【293】 記憶喪失ミス・プリンセス  (OZ 2005-08-03 01:46:49)


ドサッ!!  鈍い音が響いた。その後
い、いや〜〜!! 祐巳さん、ねえ、祐巳さん、 だ、誰か救急車を!! お願い、お願いだから、早く!!




紅薔薇の蕾、福沢祐巳さまが階段から転落し、病院に運ばれた。その事故はすぐに伝わり、リリアン女学園に衝撃が走った。


その報告を聞き、私はすぐさま病院に向かった、祐巳が運ばれた病院は小笠原グループの関係のある病院だったので道にも迷うことなくすぐに付くことができた。
「祐巳!!」
私は、病室へと駆け込んだ、中には祐巳のお母様も居たが、今の私には祐巳しか見えない、たとえ祐巳のご両親に無作法者と蔑まれても構わない、挨拶、関係ない、私は祐巳の元へと進んでいった。

横たわる祐巳のベットから出ていた手を握り、私は祈った『お願いです、マリア様、祐巳を、私の祐巳をどうかお助けください。』
私は、ただただ、祈った、泣いているのが自分でも分かる、祐巳は私の全てなのだから。  祐巳、祐巳、祐巳・・・


いったい何十分たったのだろうか。
私の肩に、祐巳のお母様の手が、やさしく置かれた。
「祥子さん、本当にありがとう、でも、祐巳は大丈夫、少し前まで意識があったのよ。でも、今は眠っているだけなの、命には、別状はないのよ。」
「ほ、本当ですか?」
「ええ、本当よ、全然平気、今は眠っているだけ、たぶんすぐに起きます、でも・・・ 」
「でも、何ですか? 」私は涙を拭いつつ、お母様に聞いた。

「記憶・・・ 記憶が少しおかしくなっているんです。」お母様はとても困惑したような顔で私に言った。 


意味がよく理解できなかった。
お疲れなお母様を看護師にまかせ、無理をいい、今日は祐巳の病室に一緒に泊まることを承諾してもらった。
『祥子さんなら任せられる』と、祐巳のお父様も快く承諾してくれた。祐麒君にもお願いしますといわれた。
付き添い用の簡易ベットを出してもらったが、とても私には、横になることはできなかった、いつ祐巳が起きるか分からない、今度は一番に自分がいたい、祐巳の手を握りながらも、疲れなのか、いつしか眠りについてしまっていた。



「あの〜〜 もしも〜〜し。」 ユサユサ
ん、もう、うるさいわね!
「もしも〜〜し 起きてください〜〜〜〜い。」 ユサユサユササ
うるさい!! いったい何よ!! 

「す、すみません、あの、おトイレに行きたいのですが・・・ 手を離して頂けますか?」

うえ? おトイレ、私は言われるまま手を離した。

おや? いま普通に起きて、私と会話したのは、祐巳?
夢かと思い、祐巳の寝ていたベットを見る、やっぱり居ない、ということは夢じゃない。

色々考えているうちに、祐巳が帰ってきた、「はあ〜〜〜 すっきり♪」
おいおい、仮にもリリアンの淑女がそれは無いだろう。

でも、私にはどうでもよかった、愛する祐巳が、今、元気に動いている、それだけでよかった。
ごめんなさい、嘘です、 抱きしめたくてしょうがなかった。なので、抱きしめた。


「祐巳、本当に大事に至らなくてよかったわ。」
「はあ、まったくそのようですね。」
「あなた、本当に、全然緊張感が無いわね。」
「はあ、まったくそのようですね。」
「あなた、姉の私をおちょくっているのかしら?」
「い、いえ、そんなことは、ありません、 ただ。」
「ただ?」

 祐巳は少し申し訳なさそうに言った。

「すみません、とても失礼な質問とは思いますが、あなた様は、いったい私とはどのような関係なのでしょう?」

「へ?」


『記憶・・・ 記憶が少しおかしくなっているんです。』
お母様の言葉を今、改めて理解した。



 続く・・・


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