お待たせいたしました。リクエストいただいた【No:3105】紅薔薇仮面の続編です。
なお、このSSはエロが含まれておりますので自己責任で、削除されるまえにご覧ください。
(って、いうか、他人さまのサイトでこういうことはいけないよ。自重しようよ)
蓉子が家の敷地を出た瞬間、両脇から四人の少女が飛び出してきた。
「え?」
右側から令が、左側から聖が蓉子を取り押さえ、同時に飛び出してきた由乃ちゃんと菜々ちゃんが蓉子に真剣を向けて構える。
「な、何っ!?」
江利子と乃梨子ちゃんが飛び出してきた。
江利子が怪しい機械を蓉子の目にあて、乃梨子ちゃんが蓉子の髪を一本引きぬく。
「な、何するのよっ!」
「網膜認証……本物と確定」
淡々と言う江利子。
「なんでそんな機械持ってるのよっ!?」
蓉子の突っ込みを江利子はスルーする。
「簡易DNA判定……同じく本物と確定しました」
別の機械を使いながら乃梨子ちゃんが言う。
「そんなに簡単にDNA判定出来る機械がどうしてここにあるわけっ!?」
「それは江利子さまの才能と私の叡智のコラボレーション、とでもいいますか。とにかく、今日の日のために小笠原財閥の協力の下開発したものです」
機械的に乃梨子ちゃんが応える。
「よし、連行だっ!」
聖が合図すると由乃ちゃんが近くに止まっていた車のドアを開ける。
「ちょ、ちょっと! どこへ連れて行く気よっ! 離しなさいっ!」
皆は無視して蓉子を車に押し込むと小笠原邸に向かった。
「ごきげんよう、お姉さま。ちょっと御不便をおかけして申し訳ありません」
優雅に微笑んで蓉子を迎えたのは蓉子の妹にしてこの家の一人娘の祥子だった。脇に志摩子と瞳子ちゃんがいる。
「ちょっと!? 何がちょっとよっ!!」
蓉子は現在手足を縛られ、檻の中に入れられている。
「まず、紅薔薇仮面についてご存知でしょうか?」
祥子は唐突に切り出した。
「そんな漫画の話なんか知らないわよ」
「漫画ではありません。現在のわれわれ一同の宿敵です!」
力強く叫ぶ祥子。
ポカンとする蓉子。
「紅薔薇仮面を名乗る悪逆非道な怪盗が私の祐巳を──その、なんといいましょうか、取り返しのつかない事をして汚したのですっ!!」
恥じらいながら言う祥子に一瞬真っ白になる蓉子、しかし瞳子ちゃんが突っ込みを入れる。
「お姉さまの唇が奪われたのは事実ですが、乙女の貞操は無事です。それと、『私たちの祐巳』、ですよね? 祥子さま」
祥子はぎろりと睨み返し、バチバチと火花を散らす二人。
「そ、それで?」
続きを蓉子が促すと、祥子はとりあえず瞳子ちゃんとの対決を切り上げて話を再開する。
「とにかく、その不埒な者が『私と瞳子ちゃんの祐巳』に対して予告状を叩きつけてまで破廉恥きわまりない行為に出たことを見逃すことはできませんっ! 私は『挑戦状』を叩きつけ、鬼畜の輩に対して復讐をすることにしたんですっ!」
めらめらと燃え上がる祥子。
「あなたが復讐したいのは理解出来たわ。でも、私がこんな理不尽な扱いを受ける理由は何なの?」
私はあなたのお姉さまなのにぃ、と心の中では号泣しながら聞く蓉子。
「前回、紅薔薇仮面はお姉さまの姿形、声色も、あろうことか匂いまで瓜二つの姿で現れて私たちをだましました。そこで、今回はお姉さまの身柄を確保した上で紅薔薇仮面と決着をつけるつもりです。万が一、お姉さまが紅薔薇仮面だった場合は……刺し違えて死にますっ!」
一瞬言葉を失う蓉子。
「それはわかったわ。でも、だからといって拉致する必要はないでしょう!? あ、そういえば私を本物と確定するために使ったサンプルはいつ採取したのよっ!」
「……お聞きになりたいですか? 聞かなければよかったと後悔にうちふるえて眠れなくなっても知りませんよ?」
「もう、いいわよ!!」
何という変態さんになってしまったのだ、と蓉子は祥子の成長だか進化だか退化だかわからないものに涙した。
「ところで、ここまでやって紅薔薇仮面とやらは本当に今日ここに来るの?」
「紅薔薇仮面が今日の23時にここに来るように各紙に挑戦状の全面広告を載せました」
祥子が広げた新聞の一面に広告が出ていた。
『紅薔薇仮面殿への挑戦状!
前略
2010年5月4日23時に小笠原邸で待つ。
あなたなんかとっつかまえて
ぎったんぎったんにして
焼却場のそばのくぼみの枯れ葉の中に
落っことして差し上げましょう。
この 【ピー】 が!!!
身の程をわきまえるがいいッ!!!
次に小笠原邸に侵入した時には
私の本当の恐ろしさを教えてあげましょう。
草々
小笠原祥子
山百合会』
「……何? この、頭の悪そうな文章? そもそもピーって何? こんなもの貰ったら殺意すら覚えるわよ」
頭痛い、というように蓉子がため息をつく。
「挑発ですから」
「それで、みんなは祥子に巻き込まれちゃったわけ?」
「いいえ!」
全員が否定する。
「私だってもちろん紅薔薇仮面の事は許せません!」
瞳子ちゃんが拳を握りしめて言う。
「私たちは日ごろ鍛えた剣の腕を今度こそ発揮しようと──」
令の言葉に由乃ちゃんと菜々ちゃんが頷く。
「今度こそ暗殺剣を披露するんです!」
「私も付け焼刃の殺人剣を覚えたわよ!」
「殺すのを前提っていうのはやめなさいっ!」
蓉子は突っ込んだ。
「紅薔薇仮面を説得してみようと思ってね。は〜、それにしても祐巳ちゃんのチュー欲しかった……ぐふっ!」
余計なことを口走って聖は祥子と瞳子ちゃんから同時に攻撃を食らっていた。
「あんな面白そうな犯罪行為が許されるだなんて、ずるいわよっ! あ、いや……」
「本音ね……」
じっとりと蓉子は江利子を見る。
「紅薔薇仮面は10億円相当の仏像を盗んでるんですよっ! これは私にとっての聖戦ですっ!」
そこなのか、乃梨子ちゃんは。
「で、志摩子はなんでここにいるの?」
「私は、みんなが無事でいるようにマリア様にお祈りをしています」
「お祈りなら家でしてなさいよっ、祐巳ちゃんだって家に……そういえば、祐巳ちゃんは呼ばなかったの?」
そこで蓉子は初めて聞いた。
「当たり前です! 紅薔薇仮面の来る小笠原邸に祐巳を置くのは『猫に鰹節』、『志摩子にギンナン』、『祐巳にツンデレ』のごとくですわ!」
祥子が答える。
「何だかわかるようなわからないようなたとえね」
「祐巳は今回福沢邸で待機しています。もちろん、警備をつけて」
祥子がスクリーンを下ろすと、そこに映ったのはどこかの部屋のようで、祐巳ちゃんが机に向かって勉強をしていた。
「これは現在の祐巳の部屋の様子です。姉として妹を常に優しく見守るためにつけた隠しカメラがこんな場面で役に立とうとは──」
「あなた、それは変態さんの所業よっ! 今すぐやめなさいっ!!」
厳しく蓉子は突っ込む。
その時。
映像の方で動きがあった。
祐巳ちゃんの部屋に誰かが入ってきたのだ。
「あれ?」
「ん?」
「え?」
それは、蓉子に瓜二つな人間だった。
映像から音声が出力される。
『あ、あの……蓉子さま? こんな時間にどうして?』
『どうしても祐巳ちゃんに会いたくて』
声も、蓉子に似ていた。
もし万が一、あなたが蓉子さまの美声を知らない場合は2010年7月22日発売のCDドラマ『マリア様がみてる パラソルをさして』で確認していただきたい。by蓉子さまはあの美声じゃなきゃ嫌なうp主。
全員が蓉子を「アナタ、ダレデスカ?」というように見る。
「ここに拉致する時に、私の事を本物だって確認してたでしょう!?」
蓉子は思わず突っ込んだ。
「じゃあ、あれは……」
「やっぱり……」
全員が声をそろえて言った。
「紅薔薇仮面だーっ!!」
画面の方はこちらに構わず展開していく。
『どうしたんですか? 何かあったんですか?』
『実は、ずっと祐巳ちゃんの事が好きだったのよ』
画面の蓉子(紅薔薇仮面)は祐巳ちゃんをぎゅっと抱き寄せた。
『蓉子さま?』
『もう祐巳ちゃんへの想いを止めることは出来ないの』
『な、何をおっしゃってるのか、よくわかりません』
『今日は決めてきたの。祐巳ちゃんと一つになるんだって』
「えええ?」
「ええーっ!?」
「な、なんですってーっ!!」
「祐巳さーん! 逃げてーっ!!」
由乃ちゃんが叫ぶ。
『えええっ!! じょ、冗談はやめてくださいっ! そんな冗談を言うのは聖さま一人で間に合ってますっ!!』
祐巳ちゃんの中でどんなポジションなんだ、佐藤聖。
『祐巳ちゃん、私の思いは真剣なの受け止めて』
画面の蓉子(紅薔薇仮面)は祐巳ちゃんをついに押し倒してしまった。
カメラの角度のせいで二人の姿が見えなくなる。
「いやーっ!!」
悲鳴を上げたのは瞳子ちゃんだった。
『おやめくださいっ! マリア様はいつどんな時でも見てらっしゃいますっ!!』
マリア様以外もみていらっしゃいます。
『それにッ! 私にはお姉さまと瞳子がっ……あンっ!』
『二人なんか忘れさせてあげるから、私だけを見てっ!』
『いやあっ!! やめてっ、やめてくださいッ!!』
「おのれ、発情蓉子め! 私でも出来んことをやるとは!!」
そこにしびれるぅ憧れるぅ、と叫びながら聖が立ち上がる。
「私はここにいるってのっ!」
蓉子は突っ込むが、誰も聞いていない。
「今、車を出すわ!」
祥子がキーを持って飛び出していく。
「祥子さま、免許証をお忘れです!」
免許証が入っているらしい財布を持って瞳子ちゃんが追いかける。
「これ以上紅薔薇仮面にいろいろ奪われてたまるもんですかっ!」
江利子も立ち上がると部屋を出て行く。
「お姉さま、私たちも行きましょう! 今ざっくり殺らないと祐巳さまが危険です!」
物騒なことを言う菜々ちゃんに促され、由乃ちゃんが、そして令が部屋を出て行く。
乃梨子ちゃんがうつろな目で鼻血を垂らしている。
「と、とにかく行こう!」
聖は機能停止に近い乃梨子ちゃんを連れて出て行った。
一人縛られて檻の中にいる蓉子は自分と祐巳ちゃんの際どいシーンと思しき音声を聞かされている。
何という拷問。
いや。
残された志摩子は慣れた手つきで棚から鍵を取り出すと、蓉子が閉じ込められていた檻の鍵を開け、蓉子を引っ張り出して戒めを解いてくれた。
「ありがとう」
蓉子は礼を述べる。
画面から【脳内再生なんかしちゃ駄目、大変なことにっ!】な音声がお届けされている。
──ピッ!
【がちゃがちゃSS掲示板どころか18禁サイト以外では描写不能です】な音声をリモコンで止めたのは誰あろう、祐巳ちゃんだった。
「蓉子さま、今回の陽動お疲れさまでした」
蓉子は口を開いた。
「拉致されたのは予想外だったけど、おおむね計画通りね」
「はい」
「前回は陽動のためキスまでしたのにパスワードエラーで作戦失敗するわ、今回も祥子たちをここから出すためにああいうビデオを作る羽目になるわの屈辱の連続だったけれど、ようやく目的を達成できそうね」
時計の針が23時を指した。
「今回は大丈夫です」
志摩子が隠しボタンを押すと、祥子のベッドの下から隠し金庫が現れた。
それを簡単に解除すると、中から指輪ケースが現れた。
「開けて」
指示された志摩子がケースを開けると入っていたのは祥子には似合わない金の極太の指輪で、何かの刻印がなされている。
「ビンゴ! これで第三の秘宝『ソロモンの指環』も手に入れたわ!」
「やったわ! あと四つね」
手をたたいて喜びあう祐巳ちゃんと志摩子。
「もうここには用はないわ。引き揚げるわよ」
「はいっ」
蓉子は空になった隠し金庫の中にカードを放り込んで祐巳ちゃんと志摩子を連れて引き揚げた。
『小笠原祥子さま
2010年5月4日23時に
あなたの秘宝をいただきました
紅薔薇仮面
追伸
書いてあるのにピーはないわね』
……もう続けません。ごめんなさい、管理人さん。