【3209】 みたいなことを考えてため息しか出ない人が信じられなくなる  (福沢家の人々 2010-07-19 21:54:56)


時は平成○○年・・・・

良家の子女が通う私立リリアン女学園に通う福沢祐巳に、

紅薔薇のつぼみ小笠原祥子が「一緒にググるをしていただきたいの!」と声を掛けた。

突然のお願いに、思わず頷いてしまう祐巳。

しかし、なぜググるなのか?PCも、使い方も分からないのに。

可憐な乙女たちの奮闘物語が始まる。










「ところで、ググるって、いったいなんの事ですの…。」










さかのぼること数十分前

放課後になって、蔦子さんが祐巳のところにやってきた。

目の前に出てきた写真を見て祐巳は目を剥いた。

「な、なな」

祥子さまが祐巳のタイを直している写真だった。

「これを学園祭のときパネルにして展示したいのよ。承諾してくれるかしら?」

「私は良いけど」

「それでね、祥子さまにも承諾いただかないといけないんだけど」

「私にそれをお願いする気?」

「協力して頂けるかしら」

ここで嫌といっても蔦子さんのことだから口八丁手八丁で・・・結局行くことになるんだろう。

「その写真私にくれるなら」

「いいわよ。もともと交渉材料に使うつもりだったんだから」

祐巳たちが薔薇の館のビスケットの扉の前に来たとき、誰かの叫び声が、

「横暴ですわ! お姉さまの意地悪!」

どっかん!

いきなりビスケットの扉が開いて、祐巳は扉でおでこをぶつけた・・・

「だ、大丈夫?そうだわ、あなたお姉さまはいて?」

「え? あ、居ま、居ません。」










そして、薔薇の館の住人たちの視線がいっせいに扉の前に集まった。

三薔薇さま、麗しいお顔をそろえて座っていらっしゃる。

「ごきげんよう、そちらはどなたかしら?」

紅薔薇さまは優雅に微笑んでお声を発した。

「お姉さま方にご報告いたしますわ」

「あら、なにが始まるのかしら?」

薔薇さま方は興味津々と祥子さまに注目した。でもなんか紅薔薇さまの表情がちょと硬い気がするのはなぜだろう。

「自己紹介なさい」

祐巳は祥子さまの手でみんなの中心に押し出されてしまった。みんなの視線が注目する。

「いちっ、一年桃組、福沢祐巳です」

「そう、フクザワユミさんね。漢字でどう書くのかしら」

「福沢諭吉の福沢にしめすへんに右と書いて祐、それから十二支のへびの巳です」

「おめでたそうで良い名前ね」

白薔薇さまが華やかに笑われた。

「はあ、恐れ入ります」

「それで?」

「その福沢祐巳さんが何かしら?」

 薔薇さま方は何を思ったのか立ち上がり、祐巳を取り囲むように前へ出てきていた。これじゃ祐巳が薔薇さま方に詰問されているみたい。

「あ、あの……」

「祐巳」

祥子さまがも耳元で、話を合わせなさいと。

「は、はい!」

「言ってあげて、私は祐巳のな〜に?」

「え〜、え〜と・・・」

さ、祥子さま〜、私に何を言わせたいのですか〜(泣き)

「祐巳。早く。私はあなたの?」

覚悟を決めた。え〜い!ままよ。

「お〜お、お姉さまです!」

「そういうことです」

「祥子、一応聞いておくけどその場しのぎでこの子にこんなこと言わせてるんじゃないでしょうね?」

鋭い!、絶対その場しのぎで言ってると思います。はい!

「それは心外ですわ。こんなことが無くても、ちゃんと紹介するつもりでしたもの」

わ〜お!祥子さま。嘘を押し通す気。

「でもこの子」

「ひやっ!」

「ロザリオつけてないわよ」

 白薔薇さまがいつの間にか背後に回って後ろから襟元に手を這わせて

「よいでわないか!よいでわないか!」

「やめてください、聖さま」

「どういうこと、祥子?」

「それは・・・訳あって儀式はまだなんですわ」

「訳って何よ?」

 黄薔薇さまが腕を組んで詰問する。

「と、とにかく、祐巳は私の妹です! 私が選んだ妹にお姉さま方からどうこういわれる筋合いはありませんわ」

 薔薇さま方から守るように祥子さまは祐巳の肩を抱いた。

「そうね。確かにたとえその場しのぎだとしても祥子が積極的に選んだのなら文句はいえないわ」

「その場しのぎではありません!」

 あくまで主張を押し通す祥子さま。この後どうするおつもりなのか、祐巳は頭が痛くなった。

「まあいいわ。認めましょう」

 紅薔薇さまの言葉に今まで曇っていた祥子さまの表情がぱあっと晴れわたった。

「でしたら」

「でもこの仕事は変わらないわよ」

 表情の晴れ間は一瞬だった。

「そんな、約束が違いますわ!」

「約束? 妹が出来たら一人前と認めるって話?」

「発言を聞いてくださるのではなかったのですか?」

「そうだったわね、では存分に発言なさい」

「この役目を下ろしてください」

「だめよ」

「どうして?」

「『メカ音痴』ってだけじゃ今さらわざわざ役目を変える理由にはならないわ。」

「次期紅薔薇さまのあなたなら当然判っているものと思っていたのに、あなたを教育した私のせいなのね」

 紅薔薇さまはふぅ、と物憂いげにため息をひとつついた。

「もう帰ります」

 ああ、祥子さまとうとう反論できなくなって撤退。このままじゃ相当落ち込んでしまう。

「待って」

 出て行こうとする祥子さまの背に紅薔薇さまが声をかけた。

「なんでしょう」

「最後に一つだけ。祐巳さんは今でもあなたの妹なのかしら?」

「当然ですわ」

 祥子さまは即答した。

「よかったわ。ここであなたが祐巳さんを見捨てるようなら私はあなたとの姉妹を解消しなければならなかったから」

「私はそんなこといたしません。祐巳」

「は、はい」

「いらっしゃい。一緒に行きましょう」

「あ、あのっ、お姉さま」

「いいのですか? このままで」

「祐巳?」

 この表情は、祐巳が何をいわんとしてるのか図りかねるって顔だ。

「紅薔薇さま、お姉さまの役目、もう一考願えませんか?」

 祐巳は紅薔薇さまに向かって言った。

「あら、祥子をかばってくれるんだ」

 いつのまにか席に戻っていた白薔薇さまがニコニコしながら言った。

「だって、話し合いを休んだ祥子さまに非があるにしても、知らせもしないで決定してしまうなんてひどいと思います」

「あらあら」

「今だって、三対一でこんなの話し合いじゃ」

「お黙りなさい!」

 祥子さまの鋭い声で祐巳の言葉が中断した。

「お姉さま?」

「祐巳、私のために言ってくれてるのは判るわ。でも、それ以上お姉さま方を悪く言わないで」

 祥子さまは祐巳の隣に並び、祐巳の頭を抑えて一緒に薔薇さまたちに向かって頭を下げた。

「お姉さま方、申し訳ありません。あとでよく言い聞かせますので」

「そうね。祐巳ちゃんの言うことも一理あるか。確かにこのままだと無理やり役目を果たさせることになる訳だし」

「妹一人説得できないのに生徒会を指導できるのかってことね」

そこまで言った覚えは無いのだけれど。

「分かったわ。祐巳ちゃんの意見も聞きましょう」

「え?」

「三対二よ。まだ差があって申し訳ないけどその分譲歩はするわ。あなたの意見を言って」

「意見って……」

「祥子を今日の役目から降ろしたいっていうのならその代案を出して頂戴」

「で、誰がやるの?」

「えっ、誰って」

「誰かが代わりに今日の役目をやることになるわよね。あなたの代案では誰が図書館に行って、インターネット検索をやってくれるのかしら?」

「祐巳、もういいわ」

 祥子さまが祐巳の肩に手を置いた。

「あなたは十分やってくれたわ」










「祐巳、一緒にググるをしていただきたいの!」










「Yahoo!でも、いいですか?」










薔薇の館の住人たちは、そんな、二人をこう呼ぶ…。










「平成Yahoo!娘。」と…。










♪目覚めて行く♪こころ、どきどき♪・・・


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