『もしも桂さんが勇者だったら』
最初から【No:3054】
セーブしたところから【No:3060】【No:3063】【No:3070】【No:3073】【No:3081】【No:3085】【No:3098】【No:3104】【No:3114】【No:3116】【No:3118】(黄)【No:3119】(白)【No:3120】(紅)【No:3124】【No:3136】【No:3140】【No:3155】【No:3159】
黄薔薇編エンディング【No:3166】
->白薔薇編エンディング【これ】
紅薔薇編エンディング【No:3168】
【これまでのあらすじに白薔薇姉妹が参戦!】
リリアンを救う勇者桂さまは『並薔薇さま』として認められ、仲間の蔦子さま、真美さま、ちさとさまと最終決戦に挑むことになりました。驚愕のラスボスの正体が今ここに!
乃梨子、どうしてそんな目をしているの? ……えっ、なぜ泣いてるの!?
ご、ごめんなさい……作者の練習の成果がちっとも出ていないものをお送りしなくてはならないかと思うと。
そうなの? まあ、そんなのいつもの事だから気にしないでいいのよ。じゃあ、さらっと読み流して。最後だけど。
志摩子さん……。
桂、蔦子、真美、ちさとは薔薇の館にいた。
「ところで、リリアンの危機ってどんな存在なんだろうね?」
──ガクウン!!
不意に薔薇の館が大きく揺れる。
「きゃあ〜っ!!」
四人は引っくり返る。薔薇の館が揺れ続ける。ビスケットの扉が開く。
階段の下から凄まじい轟音と風が吹いてくる。
「な、何っ!?」
一瞬風が途切れ、四人は慎重に階段を降りた。
「え?」
外に出ると薔薇の館の目の前にマリア像があった。
「なんでマリア様がここに?」
「お庭から出張してきたとでも?」
四人がマリア像を見つめているとマリア像にひびが入った。
──ピキピキピキピキ……
「な、何?」
──パリーン!
マリア像が砕け散り、中から黒い髪の女生徒が出てきた。
「えっ、何?」
「誰?」
「この人……」
桂は彼女の事を知っていた。
ずっとリリアン生だった桂は中三の時に山百合会の面々に憧れてそっと覗きに行ったことがあった。
『ほら、あれが白薔薇のつぼみの佐藤聖さま。そして、その隣にいるのは……』
「久保、栞さま?」
──ピッ……ウイイィン……
返事はなく、聞こえてきたのは機械の作動音。
「あれは、人間ではありません!」
桂たちが振り向くとそこには学園長が立っていた。
「え!?」
「あれは昔、学園が開発した『対ガチ百合用ロボット』」
学園長は衝撃の事実を突きつけた。
「な、何ですって!?」
「な、何なんですか、それっ!」
学園長は語る。
「昔……この学園で女子生徒同士が禁断の恋に落ち、駆け落ち心中未遂事件を起こした事がありました。『アンチ百合』を掲げるある教師はそのような生徒を密かに監視し、正しい方向へ導くよう努力しました。しかし、そのような動きを察知した『ガチ百合』たちは地下組織を結成し、教師の目を逃れるようになりました。取り締まりはエスカレートし、教師が監視カメラや盗聴器などをあちこちに仕掛け、一方で生徒たちは教師によるわいせつ犯罪として訴えるという事件が起こりました。その教師は結局リリアンを去ることになったのですが、その時にこう言い残したのです」
学園長は間を置いて言った。
「『この世から必ず百合の存在を消してみせる』と」
「な、何という……」
カオスな急展開。
「その教師が全身全霊を賭けて作り上げたロボットがあれなのです!」
びしっ、と学園長は栞ロボを指差して言った。
「で、でもっ! それじゃあ久保栞さまという生徒は存在していなかったとでも言うのですかっ?」
桂は思わず聞いた。
「いいえ。久保栞さんは久保栞さんでよその学校を卒業して元気にやっています」
「じゃあ、あれは?」
「ロボットの久保栞です!」
びしっ、という学園長とは対照的に桂たちは脱力した。
「なんてややこしいネーミング」
「ロボ栞なんですね。それは理解しましたが、何がどうリリアンの脅威なのか……」
「あのロボットは、長い間放っておかれたせいで故障し、リリアン女学園の生徒をいちいち『ガチ百合』に変えて攻撃するようになってしまいました」
「そ、それは脅威だっ!」
勇者パーティーは震えあがった。
「その事に気づいた山百合会はそれを回収しようとしました。しかし『対ガチ百合兵器』の前に封印するのがやっとでした」
「じゃ、じゃあ! 先生たちが回収すればよかったじゃないですか!」
「だから、『ガチ百合』には無理と言っているでしょう?」
学園長は元祖ガチ百合だった。
「ちょっと待ってくださいよ。もし、『並薔薇さま』が『ガチ百合』だったらどうするおつもりだったんですか?」
桂は聞いた。
「その区別は『ガチ百合センサー』を持つ山村先生に一任しました。彼女の目に狂いはなかった」
「うp主、某絵板に通いすぎだっ!」
サーセン。
「とにかく、あのロボットがラスボスです。よろしくお願いします」
「って、結局は生徒任せですかっ!」
桂は突っ込んだ。
こうして戦闘が始まった。
「『いたっ!』で『カマドウマの領域』を展開!」
「攻撃力上昇魔術『ダークウェポン』を『ブラスト』で拡大! 魔術強化の『マジックサークル』使用!」
「『武士』のスキル『居合』使用! 敵攻撃に備える!」
「『武士』の強力攻撃『兜割』使用! 命中率の低さは神秘の力『並薔薇ポイント』でカバーする!」
ちさとの攻撃がロボ栞に命中した。
「ダメージが通った! いけるっ! いけるよっ!」
「……専用スキル『マリア様がみてる』発動」
ロボ栞は全体に強力なビームを乱射した。
巧みにかわすと勇者パーティーは次々と攻撃を繰り出した。
「『来たっ!』で八連続攻撃!」
「強力攻撃魔術『クレイジープラズマ』を『マジックサークル』で強化!」
「『居合』を解除し。モンクのスキルで殴る!」
「もう一度『兜割』!」
ロボ栞のHPは0になった!
「え? もう倒せた?」
「あっけない」
「ラスボスなのに?」
「どういう事?」
四人がポカンとしていると、ロボ栞は動いた。
「……HP0P。契約に従い、『白薔薇のつぼみ』の全てを使用し再起動します」
「え?」
「乃梨子っ!!」
志摩子さんの叫び声がする。
「うわああっ!」」
乃梨子ちゃんはいばらに捕まえられて、ロボ栞の前に引きずり出された。
「乃梨子ぉっ!!」
「志摩子さん、来ちゃ駄目っ!!」
乃梨子ちゃんが止める。
「姉妹スキル『姉は包んで守るもの』使用! 乃梨子の代わりにこの身を捧げますっ!」
志摩子さんは制止を振り切ってスキルの使用を宣言した。
「いやああぁっ!!」
乃梨子ちゃんの悲鳴が響き渡る。
「な、何が起こるの!?」
志摩子さんがいばらに捕らえられた。
次の瞬間、ロボ栞は志摩子さんを貫いた。
「うわああああぁっ!!」
「ギャグSSなのに、シャレにならんことするなあっ!!」
ロボ栞は志摩子さんから全てを吸い取り、全てのパラメータが完全な状態で復活した。
用済みとなった志摩子さんはロボ栞に捨てられて、ぐったりとしている。
乃梨子ちゃんは志摩子さんを助けようとするが、いばらに捕らえられていてうまくいかない。
「『ファーストブレイク』で割り込んで、全員に『マリア様がみてる』発動!」
ロボ栞は容赦なく攻撃してきた。
「うわーっ!!」
全員が回避に失敗してダメージを受ける。
「まだまだ! また『来たっ!』で八連続攻撃!」
「再び強力攻撃魔術『クレイジープラズマ』を『マジックサークル』で強化!」
「神秘の力『並薔薇ポイント』をつぎ込んで殴る!」
「もう一度『兜割』!」
順調にロボ栞のHPを減らす。
「『四月のデジャヴ』使用! これ以降、以前の攻撃と同じコンボを使用した場合、オート回避する」
ロボ栞もラスボスだけあって、手ごわい攻撃を繰り出してきた。
「な、何ですって!?」
「桂さん、他のコンボで攻めればいいのよっ!」
蔦子がアドバイスする。
「じゃあ、『シャドウ』で隠密状態になって、『サプライズ』で攻撃!」
「『ウィンドスラッシュ』を『マジックサークル』で強化!」
「新スキル『日光月光』使用!」
「『ライバルがいいの』で攻撃力二倍! それに攻撃スキル『スマッシュ』!」
ロボ栞のHPは0になった!
しかし。
「……HP0P。契約に従い、『白薔薇のつぼみ』の全てを使用し再起動します」
「ぎゃあああっ!! 例のアレっ!」
「ちょっとおっ!! さっき志摩子さんが乃梨子ちゃんをかばわなければこの復活はなかったんじゃないのおっ!!」
志摩子さんはいつだってフォロー下手だった。
「や〜め〜て〜!!」
次の瞬間、ロボ栞は乃梨子ちゃんを貫いた。
ロボ栞は乃梨子ちゃんから全てを吸い取り、全てのパラメータが完全な状態で復活した。
用済みとなった乃梨子ちゃんはロボ栞に捨てられて、志摩子さんの横でぐったりとしている。
「『ファーストブレイク』で割り込んで、全員に『マリア様がみてる』発動!」
「またかよーっ!!」
全員が回避に失敗してダメージを受ける。
「う、うう……マズイ。早く何とかしないとマジでマズイ」
「ここで使うべきなの? 切り札」
「あ、切り札と言えば……」
ちさとは二枚の『黄色いカード』を出した。
他に『紅いカード』が一枚、『白いカード』が一枚あった。
「これ、どうやって使えばいいの?」
「中に書いてある」
【次期薔薇さまのカード】
このカードを使用するものはあらゆるスキルを習得していてもいなくてもただちに使用できる。
ただし、使えるスキルはひとつだけである。
なお、このアイテムは使い捨てである。
四人は一枚ずつカードを手にした。
「でも、きっと倒せてもまた再起動しちゃうんじゃないかな……」
「ううーん、どうすれば……」
「あ! ここであのスキルだ!」
桂は思い切ってスキルを使うことにした。
「私の番なので、『クリスマス』発動!」
桂がスキルを使用すると、ロボ栞を光が包み込む。
「……あれ?」
「……なんで?」
「ガセだったの?」
ロボ栞は光に包まれているが、何の変化もない。
「と、とにかく攻撃してみましょう! 何からの変化があるかもしれない!」
「うん!」
勇者パーティーは攻撃を開始した。
「『ファーストブレイク』で割り込んで『フライト』!」
「『ピンポイントショット』!! 追加の『ダイレクトショット』!!」
「ここで『サモン・キマイラ』で召喚獣キマイラを出す!」
「『シャドウ』で隠密化して、『スマッシュ』!!」
「……『マリア様がみてる』!!」
「ここでダメージ軽減スキル『プロテクト』!! 『守りの指輪』の効果で対象を勇者パーティー全員に!」
真美がダメージを防ぐ。
「反撃は……残りの『並薔薇ポイント』全てを使って殴る!」
「待機!」
「『バーストブレイク』でキマイラ爆破!」
「『剣道交流試合の日』を使用して回避不能攻撃!!」
ロボ栞が反撃する。
「『マリア様がみてる』」
待機していた蔦子さんが動く。
「『三つ葉のクローバー』でそれを横取り!! 攻撃対象はもちろんロボ栞!!」
ロボ栞のHPは0になった。
「もう『白薔薇のつぼみ』はいないし、これで復活することは──」
ロボ栞がなおも動く。
「……HP0P。さあ、いらっしゃい。『ガチ百合』さん。あなたのHPを私に捧げなさい」
学園長がロボ栞の招きに応じてフラフラとロボ栞に向かって歩き始める。
「ぎゃ〜っ!!」
「これ以上はやめて〜っ!」
「もう、こっちがもたないっ!」
「学園長! いけません!!」
その時。
ロボ栞の体の光が強くなった。
ロボ栞の機体から煙が上がってきた。
「ん?」
「あ」
「このパターンは」
「まずい」
異変を察知した勇者パーティーはとっさに離れた。
その時。
──ボカ〜ン!
ロボ栞は再起動できずに爆破した。
「ありがとう! あなたたちのおかげで助かりました」
学園長は爆発に微妙に巻き込まれ、ドリフの爆発コントみたいに頭ちりちり、顔はすすけて真っ黒になりながらそう言った。
「学園長、全然助かってないような……」
「って、いうか。『よろしくお願いします』の後は危ないから普通逃げるでしょう?」
「フラフラと前に出られたときはもう、どうしようかと……」
「どこまで足手まといなんだ、学園長」
がっくりと落ち込む勇者パーティー。
「これで安心して『百合の園』を築けそうです」
「築かないでください」
「職権乱用はやめてください」
「もうヤダ、この学校」
「……いや、絵的には撮ってみたい」
「こらあっ!!」
三人は激しく蔦子に突っ込みを入れた。
こうして桂たちの戦いの日々は幕を下ろした。
帰り道。
「危なかった。日出実とのキス疑惑晴らしておかなかったらどうなっていた事か」
真美が胸をなでおろす。
「ところで、ロボ栞と『白薔薇のつぼみ』ってどうして契約したんだろう?」
ぼそりとちさとが呟く。
「ああ、それは……」
桂は中三の時に見てしまった光景を思い出す。
『栞。あなたになら全てを捧げてもいい』
そう、『白薔薇のつぼみ』の聖さまは言っていた。
あれ……あれがロボ栞だったに違いない。
「いいじゃないの。もうすべて終わったんだから」
「でもさ、あのロボットを破れなかったって事は、山百合会はみんなガチなの?」
つい、桂はいってしまった。
「あああああっ!」
「もう、本当に勘弁してえっ!」
「これでいいのか、リリアン女学園」
涙する桂、真美、ちさと。
「私はネタが尽きなくて嬉しいけど」
激写しながら蔦子が言う。
「蔦子さん、いつか罰が当たるよ」
「それは宗教が違うんじゃない?」
と蔦子が言っていると。
「蔦子さまーっ!」
「ゲッ、笙子ちゃん!」
逃げ出す蔦子。
「待ってください、蔦子さまーっ!!」
追う笙子。
「空手形なんか切るから」
「あーあ」
「いっそ、妹にしちゃえばいいのにね」
逃げる蔦子の後姿を見送りながら三人は下校した。
これで勇者桂の物語は終わりです。
『もしも桂さんが勇者だったら』
=Final=
長い間ありがとうございました。