【2952】 混沌とした艱難辛苦を乗り越えて問答無用  (bqex 2009-05-24 05:05:38)


パラレル西遊記
 気づけば長大なシリーズに(笑)

【No:2860】発端編
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【No:2864】三蔵パシリ編
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【No:2878】金角銀角編
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【No:2894】聖の嫁変化編
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【No:2910】志摩子と父編
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【No:2915】火焔山編
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【No:2926】大掃除編
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【No:2931】ウサギガンティア編
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【No:2940】カメラ編
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【No:2945】二条一族編
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【No:2949】黄色編
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【これ】 最終回



 私、二条乃梨子は、孫悟空の聖さま、猪八戒の蓉子さま、沙悟浄の江利子さまと一緒に天竺の雷音寺を目指して旅をしてきた。
 仏像だけは充実しているこの世界には元の世界の人とそっくりな姿形の変な人──いや、元の世界でも変な人だけど──がいっぱいいて、時に食べられそうになり、時に襲われ、時に下着姿にされと災難続きの旅だった。
 しかし、それもこれで終わり。
 今私達は雷音寺に到着し、最後の試練をくぐりぬけ、扉の前に立っているのだ。
 本当に長かった。

 ゆっくりと扉を開き、中に入ると、そこには──

「よくこられました」

 志摩子さんのお父さん、諸悪の根源住職が立っていた。

「住職ーっ!!」

 学校に西遊記セットを持ってきて、聖さまを巻き込み、更に、蓉子さま、江利子さま、私を巻き込むきっかけを作った、あの、お父さまである。

「私は釈迦です」

 こんなお釈迦様、嫌です。

「お経を取りに来たんでしたな。さあ、どうぞ」

 お経を運んできたのは志摩子さんのお兄さんだった。

「あの、私達はよその世界から飛ばされてここに来たので、元の世界に帰りたいんですが」

 そう。私達の最大の目的は元の世界への帰還である。

「はっはっはっ。そんな事でしたか」

 ぱしーんと頭を叩きながらお釈迦様は笑う。
 そ、そんな事って、私達の最重要事項をそんな事って……

「行って帰るまでがお使いです。ですから、唐の都、長安にお経を持って帰れば帰れますよ」

 な……なんだってーっ!!
 ゴールは雷音寺じゃないのかあーっ!!

「ふ、ふふふふ……」

 蓉子さまが祥子さまのようなヒステリックなオーラを発してマグワを構えていらっしゃる。

「ふ、ふふふふ……」

 江利子さまが令さまが喜──じゃなかった縮み上がるようなサディスティックな笑みを浮かべて禅杖を構えていらっしゃる。
 ヤヴァアイ。

「長い旅で大変だったでしょう。帰りは送らせますから一瞬で着きますよ」

 そ、そうだ。西遊記に復路の大冒険というものは存在しない。
 帰りは仏様に送られて一瞬で唐に帰りつくのだ。
 蓉子さまも江利子さまもここでお釈迦様のご機嫌を損ねて復路を徒歩で引き返すのは得策ではないと判断し、即座に武器を引っ込め微妙な愛想笑いをしている。

「送ってやりなさい」

 お釈迦様はお兄さんに指示を出した。

「はい」

 お兄さんに連れて行かれて門のところに出ると、そこにはワゴン車が停まっていた。

「……」

 一同沈黙。

 まさか、まさかこのワゴン車で「あいのり」状態で帰るわけじゃあないでしょうね?

「乗ってください」

 本当にこれで帰るのかっ!

「ふ、ふふふふ……」

 蓉子さまが祥子さま10人分に匹敵するヒステリックなオーラを発してマグワを構えていらっしゃる。

「ふ、ふふふふ……」

 江利子さまが令さまがしっぽを振る──じゃなかった震え上がるようなサディスティックな笑みを浮かべて禅杖を構えていらっしゃる。
 マジ、ヤヴァアイ。

「いい加減にしろオォォォ!!!」



【二条乃梨子からのお知らせ】
 がちゃがちゃSS掲示板の安心利用のため相応しくない暴力シーンは割愛させていただきます。



 そこにはボロ屑と化したお兄さんだった物体が落ちていた。

「あーあ」

 復活のお経を唱えようとした時に蓉子さまが遮った。

「運転免許持ってる人間がいるじゃない」

 蓉子さまが聖さまを指した。

「ああ。聖さまの運転で唐まで行くんですか」

 私は納得した。

「運転、してるんでしょう?」

「あれ、蓉子乗っけた事なかったっけ?」

 聖さまの問いに蓉子さまがうなずくと、私も、と江利子さまが言う。

「そうだっけ? ま、いいか」

 私達はワゴン車に乗り込んだ。
 聖さまがエンジンをかけるとワゴン車はふわりと浮かびあがった。

「お、これ、普通の車と同じ操作で飛ぶみたい」

 聖さまが妙に感動している。

「早く出して頂戴。門限に間に合わないと1ヶ月は座敷牢に入れられるんだから」

 イライラしながら江利子さまがせかす。
 鳥居家ってどんな家なんだ……

「任せなさーい」

 聖さまはアクセルを思い切り踏みこんだ!
 当然急発進する。

「うわーっ!!」

 な、な、な、な、なんて危なっかしい運転だっ!

「おお?」

「前っ! 前っ!」

 蓉子さまの叫びに前を見ると巨大石仏が迫ってくる!

「うわーっ!! 石仏にぶつかるっ!!」

「おっと」

 聖さまは慌ててハンドルを切る。

「きゃーっ!!」

 私達は大きく揺さぶられる。

「方向が違う! あの塔の方からきたんだから──」

 ドリフトするように横に滑る用に曲がる。

「うわーっ!」

「きゃーっ!! 火焔山に激突するっ!!」

「こ、こうかな?」

 車はガクン、ガクンと上下する。

「あうっ! あうっ! あうっ!」

 全員がシートベルトにしがみつく。

「いやー、実際の車は飛ばないから」

 聖さまが釈明する。

「一体、普段はどんな運転してるのよっ!」

 蓉子さまが叫ぶ。

「普段はもうちょっと優しく運転してるよ?」

「疑問形で言わない! 前見てっ! ああっ!! また山が迫ってるっ!」

 聖さまは忙しくハンドルを切っていく。
 私達は叫ぶ元気もなくなるぐらい大きく揺さぶられる。

「ギャーッ!」

「ぅわあぁぁ!!」

「ぃやあぁぁぁ!!」

 いや、やっぱり叫び声は出るっ!
 こ、こんなにひどい運転する人だったのかあっ!!
 ヒドイ、ヒド過ぎるっ!
 こんなんだって知ってたら、無理矢理にでもお兄さんを復活させるんだった。
 復路も違った意味で大冒険になってしまった。



 私達はヘロヘロになって唐の長安にたどり着いた。
 宮殿に着くとどっかで会ったメガネ君が出迎えてくれる。

「おお、よくぞ経文を持ち帰られ──」

「挨拶はいいから、元の世界に帰らせてください」

「……なんですか? それ?」

 メガネ君の問いに愕然とした。
 ちょ、ちょっとお!
 
「もう一度、天竺に行きたいと?」

「言ってません、そんな事」

 それだけは否定しなくては。

「じゃあ、元の世界って何ですか?」

 うわっ、本当に帰れないのか?
 どうしよう……
 どこかに何かないのか?
 辺りを見回す……ん? 今、何か違和感が……

「……!」

 あった!
 唐風の宮殿に似つかわしくないビスケットの扉。
 あれは、私の勘が正しければ……

 私はメガネ君を無視してビスケットの扉に歩み寄り、ドアノブに手をかけようとして筋骨隆々の青年に止められた。
 どうでもいい事を、思い出した。
 メガネ君が小林さんで、筋骨隆々の青年は高田さんだ。

「邪魔しないでください」

「ここを勝手に開けられると、困ります」

 私は後ろから抱えられ、扉から離される。

「私は帰るんだあっ! 離せーっ!」

「ふぎゃっ!」

 高田さんの奇声が上がった。
 聖さまの如意棒が高田さんを直撃していた。

「乃梨子ちゃん、早く!」

 私はビスケットの扉を開けて中に飛び込んだ。



 そこは予想通り薔薇の館で、志摩子さんがいた。

「乃梨子、お帰りなさい」

「志摩子さああん!」

 私は志摩子さんに飛びついて泣いた。
 もう、なんだかよくわからないけど泣いた。
 志摩子さんは優しく受け止めてくれた。

「いま時間は? ああ、ギリギリね!」

 後ろで江利子さまが叫んでいる。

「か、帰ってこれたのね」

 蓉子さまの声もする。

「ただいま」

 聖さまの声がする。

「おかえりなさい、お姉さま」

 志摩子さんが答えた。
 それからの事は覚えていない。



 元の世界に戻ってきた。
 江利子は着替えると慌てて飛び出して行った。ギリギリ間に合うだろう。
 乃梨子ちゃんは力尽きて志摩子に抱きつくようにして眠ってしまった。
 蓉子と私も着替える。

「疲れた……」

 蓉子はぐったりとしている。
 志摩子を問い詰めたりヒステリーを起こす元気もないようだ。
 まあ、初めてなのだから普通だろう。

「うちの方が近いけど、良かったら少し休んでく?」

 私はさりげなく提案する。

「いいの? じゃあ、そうさせてもらう」

 蓉子は素直に応じた。

「そっちは大丈夫そうだね」

 志摩子に確認する。

「はい。乃梨子は私が責任を持って送り届けます」

 志摩子が言う。

 まさか、こんなにうまくいくとは。

 今日は土曜日。
 私の両親は出かけている。

 志摩子は乃梨子ちゃんを送っていく。
 偶然にも乃梨子ちゃんの保護者が止まりに行って留守の日にである。

 みんなよくまあ、あの口から出まかせを信じたものである。
 藤堂家ではあれを家族で気軽に遊んでいるらしく、巻物を持ち出すのも簡単らしい。
 以前巻き込まれた時は面食らったが、2回目ともなると大体わかっているので楽しめる。3回目はいらないが。

「じゃあ、悪いけど先に帰るね。ごきげんよう」

 ニヤリと笑って私は蓉子の手を取ってビスケットの扉を開いた。

「ごきげんよう、お姉さま」

 志摩子は微笑んで私を見送ってくれた。
 グッドラック。



 〜劇終〜





 【お詫び】
 執筆者の力量不足により、菜々ナタ太子編と蓉子女王編はお蔵入りとなりました。
 深くお詫びいたします。


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