【3005】 もう一度逢えたら  (名無しのゴンゾウ 2009-07-25 14:49:09)


なぜ、死んでしまったの

なぜ、死んでしまうの

なぜ、生きているの

なぜ、死なせてくれないの



悲しみを癒すものはなく

それでも明日はやってくる



 ※ オリキャラのみです、個人的に暗めに書いたつもりなのでご注意ください



  「お嬢様、お友達の方が迎えにいらしてますよ」

「今行きます」

週に一度の剣道は私が楽しみにするただひとつの習い事だった

家でも幼稚舎でもいつも一人、人形のようにじっとしていた、友達なんていなかった

大人が私を気にかけてくれるのにはわけがあるということは直感的にわかった

誰も私を私として見てくれない、そんな中で私は育った

 「おっす、元気にしてたか?」

「まあまあ、ってところね」

習い事がない日のほうが珍しい生活を送るようになって久しいことは彼女も知っていた

そしてそういうことでは疲れなくなっているということも

だからこそ、彼女と過ごすひと時が幸せに感じられたのだ

 「じゃあいこうか」

「はい」

「「いってきます」」

どこかに出かけるときには必ず大人が一緒だった、それがどんな近くであっても

有馬道場だって例外ではなかった

最初のころは笑われることもあった、いじめられることもあった

でも、それも昔の話

 「今日もがんばろうね」

「うん」

彼女は私が入門した三ヵ月後にやってきた

男の子のような彼女に、皆が憧れていた

そして彼女は私を選んだ

曰く、寂しそうだったから

 「昔と比べてほんとに強くなったよね、僕たち」

「うん」

聞けば彼女も似たような環境で育ったらしい

私と違ったのは彼女は親に反抗し続けてきたということ

私は彼女に安らぎを与え彼女は私に勇気をくれた

二人でいればできないことなどない、そう思えるような日々を私たちは過ごした

 「こうやって一緒に道場に行けるのも……」

「幸せ?」

 「うん」

一緒に道場に通おうと言い出したのはどちらだったか、もう覚えていない

二人が欲したのは二人だけの時間

私の生まれて初めてのわがままは彼女の熱心な説得もあって聞き入れられた

彼女の両親も私たちを引き離すことはできなかった

 「好きだよ」

「わたしもよ」

私たちの関係を快く思わない人はそれこそたくさんいた

それでも私たちの周りに人が集まり始めた

私たちに“友達”と呼ぶべき存在が生まれた

私たちを“私たち”と呼ぶ意味が生まれた



 この時間が私たちを世界につなげとめていた

 たとえ何があっても二人が一緒にいられる

 世界が二人のために時間を止めてくれる

 一瞬の永遠が私たちのすべてだった



突然始まった物語は突然の終わりを迎える

強い光とけたたましい音、何かの焦げるようなにおいだけが頭に残っている

気がつくと私は病院のベッドの上にいた

周りの人は皆、闇を身に纏っていた



澄みわたる青空に一条の煙が走っていった

それはとても懐かしく、そして悲しい色をしていた

まるで夢のようで、それでいてリアルな世界が私を包んでいた

私は、誰?


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