【3091】 変でしょうかARIAクロス続編  (ケテル 2009-11-15 09:03:37)


クゥ〜様SS
(ご注意:これは『マリア様がみてる』と『AQUA』『ARIA』のクロスです)
【No:1328】→【No:1342】→【No:1346】→【No:1373】→【No:1424】→【No:1473】→【No:1670】→【No:2044】→【No:2190】→【No:2374】→【No:3304】

まつのめ様SS
(ご注意2:これはクゥ〜さまのARIAクロスSSのパラレルワールド的な話になると思います)
【No:1912】→【No:1959】→【No:1980】→【No:1990】→【No:2013】→【No:2033】→【No:2036】→【No:2046】→【No:2079】

(言い訳:ここから下のSSは『 AQUA 』『 ARIA 』のクロスとして書かれたクゥ〜様、まつのめ様のSSをベースにケテルが勝手に妄想した三次創作です。 相談したわけでもなく読み解いたわけでもありませんので、多分に反論、お叱りなどもあると思いますが、その辺りもコメントしていただけると幸いです)


 ――― 書いたら見てもらいたくなるSS書きの悲しい性をお許しください。 ―

乃梨子視点

【No:3091】>【No:3101】>【No:3111】>【No:3126】

 由乃視点

【No:3156】>【No:3192】>【No:3256】】>【No:3559】




《 ―― その、澄んだ AQUA の響きは… 》


『地面の下に大きな穴
 底にある小さな椅子
 黒マントと黒眼鏡に聞きなさい』


「……って、なに?」
「なんでしょう…なにか下の方に繋がってる穴でもあるんでしょうか? その〜、反対側の大陸まで繋がってるような…」
「さすがにそれは大袈裟だと思うけどね。 地下通路若しくは地下街程度じゃない? でも、そんなとこあるの?」

 藍華さんに言われたとおり脚立を廊下に出し、一応その事を告げてから姫屋から出てきた。
 しかしアクアに来てから4日。
 地下通路や地下街がどこにあるのか、いやそもそも存在しているのかすらわからない。 一応300年経ってるわけだし、地球のヴェネツィアとネオ・ヴェネツィアがまったく同じとは限らない。 由乃さまも修学旅行で行ったとはいえ、そらでヴェネツィアの地図が分かるわけではないだろう。

 なんにしても情報源は、オレンジ・ぷらねっとでアテナさんからもらった教本のみ。

「これだけじゃあ情報不足ですよね……」
「足りなきゃ聞けばいいのよ。 う〜んと…あっちにお店があるわね」

 そう言うや由乃さまは、数件の商店が並んでいる場所に向かって駆け出す。 さすがにこの状況で大きな暴走はしないだろうとは思うけど……あっ。

「由乃先ぱ…」
「乃梨子ちゃん、地図でそれっぽいの探してみて、私は周りの人に聞いてみる!」
「何かお探しですか?」
「ぅぇえあ〜〜?!」
「「だ、大丈夫ですか?!」」

 ゴンドラをどうするか聞こうとした時、駆け出していた由乃さまは食料品がいっぱい入った大きな袋を抱えた人にぶつかりそうになった。 なんとか避けたもののたたらを踏んで転びかけたのを、袋を抱えた人は荷物を放り出して由乃さまの手を引いてくれた。 背低い人だな……。

「す、すいません! あ〜〜〜、荷物が!」
「拾えばいいだけの話ですから」
「連れが失礼しました。 すぐ拾いますので」

 放り出されて散らばってしまった荷物を周りを歩いている人ともども拾い集める、転んでしまったわけではないので由乃さまもチョコレートやクッキーや冷凍みかんなどを拾い集めている。 冷凍みかん? 

「すいませんでした。 あの〜…」
「大丈夫ですよ、無くなった物も傷んだ物も有りませんから。 ところで何かお探し物ですか?」
「えっ、あ〜…」

 ニコニコ人懐っこく笑っているその人、背はさっきも思ったけど私より低い、黒いマントに黒い丸サングラス、サイズが小さいような気がするんだけど役に立ってるのかな? 由乃さまと目を見合わせてからうなずく。 『申し出てくれているし、この人に聞いてみよう』

「ではお伺いしたいんですが、この街には地下通路や地下街って言えるような地面の下の大きな穴はありますか?」
「これを見てください」

 姫屋で見つけた暗号の書かれた紙を、その人に見せる。

「ウンディーネの方が迷ったんですか? あ、拝見します」
「いえ、その…成り立てで……」
「アクアに来たのも4日前なんです」
「ウンディーネに成り立てで、アクアに来て間もないと、なるほど……、有りますよ大きな穴」
「え?」
「ええ、よろしければご案内しましょうか?」
「え? いえ、場所を教えていただければ…」
「大丈夫ですよ、ちょうど帰るところですから」
「「 帰る? 」」

 にっこりとホントに人懐っこそうに笑うその人。

「あ、もうし遅れました。 地重管理人=ノームのアルバート・ビットです。 皆さんには”アル”と呼ばれています」
「あ、……私は島津由乃。 で、後輩の二条乃梨子です。 その〜成り立ての……な

、なんかウンディーネって名乗るのも、まだちょっと恥ずかしいわね」

 『ははは、取りあえず見習い(ペア)です』と後頭部を掻きながら照れている由乃さま、わからなくは無い『そうですね』と答えてからアル君に向き直る。

「え〜っと”地重管理人=ノーム”って言うのは何なんでしょう?」
「話しながら行きましょうか」
「そうだ、由乃さ…先輩、ゴンドラどうしましょう?」
「ここに置いたままでいいですよ、僕のゴンドラで行きましょう。 こちらです」

 そう言うとアル君は、私と由乃さまを伴って歩き出す。

「アクアには妖精の名を冠した職業が四種類有ります。 水の妖精の水先案内人=ウンディーネは、ゴンドラを漕いでネオ・ヴェネツィア観光の花形を。 火の妖精の火炎之番人=サラマンダーは、空の浮島の気候制御ユニットでアクアの温度と気候の管理を。 風の妖精の風追配達人=シルフは、アクアの空を泳ぐ配達人を。 そして地の妖精の地重管理人=ノームは、アクアの地下で重力を管理しています。 もともとの火星の……」

 ここから先は理解できないわけじゃあないけど長くなるし、自称『マンホームに伝わる古の高等古典』と言う、私達の時代でも相当に空気を凍らせる系の冗談が所々に織り交ぜられるので省略。 アル君ごめんなさい。
 由乃さまは、案内をしてもらっている手前か、アル君の話を遮らずに相槌をうっておとなしく聞いているけど、視線が合った時『 お願い…助けて… 』と訴えかけている。 けれど、気づかない振りをすることにした、由乃さまごめんなさい。

「ここからはゴンドラで行きます」

 すぐ近くのゴンドラ置き場に係留してあるアル君のゴンドラで、その『地面の下に大きな穴』と思われるところに行くらしい。

 アル君のゴンドラの上にはすでに四袋の荷物が積んであり、五袋目が今乗せられた。 『乃梨子ちゃん』っと由乃さまに呼ばれる。 さっき助けなかったことについて文句を言われるのかな?

「ねえ、見習いとはいえ私達が漕いだ方がいいのかな?」
「……いえ、どこへ行けばいいかわかりませんし、言われない限りアル君にお任せしていいのではないでしょうか。 それにあの規則もありますし…」
「それもそうか……でも乃梨子ちゃん、さっきの私達の会話ホントに聞いてなかったのね。 彼、私より年上だそうよ」
「…え? ホントですか?」
「うん、三歳上」
「………見えない…」
「……うん…。 なんか、ノームの人って背が低いらしいわ、アルさんも反則的な童顔だし」

 ゴンドラに乗り込む時、少し離れたお店の影からチラッと見覚えのある白い帽子が見えた気がする。 

 アルさん(さすがにもうアル君とは言えない)がオールを操って水路に漕ぎ出す。 姫屋の前の水路をおそらくカナル・グランデの方へ向かって『地下世界の入り口』をめざす。

「あ、ありましたよ由乃先輩。 これですよね『”地下世界”…通な人が稀に訪れる。 最深部に有る重力石が通るパイプが奏でる音色は一聴の価値がある…名物料理はきのこ鍋…』は〜…」
「へ〜、最近はガイドブックにも載ってるんですね。 特に立ち入り禁止にはしていませんから、ミドルスクールの社会科見学なんかもこられますからね」
「これウンディーネの教本なんですよ」
「あ〜、それは便利な物をお持ちですね」
「レポート書かなきゃいけないかもしれないんで、現在位置を確認しながらなんです。 今、カナル・グランデの方に向かっているんですよね?」
「そうですね、途中で曲がるんですけれど、方角は凡そあってますよ」
「レポートも書かなきゃならないのは分かるんだけどさ…」
「あっ?!」
「教本ばっかり見てないで、周り見てみなよ」

 教本を由乃さまにパッと取り上げられる、確かに大雑把な地図を見ていてもしかたない、けど現在位置を確認しながらでないとどこがどうだかわからなくなってレポート書くとき困るんじゃないかな。 帰りどうする気かもちょっと不安だし……。
 そう思いつつも視線を上げて見ると……。


 細い路地を通して建物と建物の間にはためく洗濯物。
 建物の上をゆっくり飛んで行く鯨を模したような宇宙船。
 水底から直接建っているような建物。
 小さな公園。
 ちょっとしたスペースに有る飲み物やパニーニやアクセサリー、花の屋台、水上市場。
 道祖神のように運河を見守るマリア像。

 雑然と、しかしなぜかそれで調和が取れている街並み、

 そして 建物と建物間からは 切り取ったような青い空  青い空 

 それを映す信じられないほど澄んだ水   蒼い 青い 水


 1日目はともかくここ3日間、確かにゴンドラに乗って指導してもらいながら水路を行き来したり、水上バス乗ったりしてきたけれど、漕ぐことに必死、あるいは志摩子さんの幻(?)に気持ちを揺さぶられたりで、実は思っているほど街を見ている時間は無かったように思う。

「……なんか、いいよね…」
「……はい…」

 一昨日よりも、昨日よりも、しっくりとはまる様な気がする。 神話にそんなのがあったな〜、やっぱりここのご飯を食べてるからだろうか? と思い始めた頃、水路が入っていくトンネルが見えてきた。

「ほら、見えてきましたよ地下世界に繋がるカナレッジョの一つです」

 壁の照明で比較的明るいトンネルが見えてきた、貨物の搬入に使われることもあるのか比較的広めに創られていて、私や由乃さまがゴンドラで来てもぶつかる事は無いだろう……たぶん。
 地下世界なんて言われて、勝手におどろおどろしい洞窟を思い浮かべてしまったが、アルさんは背が低いだけで普通の人なんだからそんなわけない。 それにここ300年後の火星だし。
 トンネル運河の交差点を2つ過ぎると船着場に到着した。




「ここがおそらく『地面の下に大きな穴』ですよ」
「「わあぁぁぁっ!!!」すっっごいぃ!!」

 押し戻されるんじゃないかと思えるほどの風に逆らって開かれた扉を抜けると『大きな…』どころか、巨大な深い深い竪穴があった。
 深すぎて覗き込んでも底が見えない、どこまで掘られてるんだろう? 広くて深くて感覚認識が追いつかないから下が見れるんだろうけど。 竪穴の内壁には、家や所々に店がへばり付く様に建てられていて、徐々に暗くなっていく底の方で星のように瞬いて見えるのだけど、中心の方は真っ暗でやっぱり底は見えない。

 あ……ちょっと…傾いてるような気が………うん……高いんだよね…深いんだよね…え〜と……感覚認識が…追いつかないん……だ…よね……。 ……ゆっくりと後ずさって、手摺から離れる。 由乃さまも後ずさっている。

「ここ……まさか…階段で降りる……ってことない…よね?」
「それはさすがにないでしょう……だって…底見えないんですよ…」
「階段ありますよ、そっちで行きますか?」
「「いいえ、とんでもない!!」」
「はははは、僕も遠慮したいですね、この荷物ですから。 こちらへどうぞ」

 私と由乃さまが一つづつ、アルさんが台車を押して残りの三つ、中身はほとんどがお菓子なんだとか。
 行方不明になってしまった甘党のどこかの誰かさんを思い出す。 私と由乃さまの二人も、元の世界では行方不明で騒がれているだろう。 そして、昨日見かけたのが志摩子さんと瞳子だったとすると、やっぱり………。

 扉が格子になっている古いアメリカの映画で見るようななんともレトロなエレベーターで、ゆっくり地下の世界、アクアの底を目指す。

「そう言えば『黒マントと黒眼鏡に聞きなさい』ってあるんですけど、アルさんも黒マントで黒眼鏡ですよね、まさかアルさんのことなんでしょうかね?」
「『黒マントと黒眼鏡に聞きなさい』…なるほど……実際どうなんですか? なにか渡されてませんか? 姫屋関係者とかオレンジ・ぷらねっと関係者とかARIAカンパニー関係者とかから」
「『底にある小さな椅子』って書いてありますよね。 と言うことは、穴の奥に行かなければならないということでしょう。 残念ながらそこに書かれている『黒マントと黒眼鏡』は別の人と思ってください」

 何か知っているふうな言い回しだけれど、余裕の笑顔でかわされてしまった。 由乃さまのあしらい方もなんでか慣れが感じられる。





 降りはじめてどのくらい経っただろう? 何度かエレベーターを乗り換えて、ようやく地下世界の。 アクアの底が淡い青色の光とともに見えてきた。


 ―― ィ ィ ィ ィ ン


「ん? なに?」
「え? なにか言った?」
「何か聞こえたような気がしたんですが…気のせいですかね」
「って、エレベーターの音が大きくて、よく聞こえない」
「気のせいで…」


―― キ ィ ィ ィ


「聞こえる、やっぱり聞こえる」
「え? ――― 何が? ってか乃梨子ちゃん壊れてないよね?」

 ―― ァ ァ ァ ン ン ―― コ コ ォ ォ ン

「…いえ壊れるんでしたら、アクアに来た最初のうちに壊れたかったです」
「いや……それって…命が危ないから…」

 サバイバル術なんかの心得も無い私達。 壊れた私を抱えた場合、由乃さまも私も生残る可能性はなさそうだ。 まあ、そうなったら二度と志摩子さんにも会えなくなりそう、そんなの願い下げだ。


 ―― コ コ ォ ォ ン


 耳を澄ましてみるとやはり聞こえる。

「聞こえませんか?」
「……やっぱ何も聞こえないけど…」
「…耳がいいですね、もっと下に下りてエレベーターが止まってから気が付かれる人がほとんどなんですけど」


  ―― カ ァァ ァ キィ ィ ン カ コォ ォ ォ ン  キィィィン

―― カァ ァ ン コ ロ ォ ン キィ ィ ン キィィン コォ コォォォン


「さあ、着きました」

 アルさんがニコニコと地下世界への格子扉を開ける。

 ハンドベルの音、金属のような、ガラスのような。 その複雑な音の響きを正しく表現するすべを、私は知らない。

「ようこそアクアの底へ」

 お菓子満載の台車を押しながらなのが、ちょっとなんだかな〜な感じですアルさん。

「さあ、こちらへどうぞ。 ―― ここの通路では、アクアの重力をコントロールする重力石を作っています」

 青を基調にした照明がついた通路に案内される、青い照明のはずなのに手元なんかはちゃんと普通な色をして見える不思議空間。
 通路の左右には大きな砂時計のような容器が並んでいて、上の容器から蛍光グリーンのねっとりとした液体が一滴づつ滴って丸い飴玉みたいなボールが作られている、不思議なことに蛍光グリーンの液体から作られているはずなのに、出来た物は赤や黄色や青などカラフル。

「これが重力石? 飴玉みたいね」
「ここでは特に引かれるって感覚は無いですね」
「重力石一つ一つには、極々わずかしか力は無いですからね、それが集まって大きな力を生み出すわけです」

 たくさんの小さな力の人達が集まって大きな力で改造された火星=アクアの底を
 たくさんの小さな力の重力石が集まって快適に生活できるだけの重力を生み出している。
 そして空間を満たしているのは、金属ともガラスともいえるような不思議な音色。

「…不思議な音」
「……いい音ですね、なんていう楽器ですか?」
「由乃さま、教本に書いてありましたよね ”最深部に有る重力石が通るパイプが奏でる音色は一聴の価値がある”これがそれだと思います」
「正解です。 アクアの核に張り巡らされているパイプの中を重力石が走る時に出る音なんですよ。 いわばこの音は、アクアと言う楽器を重力石と言う息吹を使って奏でている音楽と言えますね」
「な、なんかツッコミたいけど、ちょうどいい言葉が思い浮かばない…最近聞いたような気がするんだけど」

 由乃さま、なんか悔しがってるし。
 台車を押しながら、アルさんに穴蔵のさらに奥へ誘われる。

「そして、あれが重力石の流れをコントロール装置です」
「…わぁ〜…すっごい…」
「……竪穴の時も驚いたけど、これも凄いわね」

 青い光に包まれた大聖堂の奥に据えられた大きなパイプオルガン。
 重力石の走る大小さまざまな太さのパイプが、その装置を通ってアクアの核を巡り重力を作っている。 不思議な話しだ。

 そしてそのパイプオルガンの前には小さな椅子があり、穴倉の底であるにもかかわらず黒い眼鏡を掛けて髭もじゃなおじいさんが座っていた。 アルさんよりさらに背が低い。

「アパじいさん、今戻りました」
「お〜、アル戻ったか。 あ〜? 何じゃそのウンディーネの嬢ちゃん達は? 姫屋の跡取りの姉ちゃんだけじゃ足りなくてナンパでもしてきたのか」
「え〜〜、そんなんじゃないですよ!」

 え、アルさんって見かけによらずナンパ師? それに姫屋の跡取り娘…藍華さんと? 思わぬ情報をゲットできた!
 アルさんは”違いますよ〜”と笑いながら台車から荷物を降ろし始める。

「嬢ちゃん達荷物運び手伝ってくれたんか、荷物はそこ、アルが置いてる隣にでも置いてくれ。 いや〜わしのためにすまんね。 しかし、もてるのも考えもんじゃな〜、わしも奥さんいるから残念なんじゃが諦めてくれんかね」
「は、はあ〜。 あの〜、このお菓子は…?」
「もちろん全部わしが食べるんじゃよ。 あ〜、アル後は任せた。 嬢ちゃん達、いい時間じゃ、ちょっといっしょにきのこ鍋でもつつきに行かんか」

 ナンパ師はあなたの方なんじゃ?
 確かにもうそろそろお昼頃なのかな? 

「すみません。 これを…」
「なんじゃ、ラヴレイタァかい。 こまったのう」

 困ったじいさんだ。 由乃さまが例の暗号文(?)が書かれた紙を手渡したんだけど、チラッと見ただけで内容の確認もしないで懐に収めてしまった。

「じゃあアパじいさん変わりますよ」

 アルさんはアパ爺さんの代わりに椅子に座って、現在の状況を確認しているようだ、どこをどう見ているのかはさっぱり分からない。

「んじゃあアル後は頼んだぞ。 嬢ちゃん達きのこ鍋が嫌だったらうどん屋もあるぞ、長木屋っちゅうのが最近出来てな…」

 おかめうどんがおいしいそうだ……。

「どうしましょう? この辺探した方がいいですかね?」
「う〜〜ん、でもどこか隠せそうな場所って有る? それに『底にある小さな椅子 黒マントと黒眼鏡に聞きなさい』でしょ? 『底にある小さな椅子』に座ってた『黒マントと黒眼鏡』 のアパじいさん 『に聞きなさい』って私は解釈するけど?」






「嬢ちゃん達の探し物はこれじゃろ」
「「 あ?!」」

 ちょうど昼時。 アパじいさんにきのこ鍋をごちそうになった、名物と言うだけあってとてもおいしい、アパじいさんも口が達者で話しも面白くいろいろためになる情報も聞けた。
 さてそろそろ店を出ようかという頃に、アパじいさんはマントの中から宝箱を取り出した。 いろいろ聞けたけれど、肝心な事を聞き忘れていた。
 でもこれ、どこに隠してたんだろう大きさの対比が……。


 アパじいさんが会計をしている間に宝箱を開けて見ると、やっぱり中から紙切れが出てきた……。


『空のお釜に薪くべる
怒りんぼうの馬の尻尾
 マッチ箱の車は 危機一髪』
 

「……なんとなく行き先は分かりますけど…浮島ですよね」
「…うん、”怒りんぼう”に”危機一髪”ちょっと嫌な単語よね、マッチ箱の車って全然わかんないわ。 馬の尻尾ってどう絡むんだろう?」
「嬢ちゃん達、今アル呼んで来るから、上の船着場で待っててくんねぇ〜かな」
「え? そんな悪いですよ」
「そうは言っても、嬢ちゃん達のゴンドラ置いた場所までちゃんと帰れんのかい? 遠慮はいらねぇ、こき使ってやってくんな」

 そう言いながらアパじいさんはエレベーターに向かってちょこちょこ歩き出す。

「あ、アパじいさん一つ質問があるんですが」
「んん〜っ、なんじゃい?」
「ここのきのこって、やっぱり地下世界で作ってるんですか?」
「由乃さま……」
「定着しないわね…ここ来てからうまいこといってたのに」
「きのこはここの上の方で大部分は作っとるよ、どうしても作れないもの以外はな」

 ――― だそうだ。





「さあ、もうすぐ姫屋の前に付きますよ」
「ありがとうございます」
「わざわざすいません。 ありがとうございました」
「いえいえ『旅は道連れ世は情け』『袖触合うも多生の縁』ともうしますし、気になさらないでください」

 アルさんに送ってもらって姫屋前までやってくる、船着場から自分達のゴンドラを見つける………え?

「だれ? あれ…」

 白いハッピを着てしかめっ面のポニーテールの男が、腕を組んでゴンドラの客席にどっかりと座っていた。

 だれ?




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 ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…

…。 この前、遊んだSSを書いた時『そう言えばがちゃSのARIAもう一回読んでみるか〜』っで読んでみたところ、続きが無い……。 自分だったらどう繋げて行くか妄想しているうちにこんなのが出来ました。

               と言うわけでまだ続きます。  


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