【3223】 床下に潜む謎の物体が来たであってほしい  (福沢家の人々 2010-07-27 12:30:13)


「ごきげんよう」

「ごきげんよう」

 さわやかな挨拶が、澄みきった青空にこだまする。

 マリア様のお庭に集う乙女たちが、今日も天使のような無垢な笑顔で、背の高い門をくぐり抜けていく。 

 汚れを知らない心身を包むのは、深い色の制服。

 スカートのプリーツは乱さないように、白いセーラーカラーは翻らせないように、ゆっくりと歩くのがここでのたしなみ。

 もちろん、遅刻ギリギリで走り去るなどといった、はしたない生徒など存在していようはずもない。




 そしてここに




 ここは、リリアン女学園高等部、中庭に立つ薔薇の館の2階




「ごきげん・・・・」




 ビスケットの扉のノブに手をかけ、扉を半分んだけ開けて固まる少女が一人

 白薔薇のつぼみこと、二条乃梨子




 窓が閉められ薄暗い執務室。床に描かれた魔法陣が光を発する。

 そして、魔法陣の傍らに立つセミロングの髪をリボンで二つに縛った髪型。

 赤系の服装に、ミニスカ、ニーソの少女。

 風も無いのに服や髪がなびいている。








 乃梨子は、執務室の中を見詰て鼻血げふんげふん固まっていた・・・・

 よく知る少女、姉である白薔薇さまこと、藤堂志摩子の親友の1人であり山百合会の仲間

 紅薔薇さまこと、福沢祐巳である。










 目を閉じ、ただえんえんと、常人には解せぬ言葉を呟いている。

「・・・告げる。」

「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。」

「聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。」

「誓いを此処に。」

「我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。」

「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ。」

「天秤の守り手よ……?」




 魔術?……。




 白や黄色、赤い光の渦が、さらに光を増し、魔法陣に集まっていく。

 体の前で交差させた両腕を、力一杯振り上げた。




「出て来ぃや〜〜。」

 光の渦は臨界に達し、渦自体が明滅を始めた。やがて白い光を放つ。




「我が前に、その姿を示せ!」

 執務室が、真白い光に包まれる。その中央部……魔法陣の中心に、ひとつの人影が浮かんだ。




「来た!・・・間違い無く最強の・・・。」

 光は少しずつ収束し、やがて執務室は元の暗さに戻る。少女は、光の中に現出した人影を捜した。そして……




『ごきげんよう、祐巳さま!』

 そこには、長い髪の両側につくった縦ロールの髪型の少女が、嬉しそうに立っていた。










「瞳子、私の妹になりなさい。」










「はい、お受けします。」










「な、なんじゃ、こりゃーーーーーっ!!!!!」











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