【3074】 逆にハイレベルだよね  (朝生行幸 2009-10-04 01:14:01)


「はーい皆さん、注目、注〜目」
 四校合同合宿二日目の夕方、清澄高校麻雀部部長竹井久が、疲労を隠せない参加者全員に呼び掛けた。
「まだ二日目とは言え、朝から根を詰めて来た我々ですが、皆さん少々お疲れの様ですので、ここいらで夕食まで、休憩を兼ねたちょっとしたイベントを開催します」

 合宿開始早々温泉に入り、その後卓球や何やとフリータイムを満喫した一同ではあるが、それでもその日の内に各校代表が集まって、綿密なスケジュールを組み上げた。
 清澄の久、風越女子の福路美穂子、敦賀学園の加治木ゆみ、龍門渕高校の龍門渕透華。
 ちなみに敦賀のゆみは、県予選の後に引退したので部長ではない(厳密に言うと元部長でもない)が、元エース兼ブレーンとして、表向き代表としてスケジュール作成に参加した。
 透華も龍門渕の部長ではないが、牽引役として部員を束ねる立場にあるが故、代表として同じくスケジュール作成に参加している。
 もともとこの合宿は、全国大会に団体戦で参加する清澄が、全国体験校である風越、龍門渕のメンバーと対戦することによって、その実力を肌で体感して貰うのを目的として計画されたものだが、同時に個人戦で全国に挑む美穂子、清澄の原村和、同宮永咲の経験値稼ぎ、そして更に他の部員の能力底上げも考慮に入れている。
 故に、遊びではなく、真剣に全国優勝を狙えるだけのハードなスケジュールを組む必要があるのだ。
 とはいえ、何事にも程というものがある。
 そこで、決められた時間の間はとにかく集中し、それ以外では適度な息抜きをしようと言う事で、お気楽なイベント開催を盛り込んだということだ。
 ちなみにイベント開催については、各校代表同意の下、久に一任されることになった。

 ふぅ〜、とか、はぁ〜、とか、定番の溜息を漏らしつつ、足を崩したり、背伸びする各校部員一同。
「それで、イベントって何するんだ?」
 龍門渕のオレ子さん、井上純が問い掛けた。
「ま、大したことではないのよ。各校から一人選抜して、半荘一回勝負するだけ。但し、プレッシャーをかけるため、選手以外の人は、自校以外のギャラリーに徹して貰うわ」
「それだけなのか?」
 あまり面白くなさそうに、天江衣が聞き返した。
「ええそれだけ。でも、間近で大勢の他人に見られて、しかも半荘一回だけなんて、本来の実力は出し難いわよ〜。そんなわけで、選手を発表するわ」
 軽い緊張が一同に走った。
「まず風越からは、池田華菜さん」
「にゃぁ、私!?」
「龍門渕からは、国広一さん」
「ボク?」
「敦賀からは、蒲原智美さん」
「ワハハー」
「清澄からは、優希に出て貰うわ」
「おう、まかせとけい!」
 早速部屋の真ん中に雀卓を移動させ、場所は東南西北に一、華菜、智美、優希、親は華菜で始まった。
 激戦の結果、智美、華菜、一、優希の順位となった。

「ワッハッハー、何とか元部長としての面目は保てたな」
「え? 敦賀の部長って加治木さんじゃなかったの?」
 流石に半荘では実力差は出にくい様で、総合的な能力では一番劣るであろう敦賀がトップとなり。

「にゅぅ、トップになれなかったし……」
「また吼えたらどうかな?」
 配牌に恵まれなかったのか、このメンバーでは恐らく最強の華菜が二位に甘んじ。

「……ふぅ、イマイチだったなぁ」
「その鎖、邪魔にならないの?」
 堅実に進める一には、半荘だけでは手が伸びきらず三位。

「やっぱりタコスが無いとダメだじぇ……」
「お前は焼き鳥でも食ってなよ」
 東場では伸びても、南場では失速した優希は、残念ながら最下位で終了した。

「はい、皆さんお疲れ様。どう? 思っていたほど実力差は出ないでしょう」
 試合会場の対局室では、カメラを除けば人目はせいぜい監視員二人程度だが、ここでは敵味方含めて目が32もあるのだ、場慣れしていなければ気になって仕方がなく、結果実力は出し切れない。
「それでは、第一回“つるぺたカップ”の優勝者は、敦賀学園の蒲原智美さんでした。皆さん拍手〜」
『何だよソレ!?』
 参加者一同、拍手も忘れて一斉に突っ込んだ。

 その後、風越の深堀純代、龍門渕の沢村智紀、敦賀の東横桃子、清澄の和による“巨乳カップ”も開催され、それならばと各校から、“影薄いカップ”とか “眼鏡カップ(第三回)”とか、“目が細いカップ”とか“真のアイドルカップ”とか、とにかく何でもアリの変なイベントが乱立したのだが、その参加者が誰なのかは、皆さんのご想像にお任せすると言うことで……。


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