ぽかぽかと、背中に受ける秋の日の
心地よいその、ぬくもりに
いつしか瞼も、降りてきて
『5分だけならいいのよ』と
その優しげな声色(こわいろ)に
お姉さまのぬくもりに
包まれ、私は夢を見る
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「あれ?」
ビスケット扉を開けた瞬間に感じた違和感に、つい声をあげた。
すると、目が合った志摩子や乃梨子ちゃんが、人差し指を立てて口に当てるポーズをとる。
俗に言う「お静かに」の合図。
何故?と考える間も無く、私の制服の肘を由乃が軽く引っ張る。
「見て見て」
由乃が嬉しそうに指差す先には祥子がいて、驚くことに、あの祥子が床に座っている。
そして、その祥子の膝を枕代わりにして眠る祐巳ちゃんが居た。
「ごめんなさい。後5分だけ、いいかしら」
祥子が柔らかく微笑みながら言う。あまりに幸せそうなので、見てる私達もつい顔が綻ぶ。
思えばここ数日、学園祭の後片付けやら反省会やらで、祐巳ちゃんは頑張っていたし、疲れもあったのだろう。
「祐巳ちゃんへのご褒美?」
クスクス笑い問う私に、祥子が返す。
「違うわよ」
自分の膝の上で眠る天使の頭を撫でながら、祥子は『後5分』の真意を告げる。
「私へのご褒美」