見せないでくださいまし。」
「瞳子・・・」
妹に怒られ、私はしょんぼりする。
「よく言うわよ、瞳子。祐巳さまのこと、ずっと心配そうに見つめていたくせに。」
「の、の、乃梨子、いい加減なこと言わないで!そんなことありませんわ。」
「瞳子、またお稽古の日のあれを繰り返したいの?」
乃梨子ちゃんをはじめ、みんながニヤニヤ笑っている。
「いいわよ。私は、もういっかいやってあげても。」
由乃さんがいう。
「私ももう一回見てみたいわ。瞳子ちゃん可愛かったもの。」
志摩子さん。
「確かに、あれは良かったね。」
令さま。
「瞳子さまの、あのセリフ最高でした。」
菜々ちゃん。
「まぁ、またやるの?瞳子ちゃん、いいかしら?」
ダメ押しの祥子さま。みんなすごく楽しそう。
「正直に言いなさい。率直な感想を!!」
瞳子が、横目で私を見ている。
頬をピンクに染めながら・・・
「わ、わ、わ、私は、」



「お、お、お姉さまが大好きだから、し、心配で仕方ありませんでした・・・」
最後の方は聞こえなかったけど、一番大切なところはバッチリ聞こえた。
あぁ、なんて幸せなんだろう。
お姉さまと令さまは卒業してしまう。
でも、これはただの卒業で永遠のお別れっていうわけではない。
確かにさみしくはなるが、私には志摩子さんと由乃さんがいる。
それに乃梨子ちゃんと、たぶん菜々ちゃんも・・・


それにこんなに愛おしい、妹がいる。
「私も大好きだよ。瞳子。」
私は、立ち上がって瞳子を抱きしめる。
「おねぇさまぁぁ」
瞳子もそれに応えてくれた。

                                

                                  終 




たぶん最初で最後のSSです。正直、こんなにもSSを書くことが難しいとは思いませんでした。時間も労力もかかりすぎる。。。この掲示板方々のすごさがよくわかりました。たった5つでしたが、本当にありがとうございました。


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