「紅薔薇さま」
「ん? どうしたの菜々ちゃん?」
黄薔薇のつぼみ有馬菜々は、今ここに福沢祐巳が一人しか居ないのを幸いに、前から聴こうと思っていた疑問をぶつけることにした。
「お姉さま……由乃さまって、どんなタイプですか?」
「……う〜ん、そうだねぇ。こう、チョコレートの箱を開ける時、パリパリパリって上手く開けることが出来ないと怒るタイプかなぁ」
「はぁ、なるほど」
菜々はそれを聞くと、心のメモ帳にしっかりと書き込んだ。
「白薔薇さま」
「はい? どうかしたのかしら菜々ちゃん?」
菜々は、今ここに藤堂志摩子が一人しか居ないのを幸いに、前から聴こうと思っていた疑問をぶつけることにした。
「お姉さま……由乃さまって、どんなタイプですか?」
「……そうね。こう、割箸が綺麗に二つに割れないと怒るタイプかしら」
「はぁ、なるほど」
菜々はそれを聞くと、心のメモ帳にしっかりと書き込んだ。
「瞳子さま」
「はい? 何かしら菜々さん?」
菜々は、今ここに紅薔薇のつぼみ松平瞳子が一人しか居ないのを幸いに、前から聴こうと思っていた疑問をぶつけることにした。
「お姉さま……由乃さまって、どんなタイプですか?」
「……そうですわね。こう、ポーションタイプのミルクやシロップを開けた時、中身が飛び散ったりすると怒るタイプですかしら」
「はぁ、なるほど」
菜々はそれを聞くと、心のメモ帳にしっかりと書き込んだ。
「乃梨子さま」
「ん? なに菜々ちゃん?」
菜々は、今ここに白薔薇のつぼみ二条乃梨子が一人しか居ないのを幸いに、前から聴こうと思っていた疑問をぶつけることにした。
「お姉さま……由乃さまって、どんなタイプですか?」
「……そうだなぁ。こう、フライドチキンを覆う紙が、ミシン目に沿って綺麗に切れないと怒るタイプかなぁ」
「はぁ、なるほど」
菜々はそれを聞くと、心のメモ帳にしっかりと書き込んだ。
「部長」
「あれ? 何かな菜々ちゃん?」
菜々は、つい先日剣道部の部長に就任した田沼ちさとに、前から聴こうと思っていた疑問をぶつけることにした。
「お姉さま……由乃さまって、どんなタイプですか?」
「……そうねぇ。こう、インスタントのカレーうどんの粉末が、最後まで溶けずに固まって残っているのを見ると怒るタイプかな」
「はぁ、なるほど」
菜々はそれを聞くと、心のメモ帳にしっかりと書き込んだ。
「逸絵さま」
「うん? なぁに菜々ちゃん?」
菜々は、ついでだから姉の友人である陸上部員軽部逸絵にも、前から聴こうと思っていた疑問をぶつけることにした。
「お姉さま……由乃さまって、どんなタイプですか?」
「……そうねぇ。こう、鰹節の袋とかを開ける時、両側の切り込みが一直線に繋がって切れないと怒るタイプかしらね」
「はぁ、なるほど」
菜々はそれを聞くと、心のメモ帳にしっかりと書き込んだ。
「そんなワケで、色んな方からお聞きしたお姉さまのタイプですが……」
「何よソレ」
意味分かんないってな風情で、訝しげな視線を菜々に送る黄薔薇さま島津由乃。
「お姉さまは、『思う様に事が運ばないと怒るタイプ』と言う結論が導き出されました」
菜々は、今まで聞いた例を全て挙げながら説明した。
「そんなの、私じゃなくても怒るとおもうけど」
「そうですか? 私はどれもあまり気にしないですけど」
『違うよ由乃さ〜ん。突っ込むのは、全員がなにかと“怒るタイプ”って表現した所だよ〜』
祐巳のみならず、志摩子も瞳子も乃梨子も、同じように心でツッコミを入れたが、当然相手に伝わるわけがなかった。