【304】 マドモアゼル走馬燈を  (joker 2005-08-04 23:10:24)


 走れ蓉子、蓉子は走った。
 刻々と沈む夕陽に向かって。
 友の犠牲を無駄にしない為に。
 少しでも、遠くへ、更に遠くへ。
 白い悪魔に追いつかれないように。


 事の発端は、ある一本の電話からだった。


(プルルル)
 とある麗らかな昼下がり、蓉子の携帯が「ocean」を奏でる。
「(ピッ)はい、蓉子ですが」
「あ、蓉子?大変なのよ!」
 いきなり聞こえてきた大音量に思わず携帯を遠ざける。
「ちょ、江利子?一体どうしたのよ?」
 すると、電話の向こうからは珍しく焦った江利子の声が聞こえる。
『どうしたもこうしたも無いわよ。先々代の白薔薇様が現れて聖を連れ去ったのよ!このままじゃあ私達も巻き添えくうわよ!』
「な、なんですってー!!」

 先々代の白薔薇様。彼女は現在、大学の2年、心理学部に所属している。彼女はとにかく実験狂で風の噂では、元リリアンのクラスメートが何人か被害にあったらしい。そして今、その牙は私達に振りかかろうとしている。

『とりあえず、蓉子に伝えたから!私はこれから北海道にでも逃げ―――』
 と、突如、江利子の声が途切れる。電話の向こうからは何やら争う音が聞こえてくる。
 やがて音が消え静かになり……
『次は貴方の番よ、蓉子ちゃん。逃げないで待っていなさい。』
「っ…………!!」
 いきなり聞こえてきた白い悪魔の声に思わず体が硬直する。電話からは高笑いが響く……。
 何とか再起動した私は携帯を部屋に置いたまま財布を持って部屋から脱出した。

 そして現在に至る。
 お金は全て使い果たした。足も棒のようになってきている。だが、少しでも遠くに逃げねば……。
 今出川通りに差し掛かり、出町柳駅が見えてきた。
 あの近くに親戚がいる。とりあえず、匿ってもらわねば……
 そして、後少しで橋を渡り終える時……
「あら、蓉子ちゃん、こんな所(京都)で出会うなんて、偶然ね。」
 目の前には白衣に身を包んだ白い悪魔が悠然と佇んで、微笑んでいた。
「先々代………」
脱力して、苦しげにうめく蓉子に先々代白薔薇様はゆっくりと近づく。
「久しぶりに会ったのだから、私とお茶でもしない蓉子ちゃん?」

 後、3m

「近くに良いお店知ってるの。」

 後、1m

「京大の実験室なんだけど」

 後、30

「付き合ってちょうだいね。」

 肺につき刺さる強い衝撃と共に視界が暗転した……
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