【2914】 イエロークリスマス  (まめとりもち 2009-04-01 00:24:32)


まえがき:
  
  ※以前、私が投稿した作品に、同じ様なタイトルのモノが有りますが、全く関連は有りません。
   続編でも、IF分岐でも、色違いでも無いので、御注意下さい。
  
  
------------- 以下、本文です --------------------------------------






【メールを1件受信しました】
 菜々へ 部活ご苦労さま。
 明日のクリスマスの日に、希望者だけで行う山百合会のイベントのスタッフ集合時間が
 決まったので連絡します。3年生が引退して忙しいのは分かるけど、次はちゃんと
 山百合会のお仕事もしなさいよ!! (姉は少し御機嫌斜めだぞ!)
 
 集合時間: 9:30
 集合場所:薔薇の館(いつもの場所)
 
 ※当日の更衣室は、一般の生徒で混雑すると思われるので、
  早めに来て、薔薇の館で着替えるなりするように。
  尚、くれぐれもイベントに相応しい服装で参加すること!!
 
 
 

 
「まさか、これが役に立つ日が来るとは思いませんでした…」
 それは、昨年のクリスマスに受け取った真っ赤なサンタ服。
 なんでも、大学に進んだ一番上の姉が、アルバイト先から給料と一緒に貰ったモノらしいのだが……。

 ……姉は一体、何のバイトをしていたのであろうか? 

 色々と突っ込み所が満載な服である。
 想えば姉は、自慢気に『非常に貴重品だ、大事に使いなさい!』と3人の妹達に手渡していた。
 なんでも一部の方々の間では、需要が非常に有るという話では有るが……。

「流石に、この寒空でミニスカートは、常軌を逸してますね」

 でも、自分の手持ちの服の中で、此れほど今日という日に相応しい服は思い付かなかった。
 そして菜々は、必要の無いはずなのに、登校時にその服をコートに下に着用していた。
 もちろん、コートとマフラーを厚く装備しているため、一見しただけでは、菜々が重装備の下に何を着ているのかは、周りからは分からない。別に薔薇の館で着替えれば、そんな寒い思いをしなくて済むというのに…。

「それでは、お姉さまにサプライズを与えられないでは無いですか!!」

 マリア像にお祈りをした後、誰に(?)ともなく呟くと、真っ直ぐに薔薇の館へと向かった。
 
 
 
 
 そして薔薇の館………
 
 入口の扉を開けて館の中に入る。
 1階には人の気配は無かった。
 良し!!予想通りである。その為に集合時間のギリギリに来たのである。
 1年生の自分が一番最後に来ることを、超体育会系な姉から、お叱りを貰う可能性が大で有るが、お叱りが怖くて悪戯を止める程、菜々は殊勝な妹でも無かった。
 早速、準備を開始する菜々……。
 赤い服を覆い隠していた、コート・マフラーを脱ぎ、服に付属していたファンシーな靴と靴下を、バックより取り出し履き換える。流石に此れはコートで隠せなかった為、致し方なしと云った所であろうか?
 最後に、帽子を被って…… 完璧である。これほどクリスマスに相応しい格好が、他に有るであろうか?
 大変驚く姉達の姿が思い浮かぶ……。
 昨年のクリスマスに服を渡された時には、早々に処分するべきなのだろうか? と思い悩みもしたものであるが…… 今は長姉に感謝せねばなるまい。
 
 オット!! 危ない危ない……。
 危うく本当に遅刻になる所であった。早く二階へ行かなければ……。
 遅刻ギリギリの時刻であることに気付いた菜々は、少し慌てて二階に行くのであった。
 
 
「ごきげんよう「遅い!! 一体今までを何を……………」遅れて申し訳ありません」
 何時ものビスケットライクな扉を開いて、直ぐに頭を下げて、挨拶と遅れたことの謝罪をするも、やはり挨拶している途中で姉が叱責してきた。しかし、お叱りの言葉は途中で止まっている所から、目の前の姉は、恐らく自分の姿を見て驚いて固まったのであろう………。
 
 上手くいった……。
 
 この瞬間の間は非常に癖になる。
 
 そう満足した菜々は、少しニヤけていた顔を引き締めると、謝罪の為に下げていた頭を上げて…
 
 逆に固まってしまった!!
 
 
 何故なら………
 
 何故なら、姉を含む山百合会のメンバー全員が、体操服またはトレーニングウェアといった服装であった為である。
 
 
 ………ふと、ホワイトボードに書かれた文字が、菜々の目にとまった。

 
 
 
『山百合会主催 年末大掃除会 本部』
 
 
 
 

 クリスマス…
 それは、イエズス様の生誕祭…。
 
 クリスマス…
 それは、浮世を賑わす甘き記念日…。
 
 此処にまた…
 一人の少女が過ちを糧に、大人の階段を登る…。
 
 その様子を
 月と姉達とマリア様だけが見ていた……。
 
 
 
Fin




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