【3070】 リクエスト妄想が暴走  (bqex 2009-09-25 21:39:24)


もしも桂さんが勇者だったら
 最初から【No:3054】
->セーブしたところから【No:3060】【No:3063】

【ここまでのあらすじ】
 桂は山村先生に勇者として見出され、蔦子、真美、ちさととともにリリアンを救うため山百合会と戦う事になった。学園長から勇者のしるしを貰い、レベル3に成長。いよいよ本格的な活動が始まる……らしい。

(ストーリーに関係のないパラメータは省略)
名前:○○桂
クラス:シーフ
HP:29
MP:19
並薔薇ポイント:3
敏捷:3
精神:3
スキル:
 ディテクト(消費MP0、SL1)自身の情報収集の成功率が上がる。その時+SLの修正を得られる。
 アヴォイドダンス(消費MP0、SL1)自身の回避率がSL分上がる。
 ポイズン(消費MP6、SL1)単体の対象に毒を与える。SLは1より上昇させられない。

名前:武嶋蔦子
クラス:メイジ
HP:17
MP:31
並薔薇ポイント:3
敏捷:2
精神:6
スキル:
 ウィンドスラッシュ(消費MP3、SL1)単体の対象にSL+αの風属性のダメージを与える。
 マジックサークル(消費MP4、SL1)自身の魔法効果をSL+α分増大する。
 ブラスト(消費MP5、SL1)魔法の対象を単体から範囲(指定可能)に書き換える。SLは1より上昇させられない。

名前:山口真美
クラス:プリースト
HP:24
MP:24
並薔薇ポイント:3
敏捷:2
精神:6
スキル:
 ヒール(消費MP2、SL1)単体の対象のHPを精神値+α回復する。
 プロテクト(消費MP2、SL2)単体の対象のダメージをSL+α減らす。ダメージを受ける直前に使用。

名前:田沼ちさと
クラス:スレイヤー
HP:36
MP:12
並薔薇ポイント:3
敏捷:3
精神:1
スキル:
 スマッシュ(消費MP4、SL2)単体の対象にSL+αの白兵攻撃のダメージを与える。
 コンバットマスター(消費MP0、SL1)自身の白兵攻撃の命中率がSL分上がる。



 翌々日の放課後があっという間にやってきた。
 三人に捕まらないよう、掃除を終えて回り道してミルクホールで時間をつぶして回避と思ってたのに、そのミルクホールに蔦子、真美、ちさとがいた。
 慌てて引き返すも、三人にしっかり捕獲されてしまった。

「今日はクラブハウスでガンガン経験値を上げるのよ」

 真美が言う。

「クラブハウスなら私たちの本拠地だから、万が一の時も安心でしょ」

 蔦子がウィンクする。

「でも、クラブハウスは文科系の部活の中心地だから、メイジやプリーストの敵も多くて、苦戦するんじゃない? 私、精神値低いから心配だわ」

 ちさとがぼやく。精神値は魔法防御力に関係しているので、魔法を使う敵と遭遇した場合、精神値が低いとよりダメージを受け苦戦してしまうのだ。

「大丈夫。きょうは紅薔薇のつぼみを擁する演劇部は活動日じゃないし」

 乃梨子ちゃんの強さを考えると、瞳子ちゃんも結構強そうである。

「攻略の前にここでお買いものしてアイテムを充実させれば大丈夫だって」

 真美と蔦子が、ちさとにではなくむしろ桂に聞かせるように言う。 
 勇者のしるしがあるとアイテムは勇者割引が効き、焼きそばパンが40G、コーヒー牛乳が40Gで手に入るのだという。

「3つ、3つと買って110G残す?」

 焼きそばパンとコーヒー牛乳を片手に蔦子が桂に聞いてくる。

「ちょっと待って、残ってる焼きそばパンとコーヒー牛乳って一昨日のよね。消費期限とかって大丈夫なもの?」

 そろそろマズイ事になってきているはずである。しかし。

「桂さん、アイテムは勇者のしるしさえあれば常に新品と交換してもらえる仕組みになってるのよ。腐らせて別の効果のあるアイテムに変えたいって言うなら別だけど」

 意味あり気に蔦子がにやりと笑う。

「交換する!」

 桂は慌てて古いアイテムを新品と交換してもらい、更に買い物を済ませた。

「さあ、買い物は済んだからとっとと移動しましょう」


《ミルクホールで買い物後のアイテム》

所持金:110G
アイテム:焼きそばパン(HP30回復)×4、コーヒー牛乳(MP30回復)×4、黄色の鍵、白薔薇のシール(5枚)


 買い物を済ませ、三人に引きずられ、クラブハウスの前にやってきた。

「桂さん、『シックスセンス』取らなかったからたぶん失敗すると思うけど、トラップ探知お願い」

 事務的に蔦子が言う。

「何なのよっ!? その、無駄に私を責めるような言い方しないでよ!」

 桂は蔦子に反論する。

「桂さん、トラップ探知はシーフしか出来ない行動で、その名の通りトラップがないかどうかを調べるの。で、『シックスセンス』ってエリア探知のスキルがあると、成功する事が多いんだけど、『シックスセンス』がないと、トラップにかかってシーフはダメージを受ける事が圧倒的に多いのよ」

 ちさとが優しく桂に教えてくれる。

「そういう命にかかわる事は先に言ってよ!」

「どっちみち、私たち三人は出来ないんだから、桂さんお願い」

 そおれ、と真美が桂をクラブハウスの入り口に押し出す。

「どうやって探知すればいいの?」

「何かありそうかな? って思ったところを触ればなんかなる」

 いい加減な蔦子のレクチャーを元に桂は恐る恐るドアノブに手をかけた。

「……何もないみたいだけど」

「では、突入しますか」

 桂を先頭にクラブハウスの中に足を踏み入れる。
 そこにトラップがあった。

【地雷】
 このトラップは対象と接触すると発動する。
 回避に失敗すると対象はダメージを受ける。
 1回発動するとその後は発動しない。

「何よこれえっ!!」

「あー、ドアを開けるところまではトラップ探知したけど、入った先はやってなかった的な、初心者にやりがちなミス?」

 桂の悲鳴をよそに真美が冷静に分析する。

「ひいい!!」

 桂は回避に成功した。

「『アヴォイドダンス』(回避率上昇スキル)取っておいてよかったわね」

 しみじみとちさとが言う。

「まあ、これでトラップは発動したから後衛の私たちは難なく通過できるという事ね」

 蔦子が晴れ晴れとした表情で言う。

「何よ、その人身御供みたいな扱いは!」

「桂さん、シーフってそういう役割よ」

 蔦子が言う。

(なんか、納得いかない)

 桂は足を進める。

「あ、桂さん、トラップ探知を続けないと──」

 桂がまた一歩踏み出したときにカチリと音がした。
 そこにトラップがあった。

【毒針】
 このトラップは対象が何らかの条件を満たす(ボタンを押す、扉を開く、仕掛け床を踏むなど)と発動する。
 回避に失敗すると対象はダメージを受ける。
 1回発動するとその後は発動しない。

「避けて! 避けて!」

「わああ!」

 桂は回避に成功した。

「本当に『アヴォイドダンス』(回避率上昇スキル)取っておいてよかったわね」

 しみじみとちさとが言う。

「まあ、これでトラップは発動したから(以下略)」

「何よ、私は人柱じゃないんだから!」

「桂さん、シーフってそういう役割よ」

「やっぱり納得いかないわ」

 桂は思わず壁に手をついた。
 そこにトラップがあった。

【吸収壁】
 このトラップは常に作動している。
 対象が触れるとMPを吸い取られる。
 触れると何度でも発動するので注意しよう。

「ひやあああ!!」

 背筋がぞっとするような、冷たい棒で背中をなでられるような、何とも不気味な感触が桂を襲う。

桂のMP:19→13

「あらら、6Pも減っちゃって。ポイズン1回分ね」

 ちさとがため息をつく。

「ダンジョンでの些細な行動が命取りって例ね」

 真美が頷きながら言う。

「さっきから、なんで私ばっかり!!」

「桂さん、シーフ──」

「もう、シーフ辞めたい!」

 桂は絶叫した。

「そう? 桂さんはシーフ向きだと思うけど?」

 蔦子が言うが、桂は絶対に向いてないと理解していた。

「でも、勇者やめたいとは言わなかったって事は勇者を続ける気はあるのね。よかった。一時は嫌がってたからやめるんじゃないかって心配したのよ」

「あら、学園長から勇者のしるしを貰った時点で勇者をやめるなんて不可能よ」

 ちさとが言うと真美がそう返してた。
 桂は勇者ごっこから抜けられない事に涙した。

「さて、どこから攻略する?」

「拠点を確保しよう。新聞部の部室と、写真部の部室。二階だけどあそこを拠点にして攻略すれば楽になると思う」

 蔦子が提案する。

「拠点? 保健室みたいな?」

 ええ、と蔦子が頷く。

「ここの階段から2階に行ってすぐよ」

 階段を指して真美が言う。

「待って、トラップ探知!」

 桂は宣言した。

「おー、桂さんが自主的にトラップ探知を」

 蔦子が感心したように言う。

「って、もう、酷い目にあうのは嫌っ!!」

 トラップはなかった。
 二階に移動した。

「トラップ探知! トラップ探知!」

「そんなに必死にならなくても──」

 桂は何かを感じて立ち止まる。

「何か、出る?」

 四人は身構えた。
 扉が開く。
 そこは漫画研究部の部室の前だった。

「ごきげんよう」

「水奏さん」

 三年松組、蔦子と真美のクラスメイトでもある、漫画研究部の部長の水奏さんが現れた。

「どうしたの?」

 桂は尋ねた。

「わかった! 『お釈迦様もみてる ウエットorドライ』出演記念ね!」

「あっ、このSSの作者、『ドッペルかいだん』のBGN的な話は次の号だと読んで予告SSを書いて(【No:3050】先走ってデンジャラス)、その後にまんが王で内容が発表されて『しまった! 水奏さん対蓉子さま世代で温めていた話があったのに』って絶句したから、たぶんリベンジだ!」

「祐巳さんに続いて二人目のリリアン生の出演者だものね。いよっ! この、勝ち組が!」

 蔦子、真美、ちさとがメタな話で盛り上がる。

「そんなメタな話じゃないわ。勇者さまが来たから、経験値をあげようと思って」

 水奏さんは──それこそがメタな話なのだが──ニコニコ笑ってそう言う。

「つまり、戦闘って事ね」

 ちさとが身構える。

「は?」

 置いてきぼりにされていた桂は茫然としている。

「敵よ。エネミー識別……」

「待って」

 蔦子の行動を水奏さんが遮る。

「まだ勇者パーティーは部長クラスとの戦闘は厳しいと思うの。そこで、今回はうちの部員と戦ってもらおうと思って」

 その言葉に桂は引っかかるものを覚えて疑問を口にした。

「ねえ、こっちだって真美さんは前部長だし、ちさとさん──」

「ストォーップ!! 桂さん、今日は『ネタバレ注意』ってかいてないから、真美さんはみんな想像してたからまだいいとしても、ちさとさんには触れないでっ!!」

 桂の質問を蔦子が慌てて遮る。

「あ、はい。とにかく、そんな感じなんだけど」

「勇者のレベルに合わせちゃったからそうなったのよ。さて……いらっしゃい」

 桂の疑問をさらっと流して水奏さんが一人の部員を呼んだ。

「彼女と戦ってみて。勝てたら私が相手になるわ」

 水奏さんは微笑んだ。

「エネミー識別します……ぐふあっ!」

 蔦子がエネミー識別をして悲鳴を上げた。


《エネミー識別の結果》(ストーリーと関係ないパラメータは省略)

名前:漫画研究部部員A
クラス:イリュージョニスト
HP:110
敏捷:5
スキル:クロスオーバー(幻影を繰り出す。幻影なので対象は精神で抵抗しなくてはならない。成功するとHPダメージと『混乱』状態を与える)


「混乱って、何?」

 桂が質問する。

「敵も味方も関係なくランダムで攻撃したり、回復したりする異常状態よ。解除するにはプリーストの状態異常回復スキル『キュア』が必要なんだけど──」

「ごめん。特殊効果持ちの敵が来ると思わなかったから『プロテクト』(ダメージ軽減スキル)とってレベル上げちゃった」

 蔦子の解説を引き継ぐように真美が謝罪する。

「つまり、混乱状態になったら戻せないって事?」

 ちさとの言葉に蔦子、真美が頷く。

「しかも、このスキルの嫌なところは精神値を基準に『抵抗』しなくてはならないというところよ『防御』ではなくってね」

「『抵抗』って?」

「向こうのスキルの成功値とこっちの精神値+αがどっちが高いかを比べて、向こうが上回れば抵抗失敗。こっちと同じか向こうが下回れば抵抗成功になるのよ」

「私、精神値低いんですけど。『抵抗』に失敗したら──」

 ちさとの顔が引きつる。

「向こうに攻撃しないでこっちに攻撃してくるかもしれないわね」

 蔦子が言う。

「最悪じゃない」

 桂は馬鹿にされても精神値を上げておいてよかったと胸をなでおろした。

「そろそろ始めましょうか」

 部員Aが微笑んだ。

「敏捷値はこちらの方が早いので、行きまーす! 『クロスオーバー』で攻撃対象はちさとさまで!」

「う」

 ちさとは身構える。
 不意に目の前に刀を構えた乃梨子ちゃんが現れた。

「な、何!?」

「幻影よ。イリュージョニストはこういうものを作り出して攻撃するスキルを持っているクラスなの」

 驚く桂に水奏さんが解説する。
 幻影の乃梨子ちゃんが刀を構えて叫ぶ。

「舞え『袖白雪』! 次の舞・白漣!」

 すると冷気が津波のようにちさとに向かって押し寄せる。

「並薔薇ポイント1使います!」

 勇者たちに備わる神秘の力『並薔薇』を使い、ちさとはぎりぎりで抵抗に成功した!
 幻影の乃梨子ちゃんが消える。

「危なかった……」

 ちさとが肩で息をする。

「な、なんなの、この攻撃は?」

 桂は戸惑う。

「抵抗に失敗すると『混乱』以外にもこの幻影の攻撃のダメージが入るのよ。ちなみに元ネタはBLEACHの朽木ルキア」

 見守っている水奏さんが説明してくれる。

「これ、結構強そうなんですけど……」

「試算すると……30Pぐらいのダメージが入るかも」

 にこにこしながら水奏さんが言う。

「そんなの食らったら死んじゃう!」

「桂さん、『ポイズン』(毒を与えるスキル)お願い! HP110もあるからゴリゴリ削らないと」

 蔦子が指示を出す。

「あ、うん。『ポイズン』」

 桂の攻撃!
 部員Aは毒を受けた!

 次はレベルアップで素早さの上がったちさとである。

「次は私ね。並薔薇ポイントは『クロスオーバー』対策につぎ込まなきゃいけないから、ここは普通に……敵を引き裂け! 『スマッシュ』(白兵攻撃スキル)! ……ああっ、失敗気味!」

 部員Aは9Pのダメージ!

 真美がため息をついて言った。

「こんな事になるんだったら強化術取っておけばよかった。この場面で使えるスキルないから、普通に攻撃しかないのよね」

 真美の攻撃!
 部員Aは攻撃をかわした!

「ああ、前回から1回も攻撃が当たってない……」

 真美が地味に落ち込む。

「仕方がない。並薔薇ポイント1使用して、更に、『マジックサークル』(魔術強化スキル)! 聖霊の力を借りて風よ吹きつけろ! 『ウィンドスラッシュ』(風属性魔術攻撃スキル)!」

 部員Aは9Pのダメージ!
 さらに毒で3Pのダメージ!

「並薔薇ポイント使って9Pしかダメージが入らない……MP、もつかな」

 蔦子が硬い表情で言う。

「その前に、『クロスオーバー』で攻撃対象は……やっぱりちさとさま!」

 部員Aが高らかに宣言する。

「やっぱりって」

 身構えるちさとの前に瞳子ちゃんの幻影がバイオリンを構えて現れた!

「最終楽章 破壊のシンフォニー」

 バイオリンを弾き始め、瞳子ちゃんを中心に巨大な竜巻が発生する。

「元ネタはローゼンメイデンの金糸雀。竜巻も結構強いダメージがいくはずよ」

 水奏さんが言う。

「当然並薔薇ポイント1使って抵抗します!」

 再び並薔薇ポイントを利用してちさとは抵抗に成功した。
 瞳子ちゃんの幻影が消える。

「並薔薇ポイントを1使って攻撃!」

 桂の攻撃!
 部員Aは4Pのダメージ!

「これって、失敗?」

 桂は恐る恐る聞く。

「ここから挽回するわ! 敵を引き裂け! 『スマッシュ』! ……ごめん、あんまり挽回できなかった」

 ちさとの攻撃!
 部員Aは11Pのダメージ!

「私は並薔薇ポイント2使います」

 真美の攻撃!
 部員Aは12Pのダメージ!

「また並薔薇ポイント1使用! 『マジックサークル』! 聖霊の力を借りて風よ吹きつけろ! 『ウィンドスラッシュ』!」

 蔦子の攻撃!
 部員Aは10Pのダメージ!
 更に毒で3Pのダメージ!

「リソースつぎ込んで真美さんを下回るとは……」

 ガッカリした表情で蔦子が呟く。

「入ったからよしとしましょう」

 真美がフォローするように言う。

「ああ、今日の攻撃は調子が悪いわ」

 何となく嫌な空気が漂う勇者パーティー。


《現在の状況》

部員Aの残りHP:49

ちさとのMP:4
ちさとの並薔薇ポイント:1

桂のMP:7
桂の並薔薇ポイント:2

真美のMP:24
真美の並薔薇ポイント:1

蔦子のMP:17
蔦子の並薔薇ポイント:1


「MPはコーヒー牛乳で回復すればいいけど、並薔薇ポイントはガンガン減っていくわね」

 ちさとが『クロスオーバー』で攻撃された場合、あと1回は並薔薇の力で何とか出来る。
 しかし、更にもう1回標的になった場合、かなり絶望的だった。
 真美のスキル『プロテクト』はあくまで「ダメージを軽減する」スキルであり、特殊効果の打ち消しは対象外である。
 出来ればこのターンで敵を打ち負かしたい勇者パーティー。
 つぎは部員Aの攻撃である。

「では、『クロスオーバー』で攻撃対象は……またまたちさとさま!」

「うう、これで並薔薇ポイントは最後よ」

 ちさとが身構える。
 剣を構えた志摩子さんが現れる。

「元ネタはコメントでリクエストいただいた、ディバインパウアよ。テイルズオブデスティニーのフィリアのやつしかしらないのでそれで。見てますか〜?」

 笑顔で水奏さんがあさっての方向に向かって手を振る。

「水奏さん、どっち向いてるの?」

 幻影の志摩子さんが技を繰り出そうとした時、真美が動いた。

「ここで行動を放棄してちさとさんをかばう!」

「ええっ!? そんな事が出来るのっ?」

 桂は驚く。

「ええ。これが出来る条件は『行動済み』ではない事よ。かばう場合は対象に代わってダメージと状態異常などの特殊効果を食らうの。そしてかばってHPが残っていたとしても行動済み扱いになるわ。でも、攻撃の主力、ちさとさんと蔦子さんを落とすわけにはいかないし、桂さんも並薔薇ポイントが2残ってる。それならここは大して役に立ってない私がモロに食らって昇天、3連撃で倒すのが一番勝てる戦術よ」

 なんという熱い展開。

「え、でも──」

 そうこうしているうちに幻影の志摩子さんの技が出た。

「いきますありったけ! 唸れ炎よ! 舞え吹雪よ! 切り裂け風よ! とどめ、ディバインパウア!!」

 業火、吹雪、暴風での容赦のない攻撃の後、結晶が叩きつけられる。
 そのダメージは……49P!
 当然真美は倒れた!
 幻影の志摩子さんも消えた。

「うわーっ! 真美さんが死んじゃったーっ!!」

 取り乱して桂は叫ぶ。

「落ち着いて、桂さん。敵を倒した時に、パーティーの誰かが生き残っていれば、倒されたメンバーをお聖堂に連れて行って復活させる事が出来るのよ」

 蔦子が言う。

「そ、そういうものなの?」

 気が抜けたような声で桂は聞いた。

「そういうものだから、桂さん、全力で」

「並薔薇ポイント2使います!」

 桂の攻撃!
 部員Aは15Pのダメージ!

「ここで倒さないと! 並薔薇ポイント1使用! 敵を引き裂け! 『スマッシュ』! ……ああっ! ごめん、クリティカルにならなかった!」

 ちさとの攻撃!
 部員Aは19Pのダメージ!

「とにかく全力で! 並薔薇ポイント1使用! 『マジックサークル』! 聖霊の力を借りて風よ吹きつけろ! 『ウィンドスラッシュ』!」

 蔦子の攻撃!
 部員Aは13Pのダメージ!
 更に毒で3Pのダメージ!
 部員Aを倒した!

「……危なかった〜」

 ちさとが大きく息を吐いた。

「私は山百合会の刺客じゃないから、今日はやめておくわね」

 水奏さんは引き揚げた。

「桂さん、ドロップ品をお願い」

 蔦子が笑顔で桂に要求する。

「蔦子さん、なんかやたらとアイテムやお金にうるさいんだけど、何かあるの?」

「……何にもないって」

 作り笑顔で蔦子が否定する。
 桂がセーラーカラーをめくると下から何かが出てきた。

「何、これ?」

 桂が首をかしげていると蔦子が素早く取り上げて言った。

「アイテム鑑定しまーす」

 蔦子が宣言した。
 聞くと、「アイテム鑑定」を行ってアイテムを確定させると高値で売る事が出来るらしい。


《アイテム鑑定の結果》

響レイネの夏コミグッズ(売れば1000G):いくつもの修羅場を乗り越えて作られた魂のグッズ。好評につき売り切れでもう手に入らない(涙) 某マリみての挿絵作家さんとは別人って事にしておこう(笑)


「よし!」

 ガッツポーズで喜ぶ蔦子を無視して桂とちさとは真美を抱えてお聖堂に行った。
 シスターの先生が迎えてくれる。

「勇者さま、誰を復活させたいのですか?」

 いきなりそう言われてしまった。
 しかし、学園長がグルである以上、桂はもうこのあたりを突っ込む気にはなれなかった。

「誰をって、見ての通り真美さんを」

「では、10Gお願いします」

 シスターの先生が言う。

「は?」

 きょとんとして桂は聞き返す。

「桂さん、復活は有料なのよ」

 こそっとちさとが囁く。

「ええっ!」

「Gをケチって仲間の復活をやめますか?」

 シスターの先生がさわやかに聞く。

「……まさか」

 桂は10G払って真美を復活させた。

「ふー、復活しました」

「今日は並薔薇ポイントも使いきったから、保健室で回復とレベルアップして帰りましょう。レベル4にはなれるわ」

 ちさとが提案する。

「そうね……あ、そうだ。私、日出実に新聞部の方は任せる事にしたから、これからは新聞部の活動日は気にしないでいいわ。蔦子さんも写真部の活動日は気にしないでって言ってたし」

「そう言えば、蔦子さんは?」

 蔦子さんがパーティーから離れて、何をしていたのかを知るのは次回の活動になる。

->とりあえずセーブして【No:3073】
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