【3139】 歩道を3列で歩くほんとに自然に衝撃的で  (砂森 月 2010-03-01 00:28:32)


※ものすごくお久しぶりな未使用キー限定タイトル1発決めキャンペーン第15弾
 趣味全開で色々混ざっています。ロリータファッションは出てきませんが。
 登場作品が全部分かる人はいるかなぁ?



「祐巳さん、あれ……」
 とある休日、ふとしたきっかけで祐巳は桂と二人で出かけることになった。
 お互いの用事も済んで、せっかくだからと適当にブラブラしていたら、2人の歩く先に見知った顔が。
「あれ、笙子ちゃん?」
「あ、紅薔薇さまに……えーと、桂さま」
 ごきげんよう、とお互い挨拶を交わす。笙子ちゃんは写真の現像待ちついでにお店の近くを散策していたみたいで……って、あれ? 写真部って自分で現像までやっていなかったっけ?
「今日はモデル時代の知り合いに色々教えて貰っていたんです。だから早く現像しないといけなくて」
 なんでも先日久しぶりに会った人に写真部に入った話をしたら、だったらということであれよあれよと話が進んだらしい。
「そっか。じゃあ頑張ってね」
 そういうことなら、あまり引き留めるわけにもいかない。早々に立ち去ろうとした祐巳達だったが。
「笙子ちゃんおまたせー。あら、そちらの方々は?」
「学校の先輩です、準さん」
 タイミング良く笙子ちゃんの知り合いらしいロングヘアの美少女が出てきたのでひとまずその場に留まった。準さんは高校生ながら現役のモデルということだけあってとっても可愛らしい。
 お互い軽く自己紹介をして、今度こそ立ち去ろうとした祐巳達だったが。
「あ、そうだ。せっかくだから2人も来ない? 学校での笙子ちゃんの話も聞きたいし。もちろん無理にとは言わないけれど」
「いっいいいいいんですか?」
「ちょ、桂さん落ち着いて」
 祐巳は知らなかったが、準さんはかなりの人気モデルらしい。憧れの人に偶然会ってしまったせいか桂さんは興奮している。
 そんなわけで笙子ちゃんと準さんを加えた4人で近くのレンタルスタジオに向かうことになった。のはいいのだけれど。
(うーん、なんだかなぁ)
 桂さんは憧れの人に会えた興奮で準さんしか見えてないし、笙子ちゃんも久しぶりに会ったらしい準さんとばかり話しているし。当の準さんは多少仕方ないなーって視線送ってくれたからまあいいのだけれど。
 と、そんな時。
「あわわっ」
「あ、祐巳さんっ」
「うわっと」
 前の方から柄の悪い人達に追いかけられて走ってきたのは、謎の美少女に手を引かれた女の子の格好の涙目のアリス。いきなり腕を捕まれたものだからちょっとよろけた。
「ど、どうしたの? 何かあったの」
「そ、それが……」
 錯乱気味だったアリスの話を要約すると、すれ違いざまに柄の悪い人達にお尻を触られて思わず軽い悲鳴を上げてしまったら逆ギレされて襲われそうになったところを偶然通りかかった女の子に手を引かれて走って逃げてきた、らしい。
 ――って、それってひょっとして私達も危ないんじゃ。
「あの、その方のお知り合いですか」
「え? あ、うん、そうだけど」
「よかった。お願いしていいですか」
「うん。……え?」
 アリスを助けてくれた女の子はそう言って私にアリスを預けると、多分不良な人達と口論している準さんの所へ。
「巻き込んでしまってすみません」
「気にしないの、困ったときはお互い様よ」
 入れ替わりで、桂さんと笙子ちゃんがこっちに来る。
「あの、準さんが合図したらダッシュ、だそうです」
「笙子ちゃんについていって先にスタジオ行って、って」
「わかった。アリス、走れる?」
「うん、何とか……」
 念のため、息の上がっているアリスの手を掴みながら準さん達の様子をうかがう。準さんはどうにか宥め諭そうとしているみたいだけれど、不良達は聞く耳持たないというか、上玉だの何だのあまり聞きたくない卑しい言葉を並べているみたいで。
「まあ何考えているか大体予想ついているんだけど、ボ――」
「何、してるの?」
「げ」
 一緒にいる美少女さんがため息混じりに苦笑しながら何かを言おうとしたところで、通りがかった女の人が割って入ってきた。見かねたのかなと最初は思ったのだけれど、やりとりを聞くにどうやら前にも不良達と何かあったらしい。明らかに迫力負けしていた不良達は、捨てゼリフを吐いてどこかに行ってしまった。

「ありがとうございます、助かりました」
「気にしないで、私がああいう手合い嫌いなだけだから」
 準さんのお礼に女の人はさっきの怖い声とは違ってハスキーがかった優しい声でそう言った。なんでも付き合っていたサッカー選手の足を試合前に傷つけられた事があったらしくて、運動部の桂さんなんて話を聞いたときは自分の事のように怒りを感じていたみたい。由乃さんがこの場にいたら逆に不良達を追いかけていたかも。
 それはともかく。
「あの、もし良かったらご一緒しませんか? お礼になるか分かりませんけれど、撮影の合間に外に出ていたので今なら見学できますよ。あ、私モデルをやっている渡良瀬準です」
「私はユキ。ただのユキよ。お誘いは嬉しいけど、私も用事があるから。ゴメンね」
「ひょっとして撮影か何かですか?」
「うん、まあね」
 笙子ちゃんがそう訊ねたのはユキさんがカメラケースを持っていたから。時間があれば色々聞けたかもしれないけれど、それなら仕方ないよね。
「そうですか。そっちの2人はどうする? えーと、まだ名前聞いていなかったかしら」
 準さんはアリスと一緒にいた美少女さんにも声をかけた。いいのかなって思ったけれど、アリスが私の知り合いだからかな。
「あ、有栖川です」
「藍川絆です。でもいいんですか? こう見えても男なんですけれど」
「えっ!?」
 全員、一瞬固まった。というか男の子? こんなに可愛いのに……ってよく考えたら。
「あの、私も一応男、です」
 アリスもそうだったよね。
「うーん、ま、可愛いし大丈夫でしょ」
 一足先にフリーズが解けた準さんはあっさりそういった。っていうか、いいんだ!?
「悪い子じゃなさそうだものね」
 同じく一足先にフリーズが解けたユキさんも同調してるし。まあアリスの性格なら大丈夫だろうし、藍川さんもアリスを助けてくれたくらいだからいい人だよね、多分。
 ちなみに桂さんは準さんがOKならいいみたい。いいのか、それで。

 途中の写真屋さんで笙子ちゃんが現像された写真とフィルムを受け取って、ユキさんとはそこで別れた。
 笙子ちゃんは少しだけユキさんと話をしていたけれど、ユキさんはあまり他人を撮ったことがないらしくて。為になる話になったかどうかは笙子ちゃんのみぞ知る、だ。あ、ユキさんもか。
「でね、その時の槙君の反応と言ったら……」
「へー、でもなんかいいな、そういう人」
「でしょ? ついからかいたくなっちゃうと言うか」
 で、祐巳はアリスと藍川さんと一緒に歩いていた。3人とも高校生という事もあって話は自然と学校の話に。普段は男子の話題なんてほとんど出ないからなんだか新鮮。
「そうそう、テツとショーネンったら1年生の時ね……」
「あはは、わかるー。そうなった時のこと考えないで食いついちゃうんだよね、男子って」
 そして話してみて分かったんだけれど、藍川さんってかなり小悪魔。祐麒だと槙君って人みたいにいじられそうだなあとかリリアンだと誰に似ているかなーとか考えてながら話しているとすぐにスタジオにたどり着いてしまった。うーん、イタリアに行ったけど静さまとか?
「あら、麻衣子ちゃんに安那ちゃん。2人はこれから?」
「はい、準さん……そちらの方々は?」
「笙子ちゃんの先輩とそのお友達。さっき偶然会って」
 外に出ている間にやってきたらしいモデルさん達と挨拶をする準さん。そして興奮する同級生が1名。
「あ、あの、後でサイン貰ってもいいですか」
「ちょ、桂さん、向こうはこれから仕事……」
「合間に時間が有れば」
 2人も相当な人気モデルらしくて桂さんは興奮している。あ、でも祐巳も麻衣子さんの名前は聞いたことあるかも。

 準さんのご厚意で撮影の見学をさせて貰ったり、合間のセッティングの間に笙子ちゃんへのカメラ講義があったり、祐巳達も笙子ちゃんの被写体になってみたり。程なく撮影を終えた準さんも交えて雑談をしていると、こちらはセッティング待ちらしい安那さんが準さんの所へ。
「あの、ちょっと折り入って相談したいことがあるのですが」
「いいけど……ここじゃまずそう?」
「出来れば」
「そう、ちょっと席外すね」
 安奈さん、随分深刻そうな顔していたけれどどうしたのかなと思っていると、程なく準さんは戻ってきた。でも相談が終わった訳ではなさそうで。
「絆ちゃんにアリスちゃん、ちょっと来てもらってもいい?」
 何故か藍川さんとアリスを連れて再び何処かへ。でもどうしてあの2人なんだろう? 共通点は……男子絡みなのかな。
 図らずともリリアンの3人が残ったので、話題も自然とリリアンのことに。笙子ちゃんとは普段あまり話す機会がない事もあってこれまた新鮮な感じ。今日の写真の話とか、蔦子さんの話とか。桂さんに運動部的に撮って欲しいタイミングとか聞いていたあたり、なかなか勉強家だったりもするのかもしれない。この辺りはお姉さんに似たのかな?
 準さん達が戻ってきたのは安那さん達の撮影再開のタイミングで、安那さんは絆ちゃんとアリスにお礼を言いながら麻衣子さんと一緒に全員分のサインを書いてくれた。何の話をしたのかは聞かない方がいいんだろうな、わざわざ席を外したくらいだし。

「じゃ、私はこっちだから」
「それじゃまたー」
 瑞穂坂の準さん、また別方向の藍川さんと別れて帰りの電車に乗り込んだ。
 今日は色々あったなあ。笙子ちゃん繋がりで色んな人に出会えたり(ついでに興奮する桂さんを観察したり)、アリスに会ったり藍川さんと知り合ったり、ユキさんに助けて貰ったり。あ、考えてみたらユキさんからは名前しか聞いてないや。
「凄かったよね、今日。星占いとか1位だったのかな」
「あはは、どうだろうね」
 桂さんはまだ興奮気味で話している。あれ、でも桂さんの星座って何だっけ?
「でも祐巳さんってほんと人の縁を持っているよね」
「へ、私?」
「そうですね、蔦子さまと再会できたのも紅薔薇さまのおかげでしたし」
「祥子さまとの出会いも運命的だったし」
 アリスったら何を言い出すんだろうと思ったけど、笙子ちゃんに桂さんまで言われるとそんな気がしなくもない。どうなのかな、実際。
「お姉ちゃん達羨ましがるかなー」
 ティーン向けの女性誌モデルのサインだから年齢的に微妙かもとか言っているけれど、アリスはお礼に貰ったサインだから自慢してもいいと思う。
「写真部でストスナ企画してもいいかもですね」
 笙子ちゃん、久しぶりにこっちに出てきたからかもだけど、リリアンだとみんな制服だよ? 鞄やヘアスタイルには個性出ていそうだけれど。
 うん、でもまあ、今日は楽しかった。



<おまけ>

(んーっ、それにしても今日は色んな人に会ったわねぇ)
 瑞穂坂に帰る電車で、準は今日会った人達のことを思い返していた。
 笙子ちゃんの先輩にあたるリリアンのお嬢様達(しかも片方は学園のアイドルみたいな人)とそのお友達の花寺の可愛い男の子。私立緑乃丘の美少女少年。それに、ユキさん。
(でもあの子達は気付いていないんだろうなぁ)
 どこからどう見ても完璧な美少女の準も実は男だと言うことに。それと。
(多分、あの人も……)
 不良達から助けてくれたユキさんも、実は男の人な気がする。絆ちゃんの衝撃発言の時の反応がなんかそれっぽかったし。
(雄真が居たら何て言ったかなぁ。あ、絆ちゃんと一緒にハチを騙しても面白いかも)
 準がそんなことを考えて、ハチが思わずくしゃみしたかどうかは定かではない。




※登場作品
マリア様がみてる
お釈迦様も見てる
はぴねす!
プラナス・ガール
ゆびさきミルクティー
放浪息子


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