は、はじめて、祐蓉以外を書いてしまいました。
紅 黄 白
1 志摩子 祐巳 乃梨子
2 祥子 令
3 蓉子 江利子 聖
少し開けた窓からは、涼やかな風が若葉の匂いを運んできそうな気がする。
と、乙女ちっくなことを一時ながらも、思ってみるんだけど・・・
「祐巳、どう?今回、新作に挑戦してみたんだけど?」
「・・・美味しいです。」
仄かに紅茶の香りのするシフォンケーキを口いっぱいに入れた所為で、
すぐに返事が出来なかった。
その様に、お姉さまである、支倉令様はクスリと笑われた。
「駄目よ、そんなに喋れない位ほおばっちゃ、それに、」
ほら、と、口元にお姉さまの手が近づいてくると、唇を掠めていった。
「そんなに慌てて食べなくても、取ったりしないから、ね。」
そう言うと、お姉さまは、指先の上に乗ったケーキの欠片を口に含んだ。
「・・・だって、美味しいんですもん。」
本当にそう思う。お姉さまは、2日か3日に一度、お菓子を持って来てくれる。
それが、もう私好みの甘さなのだ。
「ありがと、祐巳の入れた紅茶が美味しいから、そのお返しだよ。」
優しく、笑いながら言ってくださった言葉に心が温かくなった。
一生懸命、お姉さまの好みの味になるようにしていたのに気付いてくれたのも嬉しい。
「白薔薇さま!!何故、志摩子に抱きつくのですか!!」
「だって、志摩子の反応が可愛いから。」
「乃梨子ちゃん、妹なんだから、何とかいいなさい。」
「無理です。」
マリア祭も終わって、次の大きい仕事は、文化祭。
それまでは、仕事も少しはあるけど、仕事って程じゃない。
だから、ここに来るのはおしゃべりのためって感じ。
「今度の日曜日、何処か行かない?」
「え、えーと、映画を見に行きませんか?」
私が自分の分を食べ終えると、お姉さまは、
苦笑を浮かべながら、ご自分の分を分けてくれた。
流石に、恥ずかしくなって、その分は少しずつ切って口に運んでいた。
「今なんかやってたっけ?」
「あの、未来と過去のポストがなんたらってやつなんですけど・・・。」
「ああ、あれ。良いよ、私も見たいと思ってたんだ。そういえば、この前の新刊見た?」
「見ました、見ました。あのエンディングはずるいですよね。」
お姉さまは、見た目と違って、恋愛物が好きだった。
初めて映画に誘ったとき、アクション物が良いのかな?と思って訊いてみると
頬を薄っすらと染めて、「こっちの方じゃ駄目かな?」と、仰られたのが
もうべったべたの恋愛物で。
実は、意外と乙女な方なんだと知った。
元々、そっちの方が好きな私は、何の反対も無い。
さっきは、意外と言ったけど、特に引くことも無く、むしろ趣味が合うのが嬉しかった私は
そう伝えると、お姉さまも嬉しそうな顔をした。
その数日後、
「これ読んでみない?」
手渡されたのは、コスモス文庫と言う本だった。
漫画は少し読むけど、文庫本は殆ど読まない私は、存在を知らず、薦められるままに読んでみて
・・・ハマッた。
それ以後、新刊が出ると、違うのを買って貸し借りしていた。
・・・だけど
・・・だけど
・・・・・・・・BLだけは、無理です。お姉さま。
いえ、お姉さまがお勧めになるくらいですから、
きっと私に気付けない良いところがあるんでしょうけど
今の私には、まだ無理です。
でも、いつか・・・いつか・・・
そう思って、お姉さまを見ると、無理をしないで良いからという風に笑った。
「ねぇ、聖」
「何?蓉子」
「貴女、最近祐巳ちゃんに手を出さないわね。」
「そりゃ、ねえ・・・」
「ゆ〜みちゃん。」
「ぎゃお」
突然白薔薇さまに抱きつかれた。
「ゆ、祐巳」
隣に座るお姉さまに視線を向けると、どうしたら良いのか、と慌てていた。
ばたばたと私が暴れるほど、お姉さまは狼狽てしまう。
お姉さまに心配を掛けたくない一心で、私はじっと耐えることにした。
でも、その代わり・・・
私が出来る限り手を伸ばすと、思いが通じたらしく、その手を両手で握ってくれた。
(ごめん、祐巳、非力な私を許して。)
(良いんです。
お姉さま、私、お姉さまがいてくれれば、どんなことも耐えられます。)
(祐巳)
(お姉さま)
「聖ったら、完全に悪役ね。」
「私も最近は、あの2人で遊ぶの飽きたわ。」
「あら、江利子さんがもう?」
「だって、罪悪感がすごいのよ。
素直が2人って、質が悪いわ。」
その頃、居心地が悪くなった聖が、抱きしめるのを止めた。
「お姉さま。」
自由になった私は、一番好きなのは、お姉さまだと知らせたくて、抱きついた。
「ゴメン祐巳。」
「良いんです、お姉さま。」
ギュとまわされた腕が嬉しい。
【後書き】
あまあまになってます?