【2987】 知られざる楽園  (パレスチナ自治区 2009-07-23 02:32:28)


ごきげんよう。【No:2924】の続きです。
かなり間があいたので、緊張しています。

「朝から凄いものを見てしまいましたね」
「はい、あれは秘密にしておいた方がいいですよね…」
「…そうですね」
もうすぐ朝のホームルームなので、美影さんと教室に向かっています。
まさかあんなものを見てしまうなんて…
私たちが見たものは、なんとうちのクラスの担任と副担任が夢中になって濃厚なキスを延々10分かそこら交わしていた、という光景でした。
信じられませんでした。あわや18禁の世界へ…ってくらい二人は見つめ合い愛を囁き合っていました。
……ってゆうか職員会議とかあるんじゃないんですかね?
…たぶん私も美影さんも当分の間まともに花音先生と瑠音先生の顔を見ることが出来ないと思います。

マリア像の近くに来ました。今日も大盛況です。みんな熱心にお祈りをしています。
『大好きなお姉さまと今日もいっぱい一緒にいられますように…』とか
『あの先輩にいつかロザリオがもらえますように』とか
『あの可愛い後輩の子に今日こそ思いを告げられますよう力添えをお願いいたします、マリア様』とか…
みんなそれぞれいろんなことを考えながらお祈りをしているのでしょう。
なんて美しい光景なのでしょう。心の底からそう思いました。
やっぱり私がお祈りしている事なんてきっと罰当たりなことなのでしょうね。
「雪美さん、どうなさいました?」
「……あ、はい、ごめんなさい。少し考え事をしていまして」
「そうですか。ふふっ。少しぼおっとしていらしたから。そんな雪美さんも素敵ですよ」
「ふふっ、ありがとうございます、美影さん」
「それにみなさん、雪美さんに見つめられて顔を紅くしていましたよ」
「ええ?!そうなんですか?そんなつもりは…」
「美人は罪深ですね、雪美さん?」
美影さんは言いながら私の顔を下から覗きこんできました。
そうなると上目遣いになるわけで…美影さんのような美少女がそんなことやると破壊力マックスなわけで…
「うう〜」
「あら?顔が真っ赤になっていますよ?どうなさいました?」
当たり前じゃないですか!紅くもなりますって!貴女美少女中の美少女なのに、中身は男の私がそんなことされたら、紅くなって呻くしかできませんよ…
「ふふふふ…」
鈴のような笑い声は心なしか嬉しそうで、怒るに怒れないです。
「みっ美影さん、は、早く教室に行きましょう?」
「あら、あわてる必要はないですよ」
「5分前行動ってやつですよ!」
「予鈴まで15分ありますよ?もしかしますと顔が紅いのをみなさんに見られたくないとか?」
「………!!」
うう〜、図星なので何も言えませんよ…昨日ユセスさんに美人だって言われた時より恥ずかしいです…
「ふふふ、わかりました。早く教室に行きましょう。そんな可愛い貴女を見てさらに貴女のファンが増えてしまったら私が困りますから」
「みみみ、美影さん!!!」
「本気で言っていますから怒らないでください」
あ、美影さんも顔が少し紅い…
はあ、そんな表情されたら怒れるわけありませんよ…
これだから恵那さんにもからかわれるんですね、私。
はあ…

教室に着くまでに何とか持ち直しました。
「ごきげんよう、みなさん」
お馴染みの挨拶をみなさんに向けるも返って来たのはユセスさんだけ…私もしかして嫌われてるんですか?
「ごきげんよう、雪美さん」
「はい。あの私って嫌われてるんですか?」
「どうして?」
「だって誰も…」
「ああ、嫌われてはいないよ」
「本当ですか?」
「うん。みんな雪美さんの事が美人過ぎて声を掛けられないんだよ」
「はあ…」
そういえば昨日もそんな事を言われましたね。
「心当たりがあるんだ」
「はい昨日そんな事を言われました」
「雪美さんはすでに上級生にも噂が広がっていますから、どの薔薇を冠するのかお姉さま方はその話でもちきりだそうですよ」
「ええ?」「ふーん、そうなんだ」
ふーんってユセスさん、他人事のように。まあ他人事ですけどってそれより
「あの、私外部受験ですしこの学校に入ってまだ2日目ですよ?ありえませんよ」
「女の子の噂話っていうのは一日で三千里進むほど活発ですよ。ましてリリアンみたいに閉鎖的なら半日もあればすぐに蔓延します」
「三千里は大げさだけど美影さんの言うとおりだよ」
「そうなんですか…」
「はい」
「それにしても、雪美さんとユセスさんがお二人で話をしているとさらにみなさん、遠巻きになりますね」
「それを言うなら美影さんだって含まれてると思うよ」
「そうですよ、美影さん」
「はあ…そうですか」
皆さんの視線、凄いですね。普通に話しかけてくださればいいのに…
まあ、徐々に打ち解けていければいいでしょう。

「さあみんな、ホームルームをやるから席について」
花音先生が教室に入ってきました。一斉に席に戻ります。
しかし、やっぱり先生の顔を見ることが出来ないです。美影さんは…
うわ…普通に見ていますよ。て言いますか凝視しています。時折ふふっと意味深に微笑んだり、不気味ですよ、少し。

………………

そんなこんなでもうお昼です。今日は学業規則とかそんなことの説明ばかりで疲れてしまいましたよ。
「雪美さん、今日はお弁当?」
「はい、今日は朝早く起きてしまいまして姉たちの分と一緒に」
「お姉さんいるんだ」
「はい、リリアン女大の方に」
「へえ〜、ボクも一つ上の学年に姉さんがいるんだ」
「そんなんですか」
へえ〜きっと綺麗な人なんでしょうね。
「私もご一緒してよろしいですか?」
「はい」「もちろん」
「ありがとうございます」
こうして私、美影さん、ユセスさんの三人でのお昼になりました。
「ふう、やっぱりみなさん遠巻きですね。どうにかなりませんかね…」
「どうしようもないですよ」
「どうしてですか?」
「ボクたちは内部生なんだけど、もうずっとこうだよ」
「そうですね」
「お二人は…」
「うん、中等部の頃から同じクラスだよ」
「私たちがどれだけ歩み寄ろうとしても結果が得られなかったわけです。だから半ば諦め気味です」
「そうなんですか」
「ごめんね、雪美さんを巻き込んで。いくらボクでも二人きりはさみしかったんだ」
「いいえ、そんなことは…ですがいつまでも三人きりはきっと滅入ってしまいますよ。だから少しずつみなさんと歩み寄る努力をしましょう」
「そうですね」「うん…」

ユセスさんはお姉さんに用事、美影さんはお花を摘みに行かれたので早速クラスメイトの方とお話ししてみましょう。
「あのう、どんなお話を?」
「ゆゆ、雪美さん?!」
「ど、どうなさいまして?!」
はあ、予想通りのリアクションです。
「あの、別にとって食ったりはしませんから普通にしてくださいよ」
「ですけど、雪美さんは…その……ねえ」
「ええ…わたくしたちのような「ストップです!!」
「「はい!!」」
「みなさんどうしてそんなことばかりおっしゃるんです?美影さんたちに聞きましたけどみなさんがそんなだから気が滅入りそうだっておっしゃっていましたよ」
「それは…」
「私からすればみなさんだって凄く可愛いです。お願いですから遠巻きに視線を送ったりヒソヒソ話をしたりするのはやめていただきたいです。いじめみたいです」
「……そんなつもりでは」
「はい、わかっていますよ。少なくとも私たちはみなさんと仲良くしたいのです。こちらからも声をかけさせていただきますからよろしくお願いしますね?」
「「はい!」」
彼女たちも嬉しそうに微笑んでさいました。
少しずつでいいですから仲良くしましょうね。

しかしこういうお嬢様学校になると飛びぬけて美人な人は孤立してしまうんですね。
志摩子さんも言っていましたけどやっぱりつらいですよ、孤立なんて…
共学だと軽そうな奴がすぐに飛びつくのに、ここに入るまで知りませんでしたね。
そういえばなぜか男に告られた事がありましたね。その当時私は学ラン着てたのに、身の毛のよだつ体験でしたね。

放課後です。そういえば昨日加奈美さんが陸上部に行って陸上のユニフォームがどれくらいのチラリズムなのか見てきてほしいって言ってましたね。何考えてるんでしょうか、我が姉は…
そんなわけで、美影さんと一緒に双眼鏡を使って覗きです。
「はあ、大神聖子さまのおみ足はいつ見ても……」
美影さんってオヤジっぽいですね。もしかして美影さんがみなさんから遠巻きに見られているのはこれが原因?
「雪美さん、誘ってくださってありがとうございます」
「いいえ、喜んでいただけて結構です。いくらなんでも覗きなんて独りで出来るほどの根性は持ち合わせていませんよ」
はあ、こんなことしてるってクラスの方々にばれたら、今度こそ孤立しますね。
考えたくありません。
「雪美さん!あの方その………けてません!」
「あ、本当です。もういいです!これ以上は…」
「女の子同士だから大丈夫ですよ」
「大丈夫なわけないですよ!」
現に某芸能人だって男の人が入っているお風呂覗いて逮捕されましたし、って私たちが今してることってそれと同列…はあ、嫌です…
「誰か来たら大変ですよ。もうおわりにしましょう」
「そうですね、そろs「何を終わりのするにかしら?」
「「??!!!」」
ばれました!!最悪です!!

「あ、あのこれは…」
「………」
美影さんも何か言ってくださいよ。でも私に無理やり誘われたって言われたら…
「…これはなあに?」
「ええっと〜…」
「まあ、私も普段似たようなことしているから誰かに言ったりはしないわ」
「「え?!!」」
私と美影さんは驚いてお互いを見合わす。
「じゃあ、見逃してくださるんですか?」
「ええ、霧島雪美さんが私の妹になってくれて、写真部に入部してくれれば。もちろん貴女も入部してくれれば文句なし」
「ええ?!私が貴女の妹に?」
「うん、大丈夫よ。私貴女に一目惚れしちゃったし、いいじゃない」
一目惚れって…
「雪美さん、どうなさるのですか?」
「それは…」
「私ね、写真部に入っていて結構盗撮まがいの事をしちゃってるのよね。だから人の事言えないし、でもいつも一人で行動してるからさみしいんだ。ねえ、お願い」
そう言って私の顔を覗きこんでくるこの上級生の方の瞳は本気でした。
だから私には断るなんてできないわけで、
「わかりました、わたしを貴女の妹にしてください」
「雪美さん?!」
「いいの?!」
「はい、写真部にだって入ります。一目惚れなんて言われたら嬉しいですし」
「雪美ちゃん…ありがとう」
そういってたった今お姉さまになったこの方は私を抱きしめてくださいました。
うわ、柔らかいです、サイコーです。
「そういえば、先輩のお名前は?私たち存じませんから雪美さんだって貴女をなんてお呼びすればいいのか…」
「ああ、私は雅、2年生の小鳥遊雅よ。でも雪美ちゃんは私の事はお姉さまでいいじゃない。そういう貴女のお名前は?」
「私は雪美さんと同じクラスの経観塚美影です」
「美影ちゃんね。わかったわ。貴女はどうするの?」
「私はもともと写真部に入るつもりでした」
「そうだったのですか?」
「はい」
「やったわ、今年は可愛い子がすでに二人も!じゃあ二人ともよろしくね!」
「「はい」」

「それより雅様。雪美さんにロザリオは?」
「そうね」
「あ、私はどっかに行きますね」
「どうしてですか?」
「契の儀式に邪魔者は要らないんですよ」
「そんな、邪魔者なんて…」「ありがとう、美影ちゃん」
「では、しばしの間失礼いたします」

そうしてお姉さまにお聖堂まで連れてこられました。
「いいわね、厳かで…」
「はい、…」
あっという間の展開、ちょっとと言いますかかなり強引な展開ですが、スピード婚みたいです。
「雪美ちゃん、いいえ雪美。このロザリオを受け取って…」
うるんだ瞳の雅様、可愛すぎです。
「はい、お受けします」
美影さんにこういうんですよ、と教わった。

リリアンに通っている生徒にとって入学・卒業と並んで最高に幸せな儀式。
確かに幸せです。最高に…
このような伝統をつくり今まで守り続けてきた先輩たちに感謝をしながら私は今日、
雅様の妹になりました。

言い訳
間が空いていたのでいまいち展開が…
ですが書いていて楽しかったのでいいです。
これから徐々に修正しつつ続けていけたらいいと思っています。
久しぶりなので自分が書いていたのを思い出すために自分のを読み返してみたら、少し票が増えていたり、コメントがされていたりととてもうれしかったです。
ありがとうございます。
それとLANDさま遅れてしまいましたが、ずいぶん前に書いたお話にコメントをしてくださりありがとうございました。また少しでも楽しんでいただけたら最高に幸せです。この場を借りてお礼の言葉とさせていただきます。
ここまで読んでくださった方々、ありがとうございます。
またよろしくおねがいします。


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