【3040】 蔦子の祐巳観察日記  (弥生 2009-08-21 02:05:04)


ごきげんよう、お姉さま方。脱線です。
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『蔦子の祐巳観察日記』
ごきげんよう、皆さん。写真部のエース、武嶋蔦子です。今日は私だけが知っている『ありさん事件』をご紹介したいと思います。祐巳さんと言えば甘いもの、甘いものと言えば祐巳さん。え?そんなの知ってる?ちっちっち、これだから素人は。まずは人の話を聞きなさい、人の話を。損はさせないから。
あれは、そう冬服から夏服に代わる少し前のこと。私はいつものように、茂みの中に潜んで撮影をしていた。決して盗撮ではない、断じて盗撮ではない。マリア像の前に場所移動すると、そこに紅薔薇ファミリーがやって来た。
「今日も暑いですね、お姉さま。」
「そうね、祐巳。」
「衣替えまであと一週間。頑張りましょう、お姉さま。」
「ええ。ところで祐巳。」
「何ですか?お姉さま。」
「あなたの制服ってそんなに黒かったかしら?」
「そんなこと無いと思いますけど?」
「気のせいかしら?」
「気のせいです。お姉さま。」
「それならいいのだけれど。」
そうこうする内にマリア像の前に立つ2人。そしていつものようにお祈りをして、いつものように儀式を行ったその時、事件は起こった。
「祐巳、タイが曲がっていてよ?」
「はい、お姉さま。」
「何か...動いて...」
「何ですか?お姉さま?」
紅薔薇様が祐巳さんのタイに触れた時だった。そしてそれはファインダー越しにでも解るものだった。賢明な諸君の事、ここまでくればもうおわかりの事だろう。そう、祐巳さんの制服が黒く見えたのは...『蟻』だったのである。それもとてつもない数の。気を失う紅薔薇様。そしてそこで初めて自分の異変に気付く祐巳さん。
私はシャッターチャンスで有るにも関わらず、シャッターを切ることが出来なかった。怖くなって逃げだしたのである。
その後、2人がどうなったかは...私も知らない...。
この忌まわしい事件は秘密裏に処理され、リリアン瓦版に載ることは無かった。
後の調査でわかったことだが、この時の祐巳さんの血糖値は、驚くなかれ、なんと530000だったそうだ。祐巳さんは小笠原系列の病院に強制隔離され、今は正常値である。1日で下がったらしく、医者団も驚きを隠せずにいたそうだ。そして今はいつものように紅薔薇様の側に付いている。
***
以上が、語られることの無かった『ありさん事件』の全容である。


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