【2936】 こんな世界嫌だよマジですか?  (オキ&ハル 2009-05-01 00:21:42)


【No.2932】の続きです


まぁ、分かってはいたけど。
「流石に、行く先々で『お母さん』と言われるとね。」
つい力なく突っ伏してしまった。
「私のときは、『お姉ちゃん』だったよね。」
聖が祐巳ちゃんの頭を撫でながら言うし
「蓉子さんは、私のお母さんより綺麗ですよ。」
祐巳ちゃんは祐巳ちゃんで、止めを刺してきた。




昨夜、百万円の話が出るとすぐ、
「ゴメン、店開けなきゃ。」
聖が立ち上がった。
当然、「ちょっと待って。」と止めようとしたけど
「傘借りるね。」の言葉とドアの開閉の音にかき消された。
「は〜。」
知らずため息が出た。
「すいません。」
責められたと感じて、祐巳ちゃんが頭を下げてきた。
「良いのよ。あなたは気にしないで。」
慌てて笑顔を作った。
理由は知らないけど、少なくともこの子が意識してこうなった訳じゃないだろう。
責められるわけない。
まずは、この子と打ち解けるのが優先だと思い、
「ご飯食べた?」
まぁ無難なとこだろう。
「い、いいえ、まだです。」
そう言うと、クーと可愛らしい音。
私がクスと笑うと、顔を真っ赤にして俯いた。
「何か作るわ。」
一人暮らしの気楽さ、別に余り物で適当に作るのだが、祐巳ちゃんがいる。
パスタで良いか。
買いに行くこともないよね。

結局、その日は家族とか込み入ったことも聞けず、祐巳ちゃんがリリアン学園の初等部というのと、甘い物が好きというのが分かっただけだった。


次の日、土曜日だった。
祐巳ちゃんは制服と学用品、幾つか服は持ってきていたけど、日用品を持っていなかったので、近くのスーパー、革靴だったので運動靴などを買いに行った。
昼食は、レストランで済ませた。
それから部屋に戻ろうとすると、聖から電話があって、冒頭に戻る。

「そうそう、昨日渡し忘れてたから。」
そう言って封筒を突っ伏してる私の隣にぽんと置いた。
「なにこれ?」
起き上がって、封筒を覗くと、

・・・諭吉さんがいっぱい。

なにこれ?
「それ、とりあえずの祐巳ちゃんの生活費。
足りなきゃ言って、だって。」
ええっ!?
何処に驚けば良いの?
「祐巳ちゃんって、もしかしてお嬢様?」
聞かれた当人は、そんなこと無いです、と言ってるけど。
「何代も続く名家ってやつ?」
「何で貴女が知り合いなのよ!」
つい語尾がきつくなり、前のめりになってしまった。
祐巳ちゃんが怯えているのが見えた。
ゴメンと、謝ってもとの位置に戻った。
「この子のお姉さんと学校が同じでさ。」
こともなげに言うけれど。
私としては、肩にとんでもない重荷を背負わされた気分だ。
・・・というか、今日の朝ごはん、コンビニの食パンとイチゴジャムだったんだけど。
・・・良いのかしら。
「昨日、初めてマッ○行ったもんね〜?」
「はい、初めてフォークとナイフ無しでパンを食べました。」
とても楽しそうな祐巳ちゃんだけど・・・
私の肩の荷がさらに重くなった気がする。
このご時世、どんだけお嬢様なの?
「・・・聖のところじゃ、駄目なの?」
私には、とても無理そうだ。
今からでも何とかならないだろうか。
「良いけど、私のところだとね情操教育的に、ね、」
結構必死な目をしてみたけど。
そういえばそうなのだ。
聖から、彼女が大勢いる、と言うのを聞いたことがある。
つまり、そっちの人なのだろう。
私に言い寄ることが無いから、こうやって続いているけど、だから忘れていた。
「だから、よろしく。」
ほら、と祐巳ちゃんをうながした。
「あ、よろしくお願いします。」

今日の夕飯なんにしようか?
一番、身近な問題はそれだった。




【あとがき】

まだまだリハビリですね〜


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