薔薇の館。
いつものように黄薔薇姉妹の支倉令さまと島津由乃さん、白薔薇姉妹の藤堂志摩子さんと二条乃梨子ちゃん、紅薔薇姉妹の小笠原祥子さまと福沢祐巳が揃って仕事をしていた。
「お茶のお代わり入れましょうか?」
「あ、そういえば」
と祥子さまが鞄から小さな包みを取り出した。
「父が海外旅行のお土産にとくれたお茶を持ってきたの。私が入れるわ」
「お姉さま、私が」
「あら、たまにはいいじゃない」
と祥子さまが皆にお茶を振る舞ってくれることになった。
祐巳は隣でカップを温め、祥子さまの入れたお茶を皆の前に置く。
「素敵な香りですね」
「珍しい色。ハーブティー?」
「ええ」
全員でお茶を口にする。
「あ、甘い」
「口中に香りが広まって……落ち着くなあ」
「あ〜、こんな事ならお茶菓子を用意するんでしたね」
「同感」
六人は後の惨劇も知らず、幸せなひと時を過ごしていた──。
十分後。
「……ん?」
「……え?」
「……あら?」
惨劇の瞬間が訪れた。
「な、何!? ……ええっ?」
「あ、ああっ!?」
「ど、どうなってるのっ!?」
オロオロとしながら仲間を見る六人。
一瞬何が起こっているのか理解できなかったが、仲間の『変化』が自分自身にも同様に起こっていることを知って愕然とする。
「な、何てことだっ!」
「うわーっ!!」
「きゃあぁ!!」
『変化』が落ち着いて、恐る恐る六人は自分の身体を調べ始めた。
「ああ〜っ」
「わたしもか……」
「やっぱり……」
「こんなことが あるなんて……」
「こどもに なっちゃった……」
のりこちゃんが呟いた。
「よしの、だいじょうぶ?」
れいさまが聞く。
「みてのとおり こどもになったわよ」
よしのさんの返事に黙ってれいさまは胸の辺りを指した。
「ああ、それはへいき」
よしのさんの返事にれいさまがほっとする。
「そっか、よしのさんは しんぞうの びょうきだったものね」
ゆみが納得したように言う。
「なにが げんいんなのかしら?」
しまこさんが考える。
「げんいんきゅうめいも たいせつだけど、いまは このダボダボの せいふくを なんとかしましょう」
さちこさまの言葉に全員がうなずく。
相談しながら、体操服のスパッツとシャツならば子供の間は丈が邪魔にならず、高校生サイズに戻った時にも問題なかろうということになり、着替えることにしたのだが。
「ブラジャーは どうしたら いいのかしら?」
さちこさまはご自身のつけていたブラジャーを片手に思案している。
「このすがたのあいだは ないほうが すごしやすいけれど、もとにもどったときは つけてないと たいへんよね」
確かに、というように令さまがうなずく。
「ニプレスでも はりますか?」
思いついたまま、ゆみは言った。
「そんなの、ここには ないじゃない」
不機嫌そうにさちこさまが返す。
「じゃあ、バンデージは?」
「え〜、ゆみさん それは……」
「なんだか……」
「ねえ……」
「うっ! よそういじょうに ふひょう!?」
ゆみ案は否決され、結局。
「とりあえず、パンツひとつだと かぜひくから、ふくをきよう。ブラジャーは あとでかんがえよう」
というれいさまの意見で全員がノーブラのまま体操服姿になった。
ひざ丈のスパッツは七分丈、シャツはチュニック丈になったが、制服の時よりは随分マシになった。
よいしょ、と席に着く。
「しごとはむりね。もとにもどるほうほうを かんがえなくては」
さちこさまが言う。
「もとにもどると いわれましても……なにが げんいんで こうなったのでしょう? げんいんが わからなければ それをとりのぞいたり、なおすことができません」
のりこちゃんはそう言った。
「そうね……ぜんいんがこうなった ということは おそらく、ばらのやかたでの なにかが げんいんよね?」
考えるようにしまこさんが顎に手を当てた。
「ぜんぜん こころあたりないし」
と、よしのさんはカップに残っていたお茶を飲んだ。
「これ、もどらなかったら このまま いえにかえって、またあした このすがたで がっこうにくるのかな?」
ゆみの言葉に全員が固まった。
「どうしよう……ようちしゃのころの ふくなんて、しょぶんしちゃった」
両頬に両手を当てて由乃さんが呟く。
「リリアンのせいふくじゃなくても いいのかしら?」
ピントがずれた心配をし始めたしまこさん。
「ちばからおくってもらう……いや、そのまえに ちばのりょうしんに なんてせつめいしよう」
ガッカリとした表情ののりこちゃんはそう言うと頭を抱えた。
「そのまえに、このかっこうで いえにかえるばめんを そうぞうしてみて」
真っ青な顔でさちこさまが言うと、全員がそれを想像する。
「うわあ……いちょうなみきで つたこさまに げきしゃされちゃった!」
「マリアぞうまえで まみさんに インタビューされちゃった!」
「どうしよう……こうもんまえで せいさまに……」
真っ赤になったゆみは机に突っ伏した。
「ゆみさん、おねえさまが どうかして?」
しまこさんが聞いてくる。
「とにかく、げんいんを さがしましょう」
その時。
──ギシギシギシ……。
誰かが階段を昇ってくる音がする。
ど、どうする!? ちびっこ山百合会!
「ごきげんよう! 写真部です」
ビスケットの扉を開けて、蔦子がサロン兼会議室に入ると、そこには誰もいなかった。
「あらら、お留守みたいね。失礼しました」
と、戻りかけて、中に戻ってくる。
「窓が開いてるよ。物騒な」
と窓を閉めて、蔦子は出ていった。
階段を降りる音、その後、玄関の扉が閉まる音がすると、それを合図のように六人は出てきた。
紅薔薇姉妹はテーブルの下から出てきた。
白薔薇姉妹は戸棚の中から出てきた。
黄薔薇姉妹はカーテンの裏から出てきた。
「びっくりした〜」
全員が一斉に言った。
「もどってきたとき、もう、どうなることかと……」
「こっちにきたとき、バレたのかと……」
「つたこさんが でていきそうになったとき、こっちもそとへ でようとしてたから ほんとうに あぶなかったわ」
やれやれ、と六人は席に着く。
「とにかく、こんなこと なんども くりかえしてはいられないわ」
「でも、どうしましょう?」
六人は知恵を絞った。
そして……。
A.とにかく薔薇の館にあるものを調べることにした
B.とりあえず薔薇の館から脱出することにした
さて……。
【ここまで読んでくださった皆さまへ】
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もちろん、皆さまのコメントがないと続きません。
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【締め切り】(書き忘れた追記)
うp日の一週間後です。
【閉め切りました。コメントありがとうございました】
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