もしも桂さんが勇者だったら
※今回は『マリア様がみてる 私の巣』のネタバレのようなものがありますが、重要なネタバレではありません。(たぶん……)
最初から【No:3054】
->セーブしたところから【No:3060】【No:3063】【No:3070】【No:3073】【No:3081】【No:3085】【No:3098】【No:3104】【No:3114】【No:3116】【No:3118】(黄)【No:3119】(白)【No:3120】(紅)【No:3124】【No:3136】
【これまでのあらすじを蓉子さまに対抗して祥子さまがやるようです】
桂さん、蔦子さん、真美さん、ちさとさんは勇者としてリリアンを救うため山百合会と戦うが、敗北してしまったため、現在逆行中。
二年前の世界で強すぎる助っ人たちと組み、見事山百合会に勝利して、次のポイントに進んだ。
しかし! この私が負けたままでいると思って? 次のポイントではそうはいかなくってよ! 首を洗って待ってらっしゃい!
桂たち四人はバトルを終え、古い温室に飛び込んだ。
「……あれ?」
桂はとんでもない変化に気づいてしまった。
「レベルが、上がってる……?」
「それは、山百合会を倒したから──」
「違う、その経験値はまだ消化してないじゃない。それなのに……レベル49になってる!」
バトル前は桂たちは全員レベル40だった。
「あ、私も」
「私もだ……」
「ステータスが変!」
自分のステータスを見て驚く。
そこには、取った覚えのないスキルや、クラスの名前があった。
「いつ、私、こんなスキル取ったのかしら?」
「私もシーフのスキルがある……」
四人は首をかしげる。
そのうち、桂はとんでもないものを発見した。
「あれ、『アヴォイドダンス』のレベルが16にもなってる!? なんだ、これ?」
システム上、桂のスキル『アヴォイドダンス』はレベル8が最高のはずであった。
しかし、その倍の数値になっている。
これは一体?
「それは、皆さんが『一度山百合会に勝った世界の勇者』になったからよ」
背後から声がして、振り向くと三年生らしい生徒がいた。
「ごきげんよう。フェは卒業してしまったので、今度は私が力を貸すわ。私は温室の妖精の一人、シー。よろしく」
そう言ってシーは微笑んだ。四人は挨拶した後に切り出した。
「あのう、よくわからないんですけど……」
「何か、思い出せない?」
四人は頭をひねるが、さっぱり思い出せない。
「……山百合会に敗れると、『すべてを忘れる』というペナルティを課せられる事があるの。それまで山百合会と戦ってきた記憶も、覚えたスキルなんかもね」
と、シーは説明してくれた。
「え……じゃあ、私たちは一年生の時に山百合会と一度対戦していた!? そして、忘れてしまったスキルがあって、でも、その過去を『書き変えた』から、『すべてを忘れる』というペナルティを受けなかったことになったと?」
「でも、思い出せない……」
四人には心当たりがない。
「まあ、仕方がないわ。とりあえず、おかしくなってしまったスキルやステータスを組み替えて、ついでにゲットした経験値を消費してレベルアップするといいわよ。これからもう一回去年と同じルールで戦わなくてはならないんだから」
「去年!?」
四人は同時に聞き返す。
「あれ、フェは卒業したって言ったじゃないの」
シーはクスリと笑う。
「すみません、今日の日付を教えてくれませんか?」
シーに日付を教えてもらった。二年生の時に行われた茶話会の直後のようである。
「な、なんですって!?」
真美はドキリとした。
「どうしたの? 真美さん」
「な、何でもない。さあ、それよりもステータスとスキルの組み換えと成長よ!」
四人はおかしくなったデータを直して、ステータスとスキルを組み替えた。
(このレベルになると細かいステータスを掲載するだけでSSが終わってしまうので割愛。どうしてもステータスなどが見たい、という方は下コメでリクエストください。考えます)
【○○桂の変更点】
器用値、敏捷値を重点的に成長させ、他のパラメータは最低限に抑える。
クラスは『シーフ』、『ガンマン』、『カマドウマ』のものを習得。
『勇者スキル』をいくつか習得。
『花寺エディション』のスキルを得る際の属性は『白』を選択し、『紅薔薇スキル』にペナルティーを受けることになる。
【武嶋蔦子の変更点】
知力値、敏捷値を重点的に成長させ、精神値を少し高めに。他は我慢。
クラスは『メイジ』、『シーフ』をメインに『ガンマン』、『イリュージョニスト』を経由。
『花寺エディション』では『紅』を選択し、『白薔薇スキル』にペナルティーを受けることになる。
【山口真美の変更点】
精神値を重点的に成長させ、他のパラメータは前回よりも戦闘向きに。
クラスは『プリースト』、『シーフ』が多く、『モンク』、『サモナー』のものも習得。
姉妹スキル習得。
『花寺エディション』では『紅』を選択。
【田沼ちさとの変更点】
筋力値を重点的に成長させ、敏捷値、器用値を高めに。知力値は無視。
クラスは『スレイヤー』、『シーフ』、『モンク』、『イリュージョニスト』のものを習得。
『花寺エディション』では『白』を選択。
【全体の傾向】
全員が『シーフ』を経由し、スキル取り消しスキル『お蔵入りパン事件』、隠密スキル『シャドウ』、隠密攻撃スキル『サプライズ』、入れ替わりスキル『チョコレートコート』を習得。全員現在レベル57。
ここからは、ステルス勇者パーティーの独壇場ッスよ(笑)
「さて、まずは朝拝までの時間だけど……」
──カチャリ
その時、古い温室に一人の人物が現れた。
山村先生だった。
そして、その手にはお約束の『忌まわしき黄金の箱』があった。
「またきたあぁーっ!!」
四人は思わず絶叫した。
「『並薔薇ポイント』、いらないの?」
ご都合主義の権化、神秘の力『並薔薇ポイント』はレベルが10上がるごとに罰ゲームとしか思えない指令をクリアすることで、ボーナスとして多くもらえるのだった。
「いります!」
山村先生に聞かれ、蔦子が真っ先に叫ぶ。
「では、お約束通り、ここから引いて、そして、指令を成し遂げるのね」
「うっ、朝の貴重な時間が……」
「あの〜、相談があるのですが」
ちさとが申し出る。
「何? 田沼さん」
「朝、もう少し活動したいので、指令を四人まとめて済ませることはできませんか?」
「いいわよ」
山村先生はあっさり了承した。
代表して、桂が指令を引いた……。
二年藤組前の廊下。
四人はある人物を待った。
「ごきげんよう」
白薔薇さまこと藤堂志摩子さんが登校してきた。
「ごきげんよう」
「ごきげんよう」
四人は素早く志摩子さんを取り囲む。
「……あの、何か?」
四人は「あなたが言いなさいよ」「あなたこそ」と目で押し付け合い、最終的に三人に押しつけられる形で桂が口を開いた。
「志摩子さん! 事情は話せないのだけど、これから私たちがパフォーマンスをするから、ちょっとだけ見ていただけないかしら?」
「え、ええ」
志摩子は思わず頷いてしまった。
蔦子がラジカセのスイッチを入れて四人はスタンバイする。
ナレーションが流れる。
──あらゆる困難が科学で解決するこの平成の時代、人々の閉ざされた心の闇に蔓延る魑魅魍魎が存在していた。科学の力ではどうしようも出来ないその奇怪な輩に立ち向かう珍妙不可侵にて胡散臭い男が一人……
「ストオォーップ!」
志摩子さんは真っ青になって停止ボタンを押した。
「うわっ! イントロのナレーションのところで止められたっ!」
「どっ、どうしてこんなものを私が見なくてはいけないのっ!?」
志摩子さんの口調にははっきりとした怒りがにじんでいた。
「そ、それは……ま、マリア様にはないしょ」
真の理由。それはもちろん先程、桂が引いた指令にあった。
今回の指令
「レッツでゴー的な陰陽師が坊さんダンサーズと踊るあのパフォーマンスを小寓寺住職の娘である藤堂志摩子の前でやれ」(投稿者:最近白薔薇姉妹のイチャ×2に胸やけ気味なのよ。こっちは凸のせいで必死なのにさ。ちょっと、誰!? お前に胸があったのかって言った人はっ! さん)長っ……
(まずい、このままでは本当に地獄に流される……)
その時、クラスメイトの筒井環さんが通りかかった。
「ごきげんよう。あら、何をやってるの?」
「べ、別に……」
志摩子さんがそそくさとその場を立ち去ろうとした時に、環さんがラジカセに気付いた。
「志摩子さん。これ、忘れ物?」
ラジカセを渡そうとして、環さんは手を滑らせた。落とすまい、とラジカセをつかんだ時に再生ボタンが押される格好になった。
──悪霊退散! 悪霊退散!
志摩子さんの前に四人は素早く回り込み、踊った。
志摩子さんは、「あああっ!」と叫んで撃沈した。
(ごめん、志摩子さん……)
(私たちだって好き好んでやってるんじゃないのよ〜っ。許して〜)
(ああ、どっちが恥ずかしいのやら……)
(それにしても、あの恥ずかしがりようと素早い反応。あのお父さんに『踊ろう』って誘われたのかな?)
環はラジカセを持ったまま、四人のパフォーマンスを見ていた。
(何だろう、この楽しそうな人たち……)
四人は並薔薇ポイントを大量にゲットした。
しかし、活動する時間はほとんどなくなってしまった。
「……ふうん、勇者も大変なのね」
桂から事情を聞いた環さんはそう言った。
「もう、本当に罰ゲーム状態で。人間関係がおかしくなるよ」
ちらり、と桂は志摩子さんの方を見た。
志摩子さんの周囲は普段は白薔薇さまの通り名にふさわしく白くキラキラしているように見えるが、今日は真っ黒でどんよりとしていた。
「でも、今日対戦するんだ」
「うん。環さんも、用事がなかったら薔薇の館前に来てよ。助っ人随時募集中だから」
「いいわよ。あ、後輩も連れて行っていいかな?」
「いいけど、嫌がる子を無理やり連れてくるのはなしよ」
「そんなこと、しませんてば」
朝拝の時間になって、環さんとの会話はそこで終わった。
昼休み。
桂は姉妹のところへ出向き、今日の対決の旨を告げ、その足で三年松組、鵜沢美冬さまのところに向かった。
「ごきげんよう。今日は山百合会と二度目の対決ね。私も友子さんと一緒に行くから」
「はい。いろいろとお願いします」
桂は頭を下げた。
「ううん、こちらこそ」
美冬さまは手を振って笑う。
「でも、あなたと組めてよかったわ。私だけじゃとても勝てないもの」
美冬さまはそんな事を言い出した。
「そんな! 私は美冬さまに比べたら、全然──」
「私にはあなたが必要だったの。私が祐巳さんに比べて足りないもの。それは、髪の長さ、身長、そして──」
美冬さまは力強く言った。
「『K』の文字よ」
ウァレンティーヌスの贈り物(後編)あとがき参照。
「『K』の文字を持つ勇者であるあなたがいてくれて、ようやく私は戦う事が出来る」
「でも、山百合会は──」
「わかっているわ。祐巳さんだけじゃない。でも、それを倒すヒントがここにある」
美冬さまは何かをとりだした。
「それは?」
「『前回のバトルのドロップ品』よ! 私は今年で卒業してしまうから、次の人に託そうと思っていたの」
「ありがとうございます!」
桂はドロップ品を受け取った。
《前回のドロップ品》
『いばらの森』(勇者専用スキル)このスキル習得者は真実、偽りに関わらず、情報を学園中に流す事が出来る。ただし、使用は連載中に1回のみである。
補足:そりゃあ、知りたくない久保栞情報も『ロザリオの滴』のモノローグでしっかり知ってるぐらいに。
『美しいタイ』(勇者専用アイテム)このアイテムを装備しているものは紅薔薇スキル『タイが曲がっていてよ』の効果を受けない。
補足:物足りなくなって、「あなた、根性が曲がっていてよ」という言いがかりをつけられても知りません。
「もうひとつ、静さんからこれを託されたわ」
そう言って、美冬さまが取りだしたのは『白いカード』だった。
「こ、これを……私に……」
桂は手が震えた。
「ええ。有効に使いなさいって」
「大切に、使わせていただきます」
桂は『白いカード』をゲットした。
その頃、ちさとは職員室にいた。
前回、図書館の禁帯出本の中に『黄色いカード』があった。と、いう事は……
「やっぱり……」
図書館の外壁に、『黄色いカード』が貼りついていた。ちさとはそれをゲットした。
「あら、田沼さん」
背後から声をかけてきたのは、香取先生だった。
「ど、どうしました?」
「どうしたもこうしたも……ああ、『黄色いカード』をゲットしたのね。おめでとう」
その時、ちさとはなんとなく思い浮かんだ疑問を口にした。
「あの、このカードって、誰が外壁に貼ったんでしょうか?」
「誰が? 不思議なことを聞くのね。カードを隠すのはブゥトンでしょう?」
ちさとは、この香取先生の答えで薄々感じていた事に確信が持てた。
同時刻。
蔦子は一年椿組の前にいた。
「可南子ちゃん、山百合会との一戦に力を貸してほしいの」
「でも、私は……」
可南子ちゃんは気乗りしないというように目をそらす。
「ここだけの話、山百合会は……私たち勇者の勝利を望んでいるのよ」
「えっ!?」
可南子ちゃんは驚く。
「いや、『勇者が山百合会を倒す事』を望んでいると言い換えた方が正確かもしれないわね」
「何を根拠に!?」
「だって、勇者たちが負けた場合、『全てを忘れる』っていうペナルティを課すでしょう? それっておかしくない?」
「あ……」
「そう。本当に歯向かって欲しくなければ、そんな手間のかかるペナルティを課したりしないわよ」
「では、山百合会の意図は何なのでしょう?」
可南子ちゃんが逆に聞いてくる。
「まだ、私にはわからないわ。でも、戦えばきっと答えが見えてくるはずよ」
「なるほど……」
可南子ちゃんは何事かを思いつつ、空を見上げた。
一方、クラブハウスでは、真美が悶々として机に突っ伏していた。
(なんで? なんで今日なの……)
「どうしました? 部長」
日出実が声をかけてくる。
「なっ! ……何でもないわよ」
真美は慌ててパソコンに向かって作業するふりをする。
「そうですか」
日出実は作業に戻った。
(なんで、なんで今日は……『日出実を妹にした日』なのよっ!!)
真美は頭を抱えた。
(お姉さまとは『上司と部下』みたいな関係だったから、前回妹にした時はその延長だから、あっさり『私の妹になりなさい』って言えたけどさあ……今、改めてってなると……うわあ、よくロザリオ渡せたな、私……)
真美はため息をついた。
その様子を見た日出実は思った。
(部長、具合でも悪いのかな? あっ、それとも何か私がミスしてて、取り返しのつかない事になっちゃったとか? ああ、それならどうしよう……)
日出実もため息をついた。
真美が顔をあげる。
日出実はとっさに視線をそらす。
真美は再び思考を巡らせる。
(でもでも、今さら他の子を妹になんていうのは絶対無理だし……明日にしようかなあ……いやいや、私たちは歴史を変えるためにここにきてるから、ちょっとしたことで歴史が変わって日出実が他の人の妹にならないとも限らないし、そこは変えたくないし……)
(あんなに髪をかきむしって……あんな部長は見たことない。深刻なぐらい取り返しのつかない事になってて、でも、部長は責任感が強いから、一人で責任をとろうと……まさか、部長辞任なんてこと……)
真美の悩みの内容を知らず、どんどん嫌な妄想を膨らませる日出実。
(やっぱり、今日は約束だけをとりつけるっていうのは……う〜ん。どうしようかなあ)
無意識のうちに真美は考えていた事が口に出てしまった。
「……やめようかな……」
日出実は真美の元に駆け寄って叫んだ。
「やめないでください! やめないでくださいっ!!」
真美がみると、目に涙を浮かべて腕にすがる日出実の顔がそこにあった。
「日出実……」
(妹にするのをやめるだなんて、どうかしていたわ。だって、私の妹はこの子しかいないじゃないの!)
「お願いですから、やめないでくださいっ!! だって、私は──」
「わかった。もういいから。心配しないで、日出実」
「何がいいんですかっ!?」
「ちゃんと聞きなさい。涙を拭いて。大事な事なんだから」
真美は深呼吸すると、言った。
「私の妹になりなさい」
「へっ!?」
日出実は予想外だったのか、驚いていた。
「あなた、何だと思ったの?」
真美は聞く。
「い、いえっ! そのっ……」
日出実はまさか「真美さまが部長を辞めると思っていた」などとは言えず、言い淀む。
「まあいいけど。それより、返事は?」
「あ、は、はい!」
それを聞いて、真美は黙ってポケットからロザリオを取り出すと、日出実にかけた。
日出実はしばらく茫然としていたが、真美の言葉と、自分がそれに答えたことを理解した。
「ぶ、部長!?」
「違うでしょう?」
日出実はうつむいて、真っ赤になった後、意を決したように顔をあげて言った。
「お姉さま」
「そう。これからはそう呼ぶのよ」
真美は最大の難関をクリアできたことにホッとして、この後の事を忘れていた。
──うっ……うっ……
扉の向こうから泣き声がする。
「な、何!?」
恐る恐る日出実が扉を開くと、そこには涙で顔をぐしゃぐしゃにした築山三奈子さまが立っていた。
「うう……真美がようやく妹を作ってくれた……これでようやく肩の荷が下りたわ……」
(そうだ、あの時もお姉さまが一部始終を聞いていたんだった……)
日出実をきつく抱きしめてわんわんと泣く三奈子さま、三奈子さまの怪力で抱きしめられてじたばたと暴れる日出実。
(ははは……どうしよう)
「助けてくださいよ、お姉さまあ」
(あれまあ、早速甘えた声なんか出してきちゃって……そんなに甘える子だったっけ? ……チョコレートクッキーくれたり、デートしたり……結構甘えてくる子でした、日出実は)
「うう……日出実ちゃん……」
(しょうがないなあ、もう)
真美は妹が窒息しないようにそっと三奈子さまの手を離そうとして、今度は自分が捕まった。そして、予鈴が鳴るまでの間、三奈子さまにギュッと強く抱きしめられていた。
放課後。
「勇者さま」
桂たち四人の他、笙子ちゃんが加わって薔薇の館に向かっている時に一人の一年生が声をかけてきた。
「はい?」
「私を勇者さまの仲間にしてください! 私、どうしても山百合会に一矢報いたいんです!」
「……ええと、あなたは一体?」
桂は誰何した。
「キョウコです」
「今日子? ああ、『降誕祭の奇跡』の?」
「それは、三田今日子さまです。私は、『銀杏の中の桜』で乃梨子さんに声をかけた恭子です」
「恭子さん!?」
真美は驚く。
「知ってるの?」
「恭子さんには疑惑があって……恭子さんはコバルトに『マリア様がみてる』が初めて掲載された時からいる古参キャラなんだけど、その時は『蓉子』って名前だったって噂があるのよ」
真美の告げた衝撃の噂に一同は凍った。
「え、ええっ!? ま、まさかそんな……」
「作者が『蓉子』って名前を気に入って、後に登場させた紅薔薇さまにその名前を与えて、恭子さんに『恭子』という新たな名前を与えたという……あくまで噂と推測の域を出ない疑惑なのだけどね」
「なんという事!? それが事実だとしたら、名前を奪われていたという事になるじゃないのっ!!」
桂はおののいた。
「そんな、竹輪みたいな事ってあるのね」
ちさとがボソッとつぶやいた。
「竹輪? あの、魚介のすり身で出来た、穴のあいた、よくオデンに入ってる、あれ?」
「ええ。伝承では、竹輪はそもそも形状が蒲の穂に似ていたため『蒲鉾(かまぼこ)』と呼ばれていたのだけど、板の上にすり身をのせた形状の板蒲鉾(いたかまぼこ;現代のかまぼこ)が現れて、そっちの方が『かまぼこ』として有名になったため、『竹輪』って名前に落ち着いたという説があるの」
「ちょ、ちょっと、ちさとさま! 今、わざわざそんな話を持ち出さなくてもいい事じゃないですかっ!? もし、私が今後『竹輪の恭子』だなんて呼ばれるようになったら、どう責任をとるおつもりですかっ!?」
恭子ちゃんは泣いた。
「いや、私は事態を読者の皆さんにわかりやすく説明しようとしただけで……」
「余計な事しないでくださいっ!!」
「ところで、竹輪さんのステータスは何?」
「つ、蔦子さまっ! さらっと『恭子=竹輪』で話を持っていこうとしましたねっ!!」
恭子ちゃんは血を吐く思いで突っ込んだ。
「ねえ、山百合会に一矢報いたい理由は竹輪問題なの?」
笙子ちゃんが聞く。
「違いますっ! 『私の巣』で乃梨子さんに出番を奪われた無念をぶつけたいんです」
「ちょっと待った!」
割って入るように二人の一年生が登場した。
「『不器用姫』の三池さゆりです!」
「同じく、雅美です! 『私の巣』に出番がない件なら、私たちだって!」
「ちょっと落ち着いてよ。そんな事言ったら、もうこのSSでは絶対に出番のない私の実の姉の内藤克美、佐々木克美さま、佐藤信子さま、白川寧子さまの立場は?」
笙子が尋ねた。
「うっ!」
さゆりちゃん、雅美ちゃんは絶句した。
「そうよ。それに、出番を増やしてほしいのであれば、作者に直談判しなさいよっ!」
ちさとの言葉にがっくりと一年生たちは落ち込んだ。
結局。
「やっぱり、どうしても戦いたいんです!」
と恭子ちゃんのみがついてきた。
薔薇の館の前には美冬さま、友子さま、桂のお姉さま、瑞絵、三奈子さま、日出実ちゃん、可南子ちゃん、環さん、と。
「朝倉百です。よろしくお願いします」
百ちゃん。そして。
「ごきげんよう。松平瞳子です。勇者さま、微力ですが一向に加えてください」
不敵な笑みを浮かべる瞳子ちゃんがいた。
山百合会の面々が出てきて、ちさとさんが令さまを見てうっとりする。
「ごきげんよう。今朝は白薔薇さまがお世話になったようね」
祥子さまが氷のような笑みを浮かべた。
「いえいえ、こちらこそ」
惚けて蔦子が返す。
「始めようか」
令さまが身構える。
「待ってください。バトル前のセーブは基本です。特にボス戦の前のセーブは」
「……そうだね。じゃあ、認めよう」
->セーブして、あと3〜4回で終わりたいなあと思いつつ【No:3155】へ
ここまで来て投げだすのは、なし、よ
【お知らせ】
毎度ご愛読ありがとうございます。
以前に募集した「この連載内でやってほしい事のリクエスト」は、誠に勝手ではありますが、2010年3月14日の00:00をもちまして締め切りとさせていただきます。
これは、話が終盤に差し掛かり以降の回収が難しいためです。ご了承ください。
それ以外のリクエストは時間がかかりますが、出来そうなものは頑張ります。(現在リクエストいただいている『紅薔薇仮面』はこの連載との兼ね合いでこちらの最終回前後になります)
あと、今回のSSに登場した「恭子の名前が奪われた疑惑」について何かご存知の方がおられましたら、交流掲示板か下のコメント欄で教えてください。お願いします。
以上でした。