【3192】 まけないで今日の由乃はプラマイゼロ  (ケテル 2010-06-24 00:43:05)


クゥ〜様SS(復帰されて続きをかかれるそうだ、楽しみ♪)
(ご注意:これは『マリア様がみてる』と『AQUA』『ARIA』のクロスです)
【No:1328】→【No:1342】→【No:1346】→【No:1373】→【No:1424】→【No:1473】→【No:1670】→【No:2044】→【No:2190】→【No:2374】→【No:】

まつのめ様SS
(ご注意2:これはクゥ〜さまのARIAクロスSSのパラレルワールド的な話になると思います)
【No:1912】→【No:1959】→【No:1980】→【No:1990】→【No:2013】→【No:2033】→【No:2036】→【No:2046】→【No:2079】

ケテル版SS
(まつのめ様のSSをベースに、クゥ〜様のSSと連結させたもの。 乃梨子視点進行のつもりのSS)
【No:3091】>【No:3101】>【No:3111】>【No:3126】


由乃視点の姫屋編

【No:3156】>【No:3192】>【No:3256】>【No:3559】




  * *   ――   * *   ――   * *   ――   * *



「……と……到着…ですよね?」
「うむっ、ご苦労!」
「あ、あの〜〜晃さん…ちょ、ちょっとやりすぎなんじゃ…」

 藍華さん、今さら遅いです。

「このくらいで音を上げる様じゃ、姫屋に対抗する会社を作るなんて夢のまた夢だと思うが違うか?」

 ゴンドラ造船所(スクエーロ)までの1Kmと少し…このわずかな行程を超ハードにしてくれた晃さん、これって一種の才能よね。
 どんな指導だったかと言うと……いや、今は言いたくない……その辺は察しなさいよね!
 確かに姫屋にもオレンジ・ぷらねっとにも負けない会社を新設するんだ〜! って言ったわよ、ええ、言いましたとも! くっそ〜〜絶対やってやるわ!

「初めてで私の訓練についてこれたんだ、その根性は認めてやろう」
「そいつはど〜も……」

 あ〜、自覚はあるんだ……。 オールにしがみつくような感じで、肩で息をしている私をチラッと見た晃さん。

「さっき指導した内容は、憶えてるか?」
「え? は、はい…概ね……」
「よし、忘れるな。 帰り期待してるぞ」

 今日午後から予約がある晃さん。 午前中は暇だからと、アテナさんに呼ばれて練習がてらゴンドラ造船所(スクエーロ)まで行く私と藍華さんにくっついて来た。 ってかやっぱ気になるんだろうな。
 何の期待だか知らないけど、ヘバリ気味の私の肩をポンと叩いて、晃さんはゴンドラ造船所(スクエーロ)へと降り立った。
 ………ふむっ…。





  《その、ゴンドラから始まった日々に…》



「晃さん、藍華さん、由乃先輩、ごきげんよう」
「お、おう…おはよゥ」
「は〜〜い、ごきげんよう。 話には聞いてたけど、祐巳ちゃんと同じ挨拶なのね」
「ごきげんよう、乃梨子ちゃん。 ”先輩”が定着してきたわね」
「油断するとまだ”さま”が出そうになります」
「晃さん、藍華先輩、由乃、ごきげんよう」
「晃ちゃん、藍華ちゃん、由乃ちゃん、ごきげんよう〜」

 …………はい?

「ご、ごきげんよう…アリス…アテナさん……な、なんなの?」
「私は祐巳から移されたんです。 ただ、寮内で乃梨子に会うたびに調子に乗って”ごきげんよう”と言っていたら癖になってしまいました。 アテナ先輩にも感染してしまいましたし」
「人んとこの学校の挨拶を、感染症見たいな言い方しないでよ!」
「三人で”ごきげんよう”してたら寮中に広まってしまって、うちの社内はいま、でっかい”ごきげんよう”ブームです」
「なによそれ?」

 アリスと乃梨子ちゃんと、アテナさんも多少使ったかもしれないけど、たった三人で使ってた言葉が二、三日で社内に広まってブームって。
 大丈夫なんだろうか、オレンジ・ぷらねっと?

「晃さんも使ってみませんか、お上品でいいですよ」
「お上品って…藍華……、いや、やめとこ…ガラじゃない。 それより、この二人のゴンドラってのはどれなんだ?」

 苦虫を噛み潰したような顔した晃さん、ちょっと顔が赤いわね……考えただけは考えたわねアレは。

「こっちよ」
「ちょっとすごかったですよ」
「あ、もう見てきたんだ。 でも、あれってかなり古いのだったでしょ」
「見違えますよ由乃。 その制服も見違えましたけど」
「ほっとけ!」
「似合ってますよ」
「あ……ありがと…」

 うう〜〜っ、なんか照れくさいわねアリスに言われると。
 アテナさんを先頭にワイワイと造船所の中を進む、場の雰囲気が変わるからか、あるいはそういう職人さんが多いのか良く声を掛けられる。 晃さんとアテナさん、藍華さんも慣れた感じでいなしているけど、私と乃梨子ちゃんは、どの程度の加減で受け答えていいのかちょっと分からず、なんかいい餌になってる感じ、まあ〜陽気に声を掛けてくるだけで、実際に手を出してくるわけじゃないようだし、次来る機会があれば、前を歩く三人を参考にしてみよう。 アリスは……私と乃梨子ちゃんの間に隠れてるんだけど……あんたね……。

「ほほぉ〜オレンジ・ぷらねっとの次は姫屋のご一行か、今日は大所帯だな嬢ちゃん達」
「親方。 お久しぶりですね」
「おお、真紅の薔薇(クリムゾンローズ)に薔薇の女王(ローゼン・クイーン)もお出ましか。 よっぽど大事な新人らしいな」
「そりゃあそうですよ、なんせ私が始めて指導する後輩ちゃんなんですから」
「なんか酷く心配になってきたな……。やっぱり私が指導するかな」

 あれだわ、”姉妹漫才”。 リリアンにもいたわ、そういう姉妹が……、私と令ちゃんは……ドツき…言わすな!
 親方はニコニコして腕組みしながら聞き入っている。 名物なのかしらね? アテナさんはニコニコしてるし、アリスはまぁ社長抱えていつものことと言うように我関せずな態度、乃梨子ちゃんは手出ししていいものかどうか迷ってるような感じ。
 話が進みそうも無いわね。 私は親方のそばまで寄って、話しかけることにした。

「それで、どんな感じなんです?」
「ん? おお、一回全部バラして、部材を全部チェックした。 さすがに古いから使用に耐えない物もあったからいくつか入れ替えた。 まあ、元がいい材料を使っとったから8割がたそのままでも大丈夫だったがな」

 親方はそう言いながら、船台に支えられている一艘のゴンドラへと歩み寄る。 え? これが?

「造った職人もいい仕事していたようで、こっちもいい勉強になったんでな、普通じゃあ使わない上等な塗料を使って気合入れて色を塗り直した。 バランスの調整もしておいたぞ」

 ゴンドラの知識がそれほど有るわけじゃないから、材料がどうの造作がどうの塗料が上等だのと言われてもね……、古ぼけてくすんだ黒から深い光沢のある黒に変わったという程度しか分からないんだけど、さっき乗って来たゴンドラより存在感が格段に上に感じてしまう。 新しく塗ったんだから当然……なんだけど……、はははは。
 贔屓の引き倒し、現金なもんだわ、っと自分で思ってしまう。

「このゴンドラに乗ってきたのですか?」

 いつの間にかアリスと乃梨子ちゃんがこちらに来ていた。 少し離れた所で藍華さんと晃さんアテナさんが微笑みながらこっちを見てる。

「そうよ。 あれに乗って、無人島から脱出してきたの」
「漂流しかけましたけどね。 メチャメチャな漕ぎ方でしたからぜんぜん進まなくって……。 アテナさんに拾われなければ、今頃私も由乃先輩も干物に成って、まだ海原を漂ってるとこかもしれませんが」
「無人島にいたって食料を調達するすべは無いし、食べられる植物なんか知らないから、遠からず動物の餌になってたんじゃない? ……あ、共食いの可能性はあるか」
「ちょ、ちょっと由乃先輩……」
「私はいざとなったら手段選ばないけど、体力的に乃梨子ちゃんに負けるだろうから、私が食べられるのか…、飢死するにしても私の方が早そうだわね」
「それで思い出したんです…」
「今の話から、何をどう思い出したって言うんですか? アリスさん」
「以前、祐巳と無人島へと行った時、大きな桜の木の下に放置されている電車の窓から見た光景。 窓越しに見えた人達の中にいましたよね二人とも。 でっかいそれを思い出しました」
「〜……いたわよ、私も乃梨子ちゃんも。 そう言えばアリスだったそうね、あの時祐巳さんの隣にいたのって」
「『そう言えば』?」
「祐巳さんに注目しすぎてて回り見てなかった!」
「………」
「…まぁ〜」

 乃梨子ちゃんの方へ胡乱な目を向けて、私を指差すアリス。 まぁ社長は…何も考えてなさそうだ。

「…ま、まあ…、私もこの前、ARIAカンパニーでお泊りした時、祐巳先輩から聞いて知りましたから」
「……二人そろって、でっかい薄情者です」
「まぁぁ〜…」

 まぁ社長、それは抗議ですか? ……考えてませんか…なんか渦巻きが飛んでるわね。
 ここで初めてアリスの口から聞いたんならビックリするかも知れないけど、乃梨子ちゃんも言ってたけど、ARIAカンパニーでお泊りした時祐巳さんから聞いちゃってるからね〜、インパクトがいまいち。

「私は…ちょっとうれしかったです…」

 なぜかちょっとはにかんだように頬を染めるアリス。 ホント美少女よね、なぜか私も頬の辺りが暖かくなったけど。

「”でっかい”じゃなくて”ちょっと”なんだ…」
「”ちょっと”です。 でっかい”でっかい”じゃないです」

 なんだいそりゃ。

「ところで、ゴンドラの管理って大変なの? 私が貰う事になってるんだけど、面倒なのは勘弁して欲しいんだけど」
「簡単ですよ。 毎朝使う前に染みて来た水を汲み出したり、毎日綺麗に磨いたり。 陸揚げして船底に付いたアサ貝を取ってやったり、防水コート用オイルを塗ったり、水滑り用オイルを塗ったり、仕上げ用光沢ワックスを塗ったり。 オールも陰干ししてからピカピカに磨き上げるんです」
「げっ?! それ、まさか毎日やるの?」
「いいえ、陸揚げは年一回秋にやるくらいよ。 ただ毎日綺麗にしてやらないといけないわね」
「ウンディーネは注目される存在だからな、薄汚れたゴンドラになんか乗っていられないぞ」
「まあ、そんなゴンドラに乗ってるの晃さんに見つかったら、シバキ倒されるけどね」
「藍華、おまえの指導力不足と言う事で、おまえもシバキ倒してやるから覚悟していおけ」
「あ、あんた達! ちゃんと毎日ぴかぴかに磨くのよ!」

 ちょっと涙目で、私と乃梨子ちゃんの肩に手を置く……そ、そんなに力込めなくても…痛いって。 …でもメンドそうね、未来技術でなんか、こう”パ〜〜ッ”と出来ないのかしらね?

「さあ、一旦離れてくれ。 ゴンドラは陸の上で飾っとく物じゃないからな」

 親方は職人さん達に指示を出して、ゴンドラに布みたいな緩衝材を巻きつけた鎖を掛けて、木が打ち付けられているスロープへ、そこから運河へと降ろしてくれて、ロープを引いて近くにある桟橋へと係留してくれた。
 なんか…その〜〜……原始的? クレーンか、あの空飛んでるエアバイクだっけ? あんなの使えばいいのに、人力の滑車を使って、手でスロープズリズリ押してくって…船底の塗料剥げたりしてたらクレームものよ。
 綺麗に澄んだ水面に浮かぶ私達のゴンドラは、心なしか新しく吹き込まれた息吹を喜んでくれているように見えた。

「さあ、最初に乗るのは由乃ちゃんと乃梨子ちゃんよ」
「あ、はい!」
「はい。 …由乃先輩、お先にどうぞ」

 乃梨子ちゃんに促されて、パリーナに手を着きながら操船スペースに立ってみる。 バランスの調整がうまく出来ているんだろう、あまり波の来る所じゃないってのもあるけど、続いて乃梨子ちゃんが乗り込んで来ても揺れが少ない、不安定さはまったく感じないわね。

「見習い(ペア)でゴンドラ持ち込みで入社ってのも前代未聞ね。 はい、オール」

 藍華さんが渡してきたオールをゴンドラのオールの台(フォルコラって言うんだって)にセットする。

 ・・・・・・?

『〜・・〜〜〜・・・〜〜』

 なんだろう?
 頭の中へと直接伝わってくるような、言葉ではない何か。
 どこから伝わってきているのか分からないってのも不安だし、気持ちのいいものじゃないから周りをキョロキョロと見回してみるけど、それらしい物は無い…わよね。 あ、幽霊とかだったらイヤだわね、まあ、乃梨子ちゃんはどうか知らないけど、私にその手の能力は無い……はず……あ、ケットシー=ゴロンタの「ちょっとしたオマケ」?  いやいや、オマケでそんな能力貰っても困るわよ。 困るでしょ普通?!

「どうしたんですか由乃先輩?」

 ちょと固まってたらしい私をいぶかしんで、乃梨子ちゃんが袖をクイックイッっと引っ張る。

「…あ、うん、何でもないわ」

 無駄に怖がらせることもないだろうし、さっきのもはっきりと言葉にしにくいあやふやなことだったし、乃梨子ちゃんに説明のしようがない。 それに、伝わってきているのは”喜び”とか”感謝”とか、そういうどちらかと言えば ”悪くない”と受けとれるものだったように感じたけど……。

”喜び”?
”感謝”?



 ……あっ、……あんたか…。


 足元を見る。

『・・・〜>皿<V〜・・』


 ゴンドラに対して”あんたってのも変な気もするけど、どうやら当たりらしい。
 物の想いを感じることができる…これが”オマケ”? いやいやそれはオマケでもらってうれしい能力なの? うるさくってしょうがなくない? でも、今朝から今までそんな想いを受け取ることはなかった、何か条件があるってことなのかしらね。 ふ〜ん……。

「確かに、受け取りました。 大事にしますね」

 晃さんやアテナさん達には、キョロキョロしていたのは足場の確認をしていると受け取られているのか、特に何も言われない、乃梨子ちゃんだけはなぜかちょっと考えごとをしているような表情をしている。

「乃梨子ちゃん、どうしたの? 何か心配ごと?」

 小声で乃梨子ちゃんに声をかける。

「・・・さっき由乃先輩の頭の辺りがちょっと光ったように見えたので・・・、何かありましたか?」

 心得たもので姿勢を崩さず周りに気づかれないように答える乃梨子ちゃん。 さすがは白薔薇の蕾・・・・・・あ、もう違うか。 いや……たとえ薔薇に成れなくても一生背負っていくことになるのかな、それは私も同じか……。

 光ったね・・・・・・。

「…ちょっとその件は保留ね、はっきり分からないから。 分かってると思うけど…」
「他言無用ですね、了解しました」

 話も早いわ。 信用度もぴか一だしね


 ・  ・  ・  ・  ・


 ゴンドラと言う大きな資産を手に入れたわけだけど、手放しでは喜べない。
 出世払いで良いとはいえ、その修理料金は言わば借金だ。 しかも、かなり上等な修理方法を取ってくれたらしい。 いくらくらいかは、まだ怖くて聞けないけど、かなりの金額になりそう。

「由乃先輩、私も当然修理料金は払いますから。 その…1人で背負い込もうと思わないでください」

 私が引き取るんだから当然一人で払うんだと思ってた私。 でも、そうね、乃梨子ちゃんも合同練習の時このゴンドラ使うんだし、何よりあの無人島から脱出する時苦労をともにした(?)物だし。 それなりには思い入れはあるんだろう。 乃梨子ちゃんの申し出はありがたく受けることにしよう。
 出世しなかったらどうするとか後ろ向きな考えは却下するとして、小額でもいいから返していくしかないわね。

「マイナスからのスタートね。 辛いとこね」
「マイナスからですか……でも…―」

 藍華さんの言う事は、分かる。
 私はパリーナを押してゴンドラを桟橋から離し、オールに軽く力を込めてカナル・グランデへと進路を取る。

「―…でも、そこから這い上がるくらいが、私達にはちょうどいいと思いますよ」

 


  *    ――    *    ――    *    ――    *



 オールを操ってゴンドラを桟橋に近づける、今朝教わった事を思い出しつつ姫屋まで戻って来たわけだ。
 私なりにがんばったつもりだけど、なんにも言わずに前を見据えている晃さんがちょっと怖い、藍華さんも姫社長を抱いたまま私の方を観察するように見ている、口元が”ニマ〜ッ”っとしてるのがちょっとどうなのよっと思うけど、今その辺を突っ込んでる余裕は無い。

 ゴンドラを受け取ったあと、仕事があるというアテナさんは早々にオレンジ・ぷらねっとへと帰っていった。
 乗って来たゴンドラをアテナさんに渡した乃梨子ちゃんとアリスには私達が乗ってきたゴンドラを姫屋まで運んでもらうことにした。 まあ、操船が私と乃梨子ちゃんだからそんなに早いわけじゃない、時間…大丈夫なのかしらね晃さん…。

 自分なりにはうまく出来たと思う。 パリーナに手をかけてなんとかゴンドラを停止位置につけると晃さんはゆっくりと立ち上がる。

「藍華、指導方針は決まったか?」
「はい、概ね。 ただ…」
「どうした?」
「私や晃さんとは、ちょっと系統が違いますよね。 誰に近いんだろ?」
「藍華、そこは気にするな。 前に言っただろ、”藍華は藍華にしかなれない”。 同じだ、”由乃は由乃にしかなれない”んだ、系統立てて考えても意味は無いぞ。 基本をしっかり教えてやれ、応用なんか一人前(プリマ)になってから考えたって遅くは無いぞ」

 藍華さんに訓示を出して、手をヒラヒラさせながら背を向けた晃さんだったが『あっ…』っと言って私の方に向き直る。

「夜になってからでいいから、私の部屋へ来るように。 以上だ」
「あ、はい。 わかりました」

 え〜〜〜? なに呼び出し?! 気が付かないうちに何かとんでもないことでもしでかしただろうか?
 でも、今までの感じからすると晃さんだったらその時点で雷を落とすだろう。 それに私の事を観察していたのは藍華さんだ、なにかあれば藍華さんから言われるはずだろうけど、今の所注意点についての発言はないし。

「いってらっしゃ〜〜い………。 行ったわね…」
「そんな、いない方がいいみたいな発言して…」
「じゃあ由乃、あんた今朝の軍事訓練もう一度やりたいの?」
「正直遠慮したいです」
「ふふふふ、あれに耐えて今の私があるのよ。 やっといても損はないけどね」
「アテナ先輩もそうですけど、この時期でもでっかいお忙しそうですね。 で? これからどうするんですか、藍華先輩?」
「もちろん練習に行くわよ。 まずは腹ごしらえしてからにしましょう。 そうねぇ〜、リアルト橋の近くに晃さんもお奨めのおいしいピッツェリア(ピッツァの店)があるのよ、そこ行きましょう」

 腹ごしらえって聞いて”ただ”で食べられる社食を真っ先に思い浮かべた私、懐が寂しいんだからしょうがないでしょ。



「へえ〜、乃梨子ちゃんオレンジ・ぷらねっとのウンディーネ養成所に入るんだ」
「はい、授業料は天引きされるようですけど、そんな高くなかったんで。 まあ、専門学校みたいなものですし、カリキュラムも昼までで、午後は各自練習ってことですから、先輩方と合同練習はできます」
「私は行かなかったんですけれど、アテナ先輩は通ってたんです。 即戦力と知識の統一化が図れるんだそうです」
「姫屋(うち)は昔ながらの方法だからね、上下の繋がりは結構強いわよ。 まあ、他にも姫屋(うち)のやり方研究して欠点を突いてきてるたりするけど、なんかちょっとずれてるような気もするのよね〜」
「ずれてるって、どの辺がずれてるんですか? でっかい気になります」
「ふふ〜〜ん、そんなこと教えるわけ無いでしょ」

 そう言えば、同じミドル・スクールの先輩後輩だって聞いたような……。

 お店までゴンドラで移動して、小ぶりのピッツァを何種類か注文して食べ比べた。
 藍華さんの奢りっていうスパイスも効いててとってもおいしかったわ…おいしかった…んだけど、テーブルにタバスコが無かったので頼んだら変な顔された、後で聞いたらイタリアではタバスコをかけないんだそうで、ニンニクとか唐辛子を漬けたオリーブオイルをかけるのが普通なんだそうだ。 まぁ〜”郷に入っては郷に従え”って本場の流儀で食べてみた。

「「ご馳走様でした」」
「ふふ〜〜ん、どうだった? ここのはどれもおいしいでしょ?」
「はい、マルガリータもよかったですけど、私はマリナーラ(船乗り風)がよかったです」
「私もマリナーラ(船乗り風)がよかったです」
「へぇ〜、二人ともマリナーラなんだ。 私はクワットロ・フォルマッジ(4種類のチーズのピッツァ)が好きかな」
「私はボスカイオラ(木こり風、茸のピッツァ)が、でっかいお気にです」

 まあ、値段見たら今の私と乃梨子ちゃんじゃ注文できないけどね、こっちの世界に来たばっかりの私達ってば貧乏だから。 藍華さんから聞いたんだけど、会社の給料+ゴンドラ協会からの給付金が貰えるまであと2週間と少しある、食事は社食に行けば只だけど。

「でも、お昼食べにいちいち会社に戻るのも効率悪いですよね、しかたないと言えばしかたないんですけど」
「探せば安い食事ありますよ。 たとえば”ピッツァ・アル・タッリョ”と言う、切り売り計り売りのピッツァがあります。 学校前やバス停前、商店街やパン屋の一角など至る所にあります。 大皿の各種料理から好きな物を取っていく、所謂バイキング型式の”タァヴォラ・カルダ””ロスティチェリア”なんてのもあります、安いですしボリュームも自分の好みに出来ますから、しばらくの間なら飽きずに済むと思いますよ」
「探せばあるってことか。 まあ、飽きたって節約したかったら、そういうの探さなきゃならないでしょうね」
「ちなみに、”ピッツァ・アル・タッリョ”のようなファストフード的なお店も、今みたいに注文してから焼いて、テーブル席に着いてナイフとフォークで食べるお店と区別せずに総称として”ピッツェリア”といいます」
「まあ〜あと2週間と少しじゃない、それまではガマンすんのね」
「いえ…お給料貰っても、あれこれ買わなきゃならないものが多いですから」
「そうよね、買い揃えなきゃならない物多いわ……」

 なんせ一から物を揃えていかなければならない、優先順位決めるのも頭の痛い問題だわねぇ〜、何から揃えればいいんだろ? そうだ、あれは古着ってのは絶対いやだわね……下着……。 
 剣客物の小説なんかは……いやいや、他の物の方が先でしょ! でも…あったらレア物だろうなぁ〜……。

「何が必要か言いなさいよ、融通できるならあげるから。 私達のお古でよければだけど」
「え? 私もなんですか?」
「…ちょっと…」


 少ししてからカフェへと移動してコーヒーを飲みケーキまでご馳走になって。 ………もう一件カフェに行って……こっちはサラ・ダ・テって言うらしいけど…違いがわかんない……、ゴンドラの練習? これが?

『観光案内の時、でっかい口が良く回るようにするための滑舌の練習です』

 アリスのこれを採用しときましょうか。



  *    ――    *    ――    *    ――    *



 夕飯は”茸とベーコンのクリームリゾット”と”鶏モモ肉の照り焼き(和風だわね)”モッツァレラチーズと季節の野菜のサラダ”多目。 でも、このドレッシングもう少しあっさり作ってもいいように思うけどなぁ〜、オリーブオイルが大量に使われてるみたいだけど、オリーブオイルだからいいの? いやいや、使いすぎはやっぱ問題あるでしょ。

 今日は午後になってからかなり寒くなって、短時間ゴンドラを漕いだだけだったけどかなり冷えてしまった、藍華さんも言ってたし帰ってからすぐにシャワーは浴びたんだけど、ご飯のあと少しして改めて大浴場へと行って温まってきた。

 部屋にいてもやれることと言えば軽い拭き掃除と観光案内の座学くらいだし…、そう言えば…私達は何の不自由も無く会話したり、教本やガイドブック、お店のメニューなんかを読んでるけど、いつのまに言葉を使いこなせる様になったんだろう? 基本イタリア語のはずだけど? 習った覚えもないんだけどなぁ〜…英語で苦労した覚えはあるんだけど。


 8時半。 

 『この扉を開く者、すべての希望を捨てよ』

 ……なんて書いてないけど、ちょっと昼間藍華さんに脅かされて、そんな見えないはずの文言が目の前にある気がする。 寮の廊下だから普通に他の社員も通る、いつまでも突っ立ってるわけにもいかないわよね〜……。
 はぁぁ〜…、しょうがない、少し控えめにノックする。

『…は〜い』

 昼間と違って意外にも女性っぽい声が部屋の中から聞こえた。 いや、こう言っては悪いけどさ。

「…ごきげんよう」
「来たね。 さ、入って」

 ゆったり目の白いセーターに白のカーデガン、ブラウンのロングスカートを着た晃さんがにこやかに迎え入れてくれる。

『仕事をこなしながらだったけど〜…部屋の片付け、1週間かかっても終わらなかったのよ』

 藍華さんからの事前情報で聞いていた惨状…よりはましだと思う程度の雑然さの晃さんの部屋。 部屋の隅にダンボール箱が五個くらい積まれていて、紙袋に入ったままのたぶん服や靴なんかが結構な量ベットの側に寄せられたままになっている、そして机の上には……。

「ん? ああ、どうにも書類仕事ってのが苦手でね、時間が掛かってしょうがない」

 私の視線に気づいた晃さんが、机の上の書類を手にとって軽く整える。

「書類仕事なんかもあるんだ…」
「あるのよ、いろいろと。 会社やゴンドラ協会に提出するのとか、私の所には他のプリマからも周って来るわよ書類」

 組織ってのはそういうところあるわよね、ある一定の手間を要求して安心するってところが。 山百合会でもそうだったわね、こんな書類いるのかしらってのが結構あった。 おっと、そんな事はさておいて…。

「え〜〜と…、取りあえずこれを……。 それで、私はなにかやらかしちゃったんでしょうか?」
「お〜、ありがとう……クルミパン? はは〜〜ん、藍華の入れ知恵か……。 んで? 怒って欲しいのか? ネタならいくらでも見つけられるぞ」
「違うんですか? いや、そんなネタ掘り起こしていただかなくても結構です…」

 藍華さん……。

 晃さんは肩をすくめて見せてから、サイドテーブル脇のクッションを勧めて自身は私の部屋にもある備え付けの少し狭めなキッチンへと歩いていく。

「紅茶でいいかしら?」
「はい」

 山百合会の慣習からすれば、私がやらなくちゃなのかもしれないけど、怒られるんじゃなければ私はお客さんと言うことよね、だったら座っていても問題ないでしょ、うん。

「お湯沸かしておけば良かったな、少し待ってね。 あ、そうだこれあげるよ。 西の岬にある喫茶店のオリジナルマグカップだ。 あ〜、そこはコーヒーメインでね、ちょっと変わってるけど和むよ」
「へぇ〜、行ってみたいですね」

 変わってて和むってどういう感覚? 気になるわよね。 晃さんが出したのは、いかにも手作りって感じの白いマグカップ。 魚のイラストと……なんだろ? ”◎”にひらがなの”さ”をくっつけたような感じ? ”さ”の横棒が手を上げているように上にきゅっと曲げられている。 横から見た目○オヤジっぽいような。

「漕ぐのうまくなってからの方がいいぞ。 せめて半人前(シングル)になってからだな、陸路で行こうとするとかなり遠回りになるし、ゴンドラで行くとなると海流が速くて複雑に流れている所だからな、操船が難しいぞ……。 お、沸いたみたいだ。 少し待っててね」
「は〜い…。 なかなか行き難そうな所ね、知る人ぞ知るってこと?」

 行きたい所が出来たわね。 まあ、聞いた範囲だとすぐ行くのは無理そうだけど。


 この時、喫茶店の詳しい場所を聞かなかったため、ちょっと大変な目に合うんだけどその事についてはまた後でね。


「はい、おまたせ。 そう言えばこの時間に紅茶飲んでも大丈夫だった?」
「心配しすぎです。 いただきます……あ、おいしい、香りもいいし…」
「ふふふ、地球(マンホーム)のセイロン産のちょっと高めの茶葉なんだ。 紅茶結構詳しいのか?」
「前に居た所で、ほぼ毎日のように淹れていました。 それで自然と身に付いたんでしょう」
「そうか、いや、なかなか居なくてな身近に紅茶の話しの出来るやつってのが…」
「アテナさんは? 厄介になっていた時に淹れてもらった事ありますけど? それにアリシアさんなんかは色々詳しそうですけど?」
「アテナは淹れるのはうまいんだが、茶葉に対するこだわりとかそんなに持って無い、薀蓄とかを話すようなガラでもないしな。 アリシアは……紅茶より酒だな」
「……お酒…ですか?」
「前世は飲んだくれの高校教師か、酒癖の悪い大学院生のドSお嬢様ね」

 何でそんな断言が出来るんだろ?

 しばらく紅茶の話しをしながら、小さめにカットしたクルミパンを摘んだりしてわりとゆったりしていた。
 まあ、私の場合結構適当に淹れてた事の方が多かったような気もするけど。 祐巳さんや志摩子さんは、それこそかなり真剣にやってたし、祥子さまは言うに及ばず令ちゃんはそれこそホントに上手だったし、乃梨子ちゃんも色々情報収集に余念が無かったし…『門前の小僧…』はなんとやら……かしらね。
 ただ、私達の頃は常識だったことが、いくつか伝わってなかった、茶葉も何種類か晃さんも知らないという物があった、廃れてしまった物だろうか? 300年の隔たりがあるわけだから何があってもおかしくは無いけど……。


「……あ〜、本題に入る前にもうこんな時間か…」
「え? あ、もう10時ですか」

 1時間ちょっと話してたってこと?

「じゃあ、ここからが本題だ。 1つ頼みがある。 これから藍華が指導した内容を覚えている範囲でかまわないから私に報告して欲しい。 口頭でかまわないぞ、書面にするのは面倒だろうからな」
「それは、またどうしてですか?」

 これもなんかの練習なんだろうか? 全てと言うわけでないにしても晃さんに報告するとなれば、藍華さんの指導内容を真剣に把握しようとするだろう? それはまた、私もずいぶん舐められたもんだわね!

 …な〜んてね……んなわけないでしょ。 そんなことちょっと考えればわかる。

「藍華にとっては由乃ちゃんが最初の弟子って事になる、由乃ちゃんには立派な一人前(プリマ)になってもらいたいわけなんだが。 ただな…最初の弟子って事は、教えるのも初めてってことになる、もちろん合同練習の時に灯里ちゃんやアリスちゃん達と、教えたり教えられたりってのはあっただろうけど。 でもな、人にゼロから教えるってことは初めてだ、それがどんなに難しいことか……」
「そういうものでしょうか?」
「…難しいよ、すごく難しい。 特に自分が出来る事、解っている事について教えるってのがね。 忘れてしまうんだ、自分も最初は出来なかったって事を。 ははっ、私もね、怒鳴りまくって部屋に帰って来てから落ち込んだりしてね……」

 昼間怒鳴られまくっていた身としては『本当にそうなのか?』っと思うけど……思ったけど……今の晃さんがかもし出している雰囲気は……。

「本当にそうですか〜?」
「ん?」

 本当にそうなんだろう、そういう表情だったしね。 でも、少し落ち込んだ晃さんの愚痴を聞きたいわけじゃないから、少し挑発してみる。 まあ軽くだけどね。 晃さんは、『怒鳴るだけ怒鳴っておいて、夕飯を食べる頃には、そんなこと頭の片隅にも無いんじゃないんですか?』と言う意図に汲み取った…っと思われるような顔をして私の方に視線を移し、何かを言おうと口を開きかけた瞬間にニコッっと笑ってみせる。

「晃さん、人に教えるの好きですよね。 いろいろと」

 人に言わせると、私もそこそこ見られる顔をしているらしい、自分では良く出来たと思っている笑顔を向けて見せたら、さすがの晃さんも一瞬固まった。 男だったらどうかと思うけど女性の晃さん、そっち方面の趣味が無い限りなんであんな事を私が言ったのか、今言ったことの意図はなんなのか考えるだろう。 そしてこっちらの意図もわかってくれたみたいだ、すぐにニカッと笑う。

「ははっ、そうだな。 私はウンディーネの仕事も好きだけど、人が育っていくのを見るのも好きだな」
「でも、言ってしまえば ”藍華が心配だ”ですよね」
「……まだ本性は見せていないようだが…、なかなかいい度胸しているようだな」
「前の学校では”イケイケ青信号””ブレーキの壊れた暴走機関車”何て言われていたようですけど。 まあそれも、心臓の手術が成功してからですからここ1年くらいでですけどね」
「面白いアダナだな、一人前(プリマ)になった時の参考にするかな。 ん? 心臓の手術?」
「……ええ、…」

 あっ、っと思ったけど。
 小さい頃は病弱で運動らしい運動が出来なかったってこと。 手術をしたのはほんの一年前だということ。 手術はして健康にはなったけど、基礎体力とか運動神経とかは一般の人並みになる事は無いってお医者さんに言われたっていうこと。

 心臓の手術のことなんかは、藍華さんに言うと気にしそうだからと言わなかったけど、晃さんには関係ない。 関係ないはず…なんだけど……口を付いて出てしまうのは私にとってはマイナス要因のこと。 なんで、何でこんなこと話してんだろ私……。

 少しの沈黙、そして腕組みをして話を聞いていた晃さん。

「今朝の指導はやっぱりきつすぎたか?」
「『このくらいで音を上げる様じゃ、姫屋に対抗する会社を作るなんて夢のまた夢』…だそうですが? そして私もそう思いました」
「……そう言えばそうだったな…じゃあ、この話はここまでにしよう、藍華には内緒にしておいた方がいいだろうがな。 そうだ、依頼の件はOKか? それを聞いてなかったな」
「……そうですね………藍華さんに知れた時、私にリスクがあるような気が…」
「あ〜大丈夫だ、それは私が抑える、力ずくで」

 引き受けることにした。 けど晃さんが”力ずく”で抑えたとしても、しばらくの間絶対気まずくなるだろうなぁ〜。

「”力ずく”で仲直りするか」
「うん? 何のことだ? 取りあえずよろしく頼むよ」
「了解です…。 じゃあ戻ります。 紅茶ご馳走様でした、ごきげんよ…」
「…1つアドバイスしとこう。 私達は別に力いっぱいオールを漕いでるわけじゃないんだ、そんなんだと長く漕いでられないし……腕、太くなっちゃうだろ?」

 そう言いながら晃さんは、自分の二の腕辺りをポンポンと叩いて見せた。

「ま、その辺がすぐにできるようなら苦労は無いんだがな」
「”力ずく”で何とかします」
「そこは力ずくじゃダメだろ。 まあ、がんばれ……ごきげんよう」



  *    ――    *    ――    *    ――    *



「はぁぁ〜っ…」

 自室の天井にぶら下がっている今の時期用無しのシーリングファンを眺めて、今さら考えても仕方の無い事を考えている。

 考えててもどうしようも無い、どうにも出来ないこと。
 晃さんと藍華さんのやり取り、その関係を見てたらリリアンのスールを思い出した。 私と令ちゃん。 そして、私とたぶん菜々……。

 もっとも令ちゃんは私になにか指導してくれたって事は無い……いや、ある。 いっぱいある。 あるはずなのに、私が無視して暴走したりケンカしたりして……ろくな事してないわね、改めて考えてみると……。
 そして、令ちゃんの事もそうだけど…菜々のこと。
 私が姉になったとして。 菜々に良い影響ってあるんだろうか? うまく指導できるんだろうか?
 私は……姉になれるんだろうか…。

 帰れないってわかってても考えずにいられない自問自答。

 らしくないな〜…。

 頭から消えてくれない嫌な考えが、灯りを消して目を閉じても、頭の中で私に問い掛け続けてくる。

 寝返りをうって、ハンガーに掛けっぱなしのリリアンの制服に目を向ける、令ちゃんから貰ったロザリオは胸ポケットの中。

  …… 答えが、出るはずも無いのに ――。




        
       〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜 3話へ つづく 〜・〜・〜・〜





 ―  *  ――  *  ――  *  ――  *  ――  *  ――



 …… ちょっとした愚考 ……

 ○祐巳が、ゴロンタ=ケットシーがアクアに戻るのに巻き込まれてネオ・ヴェネツィアに来たのは、桜の季節だからアクアのカレンダーで4月末か5月頭頃?
 では、元の時期で言うと? クゥ〜さんの作品に具体的な記述は無し。
 ただ『枯葉一枚つけていない桜の木の周囲に広がる桜の花びらの絨毯…』と言う記述、これに類する記述も散見する所から、冬。
 祥子と令が薔薇さまとして活動しているらしい。 瞳子が『私の、私の責任なのです〜〜〜祐巳さまに謝りたい、謝りたいの』の一連のセリフから、瞳子の問題が未解決の山百合会の選挙前と思われます。 おそらく12月〜1月頃と推測できると思いますが…いかがでしょう?

 ○由乃と乃梨子が来たのは、まつのめ様の作品に記述がある18月頃…ってことになります。
 元の時代で言うと? 祐巳が失踪してからそれほど時間が経っていないようです。 クゥ〜さんの方で『数日後、祐巳さまが行方不明に成っている事件はリリアン中に知れ渡ってしまった』という記述、その後、祐巳が薔薇の館のガラスに姿を映す時に、由乃と乃梨子がその場に居合わせている、その後にっということになるので、10日ないし2週間程度後と推測します。
 ただ、まつのめさんの方に『銀杏の木々が緑を湛えている』の記述が……う〜〜ん…銀杏も落葉しますけどね……。
 クゥ〜さんの方の祐巳が由乃と乃梨子らしいウンディーネ二人組みを見たのがヴォガ・ロンガの前、社員旅行の後、ヴォガ・ロンガは晩秋の行事……21月頃のがよかったな〜…。


 前回の由乃姫屋編は、雪虫も飛んでる描写をしてしまいましたが、今回は由乃達がネオ・ヴェネツィアに来て1週間くらいのはずなので18月末か19月になったばかりの頃、……書いてて取り返しのつかない事をしてしまった気分……次回はクリスマスの事を書くつもりなんですけど………、ま、まあ、作者が3人もいると不整合が出まくるっていう見本ですね。 話し合ってないんですからしょうがないですね。


 *年齢的な事
 由乃は17歳 乃梨子は16歳 アリスは16歳
 さて問題の祐巳ですが……来た時点では当然由乃と同い歳の17歳、しかし24ヶ月のアクアの時間経過だと…10月に裏誕生日、よって18歳。 そうなっちゃうみたいです。 由乃と乃梨子の誕生日が思い出せない……。



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